「医療費が10万円を少し超えた程度だけど、確定申告をする意味はあるのかな?」
「11万円や12万円の医療費だと、具体的にいくら戻ってくるの?」
と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
- 医療費控除は、たとえ10万円をわずかに超えただけでも、所得税の還付だけでなく翌年の住民税も軽減されるため、申告する価値は十分にあります。
今回は、医療費控除でいくら戻るかのシミュレーションや、控除額を最大化するコツなどを解説します。
内容をまとめると
- 10万円を少し超えただけでも、所得税と住民税を合わせれば数千円程度の負担軽減効果が得られる。
- 家族の医療費合算や通院の交通費計上など、漏れなく申告することで控除額を大きくでき、家計の足しになる。
- 医療費の負担が毎年重い場合は、控除だけでなく保険の見直しや資産運用など、FPへの相談を通じて抜本的な家計改善を図るのが近道。
この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 「10万円ちょっとだと意味ない」は誤解!医療費控除の基本
- 住民税を含めれば数千円から1万円以上の負担軽減に
- 総所得200万円未満なら10万円以下でも対象になる
- 申請の手間と軽減額が見合う損益分岐点の考え方
- 【早見表】医療費が11万〜20万円だといくら戻る?
- 医療費控除額を算出するための基本計算式
- 所得金額別に見る11万~20万円の還付・軽減額一覧表
- 実際にいくら負担軽減される?会社員のシミュレーション例
- ふるさと納税や住宅ローン控除と併用する場合の注意点
- 10万円ギリギリの人が医療費控除額を最大化するための対策
- 生計を一にする別居家族の医療費もすべて合算する
- 通院にかかった電車代やバス代などの交通費を計上する
- 治療目的で購入したドラッグストアの市販薬も含める
- 対象外となる費用や予防目的の出費を把握する
- セルフメディケーション税制とどちらが有利か比較する
- 確定申告の手間を最小限に抑えてスムーズに申請するコツ
- スマートフォンとマイナンバーカードを活用したe-Tax申告の流れ
- 領収書の提出は不要で5年間の自宅保管のみで完結
- 申告を忘れていた過去5年分の医療費もさかのぼって申請可能
- 毎年の医療費が負担に感じるなら家計と保険の抜本的見直しを
- 高額療養費制度を活用して自己負担の上限を把握する
- 医療保険の保障内容が現在のライフステージに合っているか確認する
- 浮いたお金は長期・積立・分散を意識した資産形成に回す
- 医療費や家計の悩みは無料でプロに相談しよう
- 医療費控除は10万円ちょっとだと意味ないかどうかのまとめ
「10万円ちょっとだと意味ない」は誤解!医療費控除の基本
医療費控除は、支払った医療費が10万円を少し超えただけでも申告する価値は十分にあります。
所得税の還付にばかり目が行きがちですが、翌年度の住民税の負担軽減という大きなメリットがあります。
ここでは、なぜ10万円ちょっとでも意味があるのか、その具体的な理由と対象となる条件をみていきましょう。
住民税を含めれば数千円から1万円以上の負担軽減に
医療費控除は、所得税だけでなく翌年の住民税も軽減されます。
所得税は課税所得に応じた税率(5%〜45%)で還付されますが、住民税の所得割は、所得にかかわらず一律10%の税率で翌年の負担額が計算されます。
例えば、控除額が5万円の場合、所得税の還付が2,500円(税率5%の場合)でも、住民税は5,000円軽減されるため、トータルの負担軽減額は7,500円に達する計算です。
※あくまで簡易的な試算です。
総所得200万円未満なら10万円以下でも対象になる
医療費控除の足切り額は必ずしも10万円ではなく、総所得金額等が200万円未満の場合は総所得の5%が基準となります。
例えば、その年の総所得が150万円であった場合、足切り額は7万5,000円となり、10万円に満たなくても申告対象です。
産休・育休中で収入が減少した年や、パートタイム勤務で給与収入が少ない方は、10万円の基準にとらわれず、自身の総所得額を正確に把握して計算することが重要です。
申請の手間と軽減額が見合う損益分岐点の考え方
医療費控除の申告に迷う場合、手元に戻る金額と作業時間を比較した「時給換算」を損益分岐点の目安としましょう。
スマートフォンを利用したe-Taxの普及により、明細作成から送信まで1〜2時間程度で完了しやすくなっています。
仮に作業時間が2時間でトータルの税負担軽減額が6,000円であった場合、時給換算で3,000円の価値を生む計算となり、十分に手間以上の見返りを得られる可能性があります。
【早見表】医療費が11万〜20万円だといくら戻る?
医療費控除によって戻ってくる金額(負担が軽減される金額)は、支払った医療費の総額とご自身の課税所得によって大きく変動します。
ここでは、次のポイントに沿って具体的な計算方法と早見表を紹介します。
- 基本的な計算式の仕組み
- 医療費・所得別の還付・軽減額の一覧
- 会社員をモデルにした具体例
- 他の控除制度と併用する際の注意点
ご自身の状況と照らし合わせて、どの程度のメリットがあるのかを順番に確認してください。
医療費控除額を算出するための基本計算式
医療費控除額は、次の計算式で算出します。
実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額-10万円
この計算式で出た金額がそのまま戻ってくるわけではなく、算出した控除額に自身の所得税率を掛けた金額が所得税から還付されます。
また、総所得金額が200万円未満の場合は、マイナスする金額が「10万円」ではなく「総所得金額の5%」に置き換わる点に注意して正しく計算を進めてください。
所得金額別に見る11万~20万円の還付・軽減額一覧表
医療費の負担額と課税所得の組み合わせによって、所得税と住民税を合わせたトータルの負担軽減額は次のように変動します。
復興特別所得税を考慮しない簡易的な目安として確認してください。
| 支払った医療費の総額 | 医療費控除の対象額 | 戻る金額の目安(合計) |
|---|---|---|
| 11万円 | 1万円 | 1,500円 |
| 12万円 | 2万円 | 3,000円 |
| 15万円 | 5万円 | 7,500円 |
| 20万円 | 10万円 | 1万5,000円 |
| 支払った医療費の総額 | 医療費控除の対象額 | 戻る金額の目安(合計) |
|---|---|---|
| 11万円 | 1万円 | 2,000円 |
| 12万円 | 2万円 | 4,000円 |
| 15万円 | 5万円 | 1万円 |
| 20万円 | 10万円 | 2万円 |
実際にいくら負担軽減される?会社員のシミュレーション例
年収500万円(課税所得が約200万円と仮定)の一般的な会社員が年間12万円の医療費を支払った場合、返ってくる金額はトータルで4,000円です。
内訳としては、医療費控除額2万円に対して所得税率10%を掛けた2,000円が指定口座に還付されます。
さらに、住民税率10%を掛けた2,000円が翌年の住民税から差し引かれます。
ふるさと納税や住宅ローン控除と併用する場合の注意点
医療費控除を申告する際は、ふるさと納税の「ワンストップ特例制度」が無効になる点は押さえておきましょう。
確定申告を行うと、ワンストップ特例の適用が無効となるため、確定申告書を作成する際にふるさと納税の寄付金額も改めて入力し直さなければなりません。
住宅ローン控除についても、初年度は併用申告が必要ですが、2年目以降で年末調整が済んでいる場合でも、医療費控除による課税所得の変動には注意が必要です。
10万円ギリギリの人が医療費控除額を最大化するための対策
医療費が10万円ギリギリの場合、少しでも申告対象となる費用を漏れなく合算することが、所得控除による負担軽減効果を最大化するための重要なポイントとなります。
多くの方が見落としがちな対象費用や、家族間で合算する際のルールについて解説します。
それぞれの項目を確認し、ご自身の支払いに申告漏れがないかチェックしてください。
生計を一にする別居家族の医療費もすべて合算する
医療費控除は本人だけでなく「生計を一にする」配偶者やその他の親族のために支払った医療費もすべて合算して申告することが可能です。
同居していなくても、仕送りをして生活費を共有している一人暮らしの大学生の子どもや、地方に住む両親の医療費も対象に含められます。
共働き夫婦の場合、適用される所得税率が高い(収入が多い)方がまとめて申告したほうが、家計全体での税制メリットは大きくなります。
通院にかかった電車代やバス代などの交通費を計上する
通院のために公共交通機関を利用した際の電車代やバス代も、医療費控除の対象として計上することが認められています。
ICカードでの支払いや券売機での購入など、領収書が出ないケースであっても、利用した日付や区間、運賃をノートやエクセルなどにメモしておけば正式な記録として認められます。
ただし、自家用車で通院した際のガソリン代や駐車場の料金は、医療費控除の対象外となるため混同しないように注意が必要です。
治療目的で購入したドラッグストアの市販薬も含める
病院の処方薬だけでなく、治療を目的としてドラッグストアで購入した風邪薬や胃腸薬などの市販薬も医療費控除の対象に含まれます。
例えば、急な発熱で鎮痛解熱剤を購入したり、転倒して絆創膏や湿布を購入したりした際の費用も合算が可能です。
ただし、レシートには医薬品名が記載されている必要があり、品代などの不明瞭な記載では認められない可能性があります。
そのため、購入時に適切なレシートを受け取り確実に保管しておいてください。
対象外となる費用や予防目的の出費を把握する
医療費控除の対象となるのは「治療」を目的とした費用に限定されるため、予防や健康増進を目的とした出費は対象外となります。
具体的には、次のような費用が該当します。
- インフルエンザなどの予防接種費用
- 美容整形費用
- 異常が見つからなかった場合の人間ドック・健康診断の費用
視力回復のためのレーシック手術は対象となりますが、一般的な近視矯正用のメガネ購入費用は対象外となるなど、線引きのルールをしっかり把握してください。
セルフメディケーション税制とどちらが有利か比較する
特定の市販薬の年間購入額が1万2,000円を超えた場合に適用される「セルフメディケーション税制」は、通常の医療費控除と併用できず、どちらか有利な方を選択する制度です。
2026年末まで延長されているこの制度は、医療費の総額が10万円に満たない場合でも対象薬の購入が多ければ有利になる可能性があります(控除額上限は88,000円)。
国税庁のWebサイト等で対象品目を確認し、ご自身の支払額に応じて控除額が大きくなる制度を選択してください。
確定申告の手間を最小限に抑えてスムーズに申請するコツ
医療費控除は手続きが面倒だと敬遠されがちですが、現在の制度では申請の手間が軽減されています。
ここでは、忙しい方でもスムーズに申請を終えるためのポイントを整理します。
申告に関する主な負担軽減策は次の通りです。
- e-Taxを利用した電子申告の利便性
- 領収書の提出不要ルール
- 過去分のさかのぼり申請
これらの仕組みを活用し、無駄な時間と労力を省いて効率よく所得控除のメリットを享受しましょう。
スマートフォンとマイナンバーカードを活用したe-Tax申告の流れ
医療費控除の申請は税務署に行かずとも、スマートフォンとマイナンバーカードがあれば自宅からe-Tax(電子申告)で簡単に完結します。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、画面の指示に従って医療費の金額などを入力しましょう。
マイナポータルと連携して「医療費通知情報」を取得すれば、一部の医療費データが自動入力されるため、計算や手入力の手間を大幅に削減できます。
領収書の提出は不要で5年間の自宅保管のみで完結
確定申告の際に大量の医療費の領収書を税務署へ提出する必要はありません。
現在は「医療費控除の明細書」に合計額や内訳を記入して提出するだけで手続きが完了します。
ただし、提出が不要になった代わりに、確定申告の期限から5年間は自宅で領収書を保管する義務があります。
税務署から内容確認のために提示を求められる可能性があるため、年ごとに封筒などにまとめて大切に保管してください。
申告を忘れていた過去5年分の医療費もさかのぼって申請可能
医療費控除は「還付申告」に該当するため、申告を忘れていた年があっても過去5年分までさかのぼって申請可能です。
例えば、2025年分の医療費控除であれば、2026年1月1日から2030年12月31日まで申告が受け付け可能です。
過去に病気やケガで大きな出費があったにもかかわらず申告漏れがある方は、今からでも領収書を集めて申告すれば、払いすぎた税金を取り戻せるでしょう。
毎年の医療費が負担に感じるなら家計と保険の抜本的見直しを
慢性的な疾患などで毎年のように10万円を超える医療費がかかる場合、事後的な所得控除による負担軽減策だけでは根本的な解決になりません。
日々の家計管理と将来への備えを両立させるためには、次のような視点から抜本的な見直しを行う必要があります。
- 公的制度の上限額の把握
- 民間医療保険の最適化
- 余剰資金での資産形成
各項目について、専門家の視点から具体的な見直しのステップを解説します。
高額療養費制度を活用して自己負担の上限を把握する
ひと月の医療費が高額になった場合は、年齢や所得に応じて上限が定まる「高額療養費制度」を優先的に活用してください。
2026年8月からの制度改定で、上限額が段階的に引き上げられる一方、長期療養者を守る「年間上限」が検討されています。
自身の所得区分の最新限度額を正確に把握すれば、過度に民間の医療保険に頼る事態を防ぎ、保険料の無駄な支出を削減できます。
医療保険の保障内容が現在のライフステージに合っているか確認する
公的制度の限度額を把握した後は、加入中の民間医療保険が現在の年齢や家族構成に合っているかを見直すことが重要です。
例えば、独身時代に加入したままの保険は、過剰な入院保障や不要な特約が設定されており、保険料が割高になっているケースもあります。
必要な保障額はライフステージ変化に伴って減少するため、定期的に保障内容を確認して家計の固定費を削減してください。
浮いたお金は長期・積立・分散を意識した資産形成に回す
保険の見直しや所得控除で生み出した余剰資金は、ただ預金するのではなく「長期・積立・分散」を前提とした資産形成に充てるのも良いでしょう。
非課税制度などを活用して毎月一定額を世界の資産に分散投資することで、将来の医療費リスクに備える資産を効率的に増やせる可能性があります。
ただし、投資には相場変動による元本割れのリスクが必ず伴うため、生活防衛資金は確保した上で余剰資金の範囲内で実行してください。
医療費や家計の悩みは無料でプロに相談しよう
医療費や家計の抜本的な改善に迷いがある場合は、お金のプロであるFPへの無料相談を活用してみましょう。
所得控除の適切な申告手続きから、公的制度を踏まえた民間保険の適正化、さらには将来の資産形成まで、専門家が客観的データに基づきあなたに適したプランを構築します。
複雑な各種制度を個人で網羅することは難しいため、プロの知見を採り入れて効率的に家計を守る体制を整えましょう。
医療費控除は10万円ちょっとだと意味ないかどうかのまとめ
医療費が10万円を少し超えただけでも、所得税の還付と翌年の住民税軽減を合わせれば数千円戻る可能性があるため、確定申告をする意味は十分にあります。
現在はスマートフォンで簡単に手続きできるので、家計の足しとしてぜひ申請してください。
なお、毎年の医療費負担や家計管理に不安を感じる方は、マネーキャリアの無料FP相談を活用し、抜本的な見直しを図りましょう。