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通院する際、付き添いの人の交通費は医療費控除の対象となるのでしょうか。この記事では、付き添いの人の交通費が医療費控除の対象となるかどうかについて解説しています。また、交通費を節約する方法も紹介しているので、ぜひお読みください。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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付き添いの人の交通費は医療費控除の対象となる?

こんにちは。 


 マネーキャリア編集部です。


 先日、ある読者さまからこんな質問を受けました。 

医療費控除のことなのです。今、夫が病気で入院しているんですけれど、通院のための交通費も、医療費控除の対象になると聞きました。私、週3日付き添いも兼ねて、夫の病院に通っているのです。電車を使っているのですけれど、その交通費は医療費控除の対象になるのでしょうか?

日本では、年間約760万人近い人が医療費控除の申告をすると言われています。 


病気などで入院した場合、確かに医療費控除の対象になる可能性は高いでしょう。 


その際、できるだけかかった医療費は、多く見積もりたいところです。 確かに、通院のための公共交通機関の交通費は、医療費控除の対象になります。 


国税庁は医療費控除の対象は、「人的役務の提供の対価として支払われたものに限る」また、「利便性を目的とした利用の場合は医療費控除の対象にはならない」と規定しています。 


これはどういう意味なのでしょうか? 「付き添いの人の交通費は、医療費控除の対象になるの?」付き添いの人にとっては、とても気になるところです。 


今回は、そんな疑問にお答えしていきます。また、どんな交通費が医療費控除の対象になるのか、またどんな交通費がならないのか、詳しく解説していきます。 


合わせて、医療費控除際、交通費の明細書への書き方、またコラムとして交通費の節約術にも触れています。 医療費控除をお考えの方には、参考になると思います。ぜひ、最後までお読みください。

原則付き添いの人の交通費は医療費控除の対象外

結論から言うと、冒頭の読者さまの場合、付き添いの人の交通費は医療費控除の対象にはなりません。なぜなら、医療費控除の対象は、あくまで「治療目的のために支払った費用」であるからです。


この場合、治療を受けているのは夫であって、付き添いの奥さまではないからです。従って、原則として付き添いの人の交通費は、医療費控除の対象になりません。


ところで、冒頭で触れました「人的役務の提供の対価」という言葉の意味は、分かりやすく言うと、治療を目的として他者から受けたサービスの対価ということです。これに対して支払われた費用は、医療費控除の対象になります。


交通費については、たとえば通院のために路線バスを利用した場合は、バスの運営会社が行うサービスに対して料金を支払うわけですから、医療費控除の対象になります。


また「利便性を目的とした利用の場合」とは、「単に楽だから」「バスや電車は面倒だから」という理由で、タクシーや自家用車を利用した場合です。この費用は、医療費控除の対象とはなりません。

本人だけで通院できないなら付き添いの人の交通費も対象となる


たとえば病院へ通院や入院の際に、患者さんが一人で行くのが危険であり、付き添いが必要な場合など、患者さんの交通費のほかに付き添いの人の交通費も医療費控除の対象になります。

ただし、患者さんが入院していて、付き添いの人がその世話をするために通院する場合は、医療費控除の対象となりません。

対象となる通院費は、あくまで「医師による診療等を受けるため直接必要なもの」という規定があるからです。

医療費控除の対象外となる交通費もある


通院のために公共交通機関を利用した場合、その料金は医療費控除の対象となります。


原則として、医療費控除の対象となる費用は、「人的役務の提供の対価」として支払われた費用に限られます。これは先述したように、医療費控除の場合、治療目的として、他者から受けたサービスの対価として支払った場合、対象と認められるのです。


この観点から見ると、タクシー代、自家用車による通院の際のガソリン代・駐車場料金・その他は、医療費控除の対象外となります。付き添いの人があるなしに関係なく、認められません。


以下に詳しく解説していきます。

①利便性を重視したタクシー代

「タクシーを利用した方が楽だから」「公共交通機関では行きにくい場所だから」という利便性(便利であること・使いやすさ)を目的としたタクシー使用の料金は、医療費控除の対象にはなりません。

ただし次のようなときにタクシーを利用した場合、その料金は医療費控除の対象となります。
  • 出産のため、緊急に病院へ行かなければならなかった。
  • 足の骨折、または高齢などによる歩行困難のため。
  • 近くに公共交通機関がない。

②マイカーを利用した際の駐車料金やガソリン代

医療費控除の対象となるのは原則として、「他者から受けたサービスの対価として支払った場合」の料金であることが条件です。


自家用車による通院・入院の際にかかった駐車料金やガソリン代は、自分で利用・購入した料金になるので、医療費控除の対象にはなりません。

③定期代

前述したように「医療費控除の対象となる通院費は、医師等による診療等を受けるため直接必要なもの」という国税庁の規定があります。


たとえば会社から定期を支給されていて、通院先がその路線内にある、または途中までその路線を使えるという場合があります。そのため通院にその定期を使ったなら、その交通費は医療費控除の対象となりません。


あくまで定期の区間外の部分のみが対象です。

④お見舞いに来た人の交通費

お見舞いに来た人の交通費は、付き添いの人の交通費同様、あきらかに「医師等による診療等を受けるため直接必要なもの」ではないので、医療費控除の対象となりません。

⑤里帰り出産をする際の交通費

この場合は、自宅までの交通費であって、自己にて購入・利用したものと見なされるので、医療費控除の対象となりません。


あくまで診療目的のために、「他者から受けたサービスの対価として支払った場合」の料金であることが条件です。


医療費控除の明細書に交通費はどう書く?


まず交通費を支払った領収書を用意しましょう。公共交通機関など領収書が発行されないものは、その都度メモ書きなどして保存しておく必要があります。


付き添いの場合でも、認められるケースがあるので注意しましょう。その他の交通費も同様に例外の場合があります。


以前は医療費控除の申告の際には、明細書と一緒に領収書を添付する必要がありましたが、現在は不要になりました。


医療費控除の明細書を作成する際、「国税庁 確定申告書等作成コーナー」の右上にある「医療費集計フォーム」から表計算ソフト(Excel)をダウンロードして利用するのがおすすめです。


ダウンロードした表に交通費を入力していきます。「病院・薬局などの名称」の欄に交通機関の名称(JR、路線バス名など)を入力し、医療費の区分は「その他の医療費」を選択してください。


かかった交通費を一つひとつ入力する必要はなく、診療を受けた病院名と通院にかかった交通費の合計額をまとめて入力してだいじょうぶです。


医療費控除の申告に必要なすべての項目を入力したなら、「医療費控除集計フォームを読み込んで、明細書を作成する」のボタンをクリックすれば、自動で集計されます。

医療費控除の申告は自宅で完結するe-Taxの利用がおすすめ!


e-Taxとは、所得税、消費税、贈与税、印紙税、酒税などの申告や法定調書の提出、届出や 申請などの各種手続をインターネットを通じて行うことができるものです。スマートフォンやパソコンの画面に入力して使えるので、自宅や事務所にいながら確定申告をすることが可能です。

ここでも交通費を入力する際、付き添いの場合を始め、例外的に認められる費用があるので注意しましょう。

医療費控除の申告の場合、1月上旬から利用が可能で、生命保険料控除等の証明書が提出不要です。またインターネットを利用するので、処理も迅速です。

税金の納付も、ダイレクト納付やインターネットバンキング、ペイジー(Pay-easy)対応のATMを利用して行うことができます(e-Taxホームページ)。

コラム:付き添いの人が交通費を節約する方法は?


付き添いの人が、交通費を節約する方法はいくつか考えられます。


まず定期券・回数券を使うことです。この場合、交通機関を利用する回数をよく調べて、どちらか特になる方を選びます。


次はSuicaなど交通系のICカードを利用する方法です。この場合、指定された自動販売機やコンビニエンスストア、スーパーなどで利用するとポイントが貯まります。カードによっては、指定された路線に乗るだけでポイントが貯まるものもあります。


貯まったポイントは、そのカードにチャージできたり、またSuicaの場合は、グリーン券と交換することもできます。


さらにはクレジットカードとICカードを連携させるという方法もあります。連携することにより現金でなく、クレジットカードからチャージすることができます。カードによってはオートチャージが可能になり、またカード単体で使うよりポイントが多く貯まるものもあります。


付き添いの人でも、交通費が医療費控除の対象外であれば、なるべく節約できるように工夫しましょう。

①回数券を使う

一般に回数券は10回分の料金で、11回以上の切符が購入できます。


ICカードは10回使用した場合、付与されるポイントと、回数券で付いてくる1回分の切符料金を比べると、断然回数券の方がお得な計算になります。


次に定期券との比較ですが、これは使用する回数によって違ってきます。次のような計算をすれば、どちらが得か分かりやすいです。

(1か月の定期代÷普通回数券1枚あたりの料金)÷2

この式で求められる値が、回数券を使って往復した場合、定期代と一致する回数になります。つまり1か月間にこの値より少ない回数往復するのであれば、回数券の方がお得ということになります。

②クレジットカードとICカードを連携させる

クレジットカードをICカードと連携させる方法は、それぞれのカードによって異なります。


まずSuicaでもPASMOでも、クレジットカードと一体型のカードがあります。オートチャージが可能です。


クレジットカードとICカードが別々な場合、iPhoneの場合はアプリを使い、Androidの場合は使いたいクレジットカード情報を直接ICカードから登録できるものが多いようです。


ただ注意したいのは、いずれのICカードの場合もモバイル専用カードでなければならないことです。また指定されたクレジットカード以外のカードを登録する場合、年会費がかかることもあります。

③メルカリの売り上げ金をモバイルSuicaにチャージする

メルカリが提供する決済サービスに、「メルペイ」というものがあります。


メルペイとはスマートフォンなどにメルカリアプリをインストールすれば、メルカリの売り上げ金でポイントを購入できて、多くの店舗で利用できるサービスです。


このメルペイの残高やメルペイのポイントは、Suicaへのチャージが可能です。その方法は、Walletアプリ(ApplePay)を経由します。


Walletアプリ内の「Suica」を開き、支払方法に「メルペイ電子マネー」を選択すればチャージが完了します。

まとめ:付き添いの人の交通費は医療費控除の対象外

いかがでしたか?


この記事では

  • 原則として、付き添いの人の交通費は医療費控除の対象外である。
  • しかし、自分で通院できない人の付き添いの場合、交通費は対象となる。
  • 原則として、タクシーや自家用車による通院は医療費控除の対象外である。
  • しかし、緊急時などタクシーによる通院が認められるケースもある。
  • その他、医療費控除の対象にならない交通費の例。
  • 医療費控除の申告の際、交通費の明細書への書き方。
  • 交通費の節約術。

以上について解説してきました。


原則として、付き添いの人の交通費は医療費控除の対象と認められません。しかし、例外として付き添いの人も認められる場合もあります。


他の交通費についても同様です。原則として対象外でも、例外的に認められる場合もあります。


これから医療費控除の申請を考えている方は、そこのところの事情をよく見極めて上手に申請してください。


この記事が皆様の医療費控除の申請に、少しでもお役に立つことができれば幸いです。