会社員で副業をする人はどれくらい?みんなの気になる副業事情のサムネイル画像

大手企業でも副業を認めるところが増えた上に、新型コロナウイルス感染症やテレワーク普及の余波で副業を始める人は増えています。しかし、副業を始めるにあたっては、いくつか注意すべき点があるのも事実です。これから副業を始める人にもわかるよう、詳しく解説します。

監修者「谷川 昌平」

監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー

株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。
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この記事の目次

副業を始める人は増えてる?


厚生労働省は、平成30(2018)年にモデル就業規則の改定および副業・兼業の促進に関するガイドラインの公表を行いました。 つまり、国として「副業解禁」の姿勢にかじを切ったのです。 大手ビールメーカーのキリンビールやインターネット広告業のサイバーエージェントなど、日本を代表する大手企業でも、従業員の副業を認めています。 


実際のところ、新型コロナウイルス感染症の流行やそれに伴うテレワークの導入により、副業をする人は増えているようです。 キャリアや転職に特化した相談サービス「JobQ」を運営する株式会社ライボの調査によれば、調査に参加し、副業をしていると答えた人(143人)のうち45.5%が「コロナ禍後に始めた」と答えていました。 


出典:Job総研による『2022年 副業・兼業に関する実態調査』を実施 コロナ禍を境に副業始める社会人4割増 今後始めたいは9割 

会社員が副業を始める理由

実際のところ、副業を始める理由は人それぞれです。 大手人材サービス会社の株式会社マイナビが調査したところによれば、副業を始めたいと思った理由のうち、ベスト5には以下の項目がランクインしました。 


  1. お小遣い・趣味に使える収入を増やしたい(52.8%)
  2. 将来への蓄え・貯金を増やしたい (48.3%)
  3. 将来の収入への不安を感じた (40.4%)
  4. スキル・経験を身に付けたい(22.8%)
  5. 生きがい・ライフワークを見つけたい(22.1%) 


出典:  株式会社マイナビ「副業の平均月収は「5万9,782円」。希望と実態のギャップは「7万2,764円」で半分に届かず」


やはり、副業を始めるきっかけは、金銭的な不安や不満であることが多いのでしょう。 少数派ながらも、スキル・経験・生きがい・ライフワークなど「お金以外」のものを求める人もいるようです。

平均の副業収入

副業でどれだけの収入が得られているのかについてもみてみましょう。 先ほど紹介した株式会社マイナビの調査によれば、同調査に参加した人が毎月副業で得ている収入の平均額は5万9,782円でした。 約6万円といったところです。 希望の収入が毎月13万2,546円であることを考えると、理想と現実の間にはかなり大きな開きがあると言って良いでしょう。 



出典:株式会社マイナビ「副業の平均月収は「5万9,782円」。希望と実態のギャップは「7万2,764円」で半分に届かず」


もちろん、これらはあくまで平均値で、ごくわずか(全体の2.5%)ながら毎月副業で得ている収入が20万円を超える人もいました。 自分に合っていて、しかも成果を出せるやり方を見つけられた場合、高い収入につながるのかもしれません。 

副業を始めるときの注意点


会社員が副業をするのは一般的になりつつあります。 しかし、あくまで本業がある立場である以上、以下の点には注意しましょう。 


  • 勤務先の就業規則を確認する 

まず、そもそも自分の勤務先では副業が認められているのか、就業規則を確認しましょう。 仮に就業規則にはっきりしたことが書かれていなくても、副業の内容次第では認めてもらえる可能性もあります。 埒が開かないようなら、正々堂々と副業できる会社への転職もやり方の1つでしょう。 


  • 副業の所得が何に該当するかを確認する 

自身が副業で得られる収入は、所得税の申告においてはどの所得に分類されるのかを確認しましょう。 どの所得かによって、税金の計算方法が違ってくるためです。 一般的に副業で得られる収入は、給与所得、事業所得、雑所得のいずれかに該当する場合が多くなっています。 


  • 社会保険料の加入要件に当てはまるかを確認する 

副業で得られる収入が給与所得だった場合は、社会保険の加入要件に当てはまるか否かを確認しましょう。 給与所得ではない場合は、基本的に考える必要はありません。

 

  • 確定申告を行う 

原則として、利子所得を除くすべての所得については、確定申告をし、所得税の支払いを行わなくてはいけません。 会社員が副業で得ている所得(収入-経費で計算される「もうけ」)が年間20万円を超える場合も同様です。 

  • 住民税を納める 

確定申告を行う場合は、確定申告書を提出すると自動的に住民税も計算され、納付書が送られてくるの支払えば問題ありません。 一方、行わない場合は市区町村役場での申告手続きが必要になるので注意しましょう。 


また、住民税は自分で支払う(普通徴収)か、給料から天引きしてもらう(特別徴収)かで支払います。 勤務先に知られたくない場合は、普通徴収を選びましょう。

年収300万円以下は雑所得になる?


副業と税金に関して最近話題になっていることも紹介しましょう。 国税庁は、2022年8月31日までの期間で「所得税基本通達」の一部改正案に関する意見募集を始めました。 簡単にまとめると、副業での収入が年間300万円を下回る場合、所得税の計算においては事業所得ではなく、雑所得として扱われるというものです。

雑所得になると変わること

仮に副業による収入が雑所得に振り分けられた場合、どんな影響が起きるか考えてみましょう。 事業所得であれば、仮に損失が生じたとしても、他の所得区分と損益通算ができます。 つまり、副業で赤字になってしまったとしても、会社からもらう給料による所得=給与所得と相殺した上で税金を支払うため、負担が軽減できるということです。 


しかし、雑所得の場合、損益通算ができません。 仮に副業で大赤字になったとしても、給与所得にかかる所得税をそのまま支払わないといけないため、大損してしまう恐れもあるのです。

インボイス制度とは

もう1つ副業に関連する制度として、インボイス制度についても紹介しましょう。 インボイスとは売主が買主に対して発行する請求書や納品書などの書類を指す言葉です。 日本語では、適格請求書と言います。 そして、2023年10月1日からは、インボイス制度が始まる予定です。 簡単にポイントをまとめました。


  • 事前に登録した事業者のみがインボイスを発行できる 
  • 売主は買主から要求されるとインボイスの交付が必要になり、その写しを保存する義務も発生する 
  • 買主側は交付されたインボイスを保存しておき、仕入税額控除の申請を行う 


この制度が副業とどう関連するのかにも触れておきましょう。 本来、売上高が1,000万円(税抜)に満たない事業者には、消費税の納付義務がありません。 会社員の傍らで副業をしている人であれば、消費税の納付義務が生じないことのほうが多いでしょう。 


インボイス制度では、免税事業者が発行したインボイスに法的効力が認められません。 つまり、免税事業者と取引をしたとしても仕入税額控除が利用できなくなります。 もっと簡単に言うと、取引先が本来仕入税額控除で差し引けるはずの消費税額を、取引先が自腹で納付することになると考えましょう。 


このため、副業として仕事をしていて、消費税の納付義務がない状態の人とは取引をしなくなる可能性も出てきます。

まとめ

厚生労働省がモデル就業規則の改正や副業・兼業の促進に関するガイドラインの公表を行ったことで、国としては「副業解禁」の流れが加速しています。 お金のため、もしくはお金ではない何かのために副業をする人は増えていますが、十分な収入が得られてる人はほんの一握りです。 税法上の扱いの変更やインボイス制度など、副業をする人にとっては避けて通れない問題もたくさんあります。 


結局のところ、副業をするかしないかは、自分自身の希望と余力にかかっているでしょう。 副業をすることで得られるメリット・デメリットを比較し、どう動くかを考えましょう。