D&O保険(役員賠償責任保険)は、企業の役員が経営判断や業務遂行に関連して負う法的責任や損害賠償リスクをカバーする重要な保険ですが、その必要性や適切な補償範囲の選択に悩む経営者が多いのが現状です。
そのため、自社の規模や業種、経営戦略に合わせた最適な保険プランの選択や、コスト面での懸念から導入を躊躇している経営者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、D&O保険の具体的な補償内容、保険料の算出方法、選択時の注意点、さらには企業統治や投資家からの信頼確保における効果についても詳しく紹介します。
・経営リスクの増大に不安を感じ、役員の法的責任から会社と個人を守りたい方
・コーポレートガバナンスの強化を図り、投資家や株主からの信頼を高めたい方
は本記事を参考にすると、D&O保険に関する理解を深められるのはもちろん、自社に最適なリスク対策や保険プランを選択するための最適な方法もわかります。
内容をまとめると
- D&O保険(会社役員賠償責任保険)とは法人役員が損害賠償訴訟を起こされた場合に被る賠償金を補償してくれる保険である。
- また、D&O保険には様々な特約を付帯して、補償力を上げられるが、補償できないケースもあるので注意。
- D&O保険の保険料は設定する保険金額や特約などによっても変動するので、自社にとって過不足のない補償を準備するには専門知識が必要となる。
- そのため、マネーキャリアのように、「法人保険・リスク対策のプロ」へ無料で何度でも相談ができ、リスク対策の悩みを解消できるサービスを使う会社も増えている。
この記事の監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
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この記事の目次
D&O保険(会社役員賠償責任保険)とは?
D&O保険とはDirectors(取締役)と Officers(執行役・監査役等)のための、賠償責任保険です。
経営者や役員が原因として、従業員や取引先などに損害賠償責任を負い、請求などのリスクを負った場合に補償する保険です。
大企業だけの問題と思われていますが、昨今では中小企業であっても、役員個人に対して、従業員から損害賠償訴訟を起こされるなどというケースも増えています。
また、その金額は数千万円単位など高額な賠償額となることも多く、経営を行う上で、必要な保険と言えます。
中小企業の訴訟リスクが高まっている
上記でも少し触れましたが、経営者や役員個人への訴訟と言うのは、大企業だけのことと考える中小企業経営者も多くいます。
ただ、昨今ではコンプライアンスなどの社会からの目は厳しくなっていることや、従来の考え方では経営を行っていくことに問題が発生することが多くなっています。
特に、従業員からの会社へではなく、役員個人への訴訟などは年々、増えており、自分の会社は問題ないという考えは危険といえます。
実際に起こった事例として、2つ紹介をします。
- 従業員の過労死。
- 不当解雇として訴えられた。
訴訟事例1:従業員の過労死
ここでは従業員の過労死に対して、会社の取締役4名が訴えられたケースを解説します。
概要
ある会社の従業員が、長時間労働を原因として、急性心不全により死亡した。それに対し、従業員側の両親が会社の役員個人に対して、訴えを起こした。
この例では訴訟理由として、取締役が授業員の慢性的な長時間労働を避けるため、従業員の労働時間を適正に把握し、時間外労働についても適正な範囲内に収まるように把握できる社内体制の構築と、給与体系に関しても、長時間労働が生じないように配慮する注意義務があったにも関わらず、それを怠ったとの従業員側の両親からの提起が理由となっています。
この訴訟のポイントとして、従業員の労働状況については、現場管理者に責任が発生することが一般的だが、会社全体としての管理体制に取締役の責任が発生するかどうかが、争点となりました。
従業員側の両親からの請求額は8,000万円となっており、もしこれが全て認められた場合、保険に加入していないとこれを払う体力のない、中小企業の場合は倒産のリスクも考えられます。
参考:訴訟事例
訴訟事例2:不当解雇として訴えられた
続いては、従業員から不当解雇として役員と代表者が訴えられたケースを解説します。
概要
建設業のある会社が、1年間に数度も自動車事故を起こし、会社に多額の損害を与えた従業員と話し合いの末、円満退職とした。しかし、その後に不当解雇として訴えを起こしてきた。
この訴訟のポイントは、円満退職として従業員が退職下にも関わらず、その後に組合を作り、不当解雇として訴訟を起こして来ています。
加えて、従業員側は裁判が終わるまでの間の給与も請求してきており、係争中に代表取締役が死亡したため、その遺族が損害賠償責任を引き継ぎ、認定されました。
この場合は不当解雇ということで、通常、不当解雇の場合は慰謝料の請求額は50万円から100万円と先程の事例に比べると、金額は少ないです。
しかし、このケースで問題となるのは、訴えを起こした側が裁判期間中の給与を請求してきたことと、代表取締役が死亡したことにより、遺族にそれが引き継がれたという点がポイントとなります。
つまり損害賠償責任が相続人に引き継がれてしまうという点からも、保険加入をしておくべき事例ともいえるのです。
参考:会社役員の訴訟
役員に対して課せられる義務や責任とは
ここでは役員に対して課せられる義務や責任について解説します。
会社を経営する代表者や役員には課せられる義務や責任として以下があげられます。
- 善管注意義務
- 忠実義務
- 競業避止義務
- 利益相反取引回避義務
- 監視・監督義務
- 一般の不法行為責任
- 会社法上の特別責任
【利益相反取引回避義務】
D&O保険(会社役員賠償責任保険)の補償内容
ここではD&O保険の補償内容について解説します。
- 法律上の損害賠償金
- 争訟費用
- 社内調査費用
- 損害賠償請求対応費用
- 第三者委員会設置費用
- 危機管理対策実施費用
- 信頼回復広告費用
- 刑事手続対応費用
【第三者委員会設置費用】
会社が第三者委員会を設置した場合に、その活動や調査、報酬のために会社が負担した費用を支払うというものです。
【危機管理対策実施費用】
会社に対して、有価証券損害賠償請求、提訴請求がされた場合、または被保険者個人に対して、株主代表訴訟が提起された場合に、会社自体の評判への影響を最小限に留めるための対策のために、コンサルティング会社などから助言や指導を受けるために会社が負担した費用に対して支払いが行われます。
ただし、有価証券損害賠償請求もしくは提訴請求がなされた翌日以降、180日が経過するまでの期間といった制限が存在します。
【信頼回復広告費用】
こちらは被保険者個人に対して損害賠償請求もしくは刑事手続が行われた場合に、最終的な司法の判断によって責任がないと判断がされた場合の、被保険者個人への評判などの影響を最小限に留めるために、責任がその個人にないと周知させるために行った被保険者個人の負担費用を保険金として支払うものです。
【刑事手続対応費用】
日本国外において、被保険者個人に対して刑事手続が開始された場合に、被保険者個人が対応に要した費用を負担するというものです。
上記以外にも
- 財産または地位の保全手続等対応費用
- 改善報告書等作成費用
- 危機管理コンサルティング費用
- 会社補助参加費用
- 役員に対する責任免除に関する広告・通知費用 などが存在します。
D&O保険に付帯できる特約
ここではD&O保険に付帯できる特約について解説します。
付帯できる特約は下記のようなものがあります。
- 緊急費用
- 社外役員向け上乗せ特約(追加支払限度額)
- 役員の相続人向け上乗せ特約(追加支払限度額)
- 株主代表訴訟補償特約
- 会社訴訟補償特約
- 被保険者間訴訟補償特約 などが存在します。
D&O保険では補償されない場合
これまではD&O保険の補償内容をみてきましたが補償がされないケースをここでは解説します。
- 被保険者が私的な利益、便座の供与を違法に受けたことに起因する場合。
- 被保険者の犯罪行為によって、起こった事由。
- 法令に違反していることを知っていながら、行った行為が原因での事由。
- 戦争、内乱、暴動などの事変が原因となる事由。
- アスベストや核などの有害な物質が原因となる事由。
- 身体障害や精神的苦痛、財産破壊等についての損害賠償請求。
- 保険期間の開始時点より前に会社、個人に対して、提起や訴訟などが行われた事由に対しての費用。
D&O保険で設定できる支払限度額
ここからはD&O保険保険で設定できる支払限度額について解説します。
保険会社によって支払限度額は違いがあることがありますが一例として、5,000万円から10億円程度までの幅で1億単位で支払限度額を決められます。
ただし、全ての企業が同じでの契約を行うということは無く、会社の規模や業種などに応じて、設定する支払限度額は異なります。支払限度額を自社ではどう設定するべきなのかを、時間がないなか経営陣で判断をすることは非常に困難です。
適切な支払い限度額の設定は、企業と役員を十分に保護しつつ、過剰な保険料負担を避けるための重要な要素です。そのため、経営者は自社の状況を慎重に評価しなければなりません。
D&O保険の保険料の相場
ここではD&O保険の保険料の相場について解説します。
万が一、損害賠償請求が発生してしまった場合、それをカバーするためにはどのぐらいの保険料を毎年払わなければならないのか。気になる方は多いです。
D&O保険の具体的な保険料は企業の規模や売上など、様々な要素によって決定します。また、設定する保険金額や付帯する特約によっても上下するため、正確な金額を知りたい場合には取り扱いをしている保険代理店か保険会社へ問い合わせる必要があります。
しかし、問い合わせを行う前に「マネーキャリア」というサービスを利用してみることをおすすめします。このサービスは法人保険やリスク対策の専門家に無料で相談ができるというサービスで、保険料についてもご自身の会社の規模等をお伝えすることで、ある程度の保険料を知ることができます。
また、会社にとって必要な補償かどうかや、今、加入中の保険についても見直しを行ってくれるため、保険会社へ問い合わせを行う前に利用することをおすすめします。
D&O保険(会社役員賠償責任保険)の採択可否やリスク対策の悩みを解消するには
ここではD&O保険(会社役員賠償責任保険)の採択可否やリスク対策の悩みを解消する方法を紹介します。
D&O保険に加入するには、この保険を取り扱いしている保険代理店もしくは各保険会社へ加入の問い合わせを行うことで可能です。問い合わせを行うことでご自身の会社の企業の情報によって保険引受が可能かどうかの判断や保険料、補償内容などが決定します。
ただし、D&O保険に加入をする際には、高額な保険料の払いすぎや、保障の過不足に注意しなければなりません。しかし、経営陣の独断で自社に最適な保険やリスク対策を判断するのは困難です。
そこで、加入すべき保険や見直しにの相談には「マネーキャリア」のように、法人保険や事業のリスク対策に詳しい専門家に無料で何度でも相談ができ、経営の不安を解消できるサービスを使うのが鉄則です。
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法人保険の活用事例集
D&O保険(会社役員賠償責任保険)の事例や補償内容まとめ
ここまでD&O保険についての補償内容や保険金額、実際の事例などを紹介しました。
D&O保険(会社役員賠償責任保険)とは、法人役員が損害賠償訴訟を起こされた場合に被る賠償金を補償してくれる保険であり、損害賞金や訴訟費用を負担します。
また、保証できないケースがあるものの、さまざまな特約を付帯させ、補償をさらに強くできます。経営者や役員は経営を行う立場上、常に訴訟のリスクがあるので、D&O保険(会社役員賠償責任保険)の加入は必須と言えます。
ただし、会社ごとに必要な補償は異なるうえ、保険料も高額になりがちな法人保険は専門的な知識がなければ補償に過不足が発生する可能性があるうえ、インターネット上にも情報が少なく比較検討が困難です。