取引信用保険とは?ファクタリングとの違い等を解説!【建設業必見】のサムネイル画像

内容をまとめると

  • ファクタリングは、資金を調達するための方法で、リスクを回避できるのは取引信用保険である
  • 取引信用保険は、損失を補填し、倒産の連鎖を回避するための保険
  • 取引信用保険に加入していると、自社の与信取引の信頼度も上がり、安心して事業拡大ができる
  • 特約を付帯した取引信用保険は、包括的なリスクカバーが可能となる
  • 取引信用保険の保険料は、業種などで異なるが支払限度額の2~4%が目安
  • 取引信用保険を検討する際は、自社のリスクを把握するためにも「マネーキャリア」に相談することがおすすめ

取引信用保険とは、取引先の倒産などにより、自社の資金繰りが悪化することにより、連鎖的に倒産するリスクを防ぐための損害保険です。ファクタリングは資金調達の手段ですが、取引信用保険は、もしものことがあったときの保険のため、利用する目的が違います。

記事監修者「金子 賢司」

監修者金子 賢司
フィナンシャルプランナー

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。<br>以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP

この記事の目次

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取引信用保険とは?ファクタリングとの違いは?


企業にとって、取引先から売掛金(債券)が回収できなくなると、連鎖反応を起こして自社の経営にダメージが発生しますよね。


取引先の売掛金を回収する方法は2つあります。

  • 取引先の倒産や夜逃げなどにより債券回収ができなくなったときに備える「取引信用保険
  • 取引先からの売掛金となる債券を譲渡して現金化する「ファクタリング」
どちらも、債券を回収という意味では同じですが、リスクに備えるのか、決済日よりも早く現金化したいのかによって、利用する方法が変わります。

まずは、この2つの方法の違いについて理解しておいてください。

ファクタリングとの違いについて

取引信用保険とファクタリングは、そもそも利用の方法が異なるので、一覧にして違いを確認しておきましょう。

2つの違いファクタリング取引信用保険
利用目的売掛金(債券)
を譲渡して資金を調達する
取引先のリスクに備えて
債券を補填する
代行する会社ファクタリング業者保険会社
取引先の選択できるできない
手数料
(保険料)
債券を譲渡したときに
売掛金に対して
10~30%の手数料が発生
支払限度額の
2~4%程度が
年間保険料となる
補填の割合100%80~100%
利用する
タイミング
取引先の決済を待たずに
売掛金を現金化したいとき
対象の取引先が倒産などで
損害が出たときに
債券(売掛金)を補填

資金の調達が必要となったとき、資金の調達手段としておこなわれる「ファクタリング」は、銀行などでお金を借りるよりも、手早く現金を調達できます。


自社の都合で資金調達するなら「ファクタリング」、取引先の都合で債券を回収できなくなるリスクに備えるものが「取引信用保険」です。


ファクタリング業者に依頼すると、自社に変わって業者が売掛金を回収することになるため、取引先からの印象が悪くなってしまうこともあるので、注意しておきましょう。

取引信用保険の補償内容


取引先が資金繰りができず決済が延滞されたり、倒産してしまった場合、連鎖反応による貸し倒れが起きないようにすることを目的としている保険が「取引信用保険」です。


三井住友海上や東京海上日動、損保ジャパンなどの損害保険会社で販売されており、一般的に3つの内容から保険金額を決めることになります。

取引信用保険保険金額
対象となる
取引先
・すべての取引先
・保険会社の基準以上となる取引先
支払限度額・売上債券残高を上限
・取引先の信用区分に応じた一定の金額
・信用区分に関係なく包括した一定の金額
縮小支払割合・縮小率に応じて取引先ごとに保険金を設定
・縮小率に応じて包括して保険金を設定


取引先が以下のような場合に該当したとき、保険金によって補償されます。

  • 破産や会社更生法、民事再生などの手続きを開始
  • 特別清算の開始の申し立てをしたとき
  • 手形交換所や取引金融機関から取引停止処分を受けたとき
  • 財産の強制換価手続きが開始されたとき
  • 仮差押えの命令または通知があったとき
  • 取引先の相続人すべてが相続放棄したり限定承認したとき
売掛金の回収ができなくなった場合、自社の経営に大きく影響するなら、「取引信用保険」で万が一に備えておくことも必要です。

取引信用保険に付帯できる特約

「取引信用保険」の基本補償では保険金が受け取れないリスクは、特約を付帯することでカバーできます。


「取引信用保険」の基本補償は、倒産など取引先の経営状態が大きく関係するため、取引先の状況によっては、せっかく加入している「取引信用保険」から保険金が支払われない可能性もあるのです。  


たとえば、損保ジャパンでは取引先からの入金が1日でも遅れたら補償の対象となる「BCP特約」が付帯できます。


一般的に入金遅れによる「取引信用保険」の補償は、2~3か月以上の遅延が発生したときに保険金が支払われますが、「BCP」特約を付帯することで、自社の資金繰りで悩まされることがなくなるので安心です。


また、損保ジャパンでは、以下のような特約も取り扱われています。

  • 無記名で包括的にカバーする「裁量与信(無記名)特約」
  • 取引先が火災や機械的事故などで操業停止した場合に備える「供給先占有物件のみ補償特約」


「取引信用保険」は、特約を付帯することで、より自社の与信取引情報を守ることにも繋がるため、加入する際は各損害保険会社からの見積りを確認し、比較検討するようにしましょう。

取引信用保険の保険料の相場


取引信用保険に対する年間保険料は、業種や保険金額の設定によって異なるため、一概にどれくらいの保険料であるとは言えません。


保険料を決める料率は、損害保険会社ごとに異なり、次のようなポイントが保険料率に大きく影響しています。

  • 取引先の業種
  • 貸倒引当金の試算額
  • 取引先の信用状況
  • 自社の取引先件数


建設業をはじめとして、各業種では以下のような保険料例があるので、参考にしてみてください。

1社あたりの
支払限度額
100万円300万円
建設業
(大工工事)
81,110円99,390円
運送業94,990円134,250円
鉄鋼製造業109,300円151,150円
飲料卸売業113,460円149,240円


取引信用保険に加入した場合の保険料は、損害保険会社や代理店、法人保険の専門家などに相談することで、試算してもらうことができるので、自社にとって適切な保険商品を選ぶことが大切です。

自社に必要な保険を相談する

取引信用保険のメリット


企業の取引は、先に商品やサービスを提供し、あとから必ず取引先が費用を支払ってくれるという与信取引によっておこなわれています。


しかし、昨今の世界情勢から、いつなんどき取引先が倒産したり操業停止したりするか予想がつきません


取引先からの支払いが滞ってしまうと、自社までもが貸し倒れとなってしまう可能性があり、自社の信用リスクを守るための「取引信用保険」には、以下のようなメリットがあります。

  1. 損害が発生したときに補償してくれる
  2. 自社の信用力を強化することに繋がる
  3. 取引額の拡大が可能になる
それぞれのメリットについて、詳しく解説していくので、ぜひ覚えておいてください。

①損害時に補償をしてくれる

貸し倒れによる倒産の連鎖を防ぐ「取引信用保険」は、取引先の売掛金が入金されなかった場合に備えることができます


万が一、取引先から入金されなかった場合に備え、貸倒引当金として会計処理では損金算入することも可能ですが、自社にとっては損失であることに変わりはありません。


また、自社で債権回収をおこなわければならず、手間や時間、コストがかかるばかりで、本来の業務に支障を及ぼしてしまう可能性もあります。


このような貸し倒れによる損害が発生した場合、取引信用保険に加入しておくことで、あらかじめ決められた保険金額を受け取り、損害を補填することが可能です。


税務上、資本金が1億円を超える企業は、貸倒引当金の会計処理が認められていないため、大きな企業になればなるほど、取引信用保険の必要性が高まると言えるでしょう。

②信用力の強化につながる

取引信用保険による信用力の強化には、2つの効果があります。

  1. 取引先の信用を確認できる
  2. 自社の信用が上がる

損害保険会社は、取引信用保険への加入時だけでなく、加入後も継続して取引先の経営に関する調査をおこないます。

そのため、取引先の経営状況に悪化傾向がある場合は、損害保険会社からの情報が得られるため、早期に取引先に対する対策を立てることが可能です。

また、自社の信用を上げるためには、金融機関からの信頼を得なければなりません。

取引信用保険に加入することで、貸し倒れによるリスクが軽減されるため、金融機関からの信用が高まり、資金調達などでメリットとなるケースもありますよ。

③取引額の拡大

新規の取引先や、取引先との金額を拡大する際は、損害を最小限に抑えるためのリスクヘッジが必須です。

  • 取引先の倒産によって貸し倒れが生じても、最小限の損害となる取引額にする
  • 取引先からの入金が遅れても、自社の信用を失わない取引額に設定する

しかし、リスクヘッジによって、意欲的な取引額の拡大を避けてしまうこともしばしば。


取引信用保険に加入すると、万が一の損害に備えられるだけでなく、取引先の経営情報を得られるため、リスクヘッジによる選定を恐れずに取引額を拡大していくことが可能となるのです。

取引信用保険のデメリット


大きなメリットのある取引信用保険には、もちろんデメリットもあります。

  1. 加入前に保険会社が取引先の調査が行われる
  2. 保険の対象とする取引先を希望通りに特定できない
  3. 保険商品であるため資産化には対応していない
取引信用保険を検討する際は、メリットだけでなく、デメリットもよく理解しておくことが大切です。

自社のリスクに対して、適切な補償となるのかを確認するためにも、それぞれの注意点を再確認しておいてください。

①加入前に保険会社の調査が入ること

取引信用保険に加入する際、保険会社は補償の対象となる企業の調査をおこない、保険契約が締結できるかどうかの審査をします。


経営状況が良くないなど、リスクの高い取引先を取引信用保険で補償することは、保険会社にとっても大きなリスクなのです。


保険会社の調査結果によっては、以下のようなデメリットが考えられます。

  • 損害が発生したときに支払われる保険金額が希望通りに設定できない可能性
  • 保険料が割高に設定される可能性

もちろん、すでに経営状態が悪く倒産や不渡りの可能性があると保険会社が判断した取引先については、取引信用保険の保険対象にできない可能性もあるので、注意しておきましょう。

②保険対象とする取引先を特定できない

取引先の特定は「取引信用保険」と「ファクタリング」の大きな違いです。


取引信用保険では、補償の対象となる取引先を特定することはできず、次のようなくくりで補償対象が決定されます。

  • 取引のある全企業を補償の対象
  • 売上高が高額である取引先の上位5社のみを補償の対象
  • 一定の商品や事業内容を取り扱う取引先のみを補償の対象
特定の取引先に対するリスクを自社で感じていても、取引信用保険では、補償の対象を自社の希望どおりに絞ることはできないのです。

リスクがあると判断している取引先が、予想通り倒産してしまった場合には、ファクタリング業者へ依頼して債権を回収する方法もあるので、取引信用保険と比較しながら検討すべきだと言えるでしょう。

③保険商品のため資産化に対応していない

取引信用保険は、あくまで取引先の倒産などによる貸し倒れに備えて加入する損害保険です。


損害保険から支払われた保険金は、損害を補填するためのものであるため、債権を回収して資産化することとは異なります。


この点がファクタリングと違うポイントでもあるため、しっかり理解しておくことが大切です。

  • 保険料を支払って万が一のときには、保険金を損害に充当する「取引信用保険」
  • 売掛金の債権を売却し、現金にして資産化する「ファクタリング」

なお、取引信用保険から支払われた保険金の会計処理は、法人税上だと貸倒損失は損金算入、保険金は益金参入となります。

万が一における取引先の貸し倒れに備えるとき、売掛金の補填を考えるのか、それとも売却して資産化するのかを検討して、取引信用保険とファクタリングのどちらで備えるべきなのかを検討しましょう。

取引信用保険はデメリットよりもメリットの方が大きい


ここまで取引信用保険のメリットとデメリットを解説してきましたが、結論として取引信用保険に加入するメリットの方が大きいと言えます。


万が一に備えて取引信用保険に加入し、成功した事例を3つ紹介するので参考にしてみてください。

  1. 「半導体部品卸売業」が貸し倒れによる損失を軽減できた例
  2. 「日用品雑貨品販売業」でコストカットに成功した事例
  3. 「食品卸売業者」が取引信用保険のメリットを活用した例
今いちど、取引信用保険のメリットを利用した企業のリスクマネジメントについて、考えてみましょう。

半導体部品卸売業が貸倒れ損失を軽減した事例

半導体部品製造をおこなう企業が、メーカーや量販店に販売する場合、これまでの部品製造に関する取引先だけでなく、卸売先となる取引先が増えることになります。


資質の異なる取引先が増えることにより、与信取引の管理として貸し倒れのリスクを考える必要が出たのです。


そこで、取引信用保険に加入すると、損害保険会社の調査によって取引先の経営状況に関するの情報がわかるため、リスクに備えるための判断材料を得ることができました。


取引信用保険に加入したところ、半年後に約1,000万円の貸し倒れに遭遇してしまいましたが、取引信用保険から2か月以内に保険金900万円を受け取ることができたのです。


保険料を支払う必要はありましたが、1,000万円の損失を100万円に軽減することに成功しました。


また、経営のリスクマネジメントをおこなう与信取引の管理部門と、新たな取引先を増やす営業部門では、折り合いが難しいケースが多々あることも問題でした。


取引信用保険を導入することで、万が一に備えたコミュニケーションが取りやすくなったというメリットもありました。


参考:事例紹介

日用雑貨品販売がコストカットに成功した事例

ファクタリングを利用していた日用雑貨品販売業者は、売り切りを通告されることが頻発し、コストリスクが高くなってきました。


そこで代替案として、取引信用保険に加入し、取引先を包括的にカバーすることにしたのです。


1社ずつファクタリングによって手数料が発生し、売り切りによって資産化できる金額も低くなってきたデメリットは、取引信用保険によって3つのメリットが生まれました。

  • 包括契約にすることで、ファクタリングよりもコストが軽減できた
  • ファクタリングのために割かれていた管理の負担が軽減できた
  • 包括契約で取引先の管理が容易となり、新規取引開拓にも余裕ができた

結果として、ファクタリングから取引信用保険に変更したことで、大きなコストカットと売上増加に繋がり、売上、利益ともに増加し、対前年比105%を達成することができたのです。

従来の対前年比は、95%~100%だったため、企業として大きなメリットに繋がったと言えます。

参考:事例紹介

食品卸売業が取引信用保険のメリットを実際に活用した事例

設立10年を超えた食品卸売業の企業は、業務拡大の途上であったため、限られた人材でより効果の高い与信管理や債権保全をおこないたいと考え、取引信用保険に加入しました。


貸し倒れには何件か遭遇したものの、素早い保険金の支払いによって損失を最低限に抑えることができ、売上は導入当時の100億円から6倍の600億円にまで、売上増加に成功したのです。


売上増加の背景には、損害保険会社からの与信情報をもとに、取引先の倒産によって発生する売掛金の未回収を未然に防ぐことができ、人的負担も抑えられたことがありました。


国内だけでなく、海外拠点においても取引信用保険を活用し、与信取引の管理において良い影響が続いています。


参考:事例紹介

取引信用保険の加入方法


取引信用保険は、損保ジャパンや東京海上日動、三井住友海上などの損害保険会社や代理店で手続きすることができます。


取引信用保険を検討する際は、自社にとってどのような取引リスクがあるのかを、よく理解しておかなければなりません。


もしも、このリスクを理解せず取引信用保険に加入した場合、損害が発生したときに補償されなかったり、必要ではない補償に保険料を支払うことに繋がりかねないのです。


自社の取引リスクは、中立の立場で客観的にリスクマネジメントができる専門家に相談することがおすすめです。


マネーキャリアには、法人保険や事業のリスク対策に対する専門家が在籍しているので、納得できるまで無料で何度でも相談することができます。


法人でも相談できるマネーキャリアは、相談利用者の満足度は98.6%と非常に高く、法人の事業リスクマネジメントのプロによるアドバイスを無料でもらえるのです。


取引信用保険を検討するときには、マネーキャリアを活用して自社のリスクを十分に把握してから、加入手続きをするようにしましょう。

取引信用保険について相談する

まとめ:取引信用保険について


取引信用保険は、事業における取引リスクに備えることができますが、仕組みや注意点をよく理解したうえで検討しなければなりません。

  • 「信用取引保険」は損失を補填する保険、「ファクタリング」は債権の売却によって資金を調達する方法である
  • 取引先の貸し倒れによる連鎖的な倒産を防ぐ手段が「信用取引保険」
  • 「信用取引保険」に特約を付帯することで、包括的なカバーが可能
  • 業種や保険金により保険料は異なるが「信用取引保険」の保険料は支払限度額の2~4%程度が目安
  • 「信用取引保険」にはデメリットもあるが、加入するメリットの方が大きい
  • 自社のリスクをすべて把握するなら「マネーキャリア」で無料相談をおすすめ
自社にとって信用取引保険に加入するメリットがあるのか、どのように取引リスクに備えるべきなのかに迷ったときには、マネーキャリア無料相談を活用してみましょう。

信用取引保険の必要性について考えることができると、加入を検討すべきなのかどうかを判断することができるので、ぜひマネーキャリアを利用して、自社のリスクマネジメントに活かして欲しいと思います。

自社に必要な保険を相談する