PI保険(船主責任保険)とは?保険料や加入の義務などについて解説のサムネイル画像

内容をまとめると

  • 船舶を保有・使用して事業を経営しているなら、賠償責任に備えて「PI保険」に加入しておくべき
  • PI保険は船舶保険の1つで、第三者へ財物や死傷に対する損害賠償費用を補償する
  • PI保険では、船舶残骸撤去費用や油濁損害費用も補償範囲に含まれる
  • PI保険は、乗組員への補償はあるが乗客への補償はない
  • 海上だけでなく、PI保険は港湾の作業中も補償の対象となる
  • PI保険の保険料は、補償内容や保険金額などによって異なる
  • 日本の港に入出港する外航船舶は、PI保険への加入義務がある
  • 法人保険や事業のリスク対策で悩んだら「マネーキャリア」で専門家に相談することがおすすめ

PI保険(船主責任保険)とは、船の運航中や使用・管理中に法律上の賠償責任を負う場合の費用などを補償する保険です。基本的にPI保険の加入義務はありませんが、従業員や第三者を死傷させた場合、多額の賠償金が必要となることがあるので、加入することをおすすめします。

この記事の監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー

株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。
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この記事の目次

船舶所有者の賠償リスク

船舶所有者を取り巻くリスク

船舶所有者を取り巻くリスク

漁船所有者や使用者が加入する「PI保険(船主責任保険)」は、賠償責任負ったときの費用を補償する船舶保険の1つです。


上記のリスクマップでは、船舶を所有・使用・管理している事業者に関して、リスクの発生頻度と事業経営への影響を表しています。


海上を行き来する漁船では、さまざまなリスクを抱えており、第三者や人命救助に要する費用は莫大となるリスクがあるのです。


そこで、まずは以下のリスクについて詳しく解説していきます。

  1. 従業員の労災リスク
  2. 船舶が損傷するリスク
  3. 乗客が死傷するリスク
賠償リスクは、金額を予想できるものではありません。

万が一のときには、事業者の努力だけではどうにもならなくなってしまうことが考えられます。

船舶を使用する事業では、どのようなリスクがあるのかをしっかり理解しておかなくてはならないのです。

①従業員の労災リスク

漁業における従業員の労災リスクは、陸上でおこなう全産業の平均と比べて約6倍のリスクがあります。

労災リスク2018年2019年
漁船12.7%12.3%
陸上労働
(全産業)
2.3%2.2%

参考:農林水産省「漁業における事故の発生状況」


令和2年には、死者・行方不明者86人を含む死傷者は279人にのぼっており、漁業事業者のリスクは非常に高いと言えるのです。


このような背景からも、漁船同士の衝突時や、陸上での作業時に従業員がケガを負ってしまう可能性だけでなく、転覆によって作業員が海に投げ出され、行方不明になってしまうリスクも考えられます。


漁船上で従業員がケガを負った事故には、次のような事例があります。

  • 波浪注意報が出ているなか出港し、波で揺れたため従業員が転倒し腰椎圧迫骨折
  • 冷凍カツオを揚貨装置で荷揚げする際、冷凍カツオが塊で崩れ落ち下敷きになった1人が死亡
従業員の労災では、使用者の安全管理が問われ、損害賠償責任が問われる可能性も考えられます。

漁業では、陸上での作業以上に安全配慮が必要とされていますが、それでも従業員の労災事故を必ず防げるとは限りません。

従業員を雇用するなら、労災リスクにも備えておかなくてはならないのです。

②船舶が損傷するリスク

車の交通事故と同様、漁船などの船舶を運航する際も、他の船舶と衝突や接触事故が起こる可能性があります。


もしも事故の加害者となってしまった場合は、相手の船舶や乗務員に対して損害賠償責任が発生し、修理費用や治療費、逸失利益や慰謝料など、途方もない請求額となることが考えられるのです。


また、船舶が損傷するようなリスクは、他船との接触だけではありません。

  • 沈没
  • 座礁
  • 火災
  • 自然災害
自動車保険で車両に対する保険があるように、船舶が損傷してしまったときに備えておく必要があります。

特に漁業を営む事業者は、船舶の損傷が経営の悪化に直結してしまうため、ハイリスクだと考えるべきです。

沈没などで全損となってしまった場合は、漁業をおこなうことができなくなり、最悪の場合は事業継続が困難となってしまうことも考えられます。

事業者の命とも言うべき船舶では、必ずリスクに備えておかなければなりません。

③乗客が死傷するリスク

乗客を乗せて出港する釣船漁船や遊覧漁船などでは、万が一事故が起き乗客が死傷した場合、損賠賠償責任が発生するリスクがあります。


まだ記憶に新しい北海道・知床半島沖で起きた観光船「KAZU 1(カズワン)」の沈没事故では、26人中20人が死亡し、6人は行方不明となった重大事故として世間を騒がせました。


なお、この船舶事故では、犠牲者1名の遺族が訴訟を起こした和解案として、損害賠償請求が総額8,000万円の和解案が出ています。


その他の遺族も今後訴訟を起こす方針であることがわかっており、船舶事故による乗客への損害賠償責任は、非常にリスクが高いことがわかります。


また、船舶で事故が起きたときには、損害賠償以外にも費用が発生します。

  • 人命救助
  • 遺骸捜索
  • 遺骸・遺骨・遺品引渡し
  • 弔祭費 など

船舶事故による人命に対する賠償は、訴訟へと発展することが多くあるため、釣船漁船や遊覧漁船など乗客のいる船舶では、万が一のリスクに備えておくべきだと言えるでしょう。

PI保険(船主責任保険)とは?


船舶を所有または使用者が、第三者に対する損害賠償費用を支払う事故が起きたとき、費用を補填できる補償が「PI保険(船主責任保険)」です。


船体への補償は「船舶普通期間保険」で補償されますが、第三者に対するリスクに備えるためには、PI保険(船主責任保険)が必要となります。

  • 港湾の施設を損壊させたとき
  • 魚網・海産養殖施設を損傷させたとき
  • 海上でブイを損傷させたとき
  • 沈没や座礁により油濁で損害を出したとき
  • 他船と衝突したときの賠償
  • 沈没や転覆などで船骸の撤去が必要なとき
  • 港湾の作業で第三者に損害を負わせたとき
  • 船員に対する賠償
  • 航波で他船へ損傷を与えたとき
  • 運搬中の積荷を損傷させたとき
  • 提訴された場合の訴訟・仲裁費用
PI保険(船主責任保険)には、賠償責任保険として補償範囲が広い特徴があり、内航船・外航船ともに同じ補償を準備することが可能です。


自動車保険に例えると、対物・対人保険にあたるため、船舶に対する保険を検討するなら、いかにPI保険(船主責任保険)が必要となるかが理解できることでしょう。

PI保険(船主責任保険)の補償内容


補償内容が充実しているPI保険(船主責任保険)では、何に対する補償なのかによって、補償される内容がさまざまです。

PI保険補償内容
人への補償・事故相手の死傷に対する賠償
・船員の死傷に対する賠償
・船員に対する失業手当
・船員以外の死傷に対する賠償
物への補償・他船やその財物への賠償
・湾岸施設への賠償
・漁業施設への賠償
・油濁損害への賠償
・船骸撤去費用
・海上や海中施設への賠償
・輸送中の貨物への賠償

また、人命救助や遺骸捜索にかかった費用や事故による他船の残骸撤去費用、密航者の下船に要した費用なども補償の対象となります。


その他、PI保険(船主責任保険)には、契約上の責任に対する補償があります。


これは、事故によって船が動かなくなってしまったとき、他船に牽引してもらったときに発生する費用を補償するというものです。


このように、PI保険(船主責任保険)では、船舶を使用する事故のリスクに対し、莫大な賠償責任を負う可能性に備えられるため、任意加入とはいえ事業を守るためにも加入しておくべき保険だと言えます。

保険対象の船舶

PI保険(船主責任保険)に加入できる内航船には、主に作業船や総重量100トン未満の商船が対象で、以下のような船舶があります。

  • 貨物船、油槽船、漁船、客船、フェリーなど
  • 杭打船・起重機船などの作業者、自己昇降式台船(SEP)などの非自航船舶


なお、外航船でPI保険(船主責任保険)に加入するなら、以下の条件を満たしていなければ加入できないので注意しておきましょう。

  • 国際線級協会連合(IACS)加盟の船級または同等の期間(JGなど)による船級もしくは資格を保持していること
  • ISMコード(国際安全管理コード)およびISPSコード(船舶および港湾の国際保安コード)を保持していること
なお、これらの証明書は船内で保管しておくことが義務付けられています。

PI保険(船主責任保険)に加入する場合の保険料


PL保険(船主責任保険)は一般的に1年契約の更新型で、保険料の設定は以下の内容をもとに算出されています。

  • 船舶に対する保険価格
  • 補償される範囲
  • 基本契約内容
  • 特約の有無
そのため、一概にPI保険(船主責任保険)の保険料の相場がいくらとは言えません。

保険料を参考にしたいときは、加入手続きができる窓口へ問い合わせるか、法人保険などの専門家に相談できるマネーキャリアでPI保険(船主責任保険)の保険料について問い合わせてみましょう。

保険料を試算してもらう場合、以下のものがわかる資料を準備しておくと、スムーズに教えてもらえるのでおすすめです。
  • 船舶の種類
  • 総トン数
  • 建造年
  • 事故履歴
  • 保険金額の支払い限度額
PL保険(船主責任保)は毎年2月20日を始期日としていることが一般的ですので、保険料で問い合わせるときは、加入時期による保険料の違いも確認しておいてくださいね。

PI保険(船主責任保険)に加入する方法


PI保険(船主責任保険)に加入する主な方法は2つあります。

  • 取り扱いのある損害保険会社
  • 保険代理店
どちらかに問い合わせることで加入手続きがおこなえますが、他社の商品との比較や事業に対するリスクマネジメントは対応してもらえません。

事業のリスク対策や複数の保険商品を比較するなら、法人保険の専門家のいる「マネーキャリア」で無料相談の有効活用がおすすめです。

毎月30社以上の法人や個人事業主の方が、法人保険や事業のリスク対策についてマネーキャリアを利用しており、相談者の満足度は98.6%と高い水準となっています。

「経営している事業にはどのようなリスク対策をおこなうべきなのか」
「重複している補償や見落としているリスクはないか」

すでに加入している人でリスク対策で不安のある経営者も、マネーキャリアを利用して最適な補償内容へと見直すことも可能です。

個人事業主の方も、法人向けの保険を検討できるので、ぜひマネーキャリアを活用して経営を守ってくださいね。

自社に必要な保険を専門家に聞く

法人保険の活用事例集

法人保険の活用事例集のイメージ


営業活動を安心して継続するために法人保険の加入は必須となりますが、インターネット上で事例を調べても情報が非常に少ないのが現状です。


したがって、自社にどのような保険が必要か・リスク対策が必要かを「法人保険の事例」を参考に洗い出す必要があります。


そこで、マネーキャリアでは独自に「法人保険の活用事例集(全29ページ)」を作成し公開しています


抑えるべき6つのリスクや、実際の企業で保険がどのように使われているのかもわかりやすくまとめているので、「どのようなリスク対策が必要か」「自社に最適な保険がわからない」担当者の方は必見です。

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【参考】外航船保有者はPI保険の加入義務がある


日本では、2004年4月に「油濁損害賠償補償法」が改正されて、外航船保有者にはPI保険(船主責任保険)への加入義務が課せられるようになりました。

PI保険加入義務条件
日本籍の船国際間の航海をす船舶
外国籍の船・日本の港に入出港する船舶
・係留施設を利用する船舶


これには、沿岸に放置される座礁船の問題に対処する目的があり、2005年3月1日以降は、該当する外航船においては、PI保険(船主責任保険)に加入していなければ、入港が禁止されるようになったのです。


なお、船内に証明書などを備えおおくことが必要で、入港時には地方運輸局などへの事前通報も義務づけられています。


参考:国土交通省「詳しい外交船舶へのPI保険加入義務付けについて」

まとめ:PI保険(船主責任保険)について


PI保険(船主責任保険)は、船舶の運航において事故が起きたとき、第三者への損害賠償を補償する保険です。


この記事のポイントをまとめてみました。

  • 船舶を保有・使用して事業をおこなっているひとはPI保険に加入しておくべき
  • PI保険は船舶保険の1つで、第三者へ財物や死傷に対する損害賠償費用を補填する
  • PI保険では、船舶残骸撤去費用や油濁損害費用も補償される
  • PI保険は、乗組員への補償はあるが乗客への補償はない
  • 海上だけでなく、PI保険は港湾の作業中も補償の対象となる
  • PI保険の保険料は、補償内容や保険金額などによって異なる
  • 日本の港に入出港する外航船舶は、PI保険への加入義務がある
  • 法人保険や事業のリスク対策で悩んだら「マネーキャリア」で専門家に相談することがおすすめ

船舶を所有・使用・管理している事業者は、さまざまなリスクが取り巻いており、事故が起きた場合の損害賠償は莫大な費用となる可能性があります。


北海道・知床沖の遊漁船事故によって、世間の注目を浴びた船主の責任は、今後もより一層厳しい目を向けられていきます。


こうした背景からも、船舶におけるリスクマネジメントでは、補償内容に漏れがないようしっかり対策が求められているのです。


船舶のリスクについては、専門家のプロからアドバイスをもらうことがおすすめで、「マネーキャリア」を活用すれば無料で何度でも相談することが可能です。


すでにPI保険を含む船舶保険に加入しているひとでも、補償の重複や漏れが気になるなら、ぜひマネーキャリアで法人保険の専門家に相談してみてください。


保険料や補償内容について、専門家目線で事業リスクに沿ったアドバイスをしてもらうことができますよ。

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