「世帯分離をすると住民税はどう変わる?」
「世帯分離で住民税は減らせるの?」
とお悩みではないでしょうか。
- 結論から言うと、世帯分離によって住民税が増える場合があります。ただし、医療・介護費の負担が軽くなるなど、別の面でのメリットもあるため、 ご家庭の状況に応じて総合的に判断することが大切です。
この記事では世帯分離が住民税に与える影響やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
この記事を読むことで、世帯分離の税務上の影響を正しく理解し、自分にとって最適な選択ができるようになるので、ぜひご覧ください。
この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
世帯分離とは?概要を解説
世帯分離とは、同居している家族が、住民票上の世帯を別々に登録することです。
通常、同じ住所に住んでいる家族は一つの世帯として扱われますが、世帯分離の手続きを行うことで、住民票上では別世帯として認められます。
例えば、三世代同居の家庭で、祖父母・両親・子どもが同じ住所に住んでいる場合、祖父母だけを別世帯にすることができます。
世帯分離は市区町村の役所で手続きを行い、住民票の写しや本人確認書類があれば比較的簡単に行うことができます。
ただし、世帯分離を行うと税金や社会保険料の計算方法が変わるため、事前に影響を十分に検討することが重要です。
世帯分離によって住民税は増加する可能性がある
世帯分離によって住民税は増加する可能性があります。
住民税の計算では、扶養控除や配偶者控除などの各種控除が適用されますが、世帯分離によって「生計を一にしている」と認められなくなった場合、これらの控除を受けられなくなることがあります。
例えば、親を扶養に入れている場合でも、生活費の支援が実態として途絶えていると判断されると、扶養控除(38万円)が適用されず、その結果として住民税が約3.8万円増加する可能性があります。
また、配偶者控除や配偶者特別控除についても、生計の実態によって適用条件が変わる場合があるため注意が必要です。
ただし、世帯分離によって医療費や介護費の自己負担が軽減される場合もあるため、税金・社会保険の両面から総合的に判断することが大切です。
世帯分離のデメリットと対策
世帯分離の主なデメリットとして以下があります。
- 国民健康保険料が上がる場合がある
- 実態によっては扶養控除・配偶者控除が外れることがある
- 自治体独自の助成制度が受けられなくなる可能性がある
ただし、事前に制度の影響を確認し、対策を行っていれば、こうしたデメリットを抑えられる場合もあります。
各デメリットの詳細と対策方法を理解したうえで、世帯分離が本当に自分の家庭にとって有利かどうかを判断しましょう。
国民健康保険料が上がる場合がある
世帯分離により国民健康保険料が上がる場合があります。
国民健康保険料は世帯単位で計算されるため、世帯分離を行うと新たに世帯主となった人に保険料の支払い義務が発生します。
例えば、収入のない高齢の親を世帯分離した場合でも、その親が新たな世帯主となり、最低限の保険料を支払う必要があります。
また、世帯分離により世帯収入が分散されることで、軽減措置の適用条件が変わる可能性もあります。
国民健康保険料の増加額は自治体や収入状況によって異なるため、事前対策として市区町村の国民健康保険窓口で試算してもらうのがおすすめです。
実態によっては扶養控除・配偶者控除が外れることがある
世帯分離では、実態によっては扶養控除や配偶者控除が外れることがあります。
扶養控除は、年収103万円以下の親族を扶養している場合に適用される制度ですが、世帯分離後に「生計を一にしていない」と判断された場合は、控除の対象外になる可能性があります。
例えば、65歳以上の親を扶養に入れている場合、扶養控除額は58万円ですが、生活費の支援実態が確認できないと、所得税と住民税を合わせて約17万円の負担増となることもあります。
一方で、世帯分離をしても実際に生活費を共有しており、「生計を一にしている」と認められれば控除を受けられる場合もあります。
そのため、税務署や税理士に事前に相談しておくことや、家計簿や支出記録などで生活実態を示せる証拠を残しておくことが大切です。
自治体独自の助成制度が受けられなくなる可能性がある
世帯分離を行うことで、自治体が独自に実施している医療費助成や福祉支援制度などの対象外になる可能性があります。
これらの制度の中には、「同一世帯であること」や「世帯主が同じであること」を条件としているものがあり、住民票上で世帯を分けると、支給要件を満たさなくなるケースがあります。
例えば、子どもの医療費助成制度やひとり親家庭への手当、一部の介護・障害者向けの補助金などは、世帯単位で収入や構成を判定しているため、世帯分離によって対象から外れることがあります。
制度の内容や判定基準は自治体によって異なるため、世帯分離を検討する際は、事前に市区町村の担当窓口で支援制度の適用条件を確認することが大切です。
世帯分離のメリット
世帯分離にはデメリットだけでなく、以下のようなメリットもあります。
- 医療費や介護費の自己負担が下がる場合がある
- 奨学金や学費支援制度の申請で有利になる場合がある
- 介護保険料・国民健康保険料が軽減される場合がある
これらのメリットがデメリットを上回る場合は、世帯分離を検討する価値があります。
医療費や介護費の自己負担が下がる場合がある
世帯分離により医療費や介護費の自己負担が下がる場合があります。
高額療養費制度では、世帯収入に応じて自己負担限度額が決まるため、世帯分離により収入が低く見える世帯では負担が軽減される可能性があります。
例えば、年収800万円の世帯で高齢の親の医療費が高額になった場合、親を世帯分離することで親の世帯収入が低くなり、自己負担限度額が下がる可能性があります。
また、介護保険の自己負担についても、利用者負担上限が世帯収入によって決まるため、世帯分離により負担軽減効果が期待できます。
ただし、世帯分離のタイミングや方法によっては効果が限定的な場合もあるため、事前にFPなどの専門家に相談することをおすすめします。
学費や奨学金などの申請に有利な場合がある
世帯分離により、奨学金や学費支援制度の申請で有利になる場合があります。
奨学金や学費支援制度では、世帯全体の収入が審査基準として用いられることが多いため、世帯分離を行うことで収入が低く見える世帯では支援を受けやすくなる場合があります。
例えば、両親の年収が高い家庭でも、学生本人を世帯分離することで本人の収入がゼロとみなされ、給付型奨学金や授業料減免制度の対象となるケースがあります。
また、高等教育の修学支援新制度などでも、世帯収入の区分によって支援内容が決まるため、世帯分離によって有利に働く可能性があります。
ただし、奨学金機関や学校によっては生活実態を確認する審査が行われる場合があり、形式的な世帯分離だけでは認められないこともあります。そのため、制度の適用条件を事前に確認し、必要に応じて専門家や学校窓口に相談することが大切です。
世帯分離に関するよくある質問
世帯分離に関するよくある質問として以下について解説します。
- 世帯分離していても扶養に入れることはできる?
- 夫婦・親子で同居していても世帯分離はできる?
よくある質問への解説を見て、不安や疑問点を解消しましょう。
世帯分離していても扶養に入れることはできる?
世帯分離していても扶養に入れることは可能です。
なぜなら、扶養控除の適用条件は「生計を一にしている」ことであり、住民票上の世帯構成とは別の概念だからです。
「生計を一にしている」とは、同じ家計で生活していることを意味し、住民票上で世帯分離をしていても、実際に同じ住所で生活し、生活費を共有していれば扶養関係は成立します。
ただし、税務署から扶養の実態について確認を求められた場合に備えて、家計簿や生活費の支出記録などの証拠を整理しておくことが重要です。
また、社会保険上の扶養については、健康保険組合によって判定基準が異なる場合があるため、事前に確認することをおすすめします。
夫婦・親子で同居していても世帯分離はできる?
夫婦・親子で同居していても世帯分離はできます。
世帯分離に血縁関係や婚姻関係による制限がないため、同じ住所に住んでいる夫婦や親子でも別々の世帯として登録することが可能です。
ただし、世帯分離が認められるためには「生計を別にしている」という実態が必要とされる場合があります。
つまり、住民票上は世帯分離できても、実際に生活費を共有している場合は、税制上や社会保険上の各種制度では「生計を一にしている」と判断される可能性があります。
そのため、世帯分離を行う際は、その目的と実態を明確にし、関連する制度への影響を事前に確認することが重要です。
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- 世帯分離により住民税は増加する可能性がある
- 国民健康保険料の増加や扶養控除が外れる可能性などのデメリットがある
- 一方で、医療費や介護費の自己負担が下がる、奨学金・学費支援制度で有利になるなどのメリットもある
- 世帯分離をしても、生計を一にしていれば扶養控除を受けられる場合がある