親にお金がないから援助するよう頼まれたという方は多いのではないでしょうか。生活費や子どもの養育費がかかる中で親に仕送りするのは大変ですよね。ここでは、親にお金がない時の対処法や、親の老後資金を今から確保する方法を紹介します。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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親のお金がないときの対処法は?子どもができることとは?

内容をまとめると

親にお金がない時の対処法は以下の通り

・生活保護制度 

・高額医療・高額介護合算制度 

・子どもの扶養に入れる 

・子どもが仕送りをする 

・マイホーム借り上げ制度やリバースモーゲージで借入をする 

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こんにちは、マネーキャリア編集部FP大野翠です。


先日、子育て真っ只中でマイホームを購入したばかりの友人から、こんな相談を受けました。

「実家の親から、生活費の援助について相談されて困っている」

40代に差し掛かったばかりの友人の子どもは、まだ未就学児と小学生です。


これから自身の子どもたちへの教育費もかかり、買ったばかりのマイホームのローン返済、自分たち夫婦の老後資金対策と、お金に関する余裕は決してありません。


「それでも自分の親だから、出来る範囲でなんとか助けてあげたい」


何も、現金を渡すことだけが必要な手助けではありません。


然るべき制度に関する情報提供や、その手続きを手伝ってあげるだけでも役に立ちます。


今回は、親にお金がない時に役に立つ対処法について紹介していきます。

少しでも親のために役立てたいと考えている方、必見です。

親にお金がないときの対処法5選を紹介【親が高齢の方必見】


親にお金がないとき、どうしたらよいか対処法について具体的に5つ紹介します。


特に、親が高齢で働いていない場合には有効です。

①生活保護制度


親が何らかの事情で働くことができない場合や、老後に受け取る年金収入だけでは生活が成り立たない場合、子どもや周りの親族なども金銭的に援助できない場合は、生活保護制度の利用について自治体窓口に相談しましょう。


この場合、親が自ら自治体に相談する必要があります。


相談後、さまざまな条件をクリアしたら生活保護を受給するという流れです。


審査には時間がかかりますし、満たすべき要件も複雑です。


本当に生活に困窮してからでは間に合わない場合も考えられますので、このままでは資産が底をつきて生活に困窮するのが明らかな場合は早めに相談しましょう。

②高額医療・高額介護合算制度


現在、親が通院していたり、介護サービスを受けている場合は「高額医療・高額介護合算制度」を利用することもできます。


合算の対象となる期間は、8月から翌7月までの1年間で、加入している健康保険制度へ請求する仕組みです。


どの程度の負担軽減になるかは、世帯の収入や介護サービスを受けている人の年齢などによってさまざまです。


また、世帯ごとの合算ですのでその点も忘れないようにしましょう。

③子どもの扶養に入れる


親を子どもの扶養家族として組み込むことで、親は国民健康保険税の負担がなくなります。


少なくとも75歳までの親であれば、同居でも別居でも対象となります。


75歳以上では、後期高齢者制度の対象となりますので、扶養親族ではなくなり、一人一枚の保険証を保有することになります。


また、子どもが自営業者などで国民健康保険に加入している場合は、親を扶養に入れるメリットはありません。


なぜなら、国民健康保険では扶養親族という概念がなく、一人ずつが本人で加入者という扱いになるからです。


したがって、親を子どもの扶養に入れる場合は、子どもが社会保険に加入している場合のみ、親の負担軽減になるということです。

④子どもが仕送りをする


内閣府が調査し取りまとめた「平成28年・高齢者社会白書」によると、2人以上の高齢世帯の平均所得のうち約16万円が仕送りなどということです。


また、内閣府の別のデータによると、そもそも仕送りをしてるという人は全体の1.4%程度であるということです。


なるべくなら支援をしたいとはいえ、さまざまな事情から金銭的なサポートをできる人ばかりではないようです。


また、一般的に、親への仕送りは金額によらず贈与税の対象とはなりません


生活費相当分として金銭的支援をする目的ですので、贈与税には当たらないとされています。


しかし、過分に金銭を送金していると贈与とみなされることもあるので注意が必要です。

⑤自宅を利用してお金を得る


親が名義となっている自宅を保有している場合、自宅に住みながら資金を調達する方法があります。


マイホーム借り上げ制度や、リバースモーゲージという方法で、近年耳にすることも増えてきました。


リバースモーゲージとは、民間の金融機関が実施しているものと、地域の社会福祉協議会が実施しているものに分けられます。


いずれも、自宅の名義人(所有者)が生存中に自宅を担保に資金を借り入れる仕組みで、名義人(所有者)が死亡した際に、借入金を清算するという仕組みです。


民間の金融機関と社会福祉協議会では、返済方法(主に利息分の取り扱い)について違いがありますので、詳細は金融機関などに尋ねて確認しておくと安心です。

親の介護にお金がかかる!子どもは費用をいくら用意すべき?

親が元気で、ただ単に資金の援助だけで済む場合と、介護が必要な場合では考え方がまるで変わります。


実際に、介護に関してどの程度のお金がかかるのか、費用の平均についても紹介しながら解説していきます。

介護費用の平均は月約8万円!


公益財団法人「生命保険文化センター」による介護に関する調査によると、介護にかかる期間は平均で4年7カ月ということでした。

さらに、介護にかかる費用は月の平均7.8万円という結果でした。

この他にも、自宅で介護をするにあたり、リフォームや介護用ベッドの購入など一時的にかかる費用の総額は約69万円という結果もわかりました。

つまり、介護には恒常的にかかる費用と、一時的にかかる費用が発生するという事です。

一方、老人ホームなどの施設に入居する場合は、身の回りのことはある程度自分でできる親であれば特別養護老人ホームで月額6~15万円の費用が掛かります。

介護の度合いが重ければ重いほど、費用はかさみます。

また、この際入居費用として先に一時金で数百万円から数千万円必要な施設もあり、場合によっては在宅介護よりも費用負担が大きくなることもあります。

介護費用は親の貯金から出すのが基本


自宅で介護する場合でも、施設に預ける場合でも、いずれにしても本来であれば介護費用は親が自身で準備しておくのが理想です。


まとまった資金が準備できない場合は、民間の生命保険会社の介護保険に早めに加入しておき、介護認定の段階に応じて必要な給付金を受け取ることができるようにしておきましょう。

介護費用が払えない時は制度を利用しよう


もし介護状態になったにもかかわらず、介護費用が不足していて払えない場合でも安心してください。


医療費控除の対象になり、負担軽減を図ることもできます。


また、新しい介護施設では費用がかさむ傾向にあるので、しばらく前からある施設を利用するなどで費用を抑えることもできます。


また、施設に入居する場合や、介護サービスを利用する際の費用は、社会福祉法人による施設利用費の軽減制度を利用できる場合もあります。


申請先はお住まいの地域の自治体窓口で、世帯年収の制限などの基準があります。


また「高額介護サービス費」という制度では、あらかじめ決められた限度額を超過した場合、こちらから申請をしなくても自治体から通知書と申請書が送られてきます。


その書類に記載して返信すれば、超過分が戻ってきます


また、著しく生活に困窮している世帯で介護サービスを利用する場合、利用者負担軽減措置として介護利用費用を25%割引にしてもらうことができます。


このような制度を理解しておくと、万が一の時でも救済措置があるとわかって安心です。

親の老後資金を確保するために子どもができること


親の老後資金を確保するために、子どもが手助けすることはできます。


親の手助けのつもりで始めた事でも、将来的に自身の老後資金を確保するための方法として役立てることもできます。


親の為でもありますが、自分のためにもなります。


是非、親と一緒に老後資金について今一度考えて、実践してみましょう。

①親の収支・貯金額を確認する


家族とはいえ、人様の家計を見るのは少々申し訳ない気持ちにもなります。


しかし、老後にお金が足りなくなる状態に陥ってしまうことのほうが大事です。


親の収支や貯金額を、思い切って聞いておきましょう。


必要に応じて、一緒に家計改善をはかったり、早めに社会福祉協議会や自治体窓口へ相談するなど、手立てはあります。


生命保険文化センターの老後の生活費に関する調査によると、老後の生活費は夫婦二人世帯で月にすると約24万円です。


一方、1か月で使うことができるお金(可処分所得)は約20万円ということですので、実に毎月約4万円の赤字であるという結果でした。


単身世帯でも、生活費は約13万円であるのにたいし、可処分所得は約11万円であることから、毎月2万円程度は赤字であるという事です。


この結果も踏まえると、決して裕福な老後を過ごしている人は多くは無いようです。


早い段階で、親の収支や貯金額を把握し、足りない部分は早めに対策を打つことをおすすめします。

②老後に必要な資金を把握する


老後に必要な生活費に関しては、①で解説しましたが、実際には生活費以外でもお金がかかります。


よく「老後資金」として一つにまとめますが、内訳としては要介護状態になった場合の資金の準備や、生活費の不足分を補う預貯金、葬儀に関する費用などが含まれます。


定年まで働いていた場合は、その退職金や現役時代に貯めていた預貯金が老後資金として活用できます。


また、会社勤めで厚生年金に加入していた場合は、老後に受け取ることができる年金も上乗せで支給されるため、老後資金の観点から大変ありがたいお金となります。


一方、個人事業主などで働いていた場合は、国民年金だけに加入していたことになり、厚生年金の上乗せ部分がないので場合によっては年金だけでは足りないかもしれません。


国民年金の加入期間は40年で、期間全てを払い込んだ場合でも年額約78万円を支給されます。


年額約78万円ということは、月にすると約6.5万円です。


①で紹介した老後の生活費の調査結果によると、夫婦二人世帯の生活費は月約24万円、単身世帯でも約13万円ということです。


つまり、国民年金のみ加入している人で、老後にもらえる年金が老齢基礎年金だけである場合、毎月の生活費が大幅に不足すると予測されます。


老後に必要な資金を把握するためには、加入している年金制度がなんであるかという点は非常に大事なポイントになります。(国民年金だけなのか、厚生年金も加入しているか)


それを基に、過不足について洗い出していくという流れが必要です。


老後、年金をいくらもらえるかについては、毎年誕生日ごろに届く「ねんきん定期便」で確認しましょう。


あらかじめ「ねんきんネット」にIDとパスワードをもってログインできる状態にしておくと便利です。


遡って過去の加入記録も全て見ることができます。


未納期間があり、追納できる期間であれば、追納することで将来の年金受取額を増やすことができます。


また、加入していたのに記載がない場合がないかどうかも、親と一緒に確認してみましょう。

③場合によっては繰り下げ受給や積み立てを


老後もらえる年金がいくらくらいかわかったら、そのうえで年金の貰い方を調整することができます。


例えば、定年退職後も再雇用で収入を得ることができている場合などは、老齢年金の繰り下げ給付という制度を利用することができます。


日本年金機構ウェブサイト内・繰り下げ給付の解説によると、本来の受給開始年齢である65歳から受け取るのではなく、66歳から70歳までの任意の期間へ受給開始時期を1か月単位で先送りにすることができる制度です。


この制度は、国民年金部分にあたる「老齢基礎年金」と、厚生年金部分にあたる「老齢厚生年金」のどちらも対象です。


老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給時期をずらすこともできますし、どちらも同時に繰り下げとすることもできます。


繰り下げた場合、1か月あたり約0.7%の増額となり、全期間繰り下げた場合は最大で42%も増額となります。


元気で働くことができる間は、繰り下げ受給を検討して、少しでも増やしてから年金を受給することをおすすめします。


現役時代には国民年金のみ加入していた場合は、老後にもらえる年金が「老齢基礎年金」だけであるということは既に解説しています。


この場合でも、繰り下げ受給を検討することで、少しでも増やしてから年金を受け取る方法をおすすめします。


しかし、厚生年金がもらえない分、事前に出来る範囲で自助努力は必要です。


例えば「国民年金基金」「付加年金」への加入で、老後の年金受給額を増やすことができます。


この2つは、国民年金加入の人しか利用できない制度です。


国民年金基金とは、加入する年齢や性別によって掛け金が違います。


1歳でも若い間に加入しておくと、その分保険料が安く抑えられます。


国民年金基金は、1口目は終身年金、2口目以降は確定年金と終身年金のいずれかを選ぶことができます。


20代の内に加入しておけば、1口1000円前後から加入でき安価で済みます。


また、掛け金は全額社会保険料控除の対象となることから、老後資金への対策と節税対策のメリットがあります。


付加年金とは、毎月の国民年金保険料に400円上乗せして支払う仕組みです。


400円上乗せすることで、将来の年金受給額に200円×納付済月数分が上乗せされます。


「たった200円」と思う人がいるかもしれませんが、老齢基礎年金を受け取っている間中ずっと上乗せですので、かなりオトクな制度であるといえます。


付加年金の注意点は、国民年金基金と同時に加入できないという点です。


なぜなら、国民年金基金の1口目には。既に付加保険料も組み込まれている為、2重で加入することはできないということです。

参考:自分のお金がないときに親に頼るのはよくない?


では、ここまでの解説とは真逆のパターンについても考えてみたいと思います。


高齢の親に対して、社会人である子どもから援助を頼むのはどうでしょうか。


ここまでまとめてきた通り、いくら年金収入があったとしても、老後の生活費は意外とかかります。


各種調査結果によると、月にいくらかは赤字になるという結果もあります。


つまり、老後資金は早めの対策が必要で、できるだけ多く、年金収入以外の収入や預貯金が必要であるという事もわかりました。


このことから、子どもから親へ援助を依頼するのは極力避けたいものです。


しかし、さまざまな理由から、どうしても一時的に援助してもらう以外方法がない場合もあるかもしれません。


その時は、他に自分で出来る手立てがないか熟慮し、その上で親に相談しましょう。


とはいえ、まずは自身で何か努力をすることが先決です。


短期のアルバイトをして収入を得ることや、換金性のある金融商品の解約(生命保険や投資商品など)、不用品を売るなど、できることは多くあります。


また、親に援助を依頼して、あまりに多額の資金援助を受けた場合、たとえそれが一時的な資金援助であったとしても、贈与とみなされ贈与税が発生することも考えられるので注意が必要です。


また、どうしてもお金がない時の乗り越え方についてまとめた記事もありますのであわせてご覧ください。

まとめ:親にお金がないときはできる範囲で援助しよう

いかがでしたか。


いくら老後とはいえ、親の生活費は決して年金だけでは足りない場合がほとんどです。

また、親から子どもに、資金の援助を頼むのは、親の気持ちとしても心苦しいのではないでしょうか。


そのあたりの事情もふまえ、親から援助を依頼された場合は、自身に無理のない範囲でサポートできれば理想です。


もちろん出来る範囲で援助すればよいので、自身の生活を犠牲にしてまで資金をサポートする必要はありません。


資金を援助することだけでなく、一緒になって手立てを考えることや、家計改善について協力するということも、立派な援助のひとつです。


親にお金がないことで不安を抱えている人や、既に援助を依頼されて困っている人の悩み解消に繋がれば幸いです。