

この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
国民年金基金と農業者年金は併用できない!3つの注意点
国民年金基金と農業者年金は、国民年金に上乗せして受け取れる年金制度ですが、同時加入はできません。両者とも「国民年金の上乗せ制度」のため重複しての加入が認められていないためです。
選ぶ制度によって将来の資産形成の選択肢が大きく変わるため、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
農業者年金を選ぶと付加年金も強制加入となる
農業者年金に加入すると、国民年金の付加年金への加入が義務づけられます。
「強制加入」と聞くと負担が増えるように感じるかもしれませんが、付加年金は非常にお得な制度です。付加年金の保険料は月額400円※で、納付した月数に応じて以下のように年金額が増えます。
・付加年金を30年間納付した場合に支払う金額※
- 納付期間:30年間(360か月)
- 納付総額:144,000円(月400円×360か月)
・付加年金を30年間納めた場合に上乗せされる年金額※
- 年間の受取額:72,000円=200円(納付1か月ごとの年金加算額)×360か月(年金を納付した期間)
- 元が取れるまでの期間:約2年(72,000円×2年=144,000円)
たとえば30年間(360か月)納付した場合、支払う保険料の総額は144,000円です。受け取る付加年金は年額72,000円となるため、2年間受給すれば納付した保険料と同額を受け取れる計算になります。
農業者年金とiDeCoは併用できない
農業者年金を選んだ場合、iDeCo(個人型確定拠出年金)との併用はできません。一方、国民年金基金を選べばiDeCoとの併用が可能※です。
iDeCoには自分で運用商品を選べる柔軟性があり、運用益が非課税になるなどのメリットがあります。投資に関心がある方や、運用次第で資産を増やしたい方には魅力的な選択肢です。
ただし、国民年金基金とiDeCoを併用する場合、掛金の合計上限は月額68,000円※となります。たとえば、国民年金基金に月額30,000円を拠出している場合、iDeCoには月額38,000円までしか掛けられません。
どちらを選ぶかは将来設計で大きく変わる
国民年金基金と農業者年金のどちらを選ぶかは、将来設計によって判断が分かれます。農業を一生続ける予定がある方には、農業者年金が向いています。
国からの政策支援(補助金)を受けられるため※1、掛金負担を抑えながら年金の増額が可能です。また、付加年金も自動的に加入となり、少ない負担で確実に年金額を上乗せできる点も魅力です。
一方、将来農業を辞める可能性がある方や柔軟な資産運用を重視したい方には国民年金基金が適しています。農業者年金は農業従事が前提の制度ですが、国民年金基金は職業を問わず国民年金の第1号被保険者であれば継続できます※2。
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国民年金基金と農業者年金の違いとは?
国民年金基金と農業者年金は、国民年金に上乗せして受け取れる公的年金ですが、制度の仕組みや対象者などに以下のような違いがあります。
・国民年金基金と農業者年金の違い
項目 | 国民年金基金※ | 農業者年金※ |
---|---|---|
年金制度の方式 | 確定給付型 (掛金に応じて将来の受給額が確定) | 積立方式・確定拠出型 (運用成果に応じて受給額が変動) |
対象者 | 国民年金の第1号被保険者 (自営業・フリーランスなど) | ・年間60日以上、農業に従事していること ・国民年金第1号被保険者であること (保険料の納付免除者は除く) ・60歳未満であること ・60〜65歳未満で国民年金の任意加入者で 年間60日以上農業に従事していること |
掛金(月額) | 上限額68,000円 | 20,000円~67,000円※3 (千円単位で変更可能) |
掛金の途中変更 | 2口目以降は変更可能 (1口目は変更不可) | いつでも変更可能 |
国庫補助 | なし | 要件を満たせば月額4,000円~10,000円 (最長20年間) |
節税効果 | 掛金全額が社会保険料控除の対象 | 掛金全額が社会保険料控除の対象 |
iDeCoとの併用 | 可能(合計上限68,000円) | 不可 |
※参照:独立行政法人 農業者年金基金
※参照:国民年金基金連合会
ここからは、国民年金基金と農業者年金の仕組みを詳しく解説します。
国民年金基金の仕組み|メリット・デメリット
国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者(自営業やフリーランスなど)が加入できる公的年金です。確定給付型の仕組みを採用しており、加入時に選んだ掛金額に応じて将来受け取れる年金額があらかじめ確定します。
国民年金基金のメリット・デメリットは以下のとおりです。
・メリット
- 将来受け取れる年金額が加入時に確定するため、老後の計画が立てやすい
- 掛金全額が社会保険料控除の対象となり、所得税・住民税の負担を軽減できる
- 遺族一時金があり、万が一の場合も家族に年金相当額が支払われる
- iDeCoと併用できる
・デメリット
- 一度加入すると自己都合での脱退ができず、1口目の減額・変更もできない
- インフレが進むと相対的に年金の価値が目減りする可能性がある
掛金の変更制限やインフレリスクなどデメリットも踏まえたうえで、自身のライフプランに合った活用を検討しましょう。
農業者年金の仕組み|メリット・デメリット
農業者年金は、年間60日以上農業に従事する国民年金の第1号被保険者が加入できる公的年金です。確定拠出型の仕組みを採用しており、自分が積み立てた保険料を「独立行政法人 農業者年金基金」が運用し、成果に応じて将来の受給額が決まります。
農業年金のメリット・デメリットは以下のとおりです。
・メリット
- 国庫補助を受けられるため、実質的な掛金負担を抑えられる
- 積立方式のため、少子高齢化の影響を受けにくく将来的にも安定している
- 掛金全額が社会保険料控除の対象となり、節税効果がある
- 付加年金に強制加入となり、2年以上受給すれば元が取れる
・デメリット
- 運用成果により受給額が変動するため、将来の年金額が確定しない
- iDeCoとの併用ができず、資産運用の選択肢が制限される
- 農業を辞めた場合、新たに掛金を積み立てられなくなる
掛金は月額20,000円から67,000円の範囲で、千円単位で自由に設定・変更できます。要件を満たせば国庫補助が受けられ、実際に自分で負担する掛金を10,000円まで減額可能です。
国民年金基金と農業者年金はどっちを選ぶべき?3つの判断基準

国民年金基金と農業者年金のどちらを選ぶべきかは、将来設計によって異なります。判断するポイントは以下の3つです。
- 農業を一生続ける予定があるかどうか
- 国からの補助金を優先したいか
- iDeCoを利用したいか
それぞれの基準を確認し、自分に合った選択肢を見つけましょう。
農業を一生続ける予定があるかどうか
農業者年金は「農業を継続すること」が前提となる制度です。将来的に農業を辞めてしまうと、新たに掛金を積み立てられなくなります。
農業者年金への加入を検討する際は、次のような場合に注意が必要です。
- 将来的に別の職業に転職する可能性がある
- 体力的な理由で農業を続けられるか不安がある
- 夫婦で農業を営んでいる場合、配偶者が将来的に農業を辞める可能性がある
一方、代々続く農家で一生農業に従事する予定がある方や、認定農業者として事業を拡大していく計画がある方には、農業者年金が向いています。国庫補助を受けられる点も、長期的に農業を続ける方にとっては魅力的です。
国からの補助金を優先したいか
農業者年金の魅力は、要件を満たせば月額4,000円~10,000円の国庫補助が受けられる点です。実質的な掛金負担を抑えながら老後資金を準備できるため、経済的なメリットは大きいです。
ただし、補助金を受けるには以下の3つの条件を満たす必要があります※。
- 39歳までに加入し60歳まで20年以上の納付が見込まれる
- 農業所得が900万円以下
- 認定農業者で青色申告者
条件に該当しない場合、補助金は受けられません。また、補助期間は最長20年間と決まっています。
35歳未満の方は要件を満たす期間すべて、35歳以上の方は10年以内までが対象となるため、補助を受けられる期間が変わります。
iDeCoを利用したいか
iDeCoは自分で運用商品を選べるため、投資に関心がある方や運用次第で資産を増やしたい方には魅力的な選択肢です。運用益が非課税になる点も、長期的な資産形成で有利に働きます。
国民年金基金を選べば、iDeCoとの併用が可能です。上限は月68,000円※で、国民年金基金とiDeCoを自由に組み合わせて拠出できます。
一方、農業者年金を選ぶとiDeCoとの併用はできません。ただし、iDeCoは元本割れのリスクがある点には注意が必要です。運用成績次第では積み立てた金額を下回る可能性もあるため、リスク許容度に応じて判断しましょう。
【まとめ】国民年金基金と農業者年金で迷ったら、FPに相談が安心

国民年金基金と農業者年金は併用できないため、目的に合わせてどちらかを選びましょう。農業者年金は国の補助を受けられる一方、iDeCoの併用はできず付加年金に加入します。
国民年金基金は確定給付型で将来の年金額が決まり、農業を辞めても続けられます。判断基準は以下の3つです。
・選ぶ際の判断ポイント
- 農業を一生続ける予定があるか
- 国庫補助を優先したいか
- iDeCoを利用したいか
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