男性育休は家計にプラス?「収入減」のイメージだけでは見えないお金の話とは

男性育休は家計にプラス?「収入減」のイメージだけでは見えないお金の話とは

今回は、下関市立大学 大学院経済学研究科・経済学部 国際商学科にご在籍で、労働経済学、少子高齢化の経済学、応用計量経済学などを研究されている鈴木 俊光准教授に、マネーキャリア編集部が独自インタビューを行いました。

鈴木准教授のプロフィール

<専門分野>

労働経済学、少子高齢化の経済学、応用計量経済学

 

<学歴>

2010年3月 中央大学経済学研究科 博士 修了

2006年3月 中央大学経済学研究科 修士 修了

2004年3月 中央大学経済学部経済学科  卒業

2000年3月 宮城県仙台第三高等学校   卒業

 

<主な研究実績・活動>

主な研究実績・活動

「産業・職業・都道府県別にみる労働力不足」『これからの人手不足にどう立ち向かえばよいのか -「労働市場の未来推計2035」で見えてきた課題-』第4章、阿部正浩・パーソル総合研究所編、金融財政事情研究会 2026年2月

「SUTのバランシング」『GDP推計の新たな展開 供給・使用表の概念とその応用』第5章、菅幹雄編著、日本評論社 2025年8月

パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2035」 2024年10月

「夫婦の所得・性別役割分業意識が潜在希望子ども数に与える影響の国際比較」『中央大学経済研究所年報』第55号 2023年

「社会経済的要因にみる婚外交際行動」『人口学ライブラリー22 セクシャリティの人口学』第3章、小島宏・和田光平編、原書房 2022年11月

「わが国における分配側四半期別 GDP 速報の導入に向けた検討状況」『季刊国民経済計算』No.166 内閣府経済社会総合研究所、2020年11月

「被災地企業の雇用管理」『東日本大震災復興研究Ⅳ 新しいフェーズを迎える東北復興への提言』第4章、東北大学大学院経済学研究科 地域産業復興調査研究プロジェクト 2015年3月

「肥満と賃金」『肥満と生活・健康・仕事の格差』第11章、古郡鞆子・松浦司編、日本評論社 2014年1月

 

引用:下関市立大学 教員紹介

男性育休は家計にどのような影響を与える?

男性育休による収入減は実際どの程度?短期的な家計への影響

質問

Q1.男性育休は、短期的な家計にどの程度影響しますか?「収入減」のイメージは実態に近いのでしょうか?

当然男性育休を取得すれば、収入は減少するということになります。ただし、その実態が「収入が大幅減」のイメージとは少し異なるのではないかと思います。

 

現在の日本の制度では、育休開始から180日以内であれば、休業前月給の67%が「育児休業給付金」として雇用保険から支給されます。

 

これだけ聞くと「3割以上も収入が減る」と思われがちですが、実際の手取り額でシミュレーションしてみると、結論として「通常時とあまり変わらない」ことが分かります。

家計への具体的な影響度

例えば、額面(月給)が35万円の方を例に考えてみましょう。通常の勤務月であれば、健康保険や厚生年金などの社会保険料(約5万円)や所得税(約1万円)などが控除され、実際の手取り額は約29万円になります。

 

一方、育休期間中は社会保険料が免除され、さらに育児休業給付金には所得税がかかりません(非課税)。この「手取り補正効果」があるため、月給35万円の人の場合、育休中の実質的な収入(給付金)は約234,500円となります。

 

本来の手取り(約29万円)との実質的な差額は「約55,000円」のマイナスにとどまる計算です。(※なお、住民税については免除されず後日支払う必要がありますが、育休期間中の収入が下がることで、翌年の住民税が安くなるメリットもあります)

 

したがって、額面のマイナス幅に比べて、実質的な手取りの減少は少ないというのが実態と言えます。実際にノルウェーの学術的な研究でも、男性の年間所得は2%ほどしか低下しないという結果が出ており、全体としては「収入減にはなるが、その差額はそれほど大きくはない」と言えるでしょう。

 

とめると、確かに男性育休というのは、家計の収入減になることは間違いないんですけども、その減少の幅というのは、おそらく一般の方が印象として持たれている減少幅よりも、 実態的にはかなり少ないのが実情であるということが私の考えになります。

男性育休は妻のキャリア継続と世帯年収の向上につながる?

質問

Q2.男性育休を取ることで、妻のキャリア継続や将来的な世帯年収に変化はありますか?

日本の女性雇用における大きな課題として、第1子出産のタイミングで正規雇用を離れ、復職や転職の際に非正規雇用へ移行してしまう「L字カーブ」問題があります。

 

女性の正規雇用率を年齢別でグラフにすると、20代後半から30代前半にかけてピークを迎えた後、出産・育児を機にグラフが右肩下がりに折れ曲がり、アルファベットの「L」の字のようになる現象です。

 

この最大の原因が、男性が育休を取らないことによる「女性側への育児の偏り」です。出産直後の最も過酷な時期に男性が育休を取得し、ワンオペ育児を防止できれば、母親の産後うつのリスクが下がるだけでなく、早期の職場復帰やキャリア継続への意欲維持に直結します。

 

これがもたらすメリットが「キャリアの複線化」です。夫婦双方が当初のキャリアを手放さずに継続できれば、世帯全体の収入基盤は圧倒的に安定します。

 

これを「投資対効果」の視点で考えてみてください。 夫が12ヶ月の育休を取得することで、短期的な手取りが数万〜数十万円減ったとしても、それによって妻が正社員としてのキャリアを継続できれば、将来的には数千万円規模の世帯生涯年収の差となって返ってきます。

 

つまり、男性育休は目先の支出ではなく、きわめてリターンの高い「長期の資産形成」であると言えるのです。

男性育休が働き方や社会にもたらす変化とは

男性育休は男女の賃金格差や育児負担の改善につながる?

質問

Q3.男性育休は、男女の賃金格差や女性に偏る育児負担の改善につながるのでしょうか?

大いにつながります。日本の男女間賃金格差を生んでいる大きな要因の一つが、「出産・育児期における女性のキャリア中断(チャイルド・ペナルティ)」と、それに伴う「女性管理職比率の低さ」です。

 

管理職になれば当然収入も上がりますが、女性がそのポジションに就きにくい現状が格差を生んでいます。男性育休によって女性のキャリア継続が可能になれば、将来的に上のポジションに就く女性が増え、結果として男女の賃金格差は縮小していきます。

 

また、男性育休は企業側に根強く残る「統計的差別」の解消にも有効です。 統計的差別とは、「女性はいずれ結婚や出産で退職したり、残業ができなくなったりするリスクがある」と企業側が過去の統計から見なしてしまい、優秀な女性であっても、若いうちから重要なポストや長期育成の対象から無意識に外してしまう傾向のことです。

 

「子どもが生まれれば、性別に関わらず誰もが育休を取り、一時的に戦力を外れるのが当たり前」という社会になれば、企業側が性別を理由に登用差別をする合理性は失われます。

 

2つ目の女性に偏る育児負担の改善というところで、育児をワンオペで担うということになりますと、女性だけに育児のノウハウ、負担もそうなんですけども、子どもとしても長く一緒にいた母親側に懐くといったことも含めて、出産直後でお子さんが小さいときに父親があまり育児に関わらないと、いつまでたっても女性側のワンオペの負担が大きくなってしまうんですね。

 

逆に男性が積極的に育児に関わっていれば女性側だけではなく、男性側にも育児スキルが徐々に身についていきますので、幼稚園や小学校における育児においても男性側が育児を担えるという効果も期待できます。

 

そういった意味では女性にかかる育児負担の改善につながるということが考えられるでしょう。

育休取得後の行動・意識面での工夫内容

また、内閣府の経済社会総合研究所が出している、「男性への育休取得が企業側にどのような影響を与えているのか」という論文によると、職場内で育休を取得した男性は取得していない男性と比較すると「限られた時間で成果を出す」といった主体的な働き方、すなわち仕事の効率化を意識して働いているといった改善が見られた点が報告されています。

 

あるいは、次のグラフのように男性の育休取得者は、育休を取得しなかった人に比べて、会社への帰属意識が強まる傾向があるという調査結果も報告されておりまして、男性育休を促進することでひいては転職・離職の防止であったりとか、カルチャーへのロイヤリティ、忠誠心が高まったりするという興味深い結果もでています。

育休取得者と非取得者のキャリアや働き方に関する考え方

男性育休の普及は少子化や日本経済にどのような影響を与える?

質問

Q4.男性育休の普及は、少子化や社会保障制度など、日本経済全体にどんな影響がありますか?

経済・社会全体への影響として最も大きいのは、「出生率の向上」、つまり少子化の歯止めです。

 

現在、日本は深刻な労働力不足に直面しており、今後50年間にわたってこの傾向が続くと予想されています。

 

この人口減少を食い止める鍵として、以下の厚生労働省の「21世紀成年者縦断調査」などのデータから明確になっているのが、「夫の休日の家事・育児時間が長い世帯ほど、第2子以降が誕生する割合が劇的に高くなる」という事実です。

 

1子が生まれたときに父親が全く家事・育児に関わらないと、母親は「1人でもこれだけ大変なのに、2人目なんて無理」と負担感から次の出産を諦めてしまいがちです。最初の段階で男性が育休を取り、育児のベースを共に築くことが、第2子以降の出生率の向上に直結します。

夫の休日の家事・育児時間別にみた第2子以降の出生割合

日本経済全体として考えても、女性が正社員としてキャリアを継続し、高い労働生産性を維持できれば、社会全体の労働力不足は大きく緩和されます。

 

世帯収入が増えることで国全体の消費活動が活発になり、GDP(国内総生産)の成長、つまり経済規模の拡大にプラスの影響を与えます。

 

さらに、共働き世帯が定着して日本の所得水準が上がれば、国に納められる所得税や社会保障費(健康保険料・年金など)の総額が増加します。これは、現代の大きな社会問題である社会保障制度の維持や、医療・介護崩壊の防止、ひいては医療・介護現場で働く方々の賃金引き上げのための財源確保にもつながるのです。

 

最後に、企業における人材確保定着や職場内雰囲気のポジティブな影響についてです。

 

こちらも以下の厚生労働省のデータの方を引用し紹介させていただきたいのですが、これは厚生労働省の「イクメンプロジェクト」というプロジェクトで行われた調査結果でして、男女の20代くらいの若年層にアンケート調査を実施しています。

 

結果としては、下記のスライドにあるように、「あなたはいずれ結婚するとしたら、どのようなハードルがあると思いますか?」という質問に対して、一番回答割合が多かったのが、一番左側の「結婚生活や出産育児のためのお金の問題」で53.9%でした。

結婚のハードル

その次に回答割合が多かった項目として、上記の赤枠で囲ませていただいた「結婚相手の働き方の問題」を挙げてる若い男女の方が多かったことがわかります。

 

そのため、いわゆるワークライフバランスがお金の問題に次いで多いということですので、上記のような若年層の意識の面からも、ブラックな働き方が少なくなったり、男性育休がより一般的に取得されたりすることで結婚へのハードルも下がり、晩婚化の問題も解消され、ひいては少子化問題に対しての解決施策にもなり得ることが考えられるというデータとなっております。

 

そして、企業における人材確保や定着への影響について、データとしましては以下の同じ厚生労働省のイクメンプロジェクトの別の調査の結果になりますが、これは企業に対して男性の育児休業取得率等の職場内での公表で、どのような影響があったかという効果や変化についての調査結果になります。

 

データでは、育休取得率を公表することによって職場内でポジティブな変化が現れたと回答する企業が約4割くらいあったこともわかっています。

 

あるいは企業内の男性の育児休業取得率向上の取り組みを行うことで、従業員の満足度(ワークエンゲージメント)ややりがいの向上も見られています。

男性の育休の公表による効果・変化

こちらも大体4〜5割近い回答の方がポジティブな結果が得られてるという回答が得られております。

 

そして就職活動の方に関しては、先ほどの厚生労働省の同じ意識調査ですが、実際に若年層の人に「就職活動で企業の育休取得を重視しますか」という質問に対し、男性で63.3%ですので、男女で見たら約7割近くが就職活動で「企業の育休取得情報を重視する」といった回答結果が得られております。

あるいは、実際に同じアンケート調査で、仮に「男性の育休取得の実績がない企業があったとして、あなたはその企業に就職したいと思いますか?」といった調査項目に関して、「育休取得実績がない企業には就職したくない」と答える人が、男女合わせて大体6割くらいいることなども報告されております。

 

以上のことを踏まえますと、大学の新卒市場も売り手市場というか、学生の方の確保に苦労している企業も増えつつありますので、そういった企業が優秀な人材を確保するという意味でも、男性育休を取得を促進する取り組みなどの情報の公開は、企業の採用活動の面においても、プラスの影響を与えると考えられるということになります。

「育休を取ると昇進に不利」は本当?企業に残る課題

質問

Q5.「育休を取ると昇進に不利になる」という不安は、今の日本企業でも実際にあるのでしょうか?

定量的な確定データとしてお示しするのは難しいのですが、結論から言えば、そうした見えないリスクや不安は現実の現場にいまだ存在していると考えられます。

 

法律(育児介護休業法)上は、育休取得を理由とする降格や減給などの不利益な扱いは厳しく禁止されています。しかし、問題は表面化しにくい「潜在的なパタハラ(パタニティハラスメント)」や職場に残る「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」です。

 

育休を取得した男性に対し、上司や周囲が明示的には言わなくとも、「この人は出世欲がないのではないか」「仕事より家庭を優先する人だ」と無意識に評価を下げてしまうケースです。その結果、職場復帰後に重要なプロジェクトやキャリアに直結する仕事を任されにくくなるといった、「見えない不利益」が生じる恐れがあります。

 

制度というハード面が整っても、職場の意識というソフト面の課題はまだ残されています。

男性育休を取得する前に知っておきたいポイント

鈴木准教授の画像

育休前に家計面で準備しておくべきこと

質問

Q6.育休取得前に、家計面で準備しておくべきことがあれば教えてください。

お金の面で特に注意すべきなのは、「育児休業給付金が口座に振り込まれるまでのタイムラグ」です。 育休を申請してから実際に給付金が支給されるまでには、会社の手続きを含めて通常2〜3ヶ月かかります。

 

つまり、その間は一時的に「口座に入ってくる現金がゼロ(または大幅減)」になる期間が発生します。このキャッシュフローのギャップを乗り切るための事前の貯蓄が必要です。

 

また、もう一つの盲点が「住民税」です。

 

育休期間中、所得税や社会保険料は免除(非課税)になりますが、住民税は「前年の所得」に対して課税されるため、育休中であっても免除されず、後日支払う必要があります。(ただし、育休によってその年の年間所得が下がれば、翌年の住民税負担が軽くなるというメリットはあります)

 

対策として、数週間から1ヶ月程度の短期の育休であれば、支給までのタイムラグを見越して「生活費の2〜3ヶ月分程度」の生活防衛資金(貯蓄)を事前に手元に用意しておくことをお勧めします。これさえ準備できていれば、家計への実質的なダメージはほとんどありません。

男性育休後、家事・育児分担や夫婦関係はどう変わる?

質問

Q7.男性育休を経験した家庭では、その後の家事・育児分担や夫婦関係に変化はありますか?

まず夫婦関係の安定、具体的には「離婚率の低下」に対して明確な効果が海外の研究から報告されています。

 

例えばアイスランドで男性の育休期間の延長や給付額の引き上げといった制度拡充が行われた際、制度変更前に子どもが生まれた夫婦の5年後の離婚率が23%だったのに対し、制度変更後に生まれた(=男性がより長く育休を取得した)夫婦の離婚率は17%にまで低下したという分析結果があります。

 

また、内閣府の経済社会総合研究所のデータでも、男性の育休取得日数が長いほど「夫婦関係満足度」が有意に高まることが示されています。

育休取得日数が夫婦関係満足度、追加出生率に与える影響のモデル

一方で、男性自身の意識については興味深いデータもあります。2020年の内閣府の国際意識調査データを用いた私の研究(20262月刊行)では、男性は育休期間が長期化するほど、「育児がストレス要因となり、育児負担感を強く抱く」という一面も見られました。慣れない育児に直面するわけですから、当然大変な部分もあります。

 

しかし同時に、その配偶者である女性側の意識を分析すると、「夫が育休を取得した家庭の女性は、育児肯定感(子育てをして良かったという意識)が有意に高まる」というポジティブな影響が確認されました。母親が一人で孤独に育児を抱え込むのではなく、父親と共に苦楽をシェアしながら育児を行うことで、自身の育児に対して前向きで安定した意識が形成されるのです。

海外の男性育休制度から日本が学べること

質問

Q8.海外では男性育休が進んでいますが、日本との違いはどこにあるのでしょうか?

こちらについても以下の厚生労働省の方が公表しているデータを紹介させていただきたいです。

諸外国の育児休業・育児休業給付制度

上記は日本、フランス、ドイツ、スウェーデンにおける男性育休(他にも育児、保育育児制度全般に関する項目も含む)に関する比較になるのですが、赤枠の部分が、男性の育児休業取得に関する制度の概要となっております。

 

もう一つのデータとしましては、国際連合の機関であるUNICEFが2021年に世界各国の育児休業制度についてランキング調査した結果となります。

諸外国の保育制度に関する評価

こちらでは、例えば日本ですと育児休業週数は1位なのですが、育児で保証される金額などの制度面では、実は調査対象である41カ国で一番高いことがわかります。

 

一方、保育アクセスや保育品質、保育価格になりますとランキングは平均以下になっている という特徴があります。

 

これらの2つの結果をまとめますと、今回フランスとスウェーデンを比較対象としてはますが、日本における制度の充実度は世界最高水準ではあるものの、男性の育児休業制度そのものを他の国と比べるとですね「使わなければ消滅する」といった強い強制力があるような制度設計がされていません。

 

そのため、実際に取得するかしないかは、職場の空気感や同調圧力が壁となり、男性育休の取得状況が海外の国より進んでいない状況があるのではないかと考えられます。

 

あわせて、日本に対して、フランスは法的に男性の育児休業の取得を義務化するような制度設計になっているのが、フランスの男性育休促進への取り組みということになります。フランスについては、子どもが1歳になるまでに給付を受けるためには、両親が交互に休業または労働時間の短縮を行うことが必要という制度設計になっています。

 

これはある意味、出産直後の一定期間、父親が育休取得をすることを法的に義務化する制度設計になっていると言えます。つまり、企業の業務都合や本人の配慮を物理的に排除して、強制的にその育児の基点を作ろうとしている、かつ取得の義務化をしている点が特徴です。

 

また、スウェーデンでは、所得比例給付のうち、90日分は他方に譲渡できない(クオータ制)という制度があります。そのため、この父親専用枠については父親が育休取得しなければその期間の育休枠や手当が消滅するという排他的なインセンティブを構築することによって、男性の育休枠を強制的に確保されるような制度設計になっています。

 

実際に、スウェーデンに関しては男性の育休取得は9割近い取得率が達成されています。このように、男性の育休枠を強制的に確保するような制度設計になっているのが日本との違いになります。

 

あわせて、2017年における内閣府の国際地域調査のほうで、私のほうが加工して作成したデータもございまして、男性側の育休の取得状況を日本、フランス、ドイツ、スウェーデンで比較した図になっています。

各国における育児休業取得状況

以下の図からわかるとおり、一番左側の男性育休を取得していないという割合が、日本では未だ8割くらいであるのに対して、その他の国で取得していない男性はほぼ半分くらいを下回っている。逆に言えば諸外国では半数以上の人がどこの国でも、育休を取得していますし、かつ取得期間についても長期に取得している点が日本との違いになります。

 

そして、補足資料としては以下の通り、「性別役割分業・育児に対する考え方の国際比較」という、内閣府の2020年の国際意識調査の結果の方から抜粋していただいていますが、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」だといった、伝統的な性別役割意識と呼ばれるものがございまして、この考え方が近いかどうかについてのデータになります。

結論としては、日本が最も割合的に「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方が多いという結果になっています。

 

右の図からも諸外国と比較すると、育児については「妻が行うべきもの」という考え方が日本では浸透していることがお分かりになるかと思います。

男性育休を「家計への投資」として考える

男性育休は少子化対策として本当に効果がある?

質問

Q9.男性育休は、本当に少子化対策として効果が期待できるのでしょうか?

期待できると思います。

 

先ほども触れた通り、厚生労働省のデータや海外の論文においても、「第1子出生時に父親が家事・育児に深く関わった夫婦ほど、第2子の出生確率が劇的に高くなる」という因果関係が実証されています。

 

日本の深刻な少子化の背景には、「子どもは2人以上欲しいけれど、ワンオペ育児の大変さや孤立感を考えると、とても育てられない」という母親側の心理的・身体的ブレーキがあります。

 

男性育休の取得は、そのブレーキを最も効果的に解除する施策です。父親が当事者として最初の育児に参加し、夫婦で「チーム育児」の体制をつくることこそが、未来のもう一人の子どもの誕生につながる強力な少子化施策になり得ます。

鈴木准教授から子育て世代へのメッセージ

質問

Q10.最後に、これから子育てを迎える世代へ、「男性育休を家計目線でどう考えるべきか」メッセージをお願いします。

私の結論としてお伝えしたいのは、「男性育休の取得は、人生における最高の『投資機会』である」ということです。

 

目先のことだけを考えると、「手取りが減る」「キャリアに響くかも」とマイナス面ばかりが気になってしまうかもしれません。しかし、それは誤解や一時的なタイムラグによる不安に過ぎません。解説した通り、給付金の非課税措置や社会保険料の免除により、実質的な手取りの約8割は維持されます。事前に数ヶ月分の生活防衛資金さえ準備しておけば、目先の家計リスクはほぼ完全にコントロール可能です。

 

その一方で、長期的なリターンは計り知れません。夫が最初の12ヶ月コミットして妻のワンオペを防ぐことで、妻のキャリア中断(L字カーブ)を防ぎ、正社員としての就業を継続させる。それによって得られる世帯の将来的な生涯年収の差は、数千万円規模のプラスになって返ってきます。これほど手堅く、高いリターンが見込める経済的投資は他にありません。

 

さらに、家族としてのメリットも絶大です。夫婦で共に過酷な時期を乗り越えることで、関係満足度は高まり、離婚リスクは低下し、第2子誕生という未来へのステップにもつながります。

 

職場の目や周囲への気兼ね、あるいは目先のわずかな減収を理由に育休を諦めてしまうのは、経済学的な視点から見ても非常に大きな「機会損失」です。日本の育休制度の手厚さは世界トップクラスです。ぜひ生活防衛資金をしっかり準備した上で、ご自身たちの長期的なキャリアと家族全体の豊かな未来のために、この「最高の投資機会」を積極的に活用してください。

相談満足度・相談実績について、最新数値はこちらのページをご確認ください。