
家族の医療費がかさんだ時に「扶養に入っていない家族の医療費も控除できるのか」「誰が確定申告すべきか」と悩まれる方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、医療費控除の対象となる家族の範囲や、共働き世帯での最適な申告方法、「生計を一にする」の定義など、医療費控除と扶養の関係を詳しく解説します。
・扶養に入っていない家族の医療費を立て替えており、医療費控除を受けられるか知りたい方 ・夫婦共働きで、どちらが医療費控除の申告をすると得なのか知りたい方
この記事を読むことで、医療費控除の仕組みや家族構成や所得状況に合わせた最適な申告方法がわかるほか、控除に関わる家計の見直しもできるようになります。
内容をまとめると
- 医療費控除は扶養関係に関わらず「生計を一にする」家族の医療費を合算できる、別居している親や社会人の子供でも、定期的な仕送りなど経済的なつながりがあれば対象となる
- 家族全体の医療費が年間10万円(または所得の5%)を超えると医療費控除が受けられ、所得税率が高い方が申告すると還付額が大きくなる
- 医療費控除を含む税金対策は家計全体の見直しにつながるため、専門家に相談して最適な申告方法と家計プランを立てることが重要である
- なかでも、相談満足度98.6%の専門家に何度でも無料相談できるマネーキャリアなら、医療費控除の申告方法から家計の見直し、老後資金の準備まで中立的な立場でアドバイスしてくれます。

監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 医療費控除は扶養外の家族も適用される?専業主婦は?
- 扶養外の家族も対象!生計を一にする家族の範囲
- 「生計を一にする」の定義は?
- 必ずしも控除対象配偶者や扶養親族のみではない
- 社会人の子供など同居していなくても対象になる場合も
- 家族合算して10万円以上の医療費で医療費控除が受けられる
- 医療費控除のしくみ
- 医療費控除の対象となるもの・ならないもの
- 医療費控除を受けるには確定申告が必要
- 共働きの場合はだれが確定申告をするべき?
- 夫(所得税率20%)が確定申告をした場合
- 妻(所得税率10%)が確定申告をした場合
- 夫婦それぞれが確定申告する場合の注意点
- 医療費控除申告の具体的な手順と必要書類
- 医療費控除申告の具体的な手順
- 領収書の保管と提出について
- 医療費控除と扶養に関するよくある質問
- 別居している親の医療費は合算できる?
- 医療費を立て替えた場合の取り扱いとは?
- 扶養の関係で家計に損が出ないようにするために取るべき方法とは?
- まとめ:医療費控除は扶養外の家族も適用される?
医療費控除は扶養外の家族も適用される?専業主婦は?
こんにちは、マネーキャリア編集部です。
先日、40代女性からこんな質問をいただきました。
医療費控除は、同じ家に住んでいないとだめですか?
息子が離れたところに下宿しているのですが。
医療費控除とは1年間に支払った医療費に応じて、控除が受けられる仕組みです。
もし離れて生活している人が、独自に医療費を支払ったら、それもまとめて医療費控除の対象になるのでしょうか。
今回はそのあたりの解説も含めて、
- 扶養外の家族も対象になる?生計を一にするとは?
- どれくらいの医療費を支払ったら、医療費控除を利用できる?
- 共働きの場合はだれが確定申告をするべき?
扶養外の家族も対象!生計を一にする家族の範囲
まずは、医療費控除の対象に含まれる範囲を紹介したいと思います。
ここでは、
- 「生計を一にする」の定義は?
- 必ずしも控除対象配偶者や扶養親族のみではない
- 社会人の子供など同居していなくても対象になる場合も
「生計を一にする」の定義は?
国税庁の公式ホームページによると、医療費控除の対象は、
- 自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合
- (1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
- イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
- ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
イやロの条件からは、生計を一にしているとは、必ずしも同居している必要がないことが分かります。
重要なのは、離れて生活していても、同じ所得で生活しているという点です。
他にも、
- (2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
- 別居している夫婦が、家計を夫6:妻4の割合で負担
- 互いに十分な収入を得ている同居中の夫婦が、生活費を折半している場合
- 別居している夫婦が、個々で生活費を稼いでいる場合
- 同居していても、動線や部屋が各自用意されていて、夫婦間で金銭の授受が一切発生しない場合
必ずしも控除対象配偶者や扶養親族のみではない
ここで注意したいのが、医療費控除の対象は、配偶者や扶養家族だけではないということです。
「生計を一にしている」ことが条件であるため、離れた所に住んでいても、同じ所得で生活していれば対象に入ります。
例えば、
- 共働きの夫婦(妻は年収400万円)で、夫が妻の医療費を支払った場合
- 父親が社会人の娘の医療費を支払った場合
社会人の子供など同居していなくても対象になる場合も
同居していなくても、「生計を一にしている」場合は、医療費控除の対象になります。
ここでも、
- 同居していない母親の医療費を子どもが負担した場合
- 妻子に生活費を送っている単身赴任の夫が妻子の医療費を支払った場合
家族合算して10万円以上の医療費で医療費控除が受けられる
ここまでは、医療費控除の対象についてみてきました。
そもそも医療費控除とは、年間10万円以上の医療費の自己負担が発生してはじめて対象になるのです。
そして、一口に医療費といっても、対象になるものとならないものもあります。
そして、医療費控除は自動計算されることはなく、自分で申告しなければなりません。
ここからは、そんな複雑でわかりにくい医療費控除について
- 医療費控除のしくみ
- 医療費控除の対象となるもの・ならないもの
- 医療費控除を受けるには確定申告が必要
医療費控除のしくみ
医療費控除は、一年間の間に支払った医療費の総額を課税所得から引いてもらえる制度です。
控除額の計算方法は、総所得200万円を境に異なります。
総所得が200万円以上の場合
1年間の医療費の合計額 - 保険金などの補てん金額-10万円
となっています。
その一方で、総所得200万円未満の場合
1年間の医療費の合計額 - 保険金などの補填金額-総所得の5%
となっています。
仮に年収が100万円とすると、100×0.05=5となり医療費の総額の5万円以上の部分については控除対象になります。
しかし、総所得が200万円以上の場合は、一律10万円で、総所得の高低に関わらず一定です。
このように、控除額の計算は、総所得200万を境に異なることを覚えておきましょう。
医療費控除の対象となるもの・ならないもの
医療費控除の対象になるものの特徴は、一言で言うなら、「治療」を目的としているかどうかです。
例えば、
ジャンル | 対象 |
---|---|
病院 |
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医療器具・医薬品 |
|
ジャンル | 対象 |
---|---|
交通費 |
|
その他 |
|
ジャンル | 対象 |
---|---|
病院 |
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医療器具・医薬品 |
|
交通費 |
|
その他 |
|
医療費控除を受けるには確定申告が必要
確定申告は、事業主やフリーランスでなければ、多くの人は経験がないでしょう。
それもそのはず、給与所得者の場合、給料からすでに源泉徴収されていて、確定申告でなく、年末調整によって税金が勝手に納めれれているためです。
しかし、医療費控除は年末調整の対象外なので、自分で確定申告をする必要が出てきます。
申告期間は、毎年2月16日~3月15日となっています。
ただし、医療費控除のみを申告するなら申告期間に限らずいつでも可能です。
さらに、5年間の猶予があるので、すぐに申告する必要もありません。
必要な書類は、
- 本人確認書類(マイナンバーカードがベスト)
- 確定申告書A(第一表・第二表)
- 医療費通知 医療費の領収書(自宅で保存)
- 医療費控除の明細書
- 源泉徴収票(提出する必要はない)
共働きの場合はだれが確定申告をするべき?
ここまでは、医療費控除のしくみについてみてきました。
実はここまで説明が、医療費控除のすべてというではありません。所得控除を受けた後が重要です。
医療費控除は、課税所得から控除され、その結果所得税率に応じて実際に支払った税金が還付金として戻ってくるという流れです。
計算方法としては、
医療費控除額×所得税率
によって、還付金がはじき出されます。
所得が高くなればなるほど、所得税率は大きくなっていきます。
つまり、医療費控除を考えるうえで、課税所得が大きいほど戻ってくる税金が多くなるため課税所得が最も大きい人が申告するのがよさそうです。
では、実際にいくら控除され、還付金はどれくらい戻ってくるのでしょうか。
夫婦それぞれを例に挙げてシュミレーションをしてみたいと思います。
ここでは、
- 合計医療費は40万円
- 保険補填額は10万円
- 夫(課税所得600万円)が確定申告をした場合
- 妻(課税所得240万円)が確定申告をした場合
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円以上330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円以上695万円未満 | 20% | 42万7,500円 |
695万円以上900万円未満 | 23% | 63万6,000円 |
900万円以上1,800万円未満 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円以上4,000万円未満 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
夫(所得税率20%)が確定申告をした場合
前提条件として、夫の課税所得が600万円ということで、上の表より所得税率は20%です。
なおかつ、医療費控除の計算の際には、10万円を引くことになります。
医療費控除は、
40万円(医療費)-10万円(保険補填額)ー10万円=20万円
ということが分かります。そして、還付金は、
20万円(医療費控除額)×20%(所得税率)=4万円
ということが分かりました。
妻(所得税率10%)が確定申告をした場合
前提条件として、妻の課税所得が240万円ということで、上の表より所得税率は10%です。
なおかつ、医療費控除の計算の際には、10万円を引くことになります。
医療費控除は、
40万円(医療費)-10万円(保険補填額)ー10万円=20万円
ということが分かります。
そして、還付金は、
20万円(医療費控除額)×10%(所得税率)=2万円
ということが分かりました。
医療費控除を比較すると、夫と妻の還付金はそれぞれ4万円と2万円になりました。
このことから、夫婦で所得の高い方が医療費控除を申告するべきといえます。
ただし、これは共働きで、両者ともに総所得が200万円を超えている場合に限ります。
ここで、
- パートで働く妻(総所得100万円)が申告した場合
40万円(医療費)-10万円(保険補填額)ー2万円(総所得の5%)=28万円
ということが分かります。28万円(医療費控除額)×5%(所得税率)=14000円
となります。夫婦それぞれが確定申告する場合の注意点
夫婦がそれぞれ確定申告を行う場合、医療費控除は一方のみが申告するのが基本であり、同じ医療費を夫婦双方が重複しての申告はできません。
医療費控除を申告するのは、一般的に所得税率が高い方が有利です。
例えば、夫の所得税率が20%、妻が10%の場合、同じ医療費でも夫が申告した方が還付金額が大きくなります。
ただし、どちらか一方の所得が少なく、基礎控除や社会保険料控除などで既に課税所得がゼロに近い場合は、もう一方が申告した方が効果的です。
また、医療費の支払いが夫婦それぞれ別々に行われ、明確に区分できる場合は、各自の支払分をそれぞれが申告することも可能です。
夫婦の医療費控除申告では、世帯全体での税負担を減らすことを考え、どちらが申告するか事前によく検討しましょう。
医療費控除申告の具体的な手順と必要書類
以下では、医療費控除申告の具体的な手順と必要書類を解説します。
医療費控除の申告は、確定申告書と医療費控除の明細書の提出が基本であり、医療費控除の申告は、必要書類を正しく準備することで、スムーズに手続きが進みます。
特に「生計を一にする家族」の医療費を合算する場合は、家族との関係性を示す書類も用意しておくと安心です。
医療費控除申告の具体的な手順
医療費控除の申告手順は、まず家族全員分の医療費を集計することから始まります。
扶養関係に関わらず、「生計を一にする」家族の医療費は合算できます。
具体的な手順は以下の通りです。
- 医療費の領収書を集計する(家族別・病院別に整理すると便利)
- 医療費控除の明細書を作成する(国税庁のウェブサイトからダウンロード可能)
- 確定申告書に必要事項を記入する(所得金額、控除額等)
- 医療費控除の明細書を添付して提出する
- 医療費通知がある場合は添付する
医療費控除の申告は、事前に家族の医療費を整理しておくことで、スムーズに進められます。
とくに初めて申告する方は、国税庁のウェブサイトにある記入例を参考にすると良いでしょう。
領収書の保管と提出について
医療費控除の申告では、2017年の税制改正により領収書の提出は不要となりましたが、5年間の保管義務があります。
そのため、税務署から提示を求められた場合に備えて、適切に保管しておく必要があります。
領収書は家族別・病院別・日付順など、自分が後で確認しやすい保管方法で問題なく、紙でも電子データでも構いません。スマートフォンで撮影してデータ保存する方法も認められています。
また、医療費通知(医療費のお知らせ)を活用すると、領収書の集計作業が簡略化できます。
健康保険組合や市区町村から送られてくる「医療費のお知らせ」は、申告時に添付することで明細書への記入を一部省略できます。
領収書の適切な管理は、医療費控除申告をスムーズに行うだけでなく、税務調査があった場合にも必要なので、デジタル化して保存する場合も原本と同等の内容が確認できるように保存しましょう。
医療費控除と扶養に関するよくある質問
医療費控除と扶養に関する疑問は多く、特に「誰の医療費が対象になるのか」という質問が多いです。
そこで以下では、医療費控除と扶養に関するよくある質問の代表例を紹介します。
別居している親の医療費は合算できる?
別居している親の医療費でも、「生計を一にする」と認められれば医療費控除の対象になります。
親への定期的な仕送りや生活費の援助があれば、別居していても「生計を一にする」と判断されることが多いです。
「生計を一にする」と判断される条件としては、
- 定期的な金銭的援助があること
- 生活費の大部分を負担していること
などが挙げられます。
これらを証明するために、銀行振込の記録や送金履歴を保管しておくのがおすすめです。
また、親の収入状況によっては、親自身が医療費控除を申告した方が税金還付額が大きくなる場合もあるため、どちらが申告するか検討することも大切です。
別居している親の医療費を合算する場合は、「生計を一にする」関係性を示す証拠を用意しておくと、スムーズに医療費控除を受けられます。
医療費を立て替えた場合の取り扱いとは?
医療費を立て替え払いした場合、実際に支払った人が医療費控除を申告できます。
ただし、立て替えた相手と「生計を一にする」関係であることが前提条件です。
例えば、子供が親の病院代を立て替えた場合、子供が確定申告で医療費控除を受けられます。
この際、領収書は立て替えた人(子供)の名前でなくても問題ありませんが、後日精算して実質的に本人が支払った場合は、本人の医療費として申告が必要です。
また、生計を一にしない他人の医療費を立て替えた場合は、医療費控除の適用されません。
医療費の立て替え払いに関しては、誰が実質的に負担したかが重要なので、支払いの証明として領収書を適切に保管し、必要に応じて立て替えの経緯を説明できるようにしておくと安心です。
扶養の関係で家計に損が出ないようにするために取るべき方法とは?
扶養と医療費控除の関係を正しく理解して最適な申告方法を選べば、家計の負担を軽減できます。
しかし、医療費控除は「生計を一にする」家族の範囲が広い一方で、申告方法を間違えると税金の還付額が少なくなったり、控除の機会を逃したりする可能性があります。
また、医療費控除と扶養の関係は、家族構成や所得状況、医療費の負担者など複合的な要素を考慮する必要があります。
このように扶養関係と医療費控除の最適な組み合わせを見極めるのは難しいため、プロのFPに何度でも無料で相談できるマネーキャリアを利用する人が増えています。
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- 控除関係はもちろん、お金にまつわる悩みであれば何度でもアドバイスを受けられる
- 周りの人にお金の悩みを知られず、専門家に相談可能
- お金の専門家に何度でも相談でき、納得いくまで話し合うことで解決につながる
- オンライン対応しているので、いつでもどこでも相談可能
まとめ:医療費控除は扶養外の家族も適用される?
以上、医療費控除の範囲や仕組みなどについてみてきました。
この記事のポイントは以下の通りです。
- 夫婦共働きの場合、生計を一にしている限りどちらも医療費控除の申請は可能
- 家族合算して10万円以上の医療費で医療費控除が受けられる
- 課税の高い方が医療費控除を申告すべきだが所得200万円未満の場合はその限りではない