「老後破産」とは、年金収入や貯蓄では生活費・医療費・介護費などを賄えず、経済的に困窮して生活が破綻してしまう状態を指します。
そして、「老後破産」の割合について、個人破産・生活保護・貯蓄ゼロという複数の指標から、老後の経済困窮の実態を明かしていく必要があります。
そこでこの記事では以下の点を、公的統計・調査データをもとに解説します。
- 「老後破産」という統計カテゴリが存在しない理由と、代わりに使えるデータ
- 個人破産における60歳以上の割合(日弁連2023年調査)
- 老後の月間収支不足額と30年累計の試算値
- 50代の貯蓄ゼロ問題が老後破産リスクに直結する構造
- リスクを減らすための具体的な3つの対策
数値を正確に把握したうえで、自分の状況を客観的に判断してみましょう。
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貯金が不足する老齢世代の実態とは
総務省の家計調査(2024年)によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では毎月34,059円の収支不足が生じています。
金利ゼロ・物価変動なしの単純試算でも、30年後には累計1,226万円の不足額になります(試算)。
一方で、J-FLEC(金融経済教育推進機構)の調査(2024年)では、50代の二人以上世帯のうち29.2%が金融資産ゼロと回答しています。
老後を目前にした10人に3人が、貯蓄を持たない状態にあるということです。
老後破産する人の割合はどのくらいか
「老後破産」という言葉は広く使われていますが、政府統計にこの名称の分類は存在せず、「老後破産率○%」という形で一つの数字を示すことはできません。
代わりに、老後の経済困窮を示す複数の公的データを組み合わせることで、実態に近い数値がわかります。
そこで本記事では、以下の4つの指標を使用します。
- 月間収支の赤字(家計調査)
- 貯蓄ゼロ世帯の割合(J-FLEC世論調査)
- 生活保護受給者に占める高齢者世帯の割合(厚労省調査)
- 個人破産における高齢者の割合(日弁連調査)
これらを組み合わせることで、老後の経済困窮が「どの程度の規模で」「どの段階まで進んでいるか」を把握できます。
老後破産に至る4つの段階とは
老後の経済困窮は、ある日突然破産するのではなく、段階的に進行します。以下の表は、困窮の深刻度を段階別に整理したものです。
|
段階 |
状態 |
指標値 |
出典 |
|---|---|---|---|
|
段階1 |
毎月赤字(65歳以上夫婦のみ無職) |
月▲34,059円 |
総務省家計調査2024年 |
|
段階2 |
貯蓄ゼロ(50代二人以上世帯) |
29.2% |
J-FLEC 2024年 |
|
段階3 |
生活保護(高齢者世帯割合) |
55.3% |
厚労省令和5年度被保護者調査 |
|
段階4 |
個人破産(60歳以上の割合) |
28.6%(推計) |
日弁連2023年調査 n=1,233 |
※各は「経済困窮の段階的深刻化」を示す概念整理であり、各指標は独立した調査に基づくものです。段階間の直接的な因果関係を示すものではありません。
注目すべき点として、段階3の「生活保護受給者に占める高齢者世帯の割合55.3%」は、生活保護というセーフティネットの利用者の過半数がすでに高齢世帯であることを示しています。
そして、65歳以上人口に対する生活保護受給率は約2.7%と推計されます(厚労省被保護者調査×総務省人口推計より推計)。
段階2については、老後を目前にした50代でこそ貯蓄ゼロ率が最高値を示している点が構造的問題として重要です。
老後の収支不足額と30年の累計試算
老後の収支不足は、家計調査の最新データから具体的な金額として把握できます。
老後破産を避けるためにも、データを基に今のうちからできることをFPなどに相談しておくことが必要となります。
月間収支データ(2024年)
世帯類別に月間収支データをまとめたのが以下の表となります。
|
世帯類型 |
実収入/月 |
可処分所得/月 |
消費支出/月 |
月間不足額 |
|---|---|---|---|---|
|
65歳以上夫婦のみ無職 |
252,818円 |
222,462円 |
256,521円 |
34,059円 |
|
65歳以上単身無職 |
134,116円 |
121,469円 |
149,286円 |
27,817円 |
※出典:総務省「家計調査報告(家計収支編)2024年」
夫婦世帯・単身世帯ともに可処分所得(手取り収入)が消費支出を下回っており、資産の取り崩しを前提とした家計構造になっています。
また、夫婦の月間不足額34,059円は年間で約40.9万円に相当します(試算)。
累計試算(名目値・金利ゼロ・物価変動なし)
上記の月間不足額をもとに、10年・20年・30年の累計不足額を単純試算しました。
|
世帯類型 |
年間不足額 |
10年累計 |
20年累計 |
30年累計 |
|---|---|---|---|---|
|
夫婦 |
約40.9万円(試算) |
約408.7万円(試算) |
約817.4万円(試算) |
約1,226.1万円(試算) |
|
単身 |
約33.4万円(試算) |
約334.0万円(試算) |
約668.0万円(試算) |
約1,002.0万円(試算) |
※名目値・金利ゼロ・物価変動なしの単純試算。インフレ・医療費の増加・介護費用等は含みません。実際の不足額はこれを上回る可能性があります。
この試算は「年金だけで生活する場合に必要な取り崩し額の下限」と位置づけられます。
夫婦で30年の老後を迎えるなら、最低でも1,226万円相当の金融資産を65歳時点で保有していなければ、資産は枯渇する計算となってしまいます(試算)。
老後世代(60代・70代)の個人破産割合
個人破産の実態を年代別に把握できるデータとして、日弁連(日本弁護士連合会)の2023年調査(n=1,233)があります。
|
年代 |
割合(%) |
|---|---|
|
20代 |
11.52 |
|
30代 |
14.84 |
|
40代 |
19.22 |
|
50代 |
25.63 |
|
60代 |
16.71 |
|
70代以上 |
11.84 |
|
60歳以上合計 |
28.55 |
出典:日本弁護士連合会「破産事件及び個人再生事件記録調査(2023年)」n=1,233 ※サンプル調査であり、全国の個人破産件数を母数とした割合ではありません。傾向の把握に活用するデータです。
注目すべき点として、個人破産は50代が全体の25.6%と最多ですが、60歳以上を合計すると28.6%に達します。
個人破産申立件数の約3割が60歳以上の高齢者によるものという推計になります(サンプル調査に基づく推計)。
また、70代以上でも11.8%を占めている点も重要です。年金受給が始まっていても破産に至るケースが一定数あることを意味しており、収入さえあれば破産しないという単純な構図ではないことが分かります。
高齢期に増加する医療費・介護費・住宅修繕費等の非定常的な支出が、収支バランスを崩す要因として指摘されています。
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老後前夜(50代)の貯蓄ゼロ問題
50代の個人破産割合が最多であることに加え、貯蓄の保有状況でも50代は警戒すべきデータが出ています。
年代別・金融資産非保有率(二人以上世帯)
50代の個人破産割合が最多であることに加え、貯蓄の保有状況でも50代は警戒すべきデータが出ています。
|
年代 |
金融資産非保有率(%) |
|---|---|
|
20代 |
22.8 |
|
30代 |
24.5 |
|
40代 |
25.7 |
|
50代 |
29.2 |
|
60代 |
20.5 |
|
70代 |
20.8 |
|
全体 |
24.0 |
出典:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)2024年」 ※金融資産=運用・将来に備えて蓄えている部分(日常的な出し入れ用預貯金は除く)
50代の金融資産非保有率は29.2%と全年代で最も高く、全体平均の24.0%を5.2ポイント上回っています。「老後直前であるにもかかわらず、最も貯蓄を持っていない年代」という状況であることがわかります。
一方で、60代・70代でこの数値が下がる(20.5%・20.8%)のは、50代のうちに資産を確保した層が60代に移行しているためと考えられます。
逆に、50代時点で貯蓄ゼロの層の一部は、老後に入ってから生活保護や個人破産に至っている可能性があるのです。
50代という時期は、子育てが一段落する一方で住宅ローン残債・親の介護費用・教育費の後払いなどが重なる時期でもあります。収入のピークを迎えながらも支出も最大化しやすく、貯蓄が積み上がらない構造的な問題があります。
老後破産リスクを減らす3つの対策
データが示すリスクは明確ですが、これらはあくまでも平均・集計値であり、個人の行動次第でリスクを大きく変えられます。ここでは、根拠のある3つの対策を解説します。
公的年金の受給額を正確に把握しつつ最適化する
老後の収支計算にて最初にやることは、自分が受け取れる年金額を正確に把握することです。
ねんきんネット(日本年金機構)では、個人の年金見込み額を50歳以降はシミュレーションで確認できます。
そして、受給開始を65歳から70歳に繰り下げると、年金額が42%増額されます(月0.7%増×60か月)。
繰り下げが可能であれば、毎月の受給額が増加することで月間収支の不足額を圧縮できます。
ただし、繰り下げが有利かどうかは健康状態・資産状況によって異なるため、個人の状況に応じた判断が必要です。
50代からでも資産形成を始める
上記の貯蓄ゼロのデータが示すとおり、50代が最もリスクの高い時期です。
50代からの資産形成は「遅い」のではなく、「今が最後のタイミング」と認識することが重要です。
たとえば、50歳から65歳までの15年間、毎月3万円を年利3%で積み立てた場合、元本540万円に対して総額は約700万円程度になります(試算・複利計算)。
インデックス型の投資信託を活用した長期・分散・積立の方針が、リスクを抑えながら資産を形成する基本的な手法です。
企業型DC・iDeCoを活用して税負担を軽減する
確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)は、掛金が全額所得控除の対象になるため、現役期間中の税負担を軽減しながら老後資金を積み立てられます。
年収500万円の会社員がiDeCoで月額23,000円を拠出した場合、年間約55,000円程度の税負担軽減効果が生じる試算ができます(試算・税率等は個人によって異なります)。
iDeCoの加入可能年齢は2024年の法改正により65歳未満まで拡大されており、50代からでも十分に活用できる制度です。
企業型DCが用意されていない場合はiDeCo、用意されている場合は拠出上限まで活用することを優先的に検討するとよいでしょう。
老後破産する人の割合は何%なのかや貯蓄ゼロ・生活保護・破産の実態データまとめ
- 「老後破産」という公式統計分類は現時点では存在しない。実態把握には複数指標の組み合わせが必要
- 65歳以上夫婦のみ無職世帯の月間収支不足は34,059円(総務省家計調査2024年)。30年累計で約1,226万円の取り崩しが必要(試算・名目値・金利ゼロ)
- 個人破産における60歳以上の割合は合計28.6%(日弁連2023年調査・n=1,233のサンプル調査に基づく推計)
- 50代の金融資産非保有率は29.2%と全年代最高。老後直前に最も貯蓄がない年代(J-FLEC 2024年)
- 生活保護受給者に占める高齢者世帯の割合は55.3%(厚労省令和5年度被保護者調査)
- リスク軽減の3つの軸は「年金額の正確な把握と最適化」「50代からの資産形成の加速」「企業型DC・iDeCoによる税負担軽減」
※本データの元となるローデータは以下のボタンから無料でダウンロードができます。
データ出典・推計方法
データ出典・推計方法は以下のとおりです。
|
項目 |
出典 |
備考 |
|---|---|---|
|
月間収支不足額(夫婦・単身) |
総務省「家計調査報告(家計収支編)2024年」 |
実数値 |
|
累計試算 |
上記家計調査の月間不足額をもとに試算 |
名目値・金利ゼロ・物価変動なしの単純試算 |
|
金融資産非保有率(年代別) |
J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)2024年」 |
実数値 |
|
生活保護・高齢者世帯割合 |
厚労省「令和5年度被保護者調査(年次)」 |
実数値 |
|
65歳以上推計受給率(約2.7%) |
厚労省被保護者調査×総務省人口推計より推計 |
推計値。確定数値ではない |
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個人破産 年代別割合 |
日弁連「破産事件及び個人再生事件記録調査(2023年)」n=1,233 |
サンプル調査。全数把握ではない |
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iDeCo税負担軽減試算 |
社会保険料・税率等をもとに概算試算 |
個人の収入・控除状況により異なる |
推計方法(65歳以上受給率):厚労省「令和5年度被保護者調査(年次)」の高齢者世帯数および総務省「人口推計(令和5年)」の65歳以上人口をもとに算出した推計値です。保護停止世帯等を含まないため過小推計の可能性があります。
本データはマネーキャリアが公的統計データをもとにAI(Claude)を用いて計算・推計したオリジナルデータです。最終更新:2026年5月 | マネーキャリア編集部
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