
- 加給年金とは何か知りたい人
- 制度改正によって何が変わったのか知りたい人
- 加給年金が支給停止になるのはどんな人か知りたい人

監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
加給年金とは
加給年金とは、老齢厚生年金に家族手当を上乗せする制度で、扶養家族がいる受給者の生活を支える仕組みです。
ここでは、加給年金について、以下の点を解説します。
- 支給対象者・適用条件
- いつから適用されるか
支給対象者・適用条件は?
支給対象者は、厚生年金の被保険者期間が20年以上あり、65歳到達時点で生計を維持する配偶者または子がいる受給者です。(※)
適用条件は以下の通りです。
- 配偶者の場合:65歳未満、受給者が扶養している
- 子の場合:18歳年度末まで(障害等級1・2級なら20歳未満)、受給者我扶養している
ただし、40歳以降(女性は35歳以降)の厚生年金加入が15年以上あれば、中高齢の特例として20年未満でも要件をクリアできます。
届出を行わないと加算されないため、要件を満たしたら速やかに「加給年金額加算開始事由該当届」を年金事務所へ提出しましょう。
いつから適用される?
結論、加給年金が適用されるのは「加算開始日が属する月の翌月分」からで、実際の年金振込額に自動で上乗せされます。(※)
加算開始日は加入240月を満たしている時期で決まり、たとえば60歳時点で条件達成していれば定額部分の支給開始年齢の誕生日前日がその日になります。
定額部分受給後に退職して要件を満たした場合や65歳までに要件に到達した場合は、退職翌日の「資格喪失日」が加算開始日となる点が重要です。
逆に65歳や70歳で240月に達するケースでは、それぞれの誕生日の前日が加算開始日となり、その翌月分から加給が反映されます。
届出が済んでいないと加算は始まらないため、該当したら速やかに「加算開始事由該当届」を提出し、在職定時改定や退職改定のタイミングを逃さないようにしましょう。
加給年金が支給停止になるのはどんな人?
加給年金が支給停止になるのは、家族が別の公的年金を受けたり扶養関係を失ったりする場合です。
具体的には、以下のようなケースに注意してください。
- 配偶者に老齢厚生年金・退職共済年金などの受給権が生じたとき(全額支給停止中でも対象)
- 配偶者が障害厚生年金または障害基礎年金(1・2級)を受給している期間
- 配偶者が65歳に達した月の翌月分から(この時点で加給年金は終了)
- 子が18歳年度末を迎えたとき(障害1・2級なら20歳未満まで)や婚姻・死亡で資格を失ったとき
- 離婚・死亡などで生計維持関係がなくなった場合
配偶者が65歳になると停止した加給年金の代替として、配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」が自動で加算されます。
必要書類の提出が後日判定になるケースもあるため、該当したら年金事務所へ届出を行いましょう。
加給年金は2022年4月の制度改正で対象者が縮小【完全廃止ではない】
2022年4月の年金制度改正により、加給年金を受け取れる条件が変更され、対象者が縮小されました。
ただし、急な支給停止により生活に支障が出ることを防ぐため、以下のようなケースでは経過措置が取られています。
- 2022年3月時点で加給年金が支給されている場合
- 2022年3月の段階で配偶者が厚生年金に20年以上加入しており、加給年金がすでに全額支給停止されていた場合
加給年金の支給・支給停止に関してよくある質問
加給年金の廃止に伴う基本的な情報に加えて、加給年金についてよくある以下の質問についてお答えしていきたいと思います。
- 専業主婦は加給年金が支給廃止になりますか?
- 加給年金の支給停止が拡大したのはなぜですか?
- 配偶者が受け取っても加給年金が支給停止にならない年金はありますか?
- 特別支給の老齢厚生年金を配偶者がもらい始めたら加給年金はどうなりますか?
専業主婦は加給年金が支給廃止になりますか?
専業主婦(主夫)だからといって加給年金が支給廃止になるわけではありません。
2022年度の制度改正により加給年金で支給停止になる条件が拡大されました(※)。
しかし、加給年金が支給廃止になるというわけではありません。
また、支給停止の対象となるのは、あくまで配偶者が以下の条件に該当した場合に限られるため、専業主婦(主夫)かどうかは直接関係しません。
- 配偶者が65歳に到達した
- 配偶者の年収が850万円以上(所得655.5万円以上)になった
- 配偶者が厚生年金保険の被保険者期間20年以上の老齢厚生年金、または障害年金を受け取る権利を得た
加給年金の支給停止が拡大したのはなぜですか?
これまでは配偶者が老齢厚生年金・退職共済年金いずれかの受け取る権利があり、一部でも受け取っていた場合は加給年金の支給は行われていませんでした。
しかし、老齢厚生年金・退職共済年金いずれも全く受けっていない場合は支給されていました。
要するに、受け取る権利がどちらもあるにも関わらず、実際に受け取るかによって加給年金が支給されるのかどうかが判断され、一部で不平等が生まれていたことになります。
このようなデメリットを是正するために、2022年4月に年金制度の改正の一角として加給年金の一部ルールを変更し、廃止が拡大したといった背景があります。
単純に加給年金の改悪という側面ではなく、あくまで不平等を見直すために年金制度が改正され、一部加給年金の対象が廃止されました。
配偶者が受け取っても加給年金が支給停止にならない年金はありますか?
結論として、遺族給付など一定の公的年金なら停止対象外です。
厚生年金保険法附則第八条では、加給年金の支給停止自由は「配偶者の老齢・退職年金権または障害年金受給」と限定しており、遺族年金は範囲外と明示しています。(※)
具体的には以下のようなケースが該当します。
- 子のある配偶者が受け取る遺族基礎年金
- 会社員の夫の死亡で妻が受ける遺族厚生年金
- 国民年金の寡婦年金
- 遺族共済年金
※参照:年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令の公布について|厚生労働省
特別支給の老齢厚生年金を配偶者がもらい始めたら加給年金はどうなりますか?
結論、配偶者の厚生年金の加入期間が20年未満であれば配偶者が、65歳になる前の60歳から64歳の間に受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」を受け取ったとしても、加給年金の支給は停止になりません。
そのため、60歳を迎えて早めに年金をもらいたいと思った場合でも、問題なく加給年金も受け取ることが可能です。
ただ、特別支給の老齢厚生年金を受けられる条件に関しては生年月日なども影響してくるため、あらかじめ自分に受け取る権利があるのかについて調べておきましょう。
加給年金の支給停止・廃止に関するまとめ
加給年金は、老齢厚生年金に家族手当を上乗せする制度ですが、本人の厚生年金受給期間や年齢、配偶者や子どもの年齢など条件が複雑です。
また、配偶者に別の公的年金の受給権が発生した場合などは加給年金の支給が停止されてしまうので注意が必要です。
急な支給停止により生活に支障が出るのを防ぐための措置も用意されていますが、自分自身で万が一の場合に備えておく必要があります。
もし、加給年金が支給停止になった場合、生活費がいくら不足するのかシミュレーションをしたり、不足した分を補う対策を考えたりするのは個人では大変です。
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