固定費や変動費の求め方や計算方法がわからない人も多いのではないでしょうか。この記事では、固定費や変動費の求め方や計算方法を解説しています。また、損益分岐点や固定費率、変動費率についても説明しているので、ぜひお読みください。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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固定費や変動費の求め方は?計算方法や公式も紹介!

内容をまとめると

・固定費とは「売り上げの増減に関わらずかかる費用」

・固定費の計算はそれぞれの費用を求め、合計するだけ 

・変動費とは「売上高(生産高)の増減によって金額が変動する費用」 

・変動費もそれぞれの費用を求め、合計するだけ

こんにちは。マネーキャリア編集長の谷川です。


先日、20代男性の友人からこんな相談を寄せられました。

最近、急に経理部への異動が決まってしまったんだけど、会計とか経理とか何にも知らないんだよね…。異動先の上司が言っていた固定費や変動費って言葉も聞いたことはあるけど、何が固定費か変動費かすら分からないよ。ちょっと教えてくれないかな?

知らないと分かりづらい固定費や変動費。 


ここでは、 

  • 固定費や変動費の中身 
  • 固定費や変動費の求め方 
  • 損益分岐点の計算方法 

など、会社の会計・経理に関して詳しくなれる記事になっています。 


ぜひ最後までご覧ください。 


マネーキャリアでは、お金に関する記事が数多くありますので興味のある方は合わせてご覧ください。 

固定費とは売上に関わらず掛かる費用!求め方や変動費との違いを解説!


さっそくまずは固定費について見ていきましょう。


固定費とは、一言でいえば「売り上げの増減に関わらずかかる費用」。

不変費、ということもあります。


固定費に該当する主な費用は下記の通りです。

  • 人件費
  • オフィスなどの家賃
  • 水道光熱費
  • 接待交際費
  • リース料
  • 広告宣伝費
  • 減価償却費

いずれも、仮に売り上げがゼロ円だったとしてもかかってしまう費用です。

そのため、売上が増えないのに固定費が上がると会社の経営に直撃します。


残念なお話ですが、会社の利益を増やすのに手っ取り早いのは、人件費の削減です。

みなさんにとっては大事なお給料ですが、会社にとっては固定費です。


家賃、交際費については、みなさんの家計でかかる固定費とあまり差はありません。


最後の減価償却費は会計上で用いる独特の費用で、


「固定資産(営業車など)を買った費用を一括計上せず、耐用年数に応じて配分してその年に相応する額を計上する費用」のことを言います。


車に例えれば分かりやすいお話ですが、皆さんが新車を200万円で買ったとして、5年後に売却しても100万円前後にしかならないでしょう。


このように、車などの固定資産は年数に応じて価値が落ちていくのです。

車については法定耐用年数が決まっており、

  • 普通車:6年
  • 軽自動車:4年
となっています。
減価償却費の計算方法は2つあり、定率法と定額法に分かれます。

ただし、法人では原則として定率法、営業車の場合は選択制で定額法を選んでも良いですが、そこそこ規模が大きい企業の場合は定率法が一般的でしょう。


定率法の求め方は、下記の通りです。

減価償却費 = 未償却残高(購入年度は取得価額) × 定率法償却率

定率法は一定の割合で償却していくので、年数が経過するにつれて償却額は少なくなり、最終的には固定資産の価値が1円になります。


上記に該当しないものが変動費です。

変動費は可変費とも言われますが、詳細は後述します。


固定費の求め方はさほど難しくはなく、それぞれの費用を計算して合計するだけです。


業種によって固定費の種類が微妙に異なりますので、順番に解説します。

①製造業の固定費一覧!

日本を代表する製造業。トヨタ自動車の業績が好調ですが、固定費を見るとそう簡単に稼げる産業ではないことが分かります。

  • 人件費
  • 減価償却費
  • 土地建物賃貸料
  • 保険料
  • 修繕費
  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 広告宣伝費
  • 研究開発費
  • 税金
広大な工場と大量の労働者を維持していかなければいけないため、人件費や家賃などの費用負担が重く、経費削減の努力を怠ると一気に経営が苦しくなります。

②卸売業・小売業の固定費一覧!

総合商社を代表する卸売業やイオン等が該当する小売業。こちらも固定費は多岐にわたります。

  • 人件費
  • 車両燃料費(卸売業は50%)
  • 車両修理費(卸売業は50%)
  • 通信費
  • 広告宣伝費
  • 販売費
  • 減価償却費
  • 交際・接待費
  • 土地建物賃借料
  • 保険料(卸売業は50%)
  • 修繕費
  • 水道光熱費
  • 支払利息
  • 税金
  • 管理費

一般的には卸売業が上流工程と言われますが、最近は小売業に該当する会社がグループで卸売業も兼ねるなど業界の垣根を超えたビジネスを行う例もあります。


その際、小売と卸売で会社を分け、別々に計算を行っていることがほとんどです。

③建設業の固定費一覧!

バブル期はイケイケだった建設業。他の業種と異なり専用の機材が必要なため、その分が固定費として計上されます。


  • 人件費
  • 土地建物賃借料
  • 保険料
  • 事務用品費
  • 通信交通費
  • 交際費
  • 補償費
  • その他経費
  • 修繕維持費
  • 広告宣伝費
  • 支払利息
  • 税金
  • 減価償却費
  • 動力・用水・水道光熱費
  • その他管理費
機材は稼働しなくても管理費用がかかりますから、稼働率を上げたり効率的に機材を運用することにより固定費を圧縮することができます。

変動費とは売上によって変動する費用!求め方や固定費との違いを紹介!


次に変動費も見ていきましょう。


変動費は可変費とも言い「売上の増減に応じて変動する費用」のことです。

主な変動費は下記の通りです。

  • 原材料費
  • 仕入原価
  • 販売手数料
  • 外注費
  • 車両燃料費
  • 支払運賃
人件費も、残業代や派遣社員の給与については変動費とみなされる場合があります。
いずれも、売上が減れば減る、増えれば増える費用です。

変動費については、固定費とは考え方が異なり、ある程度増えるのは仕方ありません。
増えるのは会社の売上高が上昇している証拠だからです。

ただ、売上以上に変動費が上昇している場合、非効率な生産・業務を行っている懸念がありますので要注意。

よく会計上使われる言葉で、売上高から仕入原価を差し引いたものを売上総利益、通称粗利(あらり)とも呼びます。
社名は出しませんが、日本の有名企業の中で粗利の時点でマイナス(赤字)の企業もあるので、変動費もきちんと管理・見直しをしていかないと業績悪化につながります。

変動費の求め方も、固定費と同様さほど難しくありません。
それぞれの費用を求め、合計するだけ。

ただ、変動費なのか固定費なのか業種によって微妙に異なる費用もあるため、ごちゃごちゃに計算することがないように注意しましょう。

①製造業の変定費一覧!

固定費と同様に変動費も見てみましょう。

  • 直接材料費
  • 買入部品費
  • 外注費
  • 間接材料費
  • 直接経費
  • 重油等燃料費
  • 当期製品知仕入原価
  • 製品の棚卸高
製造業は部品や材料費が主な変動費になります。


②卸売業・小売業の変定費一覧!

  • 売上原価
  • 支払運賃
  • 支払荷造費
  • 支払保管料
  • 車両燃料費(卸売業のみ50%)
  • 保険料(卸売業のみ50%) 
なお、小売業の車両燃料費、車両修理費、保険料はすべて固定費です。

③建設業の変定費一覧!

  • 材料費
  • 労務費
  • 外注費
  • 仮設経費
  • 動力・用水・光熱費(完成工事原価分のみ)
  • 運搬費
  • 機械等経費
  • 設計費
完成工事原価とはその名の通り、完成した工事として売上計上する金額に対する原価のことです。

固定費と変動費の計算が難しいときは損益計算書を参考にしよう!


ここまで固定費と変動費について解説しましたが、


「いやこんなに沢山あったら分からないよ…」

「算数すら苦手なのに会計なんてムリ!」


と拒否反応が出てる人もいるかもしれません。


そんな時に参考になるのが「損益計算書」です。通称P/L(Profit and Loss Statement)とも言われます。


実際に、上場企業では例外なく損益計算書が公開されています。

気になる人は、例えばトヨタの決算要旨を見てみましょう(PDF13頁)。


※トヨタじゃなくても上場企業ならどこでもOK


会社の経理では、固定費や変動費をきちんと仕分けして集計していますが、基本的には損益計算書がある程度読めれば問題ありません。


損益計算書で重要なものは下記の通りです。

これらを勘定科目と言います。

  • 売上高(売上収益)
  • 売上原価
  • 販管費および一般管理費
  • 売上総利益(粗利)
  • 営業利益
  • 営業外収益or損失(IFRS適用企業では使わない)
  • 経常利益(IFRS適用企業では使わない)
  • 特別利益or損失(IFRS適用企業では使わない)
  • 税引前利益
  • 法人所得税
  • 当期利益(当期純利益)

なお、IFRSとは国際会計基準のこと。

海外ではIFRSが当たり前なので、日本企業でもトヨタ等のグローバル企業が採用しています。


ここまで解説してきた固定費や変動費は、ほとんどが「販管費および一般管理費」にまとめられます。


基本的には上記の通りの順番で損益計算書が記載されており、以下のような計算になっています。

売上総利益(粗利)=売上高-売上原価

営業利益=売上総利益-販管費および一般管理費(固定費+変動費)

経常利益=営業利益+営業外収益or損失

税引前利益=経常利益+特別利益or損失

当期利益=税引き前利益-法人所得税

実際には損益計算書を出すまでに膨大な計算をしているのですが、会社の経理は一人で全部やるわけではありません。


全体的な仕組みと言葉だけ覚えていれば十分だと思います。

損益分岐点とは?公式で固定費と変動費を計算して求めよう!


固定費、変動費、損益計算書まで分かったところで、次は損益分岐点を見ていきましょう。


損益分岐点とは、費用を売上でカバーでき、損益が「0」になりこれ以上の売上なら利益が出る、という売上高をいいます。


すなわち、損益分岐点とは企業が存続するために最低限必要な売上高ということになるのです。


万が一損益分岐点を超えられない場合、売上総利益(粗利)の時点で赤字確定。

この状態が何年も続けば、会社存続自体が危うくなります。


「またわけわからない言葉が…」

「もうこれ以上ついていけない!」


と思った方。


焦らず、固定費と変動費について復習しましょう。

  • 固定費(不変費):売り上げの増減に関わらずかかる費用
  • 変動費(可変費):売上の増減に応じて変動する費用
固定費は必ず発生するものでしたね。
そして、売上高が増えるに従って変動費が加わっていきます。

経理上は売上から変動費を差し引き、その残りのお金で固定費を支払っていくことになります。

もちろん少ない売上では固定費が賄えませんが、売上が増えていくにつれて固定費を払い終わった時点で0円になるところがあり、そこが損益分岐点となるのです。
この基本を忘れずに、損益分岐点を求めていきましょう。

求め方は2つありますので、順番に解説します。

求め方①公式に固定費と変動費を当てはめて損益分岐点を計算する

最も手っ取り早い求め方は、公式に当てはめて計算する方法です。

とりあえず覚えればいいので楽です。

損益分岐点=固定費÷{(売上高−変動費)÷売上高}

売上高-変動費は「限界利益」とも言われ、この限界利益が固定費の支払いに充てられる分になります。


この式さえ覚えておけば、固定費、変動費、売上高を求めて式に入れるだけです。

求め方②損益分岐点の意味を考えてから公式で計算する

損益分岐点の意味から考える計算方法もあります。


前述した通りですが、売上から変動費を差し引き、その残りのお金で固定費を支払っていくことになります。 


固定費を払い終わった時点で0円になるところがあり、そこが損益分岐点。


例を出しましょう。


  • パン屋さん (1個120円で販売)
  • 変動費80円/1個
  • 固定費100万円/年
この場合の損益分岐点を求めていきます。

まずは1個当たりの限界利益を出します。
120円-80円=40円ですね。

固定費が100万円なので、損益分岐点に到達するには
100万円÷40円=25,000個の売上が必要です。

後はこれを金額に直すだけ。
120円×25,000個=300万円となります。

やっていることは上の公式と同じです。

固定費率が100%は赤字!求め方や計算方法を解説!


ただ、どう計算しても損益分岐点に到達しない場合があります。

それは固定費率が100%の場合。


固定費率の求め方は簡単です。

固定費率(%)= 固定費÷売上高×100

これが100%ということは、売上高が全て固定費として出ていってしまう状態。

固定費だけでなく変動費が必ずかかりますから、絶対に赤字になります。


固定費率が100%の場合は、損益分岐点を計算する意味は全くありません。

変動費率は高いほうが利益が出る!求め方や計算方法を解説!


変動費率も少ない方が利益が出ます。

いくら売上のためには仕方ない支出とはいえ、変動費率が高ければ「いくら売っても利益が増えない」状態に陥ってしまうからです。


変動費率の求め方も簡単です。

変動費率(%) = 変動費÷売上高×100

例えば、変動費率が10%の会社は、20%の会社より2倍の収益力があると言えます。


ただし、最も重要なのは変動費と固定費の比率です。


特に小規模でビジネスをしている方の場合、固定費の比率が高いと倒産確率が一気に跳ね上がります。逆に変動費の比率が高い場合は楽に経営することができます。


脱サラしてラーメン屋を開く方の大半が大きな損失を出して閉店してしまうのはこのためで、具材等の変動費に対して店舗を維持する固定費があまりにも高すぎるからです。


逆にブロガーやYouTuber等は圧倒的に固定費が少なく、ほとんどゼロに等しいレベルです。変動費すら、パソコンや最低限の機材など少額で済みます。


ここでは個人に例えましたが、会社でも同じことです。


一般的に固定費が高くなる製造業の利益率が低く、ネットを駆使した情報通信業の利益率が高いのは、企業努力の差云々以前に、固定費の比率の違いが生むものです。

変動費より固定費の見直しを優先しよう


変動費と固定費、会社の経理部門所属の方は日々計上、分析を行っています。


経費の見直しが必要な場合は、大原則として固定費の見直し(削減)が優先です。

なぜなら、固定費は売上が落ちても減らないからです。


これは実際にニュースなどを見ても分かります。

リーマンショック時に大手製造業がとった行動を振り返ってみましょう。

  1. 派遣社員をリストラする
  2. 工場を閉鎖する
  3. 正社員をリストラする
とにかく人件費と工場の賃料を安くする手段を講じていった企業がほとんどでした。
こうすることで、状態は良くなりませんが悪化は止まります。

何も手を打たないと、日々固定費で会社のお金が吸い取られていくジリ貧状態。

それを避けるためには固定費の削減しかないのです。


どうしても社員を解雇させたくない場合は、下記の手段を取ることも一考でしょう。

  • 都心のオフィスを小規模化する
  • 営業所を集約する
  • 手当などを減額する
  • ボーナスカット
リストラほどの効果はありませんが、少し改善すれば問題ない場合はこのような措置を取る企業も多いです。

変動費ももちろん見直しが不要というわけではありませんが、滅多なことがない限り変動費率100%という状況は起きませんし、変動費が高すぎる商品・サービスなら撤退してしまえば良い話です。

まとめ:固定費と変動費の求め方を知って計算しよう

ここまで、固定費と変動費について損益分岐点等も交えながら詳しく解説しました。

いかがでしたでしょうか。


本記事では、

  • 固定費、変動費の求め方
  • 損益計算書について
  • 損益分岐点の求め方
  • 固定費率変動費率の求め方
  • 固定費、変動費に対する考え方
など、固定費、変動費について実際の会計等も踏まえながら見ていきました。
改めて冒頭の疑問にお答えすると、
  • 固定費(不変費):売り上げの増減に関わらずかかる費用 
  • 変動費(可変費):売上の増減に応じて変動する費用
となり、固定費は地代家賃や人件費などが、変動費は材料費や部品代が該当します。
損益分岐点も含め、様々な求め方、計算方法をご紹介しましたので、何度も見返して復習してみてください。

経理関係のお仕事は大変ですが、将来自分が独立したり、副業を行ったりする際にも使える知識が身につきます。
また、仮に経理関係でない方にとってもお金に強くなる記事になっていますので、是非勉強してみてください。

面倒がらずに取り組みましょう!