
「結婚・子育て資金の一括贈与の特例はどんな使い道が対象になるの?」
「デメリットや注意点について知りたい」
とお悩みではないでしょうか。
結婚・子育て資金の一括贈与の特例を活用すれば、最大1,000万円まで非課税で贈与を受けることができます。
ただし、特例の利用状況によっては贈与税がかかる場合があり、結婚・子育て費用がすべて非課税対象になるわけではないため、事前に内容や注意点を把握しておくことが重要です。
本記事では、結婚・子育て資金の一括贈与の特例の詳細やメリット・デメリット、注意点を解説していますので、ぜひ参考にしてください。
内容をまとめると
- 結婚・子育て資金の一括贈与の特例を使えば最大1,000万円まで非課税
- 利用状況によっては贈与税や相続税がかかることもあるので注意
- 不明点はFPに相談して事前に費用のシミュレーションをしておくのが安心
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この記事の監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。メディア実績:<テレビ出演>テレビ東京-テレ東「WBS」・テレビ朝日「林修の今知りたいでしょ!」
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この記事の目次
- 結婚・子育て資金の一括贈与の特例とは?
- 制度の概要
- 対象者
- 非課税となる金額
- 適用期間
- 結婚・子育て資金の一括贈与の特例で非課税となる使い道
- 結婚にかかる費用
- 子育てにかかる費用
- 結婚・子育て資金の一括贈与の特例のメリット
- 非課税でまとまった資金援助が受けられる
- 新生活や不妊治療など幅広い費用が対象となる
- 結婚・子育て資金の一括贈与の特例のデメリットと注意点
- 専用口座の開設が必要
- 領収書の提出が求められる
- 使いきれなかった資金には贈与税がかかる
- 結婚・子育て費用でも対象外の場合がある
- 相続税の対象となる可能性がある
- 対応している金融機関が限られている
- 結婚・子育て資金の一括贈与の特例に関するよくある質問
- 他の特例と併用はできますか?
- 対象外の使い道だとバレることはありますか?
- 結婚・子育て資金の一括贈与の特例をうまく活用しましょう!【まとめ】
結婚・子育て資金の一括贈与の特例とは?
- 制度の概要
- 対象者
- 非課税となる金額
- 適用期間
制度の概要
「結婚・子育て資金の一括贈与の特例」とは、両親や祖父母から結婚・子育てにかかる費用として一括で贈与を受けた場合、最大1,000万円まで(結婚資金は300万円まで)が非課税となる制度です。
贈与を受ける対象者は18歳以上50歳未満で、所得にも一定の制限が設けられています。
贈与者は、金融機関(信託、銀行、証券)で専用口座を開設し、資金をその口座に預けます。
受贈者は、資金が必要な際にその口座から使用する仕組みです。
国は、この制度が両親や祖父母から若い世代への資産移転を促進し、経済的な不安を軽減することで結婚や出産を後押しし、少子化対策にもつながるとしています。
対象者
結婚・子育て資金の一括贈与の特例の対象者は、以下のとおりです。
対象者 | 対象者となる条件 |
---|---|
贈与者(財産を贈る人) | 祖父母・父母など(受贈者の直系尊属) |
受贈者(財産を受ける人) | 子ども、孫 ・18歳以上50歳未満 ・前年所得が1,000万円以下 |
上記のとおり、贈与者は受贈者の直系尊属であり、配偶者の直系尊属は対象外です(養子縁組により親族関係がある場合は対象)。
また、養父母からの贈与は認められますが、叔父・叔母や兄弟姉妹からの贈与は対象外となります。
受贈者には、年齢や所得に関する条件があります。
年齢が18歳未満または50歳以上、前年の合計所得が1,000万円を超えている場合は、この特例を利用することはできません。
非課税となる金額
結婚・子育て資金の一括贈与に関する非課税枠は最大1,000万円までとなっています。
ただし、結婚に関する費用については、その枠内で最大300万円までが非課税の対象です。
例えば、仮に祖父母からそれぞれ1,000万円ずつ、合計2,000万円を贈与されたとしても、非課税扱いとなるのは1,000万円までです。
結婚資金の場合は、300万円となります。
適用期間
結婚・子育て資金の一括贈与の特例は、平成27年4月1日から令和7年3月31日までの期間が対象とされていましたが、令和7年度の税制改正によって2年間延長され、適用期限は令和9年(2027年)3月31日までとなりました。
結婚・子育て資金の一括贈与の特例で非課税となる使い道

結婚・子育て資金の一括贈与の特例では「結婚にかかる費用」と「子育てにかかる費用」が非課税の対象になりますが、具体的な対象費用をしっかり把握しておくことが大切です。
非課税となる使い道をあらかじめ理解しておくことで、制度を効果的に活用できます。
- 結婚にかかる費用
- 子育てにかかる費用
結婚にかかる費用
非課税の対象となる主な結婚関連費用には、結婚式にかかる費用や、新生活を始める際に必要な費用などが含まれます。
具体的には、以下のような支出が該当します。
・挙式費用
・衣装代などの婚礼費用
・新居の費用(家賃、敷金、共益費、礼金、仲介手数料など) ※1
・引越し費用 ※2
また、以下の費用は非課税の対象外となるため注意が必要です。
・結婚情報サービスの利用料
・結婚コンサルサービスの利用料
・両家顔合わせや結納式にかかる費用
・指輪代
・エステ代
・交通費
・宿泊費
・新婚旅行費用
・新居の地代、光熱費、家具・家電購入費
・引越しに伴う不用品の処分代、レンタカー代
※1:入籍日から1年前後以内に受贈者名義で締結された賃貸契約で、かつ3年以内に支払われる場合
※2:入籍日の1年前後以内の引越しの場合
子育てにかかる費用
非課税の対象となる子育て関連費用には、不妊治療や妊娠・出産にかかる費用も含まれます。
具体的には、以下のような支出が該当します。
・不妊治療費用
・妊婦健診費用
・出産費用(分娩費、入院費、検査・薬剤料など)
・産後ケア費用 ※1
・子どもの医療費(治療費、予防接種代、乳幼児健診費用など)
・子どもの育児費用(入園料、保育料、入園試験の検定料など)
また、以下の費用は非課税の対象外となるため注意が必要です。
・不妊治療や産後ケアのための交通費や宿泊費
・処方箋にもとづかない医薬品代
・妊娠が原因ではない疾患の治療費(外傷、審美歯科治療など)
※1:出産後1年以内で6泊分または7回分まで
結婚・子育て資金の一括贈与の特例のメリット
結婚・子育て資金の一括贈与の特例には、次のようなメリットがあります。
- 非課税でまとまった資金援助が受けられる
- 新生活の準備や不妊治療など幅広い費用が対象となる
非課税でまとまった資金援助が受けられる
結婚・子育て資金の一括贈与の特例を利用すれば、非課税でまとまった資金援助を受けられるのがメリットです。
両親や祖父母からの結婚・子育てにかかる費用の支援について、受贈者一人あたり最大1,000万円まで非課税となります。
通常、贈与には10〜55%の贈与税がかかりますが、この特例を使えば税負担なしで支援を受けられ、結婚や子育て費用に使えます。
新生活や不妊治療など幅広い費用が対象となる
結婚・子育て資金の一括贈与の特例は、幅広い費用が非課税の対象となる点も大きなメリットです。
非課税対象となる主な費用は、次のとおりです。
・婚礼費用
・新居費用
・引越し費用
・不妊治療費用
・妊娠関連費用
・出産関連費用
・産後ケア費用
・子どもの医療費
・子どもの育児費用
このように、結婚や妊娠、出産、子育てに関連するさまざまな費用が、非課税の対象となります。
結婚・子育て資金の一括贈与の特例のデメリットと注意点

結婚・子育て資金の一括贈与の特例のメリットだけでなく、デメリットや注意点についてもしっかり理解しておくことが大切です。
主なデメリットや注意点は、以下のとおりです。
- 専用口座の開設が必要
- 領収書の提出が求められる
- 使いきれなかった資金には贈与税がかかる
- 結婚・子育て費用でも対象外の場合がある
- 相続税の対象となる可能性がある
- 対応している金融機関が限られている
専用口座の開設が必要
結婚・子育て資金の一括贈与の特例を利用するには、対象金融機関と「結婚・子育て資金管理契約」を結び、専用の口座を開設する必要があります。
この専用口座は通常の銀行口座とは異なり、開設に時間がかかる場合があるため、早めの手続きがおすすめです。
口座開設後は、贈与者がその口座に資金を入金し、受贈者が必要書類を金融機関に提出して内容の確認を受けた上で、非課税対象となる費用について払い出しが可能になります。
領収書の提出が求められる
結婚・子育て資金の一括贈与の特例を利用する際は、領収書等の提出が必要になるため、支出に関する書類はきちんと保管しておくことが重要です。
これは、実際に非課税対象となる結婚や子育て資金に使われたのかどうかを、金融機関が確認するためです。
払出方法は次の2つから選ぶことができます。
・いったん自費で費用を支払い、領収書を金融機関に提出して払い戻しを受ける
・今後支払う予定の費用について、請求書などを提出して資金の払出しを受ける
領収書や請求書は提出期限もあるため、スムーズに提出できるよう準備しておきましょう。
使いきれなかった資金には贈与税がかかる
結婚・子育て資金の一括贈与の特例では、受贈者が50歳を迎えて契約が終了する時点で、使いきれなかった資金が残っていると、残額には贈与税が課税されるため注意が必要です。
この場合、贈与税率は以下の一般税率が適用されます。
基礎控除後の課税額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ー |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
そのため、非課税の対象として使い切れない金額まで贈与してしまうと、将来的に贈与税が発生する可能性があります。
あらかじめ必要な費用をシミュレーションし、適切な金額を贈与することも大切です。
結婚・子育て費用でも対象外の場合がある
結婚や子育てに関する費用であっても、すべてが非課税の対象になるわけではないため、注意が必要です。
例えば、結婚式の会場費や飲食代、引き出物代などは非課税の対象になりますが、新婚旅行の費用や交通費、宿泊費などは対象外となります。
また、新居への引越し費用は対象になる一方で、レンタカー代や友人へのお礼、不用品の処分費用などは非課税の対象外です。
さらに、非課税対象の費用であっても、支払日には条件がある場合があります。
例えば、挙式費用は入籍日の1年前以降に支払ったものが対象となるなど、事前に確認しておきましょう。
相続税の対象となる可能性がある
結婚・子育て資金の一括贈与の特例は、場合によっては相続税の対象になる点にも注意が必要です。
契約期間中に贈与者が亡くなり専用口座に残額がある場合は、受贈者が相続で取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります(相続税の2割加算の対象)。
また、贈与者が亡くなった際には、金融機関への届出も必要となるため忘れずに対応しましょう。
相続税が課される可能性があることも考慮して、贈与額や使い道を決めておくことが大事です。
対応している金融機関が限られている
結婚・子育て資金の一括贈与の特例を利用するには、金融機関で専用口座を開設する必要がありますが、すべての金融機関が対応しているわけではない点に注意が必要です。
こども家庭庁の発表によると、令和7年4月1日時点でこの特例を取り扱っている金融機関は34行となっています。
主な金融機関は、以下のとおりです。
・三菱UFJ信託銀行
・三井住友信託銀行
・みずほ信託銀行
・りそな銀行
・西日本シティ銀行
・青森県信用組合
・笠岡信用組合
・新潟大栄信用組合 など
これは、こども家庭庁に対応の連絡があった金融機関のみを公表しているため、実際はもう少し多い可能性もありますが、それでも対応機関は限られているのが現状です。
そのため、普段利用している金融機関や、自宅近くで利便性の高い金融機関が結婚・子育て資金の一括贈与の特例に対応しているかどうかを事前に確認しておくことが大切です。
結婚・子育て資金の一括贈与の特例に関するよくある質問
結婚・子育て資金の一括贈与の特例に関するよくある質問は、以下のとおりです。
- 他の特例と併用はできますか?
- 対象外の使い道だとバレることはありますか?
他の特例と併用はできますか?
結婚・子育て資金の一括贈与の特例は、他の制度との併用が可能です。
例えば、最大1,500万円まで非課税となる「教育資金贈与の特例」と併用できます。
また、暦年課税の基礎控除とも併せて活用できます。
対象外の使い道だとバレることはありますか?
結婚・子育て資金の一括贈与の特例に該当しない使い道にあてた費用を、非課税として申告するのはやめましょう。
この特例では非課税の対象となる支出かどうか、金融機関が領収書などを通じて厳しく確認するため、対象外であることがすぐに発覚します。
結婚・子育て資金の一括贈与の特例をうまく活用しましょう!【まとめ】
結婚・子育て資金の一括贈与の特例を利用すれば、最大1,000万円まで贈与税がかからずに受け取ることができます。
両親や祖父母が、子どもや孫に結婚や子育てのための資金を贈る予定があるなら、メリットの大きい制度です。
特例を使うには、制度に対応している金融機関を確認し、専用口座を開設して贈与金を入金する必要があります。
ただし、資金を使い切れずに残ってしまった場合や、贈与者が期間中に亡くなった場合には、贈与税や相続税が課される可能性があるため注意が必要です。
そのため、あらかじめ必要な費用や使い道を明確にし、税金が発生するケースも含めてシミュレーションしておくと安心です。
贈与する側も受け取る側も、不安や疑問を解消した上で、制度を上手に活用していきましょう。