会社や企業における固定費とは何でしょうか?この記事では、会社や企業における固定費の意味や分析する必要がある理由を解説しています。固定費の計算方法や節約方法も併せて紹介していて、「固定費とは?」という疑問に対して必ずお答えできると思います。
監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
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この記事の目次
- 会社における固定費とは?
- 固定費とは売上に関係なく必ず必要な費用のこと!
- 固定費と変動費の違いは?
- 固定費の具体例一覧を紹介
- 固定費を用いた分析方法は?固定費の削減を考えるべき?
- ①限界利益から固定費を差し引いたものが最終利益となる
- ②固定費を削減することで損益分岐点売上高を下げることができる
- 固定費の求め方や計算方法をわかりやすく解説!
- ①直近の損益計算書の科目から固定費と変動費を分配する
- ②総費用法を用いて売上高の変化から固定費を逆算する
- ③Excelを用いた回帰分析法で固定費を求める
- コラム:変動損益計算書を作ってみよう
- 固定費を計算して求める際の注意点とは?
- ①固定費と変動費に分かれる科目もある
- ②固定費か変動費か迷いすぎない
- ③一度固定費と考えると決めた科目は原則変動費に変更しない
- 固定費の削減できる具体例4選!
- ①IT技術の導入やマニュアル化を進める
- ②日々の業務をアウトソーシング(外注化)する
- ③税理士と相談して節税する
- ④オフィスや事務所の家賃を節約する
- コラム:家庭の生活費も固定費削減で節約できる!
- まとめ:固定費とは売上に関係なく必ず必要な費用のこと!
会社における固定費とは?
固定費。日常生活で使う分には難しい言葉ではありませんが、企業の固定費となるとどうでしょうか?
固定費とは何があるのか、ぱっとイメージできるでしょうか?
企業の経費は、固定費と変動費に分けることができるのですが
その中でも今回は固定費とは何かについて
- 固定費とはどんな費用?
- 固定費を用いた分析方法とは?
- 固定費の求め方とは?
- 固定費を計算する際の注意点とは?
- 固定費を削減する具体的な方法とは?
固定費とは売上に関係なく必ず必要な費用のこと!
固定費とは、売り上げや商品を販売した数に左右されず、一定の金額で発生する費用のことです。
事業を継続するために、固定的に発生します。
企業や業種によって固定費とは何を指すのか、解釈が異なる場合もあります。
例えば、固定費の代表的な例として、人件費が挙げられますが、残業手当は固定費ではなく、変動費と考えることも多いのです。
固定費に対し変動費は、売り上げや商品を販売した数によって変動する費用のことです。
固定費のように、決まった金額が必ず発生するものではありません。
固定費と変動費の違いは?
固定費とは、売り上げや商品の販売数に関係なく、一定の金額で発生する費用のことだとお伝えしました。
売り上げが増えても減っても変わらない金額が固定費であり、0円でも必ず発生してしまいます。
変動費とは、固定費とは違い、売り上げや商品を販売した数によって変わる費用のことです。
売り上げが増えれば変動費も増え、売り上げが減れば変動費も減ります。
このように、金額が場合によって変化する費用を変動費と呼びます。
ちなみに、変動費や固定費とは具体的に何を指すのかは、会社や業種によって異なってきます。
固定費の具体例一覧を紹介
固定費とは何か、具体例を挙げると以下のようなものが当てはまります。
- 家賃
- 人件費
- 水道光熱費
- 広告宣伝費
- 減価償却費
- 福利厚生費
- 保険料
- 交通費
- 通信費
- 消耗品費
- 役員給料手当
- 事務員(管理部門)
- 販売員給料手当
- 従業員教育費
- 租税公課
- 研究開発費
- 直接材料費
- 買入部品費
- 外注費
- 間接材料費
- 重油等燃料費
- 売上原価
- 支払運賃
- 支払荷造費
- 支払保管料
- 車両燃料費
- 材料費
- 労務費
固定費を用いた分析方法は?固定費の削減を考えるべき?
結論、固定費とは削減する価値が大いにあると言えます。
経費は安く済むに越したことはありません。
その中でも特に固定費とは、その節約の効果がずっと固定で継続するものです。
一度見直すだけで、長い目で見ると大幅なコストダウンが実現可能です。
固定費を用いた経費の分析方法について、以下2点を解説していきます。
- 限界利益から固定費を差し引いたものが最終利益
- 固定費を削減することで損益分岐点売上高を下げる
①限界利益から固定費を差し引いたものが最終利益となる
限界利益とは、商品やサービスの売り上げに連動する形で得られる利益を言います。
言ってしまえば、その会社がどれだけお金を稼いでいるかの指標になるものであり
原価と売価の間にどのくらいの利益が発生しているのか?を表します。
売り上げから変動費を引いた金額が限界利益になります。
最終利益は、純利益とも言います。
企業が得た収入から固定費を含めたすべての費用を引き、最終的に残った純粋な利益を指します。
限界利益では、売り上げから変動費のみを引いており、固定費のことは考えていません。
②固定費を削減することで損益分岐点売上高を下げることができる
損益分岐点(売上高)をイメージした図を見ていただければ分かりやすいと思いますが
固定費を削減すると、損益分岐点(売上高)を下げることができます。
そもそも損益分岐点(売上高)とは、商品やサービスを販売するのに掛かる費用を収益でカバーでき、以降は利益が出る売上高のことを表します。
損益分岐点(売上高)のイメージ図を見ると、固定費は売上高に関係なく存在し
その上に売上高に応じた変動費が発生しています。
費用の線が固定費から書き始められていることからも分かるように
固定費を下げれば、その分費用の線も下にずれるわけです。
そうなれば、売上高と費用の交点である損益分岐点も左下の方へ移動する、つまり下がることになります。
固定費の求め方や計算方法をわかりやすく解説!
固定費の計算方法を説明していこうと思いますが
「固定費をわざわざ計算しなくても、とりあえず経費を削減すればいいのでは?」
「固定費と変動費が分かったところで何か意味があるのか?」
と思った方はいないでしょうか?
固定費や変動費は事業を分析する指標である限界利益と損益分岐点に関わってきます。
そのため固定費や変動費を把握することは、会社を運営していくうえでは欠かせません。
それでは固定費とはどのように計算すればいいのか?
ここでは、固定費の求め方を以下3つご紹介します。
- 損益計算書の科目から固定費と変動費を分配
- 総費用法を用いて売上高の変化から固定費を逆算
- Excelを用いた回帰分析法で固定費を求める
①直近の損益計算書の科目から固定費と変動費を分配する
損益計算書を見てみましょう。
損益計算書に記載の科目を固定費と変動費に分けてみます。
この分配のことを固変分解や原価分解と言います。
先ほど少し触れましたが、ある費用が固定費であっても、企業や業種によっては変動費になり得ることがあり、厳密に分けることが難しくなっています。
ちなみに、会社が内部で管理を行う管理会計は、企業が自社を分析するために行うので、一定の基準はありません。
そのため固定費と変動費の分類が異なることは、問題ありません。
固変分解で、最も簡単かつ一般的な分け方が勘定科目法です。
勘定科目法で分ける時には、中小企業庁の「中小企業の原価指標」が便利なので利用してみましょう。
②総費用法を用いて売上高の変化から固定費を逆算する
総費用法とは、2期間の売り上げと費用を比較して、売り上げが増えるとともに増加する費用を変動費と考える方法です。
ただ、総費用法は、販売価格・変動費率・固定費に大きな変化がなく、異常な費用がない場合でないと使えません。
計算方法としては、以下になります。
- 変動費率を計算
- 変動費を計算
- 固定費を計算
まず変動費率を計算します。
変動費率(%)=費用の増加分/売上の増加分
次に変動費を計算します。
変動費=売上高×変動費率
そして、以下で固定費を出します。
固定費=売上高-変動費
これで、固定費が算出できます。
③Excelを用いた回帰分析法で固定費を求める
回帰分析とは、過去の事象から法則を見つけて数式化することを言います。
今回の場合、過去の業績から固定費を算出することになります。
「コスト=売上高x変動比率+固定費」という式に、過去の売上高・コストを当てはめて、帰納的に固定費を算出する、ということをExcelを使って行う方法ですね。
以下の手順で算出します。
- Excelに表でデータを入力
- 「データ分析」を選択
- 「回帰分析」を選択
- 変数を指定
- 算出結果を確認
1.Excelに表でデータを入力
Excelにデータを表にして入力します。2.「データ分析」を選択
Excelの「データ」タブから「データ分析」を選択します。「データ分析」が見当たらない場合は以下の手順を行ってください。
- 「ファイル」→「オプション」→「アドイン」を選択します。
- 「分析ツール」を選択します。
- 「設定」→「分析ツール」にチェックを入れて、「OK」をクリックします。
これで、Excelの「データ」タブの一番右側に「データ分析」が出てきます。
3.「回帰分析」を選択
表示されたウィンドウから「回帰分析」を選択します。
4.変数を指定
今回はコストと売上高を指定してみましょう。
5.算出結果を確認
Excelの別シートに、回帰分析の結果が出力されます。
出力結果の見方はを参考にしてみてくださいね。
コラム:変動損益計算書を作ってみよう
変動損益計算書は原価や経費などすべての費用を、変動費と固定費に分けています。
売上高から変動費を引いて限界利益を算出しており、さらに固定費を引いて経常利益を算出します。
売り上げの増減に比例して限界利益が増減するため
損益計算書よりも変動利益計算書の方が、業績を判断しやすいというメリットがあります。
通常の損益計算書では、売上原価に固定費が含まれます。
そのため売上総利益が売上に比例しません。
しかし、変動損益計算書であれば、例えば売り上げが15%増えれば、限界利益も比例して15%増加します。
売り上げの増減によって限界利益がどのくらい増減するのかがすぐに分かります。
固定費を計算して求める際の注意点とは?
ここまで、固定費の計算方法についてお伝えしてきました。
実は、固定費を計算して求める際には、以下の注意点があります。
- 固定費と変動費に分かれる科目がある
- 固定費か変動費か迷いすぎない
- 一度固定費と考えると決めた科目は原則変動費に変更しない
①固定費と変動費に分かれる科目もある
前述しましたが、例えば人件費は一般的に、固定費に分類されます。
給料明細を見ると「基本給」のような項目があるように、一定の金額が支払われている側面があります。
しかし、繁忙期だけに採用する派遣社員・アルバイトの給料、残業手当などは変動費と捉えることができます。
人件費のように、費用の中には固定費としての側面、変動費としての側面、両方を持っている費用もあるのです。
勘定科目法で固定費か変動費かを分類するには限界があることが分かります。
②固定費か変動費か迷いすぎない
そもそも経営分析の目的は、売り上げや経費といった会社の数字を大局的に把握することです。
固変分解に迷いすぎてしまうのは、望ましくありません。
1円単位で固定費や変動費がそれぞれいくらなのかを把握することが目的ではないですよね。
固変分解に時間をかけすぎてしまうのは、本来の目的とずれてしまっています。
あくまで目的は、損益分岐点を把握したり
固定費や変動費にそれぞれどのくらい経費がかかっているのかを把握したり
削減できる経費はないかを探ったりすることです。
③一度固定費と考えると決めた科目は原則変動費に変更しない
繰り返しになりますが、固変分解の目的は、損益分岐点を把握したり
固定費や変動費にそれぞれどのくらい経費がかかっているのかの把握です。
固定費を変動費に変えてしまうと、損益分岐点が大きく変わってしまいます。
企業が管理会計を行う際に、正確な自社の分析ができなくなったり、分析に支障をきたすことが考えられます。
また、先ほどもお伝えしましたが、固定費に大きな変化が生じると、総費用法が使えないといったデメリットもあります。
固定費の削減できる具体例4選!
固定費を下げれば会社の経費削減に効果的なのは説明した通りですが、
具体的に何を実施すればいいのでしょうか?
固定費を削減できる例を4つご紹介します。
- IT技術の導入やマニュアル化
- アウトソーシング(外注化)
- 税理士と相談して節税
- 家賃を節約
①IT技術の導入やマニュアル化を進める
固定費削減の方法として、まず挙げられるのが、IT技術の導入と仕事のマニュアル化です。
IT技術の導入としては具体的に以下の方法があります。
- ペーパーレス化
- 自動化
- web会議
- テレワーク
- システム化
ペーパーレスにすれば、書類が減り、用紙代・インク代・筆記用具代といった備品の費用がかかりません。
また複合機の導入や修理にかかる費用も抑えられます。
自動化については、例えばメーカーの場合、受注処理を自動化するといったことが可能です。
自動化前は取引先からの注文書をもとに、従業員が目視で確認しつつ、受注システムに入力し、発注システムにも入力するという作業が必要だとします。
この作業を、自動で注文書を読み込み、受注システムと発注システムへの入力も自動で行う、といったシステムが存在していれば、どうでしょうか?
この作業を行っていた人員の削減だけでなく、ミスの減少や時間短縮も期待できるのではないでしょうか?
また、web会議やテレワークでは、通勤費や出張費の節約が期待できます。
②日々の業務をアウトソーシング(外注化)する
アウトソーシング(外注化)も、固定費削減の可能性を秘めています。
社内の人件費と、アウトソーシングした場合の費用との比較が必要になってきますが
アウトソーシングの方が低コストの場合は、アウトソーシングに切り替えることでコストを抑えることができます。
また、アウトソーシングにより、新たな設備への投資や、人材募集をしなくても、リソースが確保できます。
アウトソーサーの設備や人材を利用すれば、需要の増減に応じて、商品やサービスの提供が行えます。
固定費であった人件費や設備費を変動費とすることすら可能です。
③税理士と相談して節税する
税理士に相談すれば、企業の現状を正確に把握・分析してくれます。
削減できる経費と、必要な経費を明確にし、固定費を削減するためのアドバイスを、プロならではの視点で与えてくれるでしょう。
節税対策としては、以下が主に挙げられますが、どれが効果的なのか分からない場合も多いと思います。
また務めている会社によっては使えない対策もあるので、税理士の判断を仰いでみましょう。
- 使っていない固定資産の除却
- 不良在庫の処分
- 飲食交際費の特例適用
- 売上計上基準の変更
- 含み損を抱える不要資産の売却
④オフィスや事務所の家賃を節約する
家計ではよく「三大固定費」の一つとされる家賃ですが、企業の場合も家賃の節約は固定費の大きな節約になります。
なお、家賃の節約を行う際には、働き方も同時に見直すと効果的です。
オフィスを丸ごと引っ越さなくても、保有したり契約している面積を減らすことで、家賃の節約が実現できる場合もあります。
借りているフロアを減らしたり、空いたスペースを返還したりするだけでも、家賃の削減に繋がるでしょう。
働き方の見直しとしては、まずテレワークの導入が挙げられます。
出社する人数を減らすことで、オフィスの使用面積を減らします。
他の面でもコスト削減が期待できることは、①の「IT技術の導入」でもお伝えしましたね。
あとは、フリーアドレス制の導入も挙げられます。
テレワークを導入すればなおさらですが、全社員が毎日オフィスにいるわけではありません。
フリーアドレス制とは、名前の通り、固定の座席ではなく自由に各自が働く席を選ぶことです。
固定された座席を廃止することにより、稼働していない無駄なスペースをなくすことができます。
フリーアドレス制は、スペースの削減だけでなく、社員同士のコミュニケーションが円滑になるというメリットもあります。
コラム:家庭の生活費も固定費削減で節約できる!
今回、企業の経費についてお話していますが、家庭での生活費も固定費の削減で節約が可能です。
特に家計の節約といえば、変動費にばかり目が行きがちではありませんか?
こまめに電気を消したり、安いスーパーへわざわざ買い物に行くといった節約が無意味とは言いません。
しかし、そうした小さな作業の積み重ねではなく
固定費を下げるという、たったひと手間を加えれば、長期間の大きな効果が期待できます。
企業での固定費削減でも説明した通り、家賃をはじめ、通信費の見直しも効果てきめんです。
格安SIMに変更すれば、年間数万円単位で節約することが可能です。
最近では、大手キャリアからも格安プランが出ていますので、そちらに契約変更をするのもありですね。
他にも、家計の固定費を削減する方法として以下が挙げられます。
- 電力会社を乗り換えて毎月の光熱費を下げる
- 加入している保険は本当に必要なのかを検討してみる
- 車を手放す
- 使っていない定額制(サブスクリプション)サービスを解約
- ふるさと納税や医療費控除で節税
家計の固定費は手軽なところから改善できます。
また、生活の満足度をほとんど落とすことなく、節約ができるのも嬉しい点です。
せっかくなので、固定費削減の考えを家計にも取り入れて、無理せずに支出を減らしていきましょう!
まとめ:固定費とは売上に関係なく必ず必要な費用のこと!
今回、固定費とは何かについて
- 固定費とは売上に関係なく必ず必要な費用
- 固定費を用いた分析方法
- 固定費の求め方
- 固定費を計算して求める際の注意点
- 固定費の削減方法4つ