医療費控除の対象者は「生計を一にする」とありますが、社会人の子供など扶養外の家族や専業主婦は適用されるのでしょうか。医療費控除の世帯合算について、家族のどこまで範囲内なのか、共働きの場合はだれが確定申告をすべきなのか解説します!
監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
医療費控除は扶養外の家族も適用される?専業主婦は?
こんにちは、マネーキャリア編集部です。
先日、40代女性からこんな質問をいただきました。
医療費控除は、同じ家に住んでいないとだめですか?
息子が離れたところに下宿しているのですが。
医療費控除とは1年間に支払った医療費に応じて、控除が受けられる仕組みです。
もし離れて生活している人が、独自に医療費を支払ったら、それもまとめて医療費控除の対象になるのでしょうか。
今回はそのあたりの解説も含めて、
- 扶養外の家族も対象になる?生計を一にするとは?
- どれくらいの医療費を支払ったら、医療費控除を利用できる?
- 共働きの場合はだれが確定申告をするべき?
扶養外の家族も対象!生計を一にする家族の範囲
まずは、医療費控除の対象に含まれる範囲を紹介したいと思います。
ここでは、
- 「生計を一にする」の定義は?
- 必ずしも控除対象配偶者や扶養親族のみではない
- 社会人の子供など同居していなくても対象になる場合も
「生計を一にする」の定義は?
国税庁の公式ホームページによると、医療費控除の対象は、
- 自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合
- (1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
- イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
- ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
イやロの条件からは、生計を一にしているとは、必ずしも同居している必要がないことが分かります。
重要なのは、離れて生活していても、同じ所得で生活しているという点です。
他にも、
- (2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
- 別居している夫婦が、家計を夫6:妻4の割合で負担
- 互いに十分な収入を得ている同居中の夫婦が、生活費を折半している場合
- 別居している夫婦が、個々で生活費を稼いでいる場合
- 同居していても、動線や部屋が各自用意されていて、夫婦間で金銭の授受が一切発生しない場合
必ずしも控除対象配偶者や扶養親族のみではない
ここで注意したいのが、医療費控除の対象は、配偶者や扶養家族だけではないということです。
「生計を一にしている」ことが条件であるため、離れた所に住んでいても、同じ所得で生活していれば対象に入ります。
例えば、
- 共働きの夫婦(妻は年収400万円)で、夫が妻の医療費を支払った場合
- 父親が社会人の娘の医療費を支払った場合
社会人の子供など同居していなくても対象になる場合も
同居していなくても、「生計を一にしている」場合は、医療費控除の対象になります。
ここでも、
- 同居していない母親の医療費を子どもが負担した場合
- 妻子に生活費を送っている単身赴任の夫が妻子の医療費を支払った場合
家族合算して10万円以上の医療費で医療費控除が受けられる
ここまでは、医療費控除の対象についてみてきました。
そもそも医療費控除とは、年間10万円以上の医療費の自己負担が発生してはじめて対象になるのです。
そして、一口に医療費といっても、対象になるものとならないものもあります。
そして、医療費控除は自動計算されることはなく、自分で申告しなければなりません。
ここからは、そんな複雑でわかりにくい医療費控除について
- 医療費控除のしくみ
- 医療費控除の対象となるもの・ならないもの
- 医療費控除を受けるには確定申告が必要
医療費控除のしくみ
医療費控除は、一年間の間に支払った医療費の総額を課税所得から引いてもらえる制度です。
控除額の計算方法は、総所得200万円を境に異なります。
総所得が200万円以上の場合
1年間の医療費の合計額 - 保険金などの補てん金額-10万円
となっています。
その一方で、総所得200万円未満の場合
1年間の医療費の合計額 - 保険金などの補填金額-総所得の5%
となっています。
仮に年収が100万円とすると、100×0.05=5となり医療費の総額の5万円以上の部分については控除対象になります。
しかし、総所得が200万円以上の場合は、一律10万円で、総所得の高低に関わらず一定です。
このように、控除額の計算は、総所得200万を境に異なることを覚えておきましょう。
医療費控除の対象となるもの・ならないもの
医療費控除の対象になるものの特徴は、一言で言うなら、「治療」を目的としているかどうかです。
例えば、
ジャンル | 対象 |
---|---|
病院 |
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医療器具・医薬品 |
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ジャンル | 対象 |
---|---|
交通費 |
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その他 |
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ジャンル | 対象 |
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病院 |
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医療器具・医薬品 |
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交通費 |
|
その他 |
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医療費控除を受けるには確定申告が必要
確定申告は、事業主やフリーランスでなければ、多くの人は経験がないでしょう。
それもそのはず、給与所得者の場合、給料からすでに源泉徴収されていて、確定申告でなく、年末調整によって税金が勝手に納めれれているためです。
しかし、医療費控除は年末調整の対象外なので、自分で確定申告をする必要が出てきます。
申告期間は、毎年2月16日~3月15日となっています。
ただし、医療費控除のみを申告するなら申告期間に限らずいつでも可能です。
さらに、5年間の猶予があるので、すぐに申告する必要もありません。
必要な書類は、
- 本人確認書類(マイナンバーカードがベスト)
- 確定申告書A(第一表・第二表)
- 医療費通知 医療費の領収書(自宅で保存)
- 医療費控除の明細書
- 源泉徴収票(提出する必要はない)
共働きの場合はだれが確定申告をするべき?
ここまでは、医療費控除のしくみについてみてきました。
実はここまで説明が、医療費控除のすべてというではありません。所得控除を受けた後が重要です。
医療費控除は、課税所得から控除され、その結果所得税率に応じて実際に支払った税金が還付金として戻ってくるという流れです。
計算方法としては、
医療費控除額×所得税率
によって、還付金がはじき出されます。
所得が高くなればなるほど、所得税率は大きくなっていきます。
つまり、医療費控除を考えるうえで、課税所得が大きいほど戻ってくる税金が多くなるため課税所得が最も大きい人が申告するのがよさそうです。
では、実際にいくら控除され、還付金はどれくらい戻ってくるのでしょうか。
夫婦それぞれを例に挙げてシュミレーションをしてみたいと思います。
ここでは、
- 合計医療費は40万円
- 保険補填額は10万円
- 夫(課税所得600万円)が確定申告をした場合
- 妻(課税所得240万円)が確定申告をした場合
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円以上330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円以上695万円未満 | 20% | 42万7,500円 |
695万円以上900万円未満 | 23% | 63万6,000円 |
900万円以上1,800万円未満 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円以上4,000万円未満 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
夫(所得税率20%)が確定申告をした場合
前提条件として、夫の課税所得が600万円ということで、上の表より所得税率は20%です。
なおかつ、医療費控除の計算の際には、10万円を引くことになります。
医療費控除は、
40万円(医療費)-10万円(保険補填額)ー10万円=20万円
ということが分かります。そして、還付金は、
20万円(医療費控除額)×20%(所得税率)=4万円
ということが分かりました。
妻(所得税率10%)が確定申告をした場合
前提条件として、妻の課税所得が240万円ということで、上の表より所得税率は10%です。
なおかつ、医療費控除の計算の際には、10万円を引くことになります。
医療費控除は、
40万円(医療費)-10万円(保険補填額)ー10万円=20万円
ということが分かります。
そして、還付金は、
20万円(医療費控除額)×10%(所得税率)=2万円
ということが分かりました。
医療費控除を比較すると、夫と妻の還付金はそれぞれ4万円と2万円になりました。
このことから、夫婦で所得の高い方が医療費控除を申告するべきといえます。
ただし、これは共働きで、両者ともに総所得が200万円を超えている場合に限ります。
ここで、
- パートで働く妻(総所得100万円)が申告した場合
40万円(医療費)-10万円(保険補填額)ー2万円(総所得の5%)=28万円
ということが分かります。28万円(医療費控除額)×5%(所得税率)=14000円
となります。まとめ:医療費控除は扶養外の家族も適用される?
以上、医療費控除の範囲や仕組みなどについてみてきました。
この記事のポイントは、
- 夫婦共働きの場合、生計を一にしている限りどちらも医療費控除の申請は可能
- 家族合算して10万円以上の医療費で医療費控除が受けられる
- 課税の高い方が医療費控除を申告すべきだが所得200万円未満の場合はその限りではない