「退職金は、一時金と年金のどちらで受け取ると手取りが多くなるのかな」
「一度選ぶと変えにくいなら、後悔しない受け取り方を知っておきたい」
と気になっていませんか。
- 退職金が退職所得控除の範囲内なら、基本的には一時金のほうが有利です。控除を超える場合も、給付利率1%程度なら65歳退職では一時金が有利ですが、60歳退職で65歳までの収入が少ない人は、控除内を一時金、超える分を65歳前の年金にする併用が有利になりやすいです。
本記事では、一時金・年金・併用の手取りシミュレーション、年金で受け取るときの注意点、iDeCoとの控除の調整、公的年金の繰下げまでFPの視点で解説します。

勤め先や金融機関からの案内だけでは、受け取り方による手取りの違いや老後の家計への影響まで分からず、言われるままに決めてしまうこともあるでしょう。
退職後の収入と支出を先に把握しておけば、受け取り方の違いが家計に与える影響を自分の数字で比べられます。
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内容をまとめると
- 退職金は控除の範囲内なら基本的に一時金が有利で、控除を超えて60歳で退職し、65歳までの収入が少ないなら、控除内を一時金・超過分を65歳前の年金にする併用が有利になりやすい。
- 年金受け取りは税金や保険料が増えて途中で変えにくいため、iDeCoの受け取り時期や公的年金の繰下げとあわせて順番を決めるのが基本。
- 自分の条件に合った受け取り方と取り崩し計画を整理するなら、マネーキャリアの無料FP相談の活用がおすすめ。
この記事の目次
- 退職金は一時金と年金どちらが得?手取りシミュレーション
- 控除の範囲内なら基本的に一時金が有利
- 控除を超えて65歳で退職するなら給付利率1%程度では一時金が有利
- 控除を超えて60歳で退職し65歳まで収入が少ないなら併用が有利
- 給付利率が高い企業年金なら年金受け取りとの差は縮む
- 退職金を一時金・年金・併用で受け取るメリットとデメリット
- 一時金は手取りが多い反面まとまったお金の管理が必要
- 年金は定期的な収入になる反面税金と保険料が増えやすい
- 併用は2つの控除を使える反面配分の判断が必要
- 退職金を年金で受け取るときの注意点
- 年金受け取りは公的年金と合算されて税金がかかる
- 年金受け取りは国民健康保険料や介護保険料の計算に含まれる
- 年金受け取りは途中で一時金に変えにくい
- 保証期間付きの企業年金なら死亡後も残りを遺族が受け取れる
- 退職金を一時金と年金に分けて受け取るときの進め方
- 退職所得控除の範囲までを一時金にする
- 65歳前の収入が少ないなら控除を超える分は年金で受け取る
- iDeCoやDCは退職金との控除調整と受け取り時期で有利な方法が変わる
- 退職金を一時金で受け取ったときの公的年金の増やし方
- 一時金で生活費をまかなって公的年金を繰り下げる
- 繰下げで増える税金と社会保険料も見込んでおく
- 一時金で暮らせる年数から繰り下げる期間を決める
- 退職金の受け取り方と老後の家計はFPに無料相談
- 退職金の一時金と年金どちらが得かのまとめ
退職金は一時金と年金どちらが得?手取りシミュレーション
退職金を一時金と年金のどちらで受け取ると手取りが多くなるかは、勤続年数で決まる退職所得控除の大きさと、退職する年齢によって変わります。
ここでは、2026年10月時点の税制をもとに、次の4つのケースで手取りを比べました。
- 控除の範囲内で受け取る場合
- 控除を超えて65歳で退職する場合
- 控除を超えて60歳で退職する場合
- 給付利率が高い企業年金の場合
自分の勤続年数と退職する年齢に近いケースを見れば、手取りが多くなる受け取り方の見当をつけられます。
控除の範囲内なら基本的に一時金が有利
退職所得控除は勤続年数に応じて退職金から差し引ける金額で、退職金がこの範囲に収まれば一時金は非課税です。
年金は給与や公的年金と合わせて課税されるため、再雇用収入や公的年金があるケースでは、一時金のほうが手取りが多くなりやすい傾向があります。
控除額は、勤続20年までが1年につき40万円、20年を超えた年数は1年につき70万円で計算し、1年未満の端数は1年に切り上げます。
▼[勤続年数ごとの退職所得控除額]
(左右にスクロールできます)
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 10年 | 400万円 |
| 15年 | 600万円 |
| 20年 | 800万円 |
| 25年 | 1,150万円 |
| 30年 | 1,500万円 |
| 35年 | 1,850万円 |
| 38年 | 2,060万円 |
| 40年 | 2,200万円 |
控除額が2,060万円になる勤続38年で、退職金2,000万円を受け取って60歳で退職し、65歳まで再雇用で働く場合の10年間の手取りを比べた結果が次の表です。
▼[退職金2000万円・勤続38年の場合の10年間の手取り]
(左右にスクロールできます)
| 受け取り方 | 受け取り総額 | 税金 | 手取り |
|---|---|---|---|
| 一時金 | 2,000万円 | 0円 | 2,000万円 |
| 年金 | 約2,112万円 | 約227万円 | 約1,885万円 |
| 併用 | 約2,056万円 | 約98万円 | 約1,958万円 |
年金は給付利率1%の分だけ受け取り総額が約112万円増えるものの、給与や公的年金と合算して課税されるため、それを上回る約227万円の税金がかかります。
利息による上乗せより税負担の増加が大きいため、このケースでは一時金の割合を高めるほど手取りが多くなります。
※年金は10年間・給付利率1%、併用は一時金と年金に1,000万円ずつ分けた場合の試算です。
※60〜64歳は給与が年300万円で社会保険料控除が年45万円、65歳以降は公的年金が年200万円で社会保険料控除が年20万円とし、令和8年度税制改正後の2026年10月時点の税制で所得税と住民税を計算しています。
※65歳以降に増える国民健康保険料と介護保険料、一時金を預けた場合の利息は含めていないため、年金受け取りの手取りは実際にはこの試算より少なくなります。
※税金は、退職金・企業年金を受け取らなかった場合と比べて増える所得税・住民税の概算です。
参照:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
控除を超えて65歳で退職するなら給付利率1%程度では一時金が有利
退職金が退職所得控除を超える場合でも、65歳で退職し、給付利率が1%程度なら、一時金で受け取るほうが年金より手取りは多くなる傾向があります。
一時金は控除を引いた残りの半分が課税対象となるため、勤続25年で退職金が2,000万円なら、控除1,150万円を引いた残り(850万円)の半分である425万円に課税され、税金は約86万円です。
一方、同じ2,000万円を65歳から10年間・給付利率1%の年金で受け取ると、公的年金を年200万円とした場合、10年間の税金は約271万円にのぼります。
このケースでは、公的年金に企業年金を上乗せすると公的年金等控除も増えますが、受け取り額の増加ほど控除は増えないため、企業年金の分の多くが課税対象に加わります。
控除を超えて60歳で退職し65歳まで収入が少ないなら併用が有利
退職金が退職所得控除を超え、60歳で退職して65歳まで収入がない場合は、控除の範囲までを一時金、超える分を年金で受け取る併用のほうが手取りは多くなります。
勤続25年・退職金2,000万円なら、退職所得控除の1,150万円までは一時金で受け取り、残る850万円を60〜64歳の5年間・給付利率1%の年金にすると、受け取り額は年175万円ほどです。
ほかに収入がなければ所得税はほぼかからず、5年間の税金は住民税の約30万円にとどまるため、全額を一時金にするより手取りは約81万円多くなります。
ただし、65歳まで国民健康保険に加入する場合は、年金収入が加わることで保険料も増えるため、実際の差はこれより小さくなります。
一方、65歳まで再雇用で働き、年300万円の給与がある場合は、年金が給与と合算して課税されるため、手取りの差は約40万円に縮まる計算です。
給付利率が高い企業年金なら年金受け取りとの差は縮む
給付利率が高い企業年金ほど年金受け取りの上乗せが大きくなり、一時金との手取りの差は小さくなります。
給付利率は勤め先の企業年金の規約で定められており、退職金2,000万円を10年間の年金で受け取る場合の上乗せは、1%なら約112万円、2%なら約227万円です。
勤続38年のケースでも、給付利率が2%なら年金の手取りは約1,986万円となり、一時金との差は約14万円まで縮まります。
なお、確定拠出年金(DC)やiDeCoは運用の結果で受け取り額が決まるため、給付利率を前提にしたこの比較は、確定給付企業年金のように利率が規約で決まる企業年金で使えます。

試算の通り、同じ退職金でも受け取り方によって手取りに100万円を超える差が出ることがあり、選び方によっては老後資金が想定より少なくなる恐れがあります。
手取りの差を左右するのは、控除を超える金額・65歳までの収入・給付利率の3つで、これらがわかれば受け取り方を絞り込みやすくなります。
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退職金を一時金・年金・併用で受け取るメリットとデメリット
退職金は勤め先から受け取る退職一時金と企業年金の総称で、選べる受け取り方は勤め先の制度によって決まります。
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、退職給付制度がある企業のうち69.0%は退職一時金制度のみで、退職年金制度のみは9.6%、両制度の併用は21.4%でした。
退職一時金制度のみの勤め先なら受け取り方は一時金に限られ、年金や併用を選べるのは企業年金がある場合です。
▼[退職金の受け取り方ごとのメリットとデメリット]
(左右にスクロールできます)
| 受け取り方 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 一時金 | 税負担が小さくなりやすい | まとまったお金の管理が必要 |
| 年金 | 定期的な収入になる | 税金と保険料が増えやすい |
| 併用 | 一時金と年金それぞれの控除を使える | 配分の判断が必要 |
企業年金がある場合は、退職後の収入の見込みや住宅ローンの有無によって、どの利点を優先するかを決められます。
一時金は手取りが多い反面まとまったお金の管理が必要
一時金は退職所得控除が使え、控除を超えた分も半分だけが課税対象となるため、手取りが多くなりやすい一方、まとまったお金を自分で管理しながら取り崩していく必要があります。
住宅ローンが残っている場合は繰上返済に充てることもでき、例えば残高1,000万円・金利1.5%・残り10年の元利均等返済なら、完済することで今後支払う予定だった利息約77万円を減らせます。
ただし、完済すると団体信用生命保険の保障もなくなるため、返済せずに手元に残しておけば、万一の際に団信で住宅ローンが完済され、その分の資金を家族に残せる点も把握しておきましょう。
退職金は老後の生活費を補う資金でもあるため、返済やリフォームなどに使う額と生活費として残す額を先に分けておくと、取り崩しのペースを把握しやすくなります。
年金は定期的な収入になる反面税金と保険料が増えやすい
企業年金を年金で受け取ると、規約で決まった時期に一定額が振り込まれるため、退職後も定期的な収入を確保でき、給付利率の分だけ受け取り総額も増えます。
一方、年金は公的年金や給与と合算して毎年課税され、国民健康保険料や介護保険料の計算にも含まれるため、一時金より税金と保険料が増えやすい点がデメリットです。
ただし、使える金額が受け取るたびに区切られるため、まとまったお金の管理に自信がない場合は、取り崩しのペースを守りやすくなります。
税金と保険料の増加分よりも、生活費を計画通りに使えることを重視するなら、年金受け取りは老後資金を長持ちさせる選択肢の一つになるでしょう。
併用は2つの控除を使える反面配分の判断が必要
一時金と年金を組み合わせる併用は、一時金に退職所得控除、年金に公的年金等控除を使えるため、2つの控除を活かして税負担を抑えやすい点がメリットです。
特に、退職金が退職所得控除を超え、60歳で退職して65歳まで収入がない場合は、控除を超える分を年金で受け取りながら生活費に充てることで、全額を一時金で受け取るより手取りが多くなるケースもあります。
一方、手取りは一時金と年金の配分や受け取り期間によって変わり、65歳以降まで年金が続くと公的年金と合算して課税されるため、全額を一時金で受け取るより手取りが少なくなる場合もあります。
退職所得控除の額と65歳までの収入の見込みが分かれば、併用が有利かどうかの見当をつけやすくなるでしょう。

住宅ローンの返済に充てるか、年金で受け取って毎年の収入にするかは、手取りだけでなく家族への備えにも関わるため、どちらを優先すべきかなかなか決めきれないものでしょう。
退職金の受け取り方は、手取りの多さだけでなく、ローンの返済や生活費、家族への備えといった使い道から逆算して選ぶものです。
マネーキャリアの無料FP相談では、住宅ローンの残高や老後の生活費の見込みを踏まえて、退職金を返済・生活費・万一の備えにどう振り分けるかを一緒に整理できます。
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退職金を年金で受け取るときの注意点
退職金を年金で受け取ると、給付利率の分だけ受け取り総額は増えるものの、一時金にはない税金や保険料、途中変更や死亡時の扱いに関して注意点があります。
特に次の4点は、受け取り始めた後では変えにくいため、選ぶ前に押さえておくと判断を誤りにくくなります。
- 公的年金と合算される税金
- 保険料や医療費の負担への影響
- 一時金への切り替えの制限
- 亡くなった場合の扱い
年金受け取りは公的年金と合算されて税金がかかる
退職金を年金で受け取ると、公的年金等の雑所得として扱われ、公的年金と合算したうえで公的年金等控除を差し引いて課税されます。
公的年金等控除の最低額は、65歳未満が60万円、65歳以上が110万円で、2026年分は昭和37年1月1日以前生まれの人が65歳以上の区分です。
65歳以上で公的年金と企業年金の合計が330万円以下なら控除額は110万円のままなので、企業年金を上乗せした分はそのまま所得に加わります。
一方、65歳未満で公的年金をまだ受け取っていなければ、企業年金だけで60万円の控除を使えるため、年金受け取りの税負担を抑えやすくなります。
なお、令和8年度税制改正の大綱では、2027年分から給与所得控除と公的年金等控除の合計が280万円を超える場合、その超過分を公的年金等控除から差し引くとされていますが、再雇用の給与が年300万円程度であれば基本的に対象にはなりません。
年金受け取りは国民健康保険料や介護保険料の計算に含まれる
年金で受け取った退職金は、国民健康保険料や65歳以上の介護保険料を計算する際の所得に含まれるため、受け取る期間中は保険料が上がる場合があります。
一方、一時金で受け取った退職金は、勤め先が税金を差し引いた時点で課税が終わるため、原則として保険料の計算には含まれません。
再雇用で勤め先の健康保険に加入している間は給与をもとに保険料が決まるため、年金を受け取っても健康保険料は変わりません。
また、所得が増える影響は保険料にとどまらず、住民税が非課税かどうかの判定や、70歳以上の医療費の窓口負担割合の判定にも影響します。
年金以外に所得がない単身の65歳以上の場合、住民税が非課税になる年金収入の上限は、住んでいる地域によって年148万〜155万円です。
公的年金の受給額がこれに近い人は、企業年金を少し上乗せしただけで住民税非課税の扱いから外れることがあります。
年金受け取りは途中で一時金に変えにくい
確定給付企業年金で一時金を選べるのは、原則として年金を請求するときか、支給開始から5年を経過した後に限られ、そもそも一時金を選べるかどうかも勤め先の規約で決まります。
支給開始から5年を経過する前に切り替えられるのは、国が定める特別な事情がある場合に限られます。
確定拠出年金(DC)やiDeCoは、運営管理機関が定める方法で受け取る仕組みのため、途中で変更できるかどうかも加入先の取り扱いによって異なります。
そのため、年金受け取りを選ぶ場合は、退職後5年間に予定しているまとまった支出を、手元に残す一時金や預貯金でまかなえるかが判断のポイントになります。
保証期間付きの企業年金なら死亡後も残りを遺族が受け取れる
保証期間が付いた企業年金なら、受給中に亡くなった場合でも、保証期間の残りにあたる年金を遺族が受け取れます。
ただし、保証期間の有無や長さは規約によって異なり、終身年金でも保証期間を過ぎた後に亡くなった場合は、基本的にその後の支給はありません。
一方、確定拠出年金(DC)やiDeCoでは、受け取り途中で亡くなった場合、残っている資産が死亡一時金として遺族に支払われます。
このように、亡くなった後に家族へ残せる金額や受け取り方は制度によって異なるため、年金を選ぶ際は保証期間の有無や長さも確認しておきましょう。

年金受け取りを選ぶと、税金に加えて保険料や医療費の窓口負担まで増える年があり、想定していた手取りを下回る可能性もあります。
負担が増えるのは所得が判定の基準を超える年に限られ、受け取る時期と期間の組み方によって影響の大きさが変わります。
マネーキャリアの無料FP相談では、公的年金の開始時期や再雇用の予定も含めて、退職後の年ごとの収支の見通しを立て、受け取り期間の組み立てを一緒に考えられます。
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退職金を一時金と年金に分けて受け取るときの進め方
退職金を一時金と年金に分けて受け取る場合は、どこまでを一時金にし、残りを何年かけて年金で受け取るかによって手取りが変わります。
配分は次の順で決めると、使える控除を無駄にせずに済むでしょう。
- 退職所得控除の範囲までを一時金にする
- 控除を超える分は65歳前の収入が少なければ年金で受け取る
- iDeCoやDCは控除の重なりを確かめて受け方を決める
この順で考えれば、勤め先の退職金とiDeCoなどを合わせた全体の税負担を抑えやすくなります。
退職所得控除の範囲までを一時金にする
一時金と年金に分けて受け取る場合は、まず退職所得控除の範囲までを一時金にするのが基本です。
例えば勤続25年なら、1,150万円までの部分には所得税も住民税もかかりません。
退職所得控除は一時金で受け取る場合に使えるため、控除の範囲内の金額まで年金に回すと、使える控除を残したまま、年金として受け取る分に毎年課税されることになります。
なお、一時金を受け取る際に「退職所得の受給に関する申告書」を勤め先へ提出すれば、控除を反映した税額が差し引かれるため、原則として確定申告は不要です。
一方、申告書を提出しない場合は支給額の20.42%が源泉徴収され、退職所得控除などは確定申告で精算することになります。
65歳前の収入が少ないなら控除を超える分は年金で受け取る
控除を超える分を年金で受け取る場合、65歳前の給与などの収入が少なければ、65歳になる前に受け取り終える期間を選ぶと税負担を抑えやすくなります。
65歳未満なら企業年金だけで公的年金等控除を使える一方、65歳以降は公的年金と企業年金を合算して控除を計算することになり、企業年金の多くが課税対象になりやすいためです。
例えば、勤続25年・退職金2,000万円で60歳に退職し、65歳まで収入がない場合、控除を超える850万円を5年間の年金にすれば税金は約30万円ですが、10年間に延ばすと公的年金と重なる期間が生じ、約59万円に増えます。
10年間のほうが給付利率1%による上乗せは約22万円多いものの、税金の増加がそれを上回るため、手取りは5年間のほうが約7万円多くなる計算です。
年金の受け取り期間は規約で決まった選択肢から選ぶため、60歳から65歳までの5年間を選べるかどうかがポイントです。
iDeCoやDCは退職金との控除調整と受け取り時期で有利な方法が変わる
iDeCoや企業型DCを一時金で受け取ると、勤め先の退職金と同じ退職所得として扱われます。
そのため、勤務期間とiDeCoなどの加入期間が重なっていると、同じ期間に退職所得控除を二重に使えず、後から受け取る一時金の控除額が減ることがあります。
例えば、60歳で退職金2,000万円を受け取り、加入期間がすべて重なるiDeCoの600万円を65歳で一時金にすると、使える退職所得控除は80万円となり、税金は約43万円です。
一方、iDeCoを年金で受け取る場合は退職所得控除ではなく公的年金等控除を使うため、公的年金や給与と重なる時期によって税負担が変わります。
そのため、iDeCoやDCは、一時金と年金のどちらで受け取るかだけでなく、退職金や公的年金を受け取る時期との重なりも考えて決めることが大切です。
※控除の調整は、iDeCoなどの一時金を先に受け取ってから9年以内に退職金を受け取る場合と、退職金を先に受け取ってから19年以内にiDeCoなどを受け取る場合が対象です。9年以内のルールは2026年以降に受け取る一時金から適用されます。

勤め先の退職金とiDeCoの受け取り時期や配分の組み合わせは多く、どの順番で受け取れば負担を抑えられるのか、一人で比べるのは難しいものです。
受け取りの順番を決める軸は、控除が重なる時期と、公的年金と重なる時期の2つを避けることです。
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退職金を一時金で受け取ったときの公的年金の増やし方
一時金で受け取った退職金は、使い方によって一生受け取る公的年金を増やす原資にもなります。
ここでは、次の3点から、公的年金を繰り下げる期間の決め方を整理しました。
- 繰下げで増える年金額
- 増える税金と社会保険料
- 一時金で暮らせる年数
3点を合わせて考えれば、年金の増額と一時金の取り崩しの釣り合いが取れる期間を絞り込めるでしょう。
一時金で生活費をまかなって公的年金を繰り下げる
一時金で65歳以降の生活費をまかない、その間に公的年金の受け取りを遅らせる繰下げを選ぶと、年金額を一生涯に渡って増やせます。
昭和27年4月2日以後に生まれた人なら、年金の受け取り開始時期は66歳から75歳までの間で選択でき、1ヶ月遅らせるごとに0.7%、75歳まで繰り下げると最大84%増えます。
例えば、65歳時点の年金が年200万円なら、70歳まで繰り下げると年284万円、75歳までなら年368万円になります。
また、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げられるため、手元資金に応じて受け取り開始時期を分けることもできます。
ただし、繰下げ中は加給年金を受け取れず、増額の対象にもならないため、加給年金がある人は老齢厚生年金を65歳から受け取り、老齢基礎年金だけを繰り下げる方法も選択肢になります。
繰下げで増える税金と社会保険料も見込んでおく
繰下げで年金額が増えると、所得税や住民税に加えて国民健康保険料や介護保険料も増えるため、手取りの増え方は額面ほど大きくなりません。
例えば、年200万円の年金を70歳まで繰り下げて年284万円にすると、年金額は年84万円増えますが、所得税と住民税も年約11万円増えるため、手元に残る増加分は約73万円です。
その結果、70歳まで繰り下げた場合の累計受け取り額が、65歳から受け取り始めた場合の累計受け取り額を上回るのは、額面では約82歳ですが、税金を考慮すると約83歳半になります。
さらに、国民健康保険料や介護保険料も増える場合があるため、実際に手元に残る金額はこの試算より少なくなる可能性があります。
それでも繰下げによる増額は一生続くため、長生きするほど増額された年金を受け取れる期間は長くなります。
一時金で暮らせる年数から繰り下げる期間を決める
繰り下げる期間は、一時金のうち生活費に回せる金額で、年金を受け取らずに暮らせる年数から決めると、無理のない範囲で年金額を増やせます。
例えば年金以外に収入がなく、生活費が年300万円なら、68歳まで3年間繰り下げるには900万円、70歳まで5年間なら1,500万円が必要です。
病気や住まいの修繕に備える生活防衛資金は別に残し、そのうえで生活費に回せる額を年間の生活費で割った年数が、繰り下げる期間の目安です。
なお、待機中にお金が足りなくなった場合は、繰下げ受給をやめて、65歳からの本来の年金をさかのぼって受け取ることもできます。
ただし、70歳を過ぎてからさかのぼって請求する場合は、原則として請求の5年前に繰下げを申し出たものとみなされ、その時点の増額率を反映した年金を5年分さかのぼって受け取ります。

繰下げで年金を増やせても、待つ期間が長いほど一時金の取り崩しも増えるため、手元資金がどこまで減るのかが気になるところでしょう。
繰り下げる期間は、一時金のうち取り崩してよい金額と、手元に残しておきたい金額の差から決まります。
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相談実績10万件以上、相談満足度98.6%と多くの方から選ばれており、何度でも無料で相談できるのでお気軽にご活用ください。
退職金の受け取り方と老後の家計はFPに無料相談
退職金の受け取り方は、勤続年数や退職する年齢、再雇用の有無、iDeCoの受け取り時期によって手取りが変わり、自分の条件に当てはめて選ぶ必要があります。
ただし、税金や保険料、公的年金の繰下げまで含めて比べると考える要素が多く、一度選ぶと変えにくい受け取り方を一人で決めるのは容易ではありません。
FPに相談すると、退職後の収入と支出の見通しを整理したうえで、一時金・年金・併用のどれが家計に合うかや、一時金をどのように取り崩していくかを一緒に考えられます。
個別の税額計算や申告、運用商品の選択は相談の対象外ですが、受け取り方と取り崩しの方針が整理できれば、何を確認すべきかが分かり、勤め先での手続きも進めやすくなるでしょう。

退職が近づいて受け取り方を選ぶ段階になると、手続きの期限もあり、自分の選び方で本当によいのか迷う方もいるでしょう。
プロと一緒に数字を確かめれば、自分では見落としていた条件や選択肢に気づけることがあります。
マネーキャリアの無料FP相談では、勤め先の退職金制度や再雇用の条件を伺ったうえで、自分では気づきにくい選択肢や見落としをFPが確認します。
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退職金の一時金と年金どちらが得かのまとめ
退職金は、控除の範囲内なら基本的に一時金が有利です。
控除を超えて60歳で退職し、65歳までの収入が少ないなら、控除内を一時金、超える分を65歳前の年金にする併用が、手取りを多くしやすい受け取り方です。
年金受け取りは税金や保険料が増えて途中で変えにくいため、iDeCoの受け取り時期や公的年金の繰下げも含めて順番を決めておくと、判断を誤りにくくなります。
まずは勤め先の制度で選べる受け取り方と給付利率、自分の勤続年数を確かめ、控除の範囲に収まるかを確認してみてください。

退職金は一度に受け取る金額が大きい分、受け取り方を決めた後も、老後のお金が最後まで足りるのか不安になるかもしれません。
受け取り方を決めた後は、毎年いくらまで取り崩してよいかの目安を持つことが、老後資金を長持ちさせる手立てになります。
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本記事の内容は、執筆時点(2026年10月)の法令・税制・各種制度に基づいて作成しています。
企業年金の給付利率や受け取り方法は勤め先の規約によって、国民健康保険料や介護保険料は市区町村によって異なるため、実際の手続きの際は勤め先や各制度の窓口で最新の情報をご確認ください。
また、記事内の試算は一定の前提に基づく概算で将来の手取りを保証するものではなく、iDeCoや企業型DCの受け取り額は運用の結果によって変わります。
税金に関する個別の判断は税理士などの専門家にご相談いただき、最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。




