組立保険は、機械や設備の組立工事中に発生する様々なリスクをカバーする重要な保険ですが、その複雑な補償内容や適切な保険金額の設定に悩む経営者が多いのが現状です。
そのため、自社の工事規模や特性に合わせた最適な保険プランの選択や、コスト面での懸念から導入を躊躇している経営者の方も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、組立保険の具体的な補償内容や保険料、加入の際に使えるおすすめの方法まで紹介します。
・機械や設備の組立工事を行っており、リスク管理の強化を検討している経営者の方
・工事規模の拡大に伴い、より包括的な保険カバーを必要としている経営者の方
は本記事を参考にすると、組立保険に関する理解を深め、自社の事業に最適な保険プランを選択するための具体的な指針を得ることができ、より安定した事業運営につながります。
内容をまとめると
- 組立保険は建物の内装や外装、機械や設備の設置・組立などの工事で、不測かつ突発的に起きた工事物の損害に対して補償される。
- 台風や洪水、土砂崩れなどの自然災害や施行ミスや作業ミスなども補償されるが、地震による損害、故意または重大な過失では補償されない。(第三者への補償などは、特約を付帯すれば可能)
- 組立保険の保険料は、工事物や工事期間などの違いによって異なる
- 上記のように事業のリスク対策や法人保険の悩みを解消するために、「マネーキャリア」を使って、法人保険のプロへ無料で何度でも相談できるサービスを使う会社も急増している。
組立保険とは、組立工事における火災や盗難、自然災害により工事の目的物に損害が発生した場合の費用を補償するための保険です。組立保険に加入義務はありませんが、損害発生時の自己負担額は多額となる可能性が高いため、加入をおすすめします。
この記事の監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
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この記事の目次
組立保険とは?
工事内容の違いによって、加入すべき種類が異なる工事保険ですが、機械や設備の設置、取付などの工事が対象となる工事保険が組立保険です。
予期せぬ事故によって、事故が起こってしまった場合、復旧するためのリスクに備えて加入すべき組立保険は、不測かつ突発的な事故による工事物の損害を対象とした賠償責任に備えるための保険となっています。
設置や組立などを行う工事物や、その工事に必要な足場工や型枠工の事故、仮事務所や什器なども補償され、従業員の施行ミスで起こった事故や、工事物が盗難された場合も補償範囲です。
ただし、解体や分解、建築自体にかかわる工事は組立工事の対象外となり、組立保険だけでは人への賠償責任に対する備えにはならないので、注意しておきましょう。
また、工事着工から引渡し日までの期間が補償期間となるため、組立保険に加入するなら契約を締結した時から着工日までに手続きをしなければなりません。
組立保険と建設工事保険の違いとは
組立保険と建設工事保険は、加入を検討する際に、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。
- 組立保険:工事中に起きた事故で損害を与えた物に対して補償
- 建設工事保険:建設中の工事物に損害が発生したときに復元するための補償
組立保険 | 工事の対象物の例 |
---|---|
設備の 取付工事 | 内装や外装、 ガスや電気設備など |
設備一式の 工事 | 工場や発電プラント、 発電所など |
設備設置の 組立工事 | コンピューターや立体駐車場、 エレベーターなど |
鋼構造物の 建設工事 | アーケードや鉄骨建物、 歩道橋やアンテナなど |
複数の機械や 装置の設備工事 | 冷凍・冷却設備や運搬設備、 発電設備など |
一方、建設工事保険では、建築中の建物に対し損害が発生した場合、復元するための費用を補償する保険です。
建物を建築工事に起こりうる事故で復元や修復費用に対して備えるなら「建設工事保険」、外装や内装、設備関係の工事で機械や設備に損害を与えたときの賠償費用に備えるなら「組立保険」となります。
組立保険の補償内容とは
組立保険で補償されるのは物に対してですが、以下のような場合の損害に対して保険金が支払われます。
- 火災や爆発、破裂などの事故
- 台風や暴風、落雷、洪水、高潮など自然災害
- 設計や製作、材質などの欠陥による事故
- 土砂崩れや地盤沈下・隆起などによる損害
- 電気のショートやスパーク、過電流などによる電気的現象を原因とした事故
- 作業員や従業員、第三者の過失による事故
- 盗難による損害
組立保険に付帯できる特約
組立保険は、様々な特約を付帯することで、より補償範囲を広くすることが可能です。
- 他人の怪我や財物に損害を与えた場合に備える『損害賠償責任保険特約』
- 敷地内の工事物以外に損害を与えた場合に備える『敷地内所在物特約』
- 損害を与えたものを急いで直すために追加で必要となった時の『特別費用特約』
- 事故の片付けに必要となる費用に備える『残存物などへの特約』
- 引渡し後のメンテナンス期間中に起きた事故に備える『メンテナンス特約』
組立保険で支払われる保険金
組立保険に加入する際、保険金額を設定する必要があり、工事の請負金額などをもとに計算します。
保険金額=請負金額+支給される材料の金額-保険の目的に含まれない工事金額
請負元からの支給など、請負契約書に記載されていない金額があるなら、その金額も保険金額として加算されますが、工事のなかに解体など組立保険の保険目的と異なる工事が含まれている場合は除外されます。
ただし、事故が起こってしまったとき、設定された保険金額ではなく、支払われる金額は以下のような計算によって決まり、損害以上の保険金が支払われることはありません。
支払われる保険金=(損害額-免責金額)×(保険金額÷請負金額)
免責金額は、保険会社によって違いがあり、たとえば損保ジャパンでは、工事内容ごとに免責金額が設けられています。
- 建物の内装や外装工事:2万円
- ビル付帯設備の冷房や給排水、電気、ガスなどの工事:2万円
- プラント物件に関する工事:10万円
- その他の工事:保険金額に対して2~10万円
組立保険で保険金が支払われないケース
工事中の万が一に備え、組立保険に加入していても、保険金が支払われないケースもあります。
保管きんが支払われないケースは以下のとおりです。
- 組立工事に該当しない工事で起こった事故
- 施行する工事業者や従業員などの重大な過失により起こった事故
- 地震や噴火、津波による損害
- 暴動や騒擾、テロ行為によって発生した損害
- 経年劣化などが原因によって起こった事故
- 設計や材質などの欠陥を補うために発生した費用
- 残材調査で判明した紛失などの損害費用
- 工事期間の遅延や債務不履行などによる損害費用
- 雨や雪、雹の吹込みによって起こった損害 など
組立保険の保険料の計算方法
組立保険は、どのような機械や設備を工事するのかによって基本となる保険料率が異なり、請負金額や工事期間、免責金額の設定や特約付帯に有無によって、大きく変わります。
補償範囲となる工事種類が多い分、適用される保険料率の範囲も広いことから、組立保険の保険料にどれほど保険料が必要なのかは、相場を知るよりも保険会社や専門家に見積もりを依頼することをおすすめです。
ここでは、2つの工事事例について、組立保険の保険料を紹介します。
組立保険の 保険料 | ビルの冷暖房設備の 設置工事 | レーザー加工機 据付工事 |
---|---|---|
工事期間 | 2か月間 | 2か月間 |
請負金額 | 5,000万円 | 2,000万円 |
保険金額 | 5,000万円 | 2,000万円 |
免責金額 | 2万円 | 10万円 |
特約 | 損害賠償責任補償特約 1事故5,000万円 (対人対物共) 免責金額0円 | 損害賠償責任補償特約 1事故5,000万円 (対人対物共) |
保険料 | 104,600円 | 約6万円 |
組立保険を取り扱う保険会社によって付帯できる特約も異なるため、必要な補償と可能な免責金額を設定しつつ、保険料と相談しながら加入すべき組立保険を決めましょう。
なお、支払った保険料は全額経費として損金扱いが可能です。
とはいえ、無理のない保険料を設定することが大切なので、組立保険に加入する場合は、専門家にアドバイスをもらいながら比較することをおすすめします。
年間を通じて工事現場が複数あるなら、「総括契約(契約時に指定する工事の種類)」によって割引が適用されるなど、有利なアドバイスをしてもらえるのでコスト削減にもつながります。
組立工事についてよくある質問
法人保険の専門家には、組立工事を含む法人向けの損害保険について、質問される機会が多々あります。
そのなかでも、よくある組立保険に関する質問をご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
- 組立保険と火災保険は何が違う?
- 組立工事に加入義務はあるのか?
①組立保険と火災保険の違いとは?
法人向け損害保険のうち、組立保険と火災保険を比較すると、補償対象や補償内容、付帯できる特約内容が大きく異なります。
工事における事故に対して備えるなら、組立保険と火災保険の加入対象は以下のようになります。
保険種類 | 補償の対象 |
---|---|
組立保険 | ・建物の外装や内装工 ・機械や設備の組立 ・工場やプラントの設備や内装組立 ・複数の機械設備一式を組立 |
火災保険 | ・建物や設備 ・什器や備品 ・自社の商品や製品 |
また、補償内容にも違いがあるので、注意しておかなければなりません。
補償内容の違い | 組立保険 | 火災保険 |
---|---|---|
火災や爆発事故 による損害 | 〇 | 〇 |
盗難による損害 | 〇 | 〇 |
施行ミスや作業ミス による損害 | 損害に対して補償 | 火災が起きた場合 のみ補償 |
台風や豪雨、 洪水や高潮などの損害 | 〇 | × |
外部から衝突などの損害 | 〇 | 〇 |
公共工事などでは、工事に対する火災保険を必要とするケースが多くなっていますが、必ずしも自治体が求める補償が火災保険だけで良いとは限りません。
- 工事現場で事故が起きた場合の補償
- 工事によって第三者へ損害を与えた場合の補償
これらを必要とする場合、工事現場での事故に対しては組立保険を含む工事保険、第三者への補償なら、請負賠償責任保険が必要となるのです。
火災保険よりも、組立保険の方がよい幅広いリスクに対して補償されるため、それぞれの補償範囲をよく理解し、請負元へ確認したうえで加入することをおすすめします。
②組立工事に加入義務はある?
組立工事を含め、工事保険に加入義務はありません。あくまでリスクに備えて、任意で加入するものとなっています。
しかし、法人や個人事業主として工事を受注した以上、万が一の事故を考え、補償を準備しておくことは、社会的信用や事業を継続するために必要です。
- もしも従業員のミスで損害が発生したら、その賠償は誰が支払う?
- 強風で足場が倒れ、建物や第三者に被害が出て、高額な賠償となったら?
- ゲリラ豪雨で洪水が発生して、工事物に損害が出たら復旧費用はどうする?
組立保険を含むリスク対策の悩みを解消する方法とは
- 組立保険と建設工事保険の違いで、補償されないリスク
- 他の補償と重複する特約を付帯して、保険料が無駄になるリスク
- 工事で起こりうるリスクに対して、補償が不足してしまうリスク
とくに、上記のようなリスクを防ぐためには、法人保険の専門家に相談すると、組立保険に関するあらゆるリスクを解消できます。
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組立保険について
公共工事で加入を求められることが多い火災保険よりも、工事物に対する幅広い補償を必要とするなら、組立保険への加入を検討すべきだと言えます。
組立保険で補償の対象となる工事は、外装や内装、機械の組立や設置、プラント建設における設備の設置などがありますが、該当しない工事では補償されないので注意が必要です。
建設工事保険と組立保険では、根本的に補償となる工事物が異なるため、補償の違いに迷ったら、リスクを軽減するためにも、必ず専門家に相談しましょう。
とくに、「マネーキャリア」を利用すると、法人保険のプロから無料で専門的なアドバイスを受けられ、自社に最適な組立保険の選択や他のリスク対策を含めた総合的な戦略を立てられます。
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