

この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 在職老齢年金は夫婦で合算されない!個々の基準額が影響する
- 支給停止は「基本月額+総報酬月額相当額」で決まる
- 配偶者の収入は一切関係ない
- 夫婦それぞれに調整が行われる
- 在職老齢年金の影響は?夫婦で受給している人は一度FPに相談してみよう
- 【みんなはどうしてる?】在職老齢年金を夫婦で合わせて受けている人の体験談
- 在職老齢年金制度による年金カットを受けていますか?
- 夫婦で在職老齢年金を受給し困ったことはありますか?
- 夫婦で在職老齢年金を受給し良かったことはありますか?
- 夫婦で在職老齢年金を受給する際に注意したい影響3つ
- 家計全体の年金収入が減る
- 社会保険料負担が増える
- 加給年金が停止される可能性
- 在職老齢年金を夫婦で受給する人によくある質問
- 共働きだと年金の受給で不利になりますか?
- 配偶者が亡くなった場合に遺族厚生年金はもらえますか?
- 在職老齢年金の支給停止は今後なくなりますか?
- 在職老齢年金の夫婦合算の影響が不安な人はマネーキャリアに相談しよう
- 【まとめ】在職老齢年金は夫婦合算で影響しない!家計単位での最適解を探そう
在職老齢年金は夫婦で合算されない!個々の基準額が影響する
在職老齢年金とは、働きながら老齢厚生年金を受け取る場合に、収入に応じて年金額の一部が支給停止(減額)される制度です。ただし、在職老齢年金は夫婦の収入や年金額を合算して調整する仕組みではなく、「個人単位」で判定されます。
年金減額の基準となる支給停止調整額は個人ごとに定められており、配偶者の収入や年金額が自分の年金に影響することはありません。
たとえ夫婦共働きであっても、それぞれの収入と年金額に基づいて判定されるため、合算による不利益が発生しないのが特徴です。
次から、その仕組みを詳しく解説します。
支給停止は「基本月額+総報酬月額相当額」で決まる
在職老齢年金では、老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額である「基本月額」と、給与や賞与の平均を示す「総報酬月額相当額」を合算します。その合算額によって、支給停止の有無が判定されます。
基本月額は老齢厚生年金の年額を12で割った金額で、総報酬月額相当額は標準報酬月額に過去1年分の標準賞与額を12で割って加えた額です※1。この合計額が基準額を超えると、その超過分に応じて年金が一部停止されます。
配偶者の収入は一切関係ない
在職老齢年金の計算では、配偶者の収入や年金額は一切影響しません。支給停止額を判定する際に対象となるのは、本人の収入と年金額であり、配偶者の収入や年金は考慮されない仕組みです。
夫が高収入であっても、妻の在職老齢年金の減額につながることはなく、逆に妻がパートなどで収入を得ていても、その額が夫の年金判定に影響することもありません。
制度上、在職老齢年金は個人ごとに切り分けて計算され、夫婦の収入や年金を合算して調整する仕組みは存在しないのです。
「夫の収入が多いと妻の年金も減るのでは?」と心配する人は多いですが、それは誤解です。配偶者の収入が原因で、自分の年金が減らされることはありません。
夫婦それぞれに調整が行われる
夫婦がともに働いて厚生年金に加入している場合、在職老齢年金の支給停止額は個別に計算されます。
夫婦で収入や年金額を合算して判定することはなく、一人ひとりに「51万円の基準額」が適用されます。そのため、もし夫婦双方が基準額を超えた場合には、それぞれの年金がルールに従って減額される仕組みです。
<例>
本人 | 夫 | 妻 |
---|---|---|
給与 | 40万円 | 15万円 |
年金 | 20万円 | 10万円 |
合計 | 60万円 | 25万円 |
基準額との差 | +9万円 | 基準額未満 |
減額額 | 4万5,000円 | 0円 |
支給結果 | 年金一部減額 | 年金満額支給 |
在職老齢年金の影響は?夫婦で受給している人は一度FPに相談してみよう

夫婦で働きながら年金を受給している場合でも、それぞれの収入が相手の在職老齢年金に影響しません。
しかし、何も考えずに働き続けると、収入増によって年金が一部支給停止となり、結果的に手取りがあまり増えない「働き損」と感じるケースもあります。そうならないためにも、老後のライフプランを見据えて、年金受給と収入のバランスを取ることが重要です。
複雑な収入と年金の調整は、一度FPに相談してみると安心です。FPなら、夫婦の資産状況や理想の老後の暮らし方を踏まえ、最適な年金受給と収入のバランスを提案してくれます。

【みんなはどうしてる?】在職老齢年金を夫婦で合わせて受けている人の体験談
ここでは、夫婦で在職老齢年金を受給している人を対象にアンケートを実施しました。
年金カットを経験したのか、困ったことはあったのか、逆に良かった点はどこにあったのかといったリアルな声を集めています。
机上の制度説明だけでは分からない生活者の実感を知ることで、自分たちが直面するかもしれない状況をより具体的にイメージできるでしょう。ぜひ体験談を参考にしながら、今後の働き方や年金の受け取り方を考える判断材料にしてみてください。
※2025年09月07日~2025年09月10日時点での当編集部独自調査による
※年金の受給額や受給開始時期は、加入状況や制度改正により個人差があるためご了承ください
在職老齢年金制度による年金カットを受けていますか?

アンケート結果を見ると「夫のみが年金カットを受けている」という回答が多く、次いで「夫婦ともにカットを受けている」という声が続きました。
「妻のみ」や「夫婦ともにカットを受けていない」という人も一定数存在し、家庭ごとに状況が大きく分かれることがわかります。
つまり、在職老齢年金制度の影響は一律ではなく、夫婦それぞれの収入水準や働き方のバランスによって大きく変化しているのです。制度の仕組みは個人単位で支給停止を判定しますが、結果的には世帯全体の年金収入に影響を及ぼします。
夫婦で在職老齢年金を受給し困ったことはありますか?
在職老齢年金は「働きながら年金を受け取れる」という点で魅力的な制度ですが、実際には想定外の壁に直面する人も少なくありません。
アンケート結果では、夫婦で受給している場合、年金が減額される条件や計算方法が複雑で、仕組みを理解するだけでも一苦労という声が目立ちます。また、収入が増える一方で税金や社会保険料の負担も重くなり、実際の手取りが思ったほど増えないという悩みも寄せられました。
ここでは、夫婦で在職老齢年金を受給している人たちのリアルな体験談を口コミとして紹介します。同じ悩みを抱える方にとって、今後の働き方や生活設計を考える上での参考になるでしょう。

60代男性
仕組みが複雑で理解に苦労
夫婦そろって在職老齢年金を受給していますが、制度の仕組みがとにかく複雑で困惑しました。自分の収入だけでなく妻の収入も関係してくるのではと勘違いしていましたが、実際には個人単位で計算されることを知ってようやく理解できました。

60代女性
手取りが想像以上に減った
在職老齢年金の影響で年金が減額されたうえに、給与が増えたことで税金や社会保険料の負担も大きくなり、結果的に手取りが思ったより増えませんでした。

70代男性
収入超過で働き損に感じた
もう少し働けると思い残業を増やしたところ、収入が基準額を超えてしまい、その分年金が大きく減額されました。

60代女性
将来の年金が心配
夫婦で在職老齢年金を受給していますが、この先制度がどうなるのかが不安です。年金カットの基準額が今後引き上げられると聞いていますが、それによって自分たちの受給額がどう変わるのか想像できず、老後の家計に影響が出ないか心配です。

60代男性
専門家の相談で安心できた
在職老齢年金の仕組みがよく分からず悩んでいたとき、FPに相談しました。制度の仕組みや支給停止の基準を丁寧に説明してもらえたことで、不安がかなり解消されました。
夫婦で在職老齢年金を受給し良かったことはありますか?
在職老齢年金というと「減額される」「働き損になる」といったネガティブな側面が注目されがちです。しかし、実際に夫婦で受給している方の声を集めると、良かったと感じている点も数多く見えてきました。
アンケート結果では、夫婦それぞれが働きながら年金を受け取ることで、収入が安定し生活に余裕を持てるという意見があります。さらに、経済面だけでなく夫婦で支え合える安心感が増したという声も少なくありません。
ここではアンケートをもとに、夫婦で在職老齢年金を受給して良かったことに関する体験談を紹介します。これからの働き方や老後資金の考え方に、役立つヒントになるでしょう。

60代男性
収入が安定して家計が安心
夫婦で在職老齢年金を受給しながら働いていることで、毎月の収入が安定し、家計に余裕が生まれました。

60代女性
夫婦で支え合える安心感
年金を受給しながら二人で働けることは、経済的な支え合いにつながっています。どちらかが体調を崩してももう一方が収入を確保できるので、精神的にも安心できます。

70代男性
働くことで健康と生きがいを維持
年金を受給しながら働き続けているおかげで、体を動かす習慣ができ、健康を維持できています。社会との関わりも保てるため、日々に張り合いがあり、生きがいにつながっています。

70代女性
子や孫に援助できる喜び
夫婦で得られる収入と年金が合わさることで、家計に余裕ができ、子どもや孫にちょっとした援助ができるようになりました。

60代男性
専門家相談で安心の老後設計
在職老齢年金についてFPに相談したことで、減額リスクを踏まえた上で安心して働き続けられるようになりました。夫婦それぞれの収入や年金額を整理してもらい、将来の家計シミュレーションを受けたことで、長期的な見通しが立ちました。
夫婦で在職老齢年金を受給する際に注意したい影響3つ

在職老齢年金の支給停止はあくまで個人単位で判定され、夫婦の収入を合算して調整される仕組みはありません。しかし、夫婦がともに働きながら年金を受給している場合、家計全体に影響が及ぶケースがあるため注意が必要です。
特に、次の3つのポイントには気をつけておく必要があります。
- 家計全体の年金収入が減る
- 社会保険料負担が増える
- 加給年金が停止される可能性
家計全体の年金収入が減る
夫婦ともに高収入を得ながら働き続けている場合、それぞれの年金が在職老齢年金の仕組みにより減額または支給停止となります。その結果、家計全体の受給額が大幅に下がることがあります。
支給停止の判定はあくまで個人単位で行われますが、結果として世帯全体の収入にマイナスの影響が及び、想定以上に年金収入が減少する恐れがあるのです。
さらに、在職老齢年金で減額された分は将来的に取り戻すことができません。つまり、一度カットされた年金は戻らないため、長年積み立ててきた保険料が無駄になったと感じるケースも少なくありません。
社会保険料負担が増える
在職老齢年金の支給停止が発生しなくても、収入が増えれば社会保険料の負担は大きくなります。厚生年金保険料や健康保険料は給与額に応じて増減し、厚生年金保険料率は給与の18.3%で固定されています※。
そのため、収入が上がると保険料も自動的に増え、手取り収入は思ったほど増えないケースが少なくありません。夫婦で共働きの場合は、それぞれに社会保険料が課されるため、世帯単位で見れば負担が二重になり、家計全体に大きな影響を与えます。
月収が増えても、増加分の数万円が社会保険料に消えることで実際の手取りは想定より小さくなります。年間では数十万円単位の負担増につながる可能性もあるのです。
加給年金が停止される可能性
老齢厚生年金が在職老齢年金の適用で全額支給停止になると、配偶者や子に対する加給年金も同時に支給停止されます。そのため、不意に年金収入が大きく減るリスクがあり注意が必要です。
ただし、本来の年金が一部でも支給されていれば、加給年金は減額されず満額受け取れます。
たとえば、夫の年金が在職中に全額停止されれば、妻に支給されていた加給年金も同時に受け取れなくなります(例外あり)※。子に対する加給年金も同様で、本人の年金が全額停止されている期間は支給されません。

在職老齢年金を夫婦で受給する人によくある質問
高齢になっても夫婦で働き続けながら年金を受け取るケースは、年々増えています。
夫婦で定年後も働き続けて年金を受給していると、この制度に関してさまざまな疑問が生じることがあるのです。ここでは、夫婦で在職老齢年金を受給する際によく寄せられる質問について詳しく解説します。
制度を正しく理解し、疑問を解消しておくことで、夫婦そろって安心して年金を受け取れるようになります。将来の生活設計に備えるためにも、今のうちから知識を整理しておきましょう。
共働きだと年金の受給で不利になりますか?
共働きであっても配偶者の収入が自分の年金に影響して減額されることはないので、不利益を心配する必要はありません。ただし、夫婦それぞれが基準額を超えて高収入となった場合は、各自の年金が減額されるため、世帯全体の年金額は減少する可能性があります。
夫婦ともに基準額を10万円超えていれば、各自の年金が5万円ずつ減額され、結果として世帯全体で月10万円分の年金が減る計算になります。逆に、夫が基準額を超えても妻が基準額以下であれば、妻の年金は満額支給されます。
配偶者が亡くなった場合に遺族厚生年金はもらえますか?
在職老齢年金によって老齢厚生年金が支給停止になっている場合でも、配偶者が亡くなれば遺族厚生年金を受給できます(一定条件あり)※。
ただし、65歳以上で自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金の両方を受け取る権利がある場合には「併給調整」が行われます。そのため、満額がそのまま支給されるとは限りません。
具体的には、自分の老齢厚生年金が優先して支給され、遺族厚生年金の額が自分の年金より多ければその差額分だけ遺族年金が受け取れます※。逆に自分の年金額の方が高ければ、遺族厚生年金は全額支給停止となるため注意が必要です。
在職老齢年金の支給停止は今後なくなりますか?
高齢者の雇用が進む中でルールの見直しが進められており、2026年からは支給停止基準額が2025年度の月51万円から62万円へと引き上げられる予定です※。これには、高齢者が年金減額を気にせず働き続けられる環境を整える狙いがあるのです。
ただし、基準額を引き上げると将来世代の年金水準が低下する懸念もあり、慎重な議論が続いています。一部で制度廃止を求める声があるものの、現時点で直ちに廃止される予定はなく、将来の制度改正の行方を注視する必要があります。
在職老齢年金の夫婦合算の影響が不安な人はマネーキャリアに相談しよう

在職老齢年金は個人単位で計算される制度ですが、家計全体への影響は夫婦の働き方によって大きく変わります。
夫婦のどちらかの月収が基準額を下回れば、その人の年金は減額されず、世帯の年金減少を抑えられる場合があります。一方で、夫婦ともに基準額を超えると、それぞれの年金が減額され、結果として世帯全体の受給額が想定以上に下がる可能性があるのです。
夫婦の収入バランスによって支給パターンは大きく異なるため、専門家によるシミュレーションで将来の収入を試算してもらうことが最適解につながります。
【まとめ】在職老齢年金は夫婦合算で影響しない!家計単位での最適解を探そう
在職老齢年金には「夫婦合算」という仕組みはなく、支給停止の計算は個人単位で行われます。
ただし、夫婦双方が基準額を超える収入を得ていると、それぞれの年金が減額され、結果として世帯全体の受給額が下がる可能性があります。
誤解に惑わされず、制度の仕組みを正しく理解したうえで、夫婦の働き方を家計目線で調整することが重要です。特に世帯全体の収入と将来の生活設計を考慮すると、無理のない形で収入と年金を組み合わせる工夫が求められます。
もし判断に迷う場合は、FPなど専門家への相談を活用するのがおすすめです。プロの視点を取り入れることで、夫婦にとって最適で安心できる働き方や受給プランを見つけやすくなるでしょう。

2025年度の基準額は51万円で、超過分の半額がカットされる仕組みです※1。基本月額20万円と給与35万円で合計55万円の場合、基準額を4万円超えるため、その半分にあたる2万円が減額されます。
2026年からは基準額が62万円に引き上げられる予定であり※2、合計額が62万円に達するまでは年金の減額が発生しません。