学資保険の基礎知識
学資保険とは

学資保険とは、子どもの教育資金を計画的に準備するための保険です。
契約時に設定した保険金額に応じて保険料を払い込み、「祝い金」「満期保険金」として受け取ることができます。
保険金を受け取れるタイミングは商品によって異なりますが、主に以下の2種類に分かれます。
| タイプ | 特徴 |
| 祝い金タイプ | ・小学校・中学校・高校などの入学時に、一定額の祝い金を段階的に受け取れるタイプ ・教育費の支出が重なる時期に備えやすく、習い事や塾代などにも活用できる |
| 満期保険金タイプ | ・大学入学など教育費のピーク時に、満期保険金を一括で受け取るタイプ ・まとまった資金が必要なタイミングに合わせやすく、学費・入学金など大きな出費に対応できる |
学資保険は進学のタイミングに合わせて資金を受け取れるため、急な出費に備えやすい点が大きな特徴です。
また、学資保険は「積立型の保険」と誤解されることもありますが、実際には契約時に保険金額を設定し、その金額に応じて保険料が決まる仕組みになっています。
教育費は年々上昇傾向にあるため、早い段階から教育資金を準備することが望まれます。
子どもにかかる教育費の相場
必要な教育費は、進学先や通学形態によって大きく異なります。
学資保険が必要かどうかを判断するためにも、「どの時期にどれくらいの費用がかかるのか」を事前に把握しておきましょう。
下記の2つの観点から解説していきます。
- 幼稚園から高校進学までの教育費
- 大学進学に必要となる費用
幼稚園から高校進学までの教育費
文部科学省の「子供の学習費調査」(令和5年度)によると幼稚園から高校卒業までにかかる教育費は、公立と私立で3倍以上の差があることが分かります。
| 公立 | 私立 | |
| 幼稚園(3年間) | 532,117円 | 1,038,087円 |
| 小学校(6年間) | 2,197,261円 | 10,457,700円 |
| 中学校(3年間) | 1,626,133円 | 4,671,589円 |
| 高等学校(3年間) | 1,784,895円 | 3,521,361円 |
| 合計(3~18歳) | 6,140,406円 | 19,688,737円 |
公立に通った場合でも約570万円前後、すべて私立に進学した場合は1,800万円以上の教育費が必要となることが読み取れます。
教育費は幼児期から高校卒業までの15年間にわたり継続的に発生し、学年が上がるにつれて授業料や学校外活動費などの支出も増加していくのが特徴です。
大学進学に必要となる費用
大学進学にかかる費用は国立か私立や選択する学部よって変わります。
特に私立大学では、文系と理系で年間授業料に数十万円の差があり、医歯系学部ではさらに高額になるなど、その差は顕著です。
文部科学省の調査によると、入学から卒業までの総額は以下の通りです。
| 区分 | 入学金 | 授業料(年間) | 在学4年間の合計(概算) |
| 国立大学 | 282,000円 | 535,800円 | 2,425,200円 |
| 私立大学(文系) | 223,867円 | 827,135円 | 3,492,407円 |
| 私立大学(理系) | 234,756円 | 1,162,738円 | 4,885,708円 |
※出典:文部科学省「私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(令和5年度)」/「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(令和6年度)」
大学進学は教育費の中でも特に負担が大きいため、早めに学費と生活費の両方を見据えた資金計画を立てておきましょう。
学資保険のメリット・デメリット
学資保険は、教育資金を計画的に準備できる点に加え、親に万一のことがあっても教育費を確保できる保険です。
一方で、途中解約による元本割れやインフレによる実質的な価値の低下など、注意すべきリスクもあります。
学資保険のメリットとデメリットを解説していきます。
学資保険のメリット
- 親に万が一のことがあっても教育資金を確保できる
- 計画的に教育資金を準備できる
- 生命保険料控除の対象
親に万が一のことがあっても教育資金を確保できる

学資保険の最大の特徴は、契約者である親に万が一のことがあっても、教育資金を準備しやすい点です。
預金で教育費を積み立てている場合、親の死亡や病気などで収入が途絶えると貯蓄が継続できず、進学資金が不足する可能性があります。
学資保険には多くの場合、次のような保障が備わっています。
| 保障種類 | 特徴 |
| 保険料払込 免除特約 |
・契約者が亡くなったり高度障害状態になった場合、以後の保険料支払いが免除される ・契約時に設定した満期保険金や祝い金は予定どおり支払われるため、教育資金を安定的に準備しやすい仕組み |
| 育英年金 | ・契約者が亡くなった際に、毎年一定額の年金を受け取れる |
学資保険は貯蓄と保障の両面を兼ね備えた仕組みであり、教育費を計画的に準備したい家庭に適しています。
計画的に教育資金を準備できる

学資保険は、教育費を計画的かつ着実に積み立てられる保険です。
無理のないペースで教育資金を形成できるよう、保険料が自動で引き落とされ、自然と貯蓄が進む仕組みになっています。
学資保険の特徴は、次の2つに集約されます。
| 特徴 | 詳細 |
| ①貯蓄の強制力による確実な積立 | ・指定口座から自動で引き落とされ、意識せずに積立が継続可能 ・銀行預金のように自由に引き出せないため、一定の強制力が働き、他の支出に使ってしまう心配が少ない |
| ②銀行預金を上回る効率的な資産形成 | ・支払った保険料は保険会社の予定利率に基づいて運用され、満期時には払込総額を上回る場合もある ・普通預金金利(0.001〜0.002%程度)と比較し、効率的な教育資金形成が期待できる |
学資保険は計画的に教育資金を積み立てられる仕組みとして優れており、貯蓄の強制力と効率的な資産形成の両面から、将来の教育費を安定的に準備できることが期待されます。
生命保険料控除の対象

学資保険は、生命保険料控除の対象となる保険のひとつです。
生命保険料控除とは、1年間に支払った保険料に応じて所得から一定額を差し引くことで、結果として所得税や住民税の負担を軽くできる制度です。
年末調整や確定申告の際に学資保険料を申告すると、所得税では最大4万円、住民税では最大2万8,000円までの控除を受けられます。
例えば、年間で60万円の学資保険料を支払っている場合、税率を所得税・住民税ともに10%とした場合、所得税では「4万円×10%=4,000円」、住民税では「2万8,000円×10%=2,800円」が軽減される計算になります。
学資保険を活用することで、教育資金を準備しながら税制上の優遇を受けられる可能性があります。
ただし、控除の対象や控除額は契約内容や加入時期、所得状況、扶養親族の有無などによって異なるため、具体的な条件を確認したうえで手続きを行うことが重要です。
学資保険のデメリット
- お金の流動性が低い
- インフレリスク
- 元本割れリスク
- 保険会社が経営破綻した際に、全額が補償されない
お金の流動性が低い
学資保険は、原則として満期を迎えるまで保険金を受け取ることができず、長期間にわたって資金が拘束されます。
例えば保険期間が18年であれば、その間は自由に引き出すことが難しく、途中で資金が必要になってもすぐに対応できません。
資金を引き出す場合の選択肢に下記の2点が挙げられます。
| 方法 | 内容 | 注意点 |
| 途中解約 | 契約を途中で終了して解約返戻金を受け取る | 多くの場合、支払済み保険料を下回る「元本割れ」を引き起こす |
| 契約者貸付制度 | 保険会社から積立金の範囲内でお金を借りる | 利息が発生 |
学資保険は満期まで資金が拘束されるうえ、途中で解約すると元本割れのリスクが高くなります。
また、契約者貸付制度を利用する場合も利息の負担が生じるため、換金性や流動性の面では他の金融商品に比べて不利といえます。
学資保険は長期的に教育資金を積み立てる手段としては有効ですが、短期間で資金を動かす予定がある場合は、預金や投資信託など流動性の高い方法を併用することがおすすめです。
インフレリスク

インフレによって実質的なお金の価値が下がるリスクがあります。
インフレが進むと、同じ金額でも購入できる商品やサービスの量が減り、結果的に教育費としての実質的な価値が目減りしてしまいます。
例えば、契約時に大学入学時の費用を300万円と想定していた場合、物価上昇率が年2%ずつ続くと、18年後には実質的に約1.5倍の費用(約450万円)が必要になる計算になります。
しかし、学資保険の満期保険金額は契約時に固定されているため、インフレが進んでも受け取れる金額は変わりません。
その結果、将来の教育費が想定より高くなった場合、準備した資金だけでは不足する可能性があります。
学資保険は、教育費を計画的に積み立てる点では有効ですが、インフレリスクに完全に対応できる保険商品ではありません。
インフレによる教育費の上昇リスクに備えるためにも、学資保険に加えて他の方法でも資金を準備する意識を持つことが重要です。
元本割れリスク

学資保険には、元本割れのリスクがある点を理解しておきましょう。
元本割れとは、支払った保険料の総額よりも、受け取る満期保険金や祝い金の総額が少なくなることを指します。
契約を途中で解約した場合、解約返戻金が支払済み保険料を下回るケースが多く見られます。
これは、契約初期に保険会社の事務手数料や保障部分のコストが多く差し引かれるためです。特に加入から数年以内の解約では、積立部分が十分に形成されていないため、返戻金が少なくなりやすいといわれています。
学資保険は長期契約を前提とした商品であるため、短期で解約する予定がある場合や流動性を重視したい場合は慎重に検討することが重要です。
保険会社が経営破綻んした際に、全額が補償されない
保険会社が経営破綻した場合、契約している学資保険の保障や積立金がそのままの金額で受け取れなくなる可能性があります。
ただし、契約者を保護するために「生命保険契約者保護機構」による救済制度が設けられています。
この制度により、破綻した保険会社の契約は他社に引き継がれ、*責任準備金の90%までが保護されます。
全額補償ではないため、契約前に保険会社の財務体質や格付けの状況を確認しておくことが大切です。
万が一、保険会社が経営破綻した場合には、契約している学資保険の保障や積立金を契約時の金額で受け取れなくなる可能性があります。
責任準備金:保険会社が将来の保険金・給付金などの支払いに備え、保険業法に基づき積み立てることを義務付けられた準備金
学資保険の必要性

教育費は、子どもの成長に伴って大きく増えていく支出の一つです。
特に大学進学を見据えると、数百万円単位の資金を長期間にわたって準備する必要があります。
学資保険は、そうした教育資金を確実に積み立てながら、親に万一のことがあっても進学資金を守れる仕組みを備えています。
学資保険をおすすめできる人とおすすめできない人の特徴を整理していきます。
学資保険をおすすめできる人
- 万一に備えながら貯蓄をしたい人
- 十分な教育資金が準備できていない家庭
万一に備えながら貯蓄をしたい人
学資保険は、貯蓄と保障を一体化している点が特徴です。
契約者に万一のことがあった場合、その後の保険料支払いが免除される「払込免除特約」が適用され、満期時には予定どおり保険金を受け取ることができます。
親の死亡や高度障害などの不測の事態でも教育資金が確保されるため、家計の安定を保ちながら子どもの将来を支えられるのが魅力です。
十分な教育資金が準備できていない家庭
現時点で教育資金の貯蓄が不十分な家庭や、計画的な貯蓄に苦手意識を持つ家庭にとって、学資保険は有効な解決策となります。
一定額が自動で引き落とされる「半強制的な貯蓄」の仕組みにより、他の用途に資金を使ってしまうリスクを防ぎ、意識せずとも安定的に教育資金を形成できます。
また、契約時に将来の満期保険金や祝い金の受取時期・金額が明確に定められるため、将来の教育費に対する不安を軽減し、資金計画の見通しを立てやすくなるでしょう。
貯蓄習慣を無理なく身につけたい家庭は、学資保険を選択肢の一つとして考えてみましょう。
学資保険をおすすめできない人
- 教育資金の準備が整っている家庭
- 預金や投資などを活用して、自主的に資産を増やしたい家庭
教育資金の準備が整っている家庭
すでに教育費を十分に確保している家庭にとって、学資保険の優先度は高くありません。
学資保険は長期間にわたり資金が拘束されるため、預貯金や投資などで教育費を確保できている場合、利便性や柔軟性の面で不利になることがあります。
資金計画が安定している場合は、学資保険にこだわらず、運用益を高める方法や資産全体のバランスを最適化することがおすすめです。
預金や投資などを活用して、自主的に資産を増やしたい家庭
預金や投資を通じて、自主的に資産形成を進めたい家庭の場合、学資保険が最適な手段とは限りません。
学資保険は満期まで資金を引き出しにくく、返戻率も契約時に固定されるため、市場の成長を取り込みにくい特徴があります。
一方、投資信託やつみたてNISAなどを活用すれば、経済状況に応じて資産を動かし、運用成果を教育資金に充てることも可能です。
投資リスクを理解したうえで主体的に資産形成を進めたい家庭は、学資保険に限定せず柔軟な運用方法を視野に入れてみましょう。
学資保険の選び方

学資保険を選ぶ際は加入目的・返戻率・保険料・払込期間・受取時期などを総合的に確認しましょう。
学資保険を選ぶ際の具体的なポイントを解説していきます。
学資保険に加入する目的を明確化
学資保険に加入する前に、自身がどのような目的で利用したいのかを整理しましょう。
加入目的は主に次の2つに分けられます。
- 教育費の準備
- 教育費準備+保障
貯蓄を重視する場合は返戻率の高いタイプを、保障も確保したい場合は医療保障や払込免除特約付きのタイプを検討するのが一般的です。
加入目的を明確にすることで、将来設計に合った学資保険を選びやすくなります。
返戻率が高い商品を選ぶ

学資保険を比較する際は、返戻率の高さを重視しましょう。
返戻率とは、支払った保険料総額に対してどれだけ多くの保険金を受け取れるかを示す数値で、学資保険の「貯蓄効率」を測る目安となります。
▽返戻率の計算方法
返戻率が100%を超えれば支払額より多くの保険金を受け取れますが、100%未満の際、元本を下回ります。
例えば、返戻率が120%の場合、支払総額100万円に対して120万円の保険金を受け取れます。一方、返戻率が90%の場合は90万円しか戻らない計算になります。
現在の返戻率の相場は103〜120%程度です。保険会社ごとの予定利率(運用利率)や契約内容(契約者や被保険者の年齢性別、支払い方法、払込期間など)によって異なります。
複数の商品を比較し、返戻率が高いプランを選ぶことで、より効率的に教育資金を準備できるでしょう。
▽返戻率を高める方法(参考)
- 加入時期を早める
- 給付回数を減らす
- 不要な特約を付けない
- 払込期間を短くする
保険料や払込期間を確認する
学資保険を選ぶ際は、保険料の支払方法や払込期間を柔軟に設定できる商品を選ぶことが大切です。
家計への負担やライフステージを踏まえ、無理なく支払いを継続できるプランを検討しましょう。
主な支払い方法は次のとおりです。
| 支払い方法 | 特徴 |
| 月払い | 家計管理がしやすく、最も一般的な支払い方法 |
| 半年払い | 支払回数を減らすことで、手数料を抑えやすい |
| 年払い | 一括で支払うため、返戻率がわずかに上がる傾向 |
| 全期前納払い | ・契約時に払込期間分を全額前払いするため返戻率を高めやすい ・保険料払込期間中は生命保険料控除が適用される |
| 一括払い | ・契約時に一括支払いし返戻率をさらに高めることができる ・生命保険料控除は払った年のみ適用される |
早めに支払いを完了させることで、総支払額を抑えつつ返戻率を高める効果も期待できます。
ただし、短期間での払い込みは家計への負担が大きくなるため、生活に無理のない範囲で設計することが重要です。
払込期間や方法をバランスよく調整し、自分に合った支払いプランを選択しましょう。
満期保険金を受け取る時期を決める
学資保険では、保険金を受け取るタイミングを事前に設定できます。
主に次の2つの受け取り方法があります。
- 幼稚園や小学校・中学校など、進学のたびに「お祝い金」として段階的に受け取る
- 大学入学時や卒業時など、まとまった金額を「満期保険金」として一括で受け取る
受取時期の設定を誤ると、必要なタイミングで資金を使えない可能性があるため、進学スケジュールを意識して選択することが大切です。
満期年齢は17歳・18歳・20歳などから選ぶのが一般的で、受取日は契約日(契約応答月)と子どもの年齢によって決まります。
また、多くの商品では満期を遅らせるほど返戻率が高くなる傾向があるため、教育費の使い道と運用効率の両面から、最適な受取時期を見極めましょう。









