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敷金の預り証は大切に保管する必要があります。この記事では、敷金の預り証の役割、預り証を紛失したときの対処法を解説しています。また、敷金の預り証を発行しない管理会社・大家さんの事例についても説明しているので、ぜひお読みください。

監修者「谷川 昌平」

監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー

株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。
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この記事の目次

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敷金の預り証とは?敷金の返却時に必要になる?


賃貸で部屋を借りる時に、多くの人が支払う敷金

その際に「敷金預り証」を受け取ったことがある人もいるのではないでしょうか?


この敷金預り証、保管しておいた方がいいのか、今後使うことはあるのか、気になったことはありませんか?

  

普段の生活では敷金預り証に触れる機会は多くありません。


賃貸で部屋を借りている方でも、預り証は何なのか?と思っている方、

そもそも敷金預り証をもらったか曖昧という方も多いのではないでしょうか。


そこで今回は

  • 敷金預り証とは?
  • 預り証をなくした場合はどうなる?
  • そもそも預り証を発行しないことも

以上を中心に説明していきます。


敷金で損しないためにも、ぜひ最後までご覧ください。

預り証は敷金の返却時に必要な領収書のようなもの


前提として、敷金とは、退去時の修繕費や家賃未払いの担保として支払うお金です。


返却されることもありますが、修繕費や家賃の未払いが敷金から支払われれば、返却されません。


敷金の預り証とは、契約時に大家さんや管理会社が、部屋を借りる人から敷金を預かったことを証明する書類です。 


敷金が返却される場合は、この預り証があると敷金を支払ったことが証明でき、返金がスムーズになります。


「預り証ではなく領収書でいいのでは?」と感じる方もいるかもしれません。


しかし、領収書と預り証はその性質が少し異なります。


領収書と異なる点は、敷金の所有権が移転するか否かです。


一般的に、所有権が変わる場合には領収書所有権が変わらない場合には預り証が発行されます。


敷金の場合は、所有権が移転するわけではありません。


管理会社や大家さんにお金を預けている状態であり、先に述べた通り、返金することがあるからです。


そのため、領収書ではなく預り証が発行されることになります。

預り証を紛失・なくした場合はどうなる?


もし、敷金預り証を紛失したらどうなるのでしょうか?


なくしたらどんな時に困るのか、気になりますよね。


結論、なくしてしまっても賃貸契約書や振り込み履歴が残っていれば、大きな問題となる可能性は低いと言えます。


敷金預り証を紛失したことによるペナルティも、特にありません。


ただ、敷金に関して裁判になったときは不利になるケースを例として、紛失してしまうと後々困る場合も少なからず存在します。


こうしたことを想定しておくと、預り証を持っているに越したことはありません。


この後

  1. 預り証をなくしても大きな問題がない理由
  2. 逆に預り証が必要になってくるケース

について、順番に解説していきます。

①賃貸契約書や振り込み履歴が残っていれば問題ない


繰り返しになりますが、敷金預り証は、敷金を預けたことを示す書類です。


そのため、預り証以外の書類で、敷金を管理会社や大家さんに預けたことが分かれば、問題はありません。


後述しますが、預り証がもともと発行されない場合もあります。


敷金預り証を持っていなくても、賃貸契約書や、銀行振り込みの場合は振込票や口座の入出金記録など、敷金を振り込んだことが分かる履歴があれば、敷金を支払ったことの証明として活用できます。


手渡しであれば、少し性格は異なりますが、領収書を発行してもらえないか聞いてみるのも手です。


もし、手元に敷金預り証がない人は、代わりとなる賃貸契約書や振り込み履歴を保存しておきましょう。

②敷金の返還に関して裁判になったときは不利になる


もし敷金が返金されずトラブルに発展し、裁判を起こす場合、預り証の存在は重要になってきます。


「裁判にはお金も時間もかかるし面倒」と思う方もいるかもしれませんが、最近では個人でも少ない費用で裁判を起こすことが可能です。


裁判を起こすのであれば、敷金を支払った証拠の提出が求められます。


ここで敷金預り証が証拠として提出できるのです。


しかし、敷金預り証を紛失したとなれば、提出できる証拠が減ってしまうため、裁判でうまく立ち回れず、結局敷金の返却を受けられなかった...ということにもなりかねません。


トラブルが発生した際は、敷金預り証の有無で自分の資産が守れるかどうかに関わってくると言えます。


この後解説するように、管理会社や大家さんから預り証が発行されない場合は、賃貸契約書や振り込み履歴を保管しておき、万が一の際には預り証の代わりとして利用しましょう。

敷金の預り証を発行しない管理会社・大家さんもいる


今、部屋を借りて住んでいる方で「敷金預り証が手元にない!」と焦っている方もいるかもしれません。


必要になってくるケースが限られているとはいえ、やはり持っていたいものですよね。


しかし、この敷金預り証、必ず発行されるものではありません。


管理会社や大家さんによって、敷金預り証を発行するか否かは分かれます。


なぜ預り証を発行しないのか?


預り証がなければ、部屋を借りる住民が困るかもしれないのに、そもそも発行しなくていいものなのでしょうか?


管理会社や大家さんによって、事情は様々ですが、主に以下の理由が挙げられます。

  1. 法律的には発行義務がない
  2. 預り証の発行に印紙税がかかる
  3. 預り証を回収できない可能性がある
順番に説明していきます。

理由①敷金の預り証は法律的には発行義務がない


敷金預り証は、法律で発行することを義務付けられていません。


民法では「弁済を受領した者に対して受取証書の発行を請求できる 」と定められ、弁済を受け取った側は、受取証書を発行する義務があります。


弁済とは、借りたお金を全額返すことを言います。


しかし、敷金は弁済ではありません。


法律上は、金銭所有権の移転と考えます。


住人が部屋を汚した際の修繕費、家賃未払いなどの債務不履行がある時は、その弁済に充てられるものです。


先ほど記載した通り、敷金は返却される場合もあります。


そのため、弁済に当たらない敷金には、法的に預り証を発行する義務はないため、わざわざ発行しない場合があります。


ちなみに、敷金が返ってきたら受取証書を発行しなければならないとお伝えしましたが、

多くの場合、管理会社や大家さんが用意してくれます。


敷金を受け取ったら、サインを求められるので、サインしておけば大丈夫です。

理由②敷金が5万円以上のとき預り証の発行に印紙税がかかる


敷金が5万円以上になると、200円の印紙を貼る必要があります。


これは、領収書等印紙税法という法律により定められています。


課税文書に該当する場合、この印紙を貼らなければならず、敷金預り証は課税文書に該当します。


敷金は、家賃により大きく異なりますが、相場は家賃1~2か月分のため、5万円以上のケースが大半です。


その度に200円のコストがかかることを考えると、部屋を貸す側も預り証を発行しない方が経費の削減になります。


また、印紙を貼っていない場合、600円(印紙税額の3倍の金額)を過怠税として支払う必要があります。


万が一印紙を貼り忘れてしまった時でも、例外ではありません。


数百円とはいえコストの面から考えて、預り証を発行するのは得策ではないでしょう。

理由③預り証を敷金の返却時に回収できない可能性がある


預り証を住民がなくした場合、第三者によって悪用されるケースもあります。


また、当然なくしてしまった場合は回収することができません。


預り証が回収できないとなると、悪用を企む第三者が預り証を持って来た場合や、後から預り証が出てきた場合、管理会社・大家さんとしては、敷金の返却を二重に求められてしまうことが起こりえます。


こうした手間やトラブルを防止する観点からも

「預り証の発行が義務付けられていないのなら、そもそも発行しない」

という考えが理由の一つとして挙げられます。


発行義務がないこと、印紙税がかかることと併せて考えても、管理会社や大家さんにとって、預り証を発行するメリットは少ないと言えます。

【重要】賃貸契約書が敷金に関して述べていることを必ず確認する


先に「敷金預り証がなくても、賃貸契約書や振り込み履歴が残っていれば問題ない」とお伝えしました。


敷金預り証の代わりとなる賃貸借契約書で、敷金に関してどのような記載がされているか確認してみましょう。


敷金の金額や、敷金を受領した日付、賃貸契約が自動更新の場合は敷金がどうなるのかは、最低限チェックしておくのが安心です。


また、契約書の期日は過ぎたとしても、中身の契約は継続する場合があります。


敷金に関する項目が、記載されているか、曖昧になっていないか気を付けましょう。


特に、仲介業者や管理会社が敷金を保管する場合は、要注意です。


部屋を借りている途中に管理会社が変わる場合もあります。


退去の際に、

途中で管理会社が変わったため敷金が返還されない

敷金を預かっていないため退去費用を全額負担するよう要求される

といった、敷金を巡るトラブルを避けるためにも、確認しておきましょう。

まとめ:敷金の預り証はしっかりと保管しよう


賃貸住宅を借りる際に発行されることがある、敷金預り証について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。


この記事のポイントは

  • 預り証をなくしても、特に問題となることはない
  • 預り証があれば、トラブルの際にスムーズな対応が可能
  • 預り証は発行されないこともある

でした。

敷金預り証は、必ずしも必要ではありませんが、部屋を借りた際にはあった方が安心できるものです。
万が一の時には、私たちのお金を守ってくれます。

敷金は、家賃滞納といったトラブルを避けるためのお金ですが、
預り証がなければ、敷金を巡って逆にトラブルを引き起こしてしまうかもしれません。

いま一度手元にあるか確認し、間違って捨ててしまうことがないよう、大切に保管しておきましょう。

これから部屋を借りる予定がある人は、敷金預り証が発行されるのかを事前に確認しておくと良いですね。

発行されなさそうであれば、発行してもらうことはできるのかを確認し、発行ができないと言われた場合、賃貸契約書や振り込み履歴など、敷金を支払ったことが分かるものを控えておきましょう。