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病院を利用した際のコインパーキング等の駐車場代は、医療費控除の対象となるのでしょうか。この記事では、通院の際の駐車場代が医療費控除の対象となるかについて解説しています。また、間違えて医療費控除の申告に駐車場代を含めてしまった場合の対処方法も説明します。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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病院の駐車場代は医療費控除の対象となる?

マネーキャリア編集長の谷川です。 

先日、30代の女性の友人からこんな疑問を寄せられました。 


「」 


ここでは、

  • 駐車場代が医療費控除の対象になるかどうか
  • 医療費控除の対象になる交通費
  • 対象にならない交通費  

など、医療費控除の対象について分かる記事になっています。

ぜひ最後までご覧ください。 


マネーキャリアでは、お金に関する記事が数多くありますので興味のある方は合わせてご覧ください。 

確定申告で医療費控除ができることは知ってるんだけど、医療費控除の対象ってどこまで含まれるんだろう…?病院の駐車場代って入れてもいいのかな?

ここでは、 

  • 駐車場代が医療費控除の対象になるかどうか 
  • 医療費控除の対象になる交通費 
  • 対象にならない交通費 

など、医療費控除の対象について分かる記事になっています。 


ぜひ最後までご覧ください。 


マネーキャリアでは、お金に関する記事が数多くありますので興味のある方は合わせてご覧ください。 

病院の駐車場代は医療費控除の対象にならない!


まず結論から申し上げますが、病院の駐車場代は医療費控除の対象外です。 


医療費控除の対象については、法令により決められています。

所得税法施行令第207条に医療費の範囲について記載されており、


次に掲げるものの対価のうち、その病状その他財務省令で定める状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とする。 


とあります。

掲げるものは、下記の通りです。

  1. 医師又は歯科医師による診療又は治療
  2. 治療又は療養に必要な医薬品の購入
  3. 病院、診療所(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)又は助産所へ収容されるための人的役務の提供
  4. あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律に規定する施術者又は柔道整復師法に規定する柔道整復師による施術
  5. 保健婦、看護婦又は准看護婦による療養上の世話
  6. 助産婦による分べんの介助
今回の駐車場代の場合、関連するものは3の「人的役務の提供」になりますが、自分で運転している車は人的役務の提供ではありません。

あえて交通費と記載していないワケは、ここにあります。
交通費と記載すると、何でもかんでも交通費として通ってしまうからです。
  • 1ℓ5kmも走れない燃費の悪い自家用車で通院した分のガソリン代
  • 有料駐車場に停めていた分の駐車場代
これらを駅前の病院で使っていた場合でも認めなくてはいけなくなります。
同じ車でも燃費の良し悪しで金額が変わりますし、不正が横行するのは目に見えています。

このため、人的役務の提供に当たらない交通費はすべて対象外としているのです。

病院の駐車場代はもちろん、自家用車のガソリン代も対象外です。

医療費控除の対象になる交通費とは?


逆に、対象になる交通費もあります。

先ほどの法令に記載の「人的役務の提供」に該当する交通費です。


「それなら、誰かが運転してくれる交通機関だったらタクシーでもOKだよね?」

と思いたいところですが、さすがにそれは許されません。


法令には「一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額」という記載もあり、本来なら公共交通機関で500円で行けるところに3000円かけてタクシーで行くのはNGです。


対象になる交通費について、代表的なものを3つご紹介します。

これ以外の交通機関を用いることは基本的にないので、下記3つ以外の手段は対象外だと思ってください。

①通院の際に利用したバス代や電車賃

通院時に利用したバス代や電車賃は、もちろん対象になります。


電車やバスの利用は領収書が残らないことも多いですが、領収書は必須ではありません。


皆さんが会社員として仕事で電車・バスを利用した場合も、申請時に領収書を求められないと思います。

それと同じ話です。


下記のような情報をメモ又はExcelに残しておけば問題ないでしょう。

  • 利用した日
  • 行った医療機関
  • かかった金額
確定申告時に参考になります。

なお、同じバス代や電車賃でも、通勤/通学定期券の区間内の病院へ行く場合は対象外です。
あくまで「主目的が通院」である場合ですので、その点は注意してください。

補足:飛行機や新幹線の費用について

重病や難病の際に、どうしても遠方の医療機関を利用しなければならない場合もあり、その際に飛行機や新幹線を使わなければいけないときもあるでしょう。

この場合は、「その医療機関で治療を受けなければならない事情があるか否か」で医療費控除の対象になるかどうか分かれます。

かかりつけ医から紹介状を出され、その医療機関が遠方で新幹線が必要だった場合は認められると考えて良いです。

自己都合で遠方の医療機関へ通院した場合は、対象外になります。
なお、遠方通院時にホテルなどに宿泊した場合、宿泊費に関しては医療費控除の対象にはなりません。

②やむを得ず利用したタクシー代

「通院終わったら終電過ぎちゃった…」

「症状が酷すぎて公共交通機関なんて使えないよ…」


このような場合もあるでしょう。無理に公共交通機関を使う必要はありません。

やむを得ずタクシーを利用した場合、タクシー代も対象になります。


これは、国税庁の「病院に収容されるためのタクシー代」というページで詳細が記載されていますので一度確認してみるとよいでしょう。


まとめると以下の通りになります。

  • 突然の陣痛など病状からみて急を要する場合や、電車、バス等の利用ができない場合には、その全額が医療費控除の対象となる
  • タクシーの利用を余儀なくされる場合において、そのタクシー代の中に高速道路の利用料金が含まれているときは、その高速道路の利用料金も医療費控除の対象となる
緊急時や、物理的に公共交通機関が動いていない時に関しては、基本的に認められると覚えておけば良いです。

タクシー利用時は、必ず領収書は貰うようにしましょう。


当たり前ですが、「楽だからタクシー使いました」は対象外です。


「そんなのタクシー使った理由なんて分かりっこないでしょ?」と思われるかもしれませんが、確定申告時には下記を記載しなければいけません。

  • 通院日、通院先
  • 診察時の領収書
  • タクシー代などの交通費
これらを記載した時点で、多少調べれば病院の所在地などすぐ分かります。
特に都市部で明らかにタクシー代が高い場合、不審に思われることでしょう。

一度税務署から目をつけられれば、逃れることはできません。
正当な理由なくタクシーを利用し、医療費控除に含めるのはおすすめしません。

③本人が1人で通院できない場合の付き添い人の交通費

付き添い人の交通費も、条件付きで対象になります。


ただし、年齢や症状により1人で通院するのが難しい人に付き添う場合のみです。

例えば、

  • 幼い子供の通院に親が付き添った
  • 高齢で身体不自由な父母の通院に付き添った
このような場合に限られます。
例え高齢でも、「自分で通えるのに心配だから…」と付き添う場合は対象外です。

また、少しややこしい話になりますが、入院している子供や高齢の父母のお見舞いで利用した交通費は医療費控除の対象外になります。

これは、対象となる子供や高齢者が「通院していない」からです。
通院していない以上、通院できるもできないもありませんので、対象外、ということになります。

医療費控除の対象とならない交通費を紹介!


ここで、駐車場代を含めて医療費控除の対象にならない交通費も3つ紹介します。


基本的には、対象になる交通費以外は全て対象外です。

今回は、特に勘違いが起きやすい点を中心に解説します。


人的役務の提供に該当し、なおかつ一般的な水準でも対象外になる場合がありますので、この3つは必ず覚えておきましょう。


確定申告で「知りませんでした」では通りません。

①自家用車で通院した際の駐車場代やガソリン代

前述の通り、自家用車で通院した場合の駐車場代、ガソリン代は対象外です。

そもそも自家用車は人的役務の提供ではなく、単なる自己の交通手段にすぎません。


更に言えば、自家用車は法的には「ぜいたく品」であり、例えば生活保護を申請する際でも自家用車は原則として資産とみなされ認められません。


そんなぜいたく品を使って通院し、


「駐車場代やガソリン代がかかったから医療費控除してください」


と言っても通るわけがありません。

②公共交通機関ではなくタクシーを使用した際のタクシー代

タクシーの利用も、ほとんどの場合は対象外です。

やってしまいがちなのは、下記のような場合。

  • 電車やバスだと遅れそうだったからタクシーを使った
  • 電車やバスの本数が少なく不便すぎるのでタクシーを使った
上記のような理由でタクシーを利用した場合は、医療費控除として認められません。
前述の通り、あくまで「やむを得ない場合」にのみ医療費控除が認められます。

人によっては、タクシー代の医療費控除について「対象になりますよ」と適当に教える方がいますが、原則対象外であることを忘れないでください。

③公共交通機関で通院した際の定期代

例え公共交通機関であっても、定期券区間内の定期代は対象外です。


定期券は本来、通勤や通学に利用するもの。

これを通院に利用した場合に医療費控除を受けるのは、常識的に考えてもおかしな話でしょう。


そもそも、通勤費(通勤手当)に関しては月15万円まで非課税です。

元々非課税メリットを受けているので、その定期代で医療費控除をして二重のメリットを享受することはできません。


スーパーで元々特売されているのに追加で割引が適用されないというのと、似たようなお話です。


なお、一部定期券を用いた場合、定期券分の交通費は差し引いて申告してください。

駐車場代の医療費控除を申告したらバレる?


こういう話をしていくと、


「いやー大した金額じゃないしバレないならいいでしょ?そもそもバレるの?」

といやらしい質問をする方がいます。


バレるバレないの問題ではなく、対象外と知っていて医療費控除を申告するのはただの脱税です。

当たり前ですが対象外と決まっている以上、駐車場代を医療費控除として申告すべきではありません。


ただ、実際にバレるかどうかという話をすると、バレる可能性は限りなく低いと考えられます。


税務署も日々大量の書類を預かっているので、全ての書類をくまなく調べるのは不可能です。そのため、ほとんどは抜き打ち調査。


駐車場代も、あまりに高額になる場合は別として5000円~1万円程度の金額なら対象になる費用と偽って申告しても、バレることはないでしょう。


仮にバレたとしても、税務署が得られる税金はわずかです。

そんなわずかな金額のために、手間と時間をかけるほどの暇はありません。


しかし、下記のような場合は連鎖的にバレてしまうリスクが上がります。

  • 仮想通貨の売却益など、本来確定申告しなければいけない利益があったにも関わらず申告しなかった場合
  • 副業をしていたにも関わらず、本業の給料と医療費控除しか申告しなかった場合
  • 本業の給料を申告し忘れて医療費控除だけ申告した場合
これらは、すぐにおかしいとバレます。
このような場合は「税務調査」と言って、税務署から連絡が入る可能性が高いです。

そこで正しく説明し、尚且つ税制上問題なければOKですが、上記3つの場合は明らかに申告ミスのため修正を求められます。

金額が大きいにも関わらず申告しなかった場合、意図的に申告しなかったとみなされますし、そこに本来医療費控除の対象外である駐車場代が発覚すれば心象は著しく悪くなるでしょう。

会社員以外に大きな収入がある方は、特に注意して確定申告をした方が良いです。
もちろん、対象外と分かっていて医療費控除に含めるのは論外だと言えます。

間違えて駐車場代の医療費控除を申告した場合の対処方法を紹介


バレる可能性が低いとはいえ、間違えて申告したものをそのままにしておくのは精神衛生上良くないでしょう。


他の申告不備からバレてしまい、指摘を受ける可能性もあります。

数年以上前の申告でも指摘を受けた例があります。


実は、後からこのような不備/所得隠し/脱税等がバレると、結構厄介です。

税務署から追徴課税を言い渡されます。

  • 過少申告加算税:10%(50万円まで)、15%(50万円超える部分)
  • 重加算税:35% ※悪質な不正事実が発覚した場合
バレることにビクビクするくらいなら、きちんと対処する方が100倍マシです。
対処法は国税庁のサイトに記載がありますが、詳しくご紹介します。

①医療費控除の申告期限内に間違えが発覚したとき

まずは期限内に間違いが発覚した場合。

これは簡単で、改めて申告書等を作成し、確定申告期限までに提出すれば問題ありません。


これを「訂正申告」と言います。


同じ申告書が2枚以上ある場合、原則として税務署では最後に提出されたものを採用するようになっています。


「訂正申告なら、訂正箇所だけ書けば大丈夫だよね?」


と考えたくなるところですが、訂正申告でもすべての内容を記載する必要があります。

とはいえ、一度記載したものを繰り返すだけで、そこまで手間はかからないでしょう。


他に注意すべき点も下記に記載します。

  • 提出済みの添付書類は控えのコピーをつける 
  • 余白に赤字訂正申告と明記 
  • 還付金を申告している場合は事前に税務署に確認
特に、医療費控除の場合は還付金を申告する場合もありますので、税務署に事前に確認して早めに訂正申告をする方が良いでしょう。

申告期限内であれば、ペナルティはありません。

②医療費控除の申告期限後に間違えが発覚したとき

期限後に発覚した場合は、対処法が異なります。

期限後に取れる手続きは、下記2つです。

  • 更正の請求:税金を払い過ぎた場合
  • 修正申告:払う税金が少ないor還付金が多かった場合
会社員以外に目立った収入がなく医療費控除のみの場合は、修正申告になります。
修正申告は「修正申告書」という専用の用紙で行いますが、記入内容は確定申告書と大差ありません。

なお、修正申告の場合はペナルティがあります。ただ、隠して後でバレた場合と比べれば少ない金額です。
  • 確定申告期限の翌日から2か月以内:原則年7.3%or延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い方
  • 確定申告期限の翌日から2か月以後:原則年14.6%or延滞税特例基準割合+7.3%のいずれか低い方

このペナルティを「延滞税」と言います。
なお、2021年の延滞税率は、
  • 2か月以内:年2.5%
  • 2か月以後:年8.8%
となります。
負担は決して軽くありませんが、加算税を食らうよりは少ない金額です。

延滞税は年率なので、隠している期間が長ければ長いほど損をします。
間違っていると分かったままバレないことを祈るよりは、正直に申告してお金を払っておいた方が良いでしょう。

まとめ:病院の駐車場代は医療費控除の対象外!

医療費控除の対象について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

本記事では、

  • 通院時の駐車場代は医療費控除の対象になるのか
  • 医療費控除の対象になる交通費/ならない交通費
  • 駐車場代の医療費控除を申告した場合の対処
  • 駐車場代の医療費控除を申告した場合の、バレる可能性
等、実際の確定申告に関わる場面まで詳しく解説してきました。

改めて冒頭の疑問にお答えすると、

「病院の駐車場代は医療費控除の対象外。バレるリスクは低いとはいえ、金額的にはメリットは少なく、バレた場合のペナルティの方がはるかに大きいので、駐車場代を医療費控除として申告するのはおすすめできない」

となります。
会社員や主婦など、普段確定申告をしない方にとっては、医療費控除は慣れないもの。
例え不慣れでも、「知らなかった」は絶対に通用しません。

だからこそ、しっかりと対象か対象外かをチェックして申告しましょう!