病院を利用した際のコインパーキング等の駐車場代は、医療費控除の対象となるのでしょうか。この記事では、通院の際の駐車場代が医療費控除の対象となるかについて解説しています。また、間違えて医療費控除の申告に駐車場代を含めてしまった場合の対処方法も説明します。
監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 病院の駐車場代は医療費控除の対象となる?
- 病院の駐車場代は医療費控除の対象にならない!
- 医療費控除の対象になる交通費とは?
- ①通院の際に利用したバス代や電車賃
- ②やむを得ず利用したタクシー代
- ③本人が1人で通院できない場合の付き添い人の交通費
- 医療費控除の対象とならない交通費を紹介!
- ①自家用車で通院した際の駐車場代やガソリン代
- ②公共交通機関ではなくタクシーを使用した際のタクシー代
- ③公共交通機関で通院した際の定期代
- 駐車場代の医療費控除を申告したらバレる?
- 間違えて駐車場代の医療費控除を申告した場合の対処方法を紹介
- ①医療費控除の申告期限内に間違えが発覚したとき
- ②医療費控除の申告期限後に間違えが発覚したとき
- まとめ:病院の駐車場代は医療費控除の対象外!
病院の駐車場代は医療費控除の対象となる?
マネーキャリア編集長の谷川です。
先日、30代の女性の友人からこんな疑問を寄せられました。
ここでは、
- 駐車場代が医療費控除の対象になるかどうか
- 医療費控除の対象になる交通費
- 対象にならない交通費
など、医療費控除の対象について分かる記事になっています。
ぜひ最後までご覧ください。
マネーキャリアでは、お金に関する記事が数多くありますので興味のある方は合わせてご覧ください。
病院の駐車場代は医療費控除の対象にならない!
まず結論から申し上げますが、病院の駐車場代は医療費控除の対象外です。
医療費控除の対象については、法令により決められています。
所得税法施行令第207条に医療費の範囲について記載されており、
次に掲げるものの対価のうち、その病状その他財務省令で定める状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とする。
とあります。
掲げるものは、下記の通りです。
- 医師又は歯科医師による診療又は治療
- 治療又は療養に必要な医薬品の購入
- 病院、診療所(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)又は助産所へ収容されるための人的役務の提供
- あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律に規定する施術者又は柔道整復師法に規定する柔道整復師による施術
- 保健婦、看護婦又は准看護婦による療養上の世話
- 助産婦による分べんの介助
- 1ℓ5kmも走れない燃費の悪い自家用車で通院した分のガソリン代
- 有料駐車場に停めていた分の駐車場代
このため、人的役務の提供に当たらない交通費はすべて対象外としているのです。
病院の駐車場代はもちろん、自家用車のガソリン代も対象外です。
医療費控除の対象になる交通費とは?
逆に、対象になる交通費もあります。
先ほどの法令に記載の「人的役務の提供」に該当する交通費です。
「それなら、誰かが運転してくれる交通機関だったらタクシーでもOKだよね?」
と思いたいところですが、さすがにそれは許されません。
法令には「一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額」という記載もあり、本来なら公共交通機関で500円で行けるところに3000円かけてタクシーで行くのはNGです。
対象になる交通費について、代表的なものを3つご紹介します。
これ以外の交通機関を用いることは基本的にないので、下記3つ以外の手段は対象外だと思ってください。
①通院の際に利用したバス代や電車賃
通院時に利用したバス代や電車賃は、もちろん対象になります。
電車やバスの利用は領収書が残らないことも多いですが、領収書は必須ではありません。
皆さんが会社員として仕事で電車・バスを利用した場合も、申請時に領収書を求められないと思います。
それと同じ話です。
下記のような情報をメモ又はExcelに残しておけば問題ないでしょう。
- 利用した日
- 行った医療機関
- かかった金額
②やむを得ず利用したタクシー代
「通院終わったら終電過ぎちゃった…」
「症状が酷すぎて公共交通機関なんて使えないよ…」
このような場合もあるでしょう。無理に公共交通機関を使う必要はありません。
やむを得ずタクシーを利用した場合、タクシー代も対象になります。
これは、国税庁の「病院に収容されるためのタクシー代」というページで詳細が記載されていますので一度確認してみるとよいでしょう。
まとめると以下の通りになります。
- 突然の陣痛など病状からみて急を要する場合や、電車、バス等の利用ができない場合には、その全額が医療費控除の対象となる
- タクシーの利用を余儀なくされる場合において、そのタクシー代の中に高速道路の利用料金が含まれているときは、その高速道路の利用料金も医療費控除の対象となる
タクシー利用時は、必ず領収書は貰うようにしましょう。
当たり前ですが、「楽だからタクシー使いました」は対象外です。
「そんなのタクシー使った理由なんて分かりっこないでしょ?」と思われるかもしれませんが、確定申告時には下記を記載しなければいけません。
- 通院日、通院先
- 診察時の領収書
- タクシー代などの交通費
③本人が1人で通院できない場合の付き添い人の交通費
付き添い人の交通費も、条件付きで対象になります。
ただし、年齢や症状により1人で通院するのが難しい人に付き添う場合のみです。
例えば、
- 幼い子供の通院に親が付き添った
- 高齢で身体不自由な父母の通院に付き添った
医療費控除の対象とならない交通費を紹介!
ここで、駐車場代を含めて医療費控除の対象にならない交通費も3つ紹介します。
基本的には、対象になる交通費以外は全て対象外です。
今回は、特に勘違いが起きやすい点を中心に解説します。
人的役務の提供に該当し、なおかつ一般的な水準でも対象外になる場合がありますので、この3つは必ず覚えておきましょう。
確定申告で「知りませんでした」では通りません。
①自家用車で通院した際の駐車場代やガソリン代
前述の通り、自家用車で通院した場合の駐車場代、ガソリン代は対象外です。
そもそも自家用車は人的役務の提供ではなく、単なる自己の交通手段にすぎません。
更に言えば、自家用車は法的には「ぜいたく品」であり、例えば生活保護を申請する際でも自家用車は原則として資産とみなされ認められません。
そんなぜいたく品を使って通院し、
「駐車場代やガソリン代がかかったから医療費控除してください」
と言っても通るわけがありません。
②公共交通機関ではなくタクシーを使用した際のタクシー代
タクシーの利用も、ほとんどの場合は対象外です。
やってしまいがちなのは、下記のような場合。
- 電車やバスだと遅れそうだったからタクシーを使った
- 電車やバスの本数が少なく不便すぎるのでタクシーを使った
③公共交通機関で通院した際の定期代
例え公共交通機関であっても、定期券区間内の定期代は対象外です。
定期券は本来、通勤や通学に利用するもの。
これを通院に利用した場合に医療費控除を受けるのは、常識的に考えてもおかしな話でしょう。
そもそも、通勤費(通勤手当)に関しては月15万円まで非課税です。
元々非課税メリットを受けているので、その定期代で医療費控除をして二重のメリットを享受することはできません。
スーパーで元々特売されているのに追加で割引が適用されないというのと、似たようなお話です。
なお、一部定期券を用いた場合、定期券分の交通費は差し引いて申告してください。
駐車場代の医療費控除を申告したらバレる?
こういう話をしていくと、
「いやー大した金額じゃないしバレないならいいでしょ?そもそもバレるの?」
といやらしい質問をする方がいます。
バレるバレないの問題ではなく、対象外と知っていて医療費控除を申告するのはただの脱税です。
当たり前ですが対象外と決まっている以上、駐車場代を医療費控除として申告すべきではありません。
ただ、実際にバレるかどうかという話をすると、バレる可能性は限りなく低いと考えられます。
税務署も日々大量の書類を預かっているので、全ての書類をくまなく調べるのは不可能です。そのため、ほとんどは抜き打ち調査。
駐車場代も、あまりに高額になる場合は別として5000円~1万円程度の金額なら対象になる費用と偽って申告しても、バレることはないでしょう。
仮にバレたとしても、税務署が得られる税金はわずかです。
そんなわずかな金額のために、手間と時間をかけるほどの暇はありません。
しかし、下記のような場合は連鎖的にバレてしまうリスクが上がります。
- 仮想通貨の売却益など、本来確定申告しなければいけない利益があったにも関わらず申告しなかった場合
- 副業をしていたにも関わらず、本業の給料と医療費控除しか申告しなかった場合
- 本業の給料を申告し忘れて医療費控除だけ申告した場合
間違えて駐車場代の医療費控除を申告した場合の対処方法を紹介
バレる可能性が低いとはいえ、間違えて申告したものをそのままにしておくのは精神衛生上良くないでしょう。
他の申告不備からバレてしまい、指摘を受ける可能性もあります。
数年以上前の申告でも指摘を受けた例があります。
実は、後からこのような不備/所得隠し/脱税等がバレると、結構厄介です。
税務署から追徴課税を言い渡されます。
- 過少申告加算税:10%(50万円まで)、15%(50万円超える部分)
- 重加算税:35% ※悪質な不正事実が発覚した場合
①医療費控除の申告期限内に間違えが発覚したとき
まずは期限内に間違いが発覚した場合。
これは簡単で、改めて申告書等を作成し、確定申告期限までに提出すれば問題ありません。
これを「訂正申告」と言います。
同じ申告書が2枚以上ある場合、原則として税務署では最後に提出されたものを採用するようになっています。
「訂正申告なら、訂正箇所だけ書けば大丈夫だよね?」
と考えたくなるところですが、訂正申告でもすべての内容を記載する必要があります。
とはいえ、一度記載したものを繰り返すだけで、そこまで手間はかからないでしょう。
他に注意すべき点も下記に記載します。
- 提出済みの添付書類は控えのコピーをつける
- 余白に赤字で訂正申告と明記
- 還付金を申告している場合は事前に税務署に確認
②医療費控除の申告期限後に間違えが発覚したとき
期限後に発覚した場合は、対処法が異なります。
期限後に取れる手続きは、下記2つです。
- 更正の請求:税金を払い過ぎた場合
- 修正申告:払う税金が少ないor還付金が多かった場合
- 確定申告期限の翌日から2か月以内:原則年7.3%or延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い方
- 確定申告期限の翌日から2か月以後:原則年14.6%or延滞税特例基準割合+7.3%のいずれか低い方
- 2か月以内:年2.5%
- 2か月以後:年8.8%
まとめ:病院の駐車場代は医療費控除の対象外!
医療費控除の対象について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
本記事では、
- 通院時の駐車場代は医療費控除の対象になるのか
- 医療費控除の対象になる交通費/ならない交通費
- 駐車場代の医療費控除を申告した場合の対処
- 駐車場代の医療費控除を申告した場合の、バレる可能性