中小企業の経営者は孤独で経営の相談相手がいないとよく言われます。今回の記事では、中小企業が抱えやすい経営相談の内容を7つ取り上げ、それぞれの内容別におすすめの相談相手と、その相談料の相場をまとめてみました。
中小企業の経営者が相談をする重要性

中小企業を経営する上で、悩みや問題はつきものです。知識不足によって補助金を受け取りそびれたり、法的手続きに膨大な時間を費やしてしまったりと損をしてしまう、こういったことにならないためにも誰かに相談することは会社経営において重要です。
中小企業の経営者の4割が相談相手がおらず困っている?
しかし、中小企業は大企業と比べて規模が小さく、経営者の右腕となるような人が少ないケースが多いです。立場上、内容によっては社員や経営者仲間に相談しづらいことも。そのため社内に相談できる相手がいない、と孤独を感じる経営者も少なくありません。いちばん身近な税理士や公認会計士には相談できる、という経営者もいるものの、実に4割以上の経営者が孤独感を感じていると言います。そこで本記事では、経営者が相談できる相談相手やその相場を相談内容ごとにまとめました。
相談内容は様々
会社経営をする上では多岐にわたる問題がいくつも発生します。ネットで調べたと言っても、その解決法が自社に当てはまらないこともしばしば。会社を左右する重要な決定をする場合は、第三者の意見を聞いた上で決定しなければ、経営者の不安による心理的負担は大きいでしょう。
内容別の相談先

経営者が抱えやすい問題の相談内容を以下の7つに分けました。
- そもそも何を相談したらいいのかわからない
- 経営戦略と計画について
- 財務と資金調達について
- 法務やコンプライアンスについて
- 緊急事態の対応について
- 事業継承と後継者育成について
- 人事や労務の管理、パワハラについて
これら経営相談の内容ごとの相談先をおすすめ順にまとめました。
1.そもそも何を相談したらいいのかわからない
経営相談の内容が多岐に渡ったり、会社が抱える問題について具体的に言語化できなかったりする場合もあるでしょう。こういった時、相談できるのは以下の機関です。
- 中小企業診断士
- ビジネスコンサルタント
- よろず支援拠点
- 商工会議所
- 法律事務所
最もおすすめな経営相談相手は、中小企業診断士です。税理士や弁護士のように、独占の業務はありませんが、法律からマーケティング、経営、財務会計など幅広い知識を持っているので、多岐にわたる問題を横断的にアドバイスしてくれるでしょう。会社の現状について何が問題となっているのかが明確になったら、適切な専門家や機関に繋げてもらえるはずです。
2.経営戦略と計画について
経営戦略は会社の長期的な成長や競争で優位に立つための重要なプロセスです。経営者が行う最も中枢的な業務であると言えると同時に、経営者の判断がそのまま売り上げに反映される、責任のある業務です。このような内容を相談できるおすすめは以下です。
- よろず支援拠点
- 商工会議所
- 中小企業診断士
- ビジネスコンサルタント
最もおすすめな経営相談相手は、よろず支援拠点です。これは、国が全国に設置している中小企業・小規模事業者向けの経営相談所で、何度でも相談が無料です。あらゆる専門家が揃っており、抱えている経営課題に合わせて各専門家や機関に繋げてもらうことができます。ただし、ビジネスコンサルタントのように戦略や計画を依頼するものではなく、あくまで経営者と一緒に取り組んでもらえるサービスなので、包括的なものではないことを認識しておく必要があります。
3.財務と資金繰り・資金調達について
企業がお金の流れを適切に管理し、事業の運営に使うお金を計画したり、調達したりすることは、日々の企業活動において欠かせません。そのため、正確性だけでなく迅速性も重要です。このような内容を相談できるのは以下です。
- 税理士・公認会計士
- 中小企業診断士
- ファイナンシャルプランナー
- 商工会議所
- よろず支援拠点
- 中小機構
- 民間銀行
最もおすすめな経営相談相手は、税理士・公認会計士です。税務のプロは、財務データの解析や予測を通じて適切なアドバイスをくれるでしょう。ただし、資金調達に困った時、金融機関から借入を行う前に、助成金などの国や地域からもらえるお金があるならばもらいたいですよね。そういった時は、商工会議所などの公的機関に相談してみるのがおすすめです。
4.法務やコンプライアンスについて
法律やコンプライアンスに関する問題は、企業の印象や信頼性に関わり、会社の存続を脅かすこともあります。正しいアドバイスをもらうために、専門家を活用するべきです。法務に関することを相談できるのは以下の機関です。
- 法律事務所
- コンプライアンスコンサルタント
- 社会保険労務士
- 中小企業診断士
- 商工会議所
最もおすすめな経営相談相手は法律事務所です。法律事務所では、弁護士が各問題に対応してくれます。弁護士は法のプロです。契約から、知的財産権、不動産取引まで幅広く法に関してのアドバイスがもらえるでしょう。しかし、法律には反していなくとも、社会的規範に反してしまうと会社の信用を失墜してしまうことがあります。このようなコンプライアンスの相談も積極的に弁護士に相談すると良いでしょう。
5.緊急事態の対応について
地震や台風などの災害や従業員の事故、リスク管理などの問題があります。非常事態に備えて、アクションプランを練っておくことが必要です。このような内容を相談できるのは以下の機関です。
- 法人向け保険会社
- 商工会議所
- 中小企業支援機関
- 中小企業診断士
最もおすすめな経営相談相手は法人向け保険会社です。生命保険や損害保険で、もしもの時のリスクを実際に減らすことができます。保険会社は、保険の提供だけでなく企業の危機管理について相談に乗ってくれるところも多いです。保険に関する相談はほとんどが無料なので気軽に相談してみましょう。
6.事業承継と後継者育成について
地方の多くの中小企業が抱えている問題として、事業承継や後継者の問題があります。事業を継承するには、税務・法務・会計の知識が必要です。そのような手続きをサポートしてくれるおすすめの機関は以下です。
- 商工会議所
- 事業引継ぎ支援センター
- よろず支援拠点
- 中小機構
- 司法書士
- 公認会計士、税理士
- 中小企業診断士
- 金融機関
最もおすすめな経営相談相手は商工会議所です。国は雇用維持のために事業継承に力を入れているため、公的機関を使うのをおすすめします。商工会議所では、承継診断のアドバイスや、専門家の紹介、継承後の事業の見直しをサポートしてくれます。また、後継者がおらず、探したいという人は、事業引継ぎ支援センターをおすすめします。
7.人事や労務の管理、パワハラについて
中小企業が陥りやすい問題として、働き手不足と、就業規則などのルールの管理があります。従業員の母数が少ない分、一人当たりの業務も多様で、1人が退職してしまう時の影響が大きいです。また、2022年4月から中小企業に「パワハラ防止法」のパワハラ防止措置が義務化されました。働き方を見直したいといった悩みを抱えている経営者におすすめな相談相手は以下です。
- 社会保険労務士
- 中小機構
- よろず支援拠点
- 人事系コンサルタント
- 弁護士
- 中小企業診断士
最もおすすめな経営相談相手は社会保険労務士です。社労士は、人事労務管理の独占業務があります。給料計算や社会保険の手続き、就業規則の策定、従業員とのトラブルが起きないようにする仕組みづくりをサポートしてくれます。パワハラを防止するための知識もあるので、力になってくれるでしょう。
中小企業の主な相談先の相談料の相場

中小企業の主な相談先を以下の7つ挙げ、それらの相場を高い順にまとめました。
- 経営ビジネスコンサルタント
- 中小企業診断士
- 税理士・公認会計士
- 法律事務所
- 保険会社・銀行など金融機関
- 商工会議所
- よろず支援拠点
1.経営ビジネスコンサルタント
事業内容や担当するコンサルタント会社によって、料金はピンキリです。契約の型がコンサルタント会社によって違いがあり、それによって料金形態も変わってきます。顧問契約の場合は、月約20〜50万円。単発の場合、1時間あたり約5000円〜。プロジェクト型の場合、担当する規模によって料金が変動し、月当たり約10〜100万円です。
2.中小企業診断士
初回相談は原則無料なところが多いです。単発の相談の場合の相場は、相談内容や診断士の知名度にもよりますが、1時間あたり約1〜6万円です。また、月あたりの顧問料金の相場は約7万〜16万円と高く設定されています。中小企業診断士の中には、公認会計士や弁護士、事業承継の業務に長く携わってきた人など、専門の知識も併せ持っている人が多く存在します。幅広い視野から経営問題を解決するだけでなく、各専門分野の深い知識を活用することで生産性が高まっていることが原因として挙げられるでしょう。
3.税理士・公認会計士
税理士と公認会計士は、時間あたりでの料金がかかることが多いです。しかし、確定申告に比べて法人税や贈与税対策は専門性が高く、料金が高くなる傾向にあります。単発の相談の場合の相場は、1時間あたり約1〜3万円です。初回相談の場合は無料なことが多いです。
相談料は他の相談先に比べて高いですが、彼らは独占業務があり、特に税理士はほとんどの中小企業が身近に関わっている専門家だと思います。
税理士も、公認会計士も、顧問契約となる場合には顧客の売上高によって相場は異なります。
4.法律事務所
弁護士の顧問料の相場は月当たり約1〜5万円です。格安なところは、タイムチャージ制により、別途で料金がかかるところが多いようです。
単発で相談する場合は、相談の内容によって相場が異なります。簡易的な相談なら、約3千〜5千円。契約書の作成なら、難易度によって変動し、約3〜20万円。会社法務のサポートなら、会社の規模によって変動し、約70〜130万円です。
5.保険会社・銀行など金融機関
保険会社も金融機関も相談料は基本的に無料です。ただし、実際に契約したりお金を借り入れたりすると、支払いや利息が生じます。特に金融機関では、事業承継やM&Aなどの相談に乗ってくれることが多く、地方の銀行であれば、その地域に特化した事業のアドバイスを提案してもらえることもあります。
6.商工会議所
基本的に無料です。創業から融資制度、経営戦略まで幅広く相談することができます。中小企業診断士や弁護士、税理士、公認会計士などの専門家が、相談に対応してくれます。ただ、相談をするには商工会議所に入る必要があり、入会金として3千円、年会費は会社の規模にもよりますが、約3万〜4万5千円を支払わなくてはなりません。
7.よろず支援拠点
よろず支援拠点は、国が全国に設置したもので、何度でも無料で相談できます。
まとめ:中小企業の経営者の相談相手とは?
中小企業の相談内容別のおすすめの相談先とその相場について以下のようにまとめました。
①そもそも何を相談したらいいのかわからない
→中小企業診断士
初回30分無料。単発1時間あたり約1〜6万円
②経営戦略と計画について
→よろず支援拠点
何回でも無料
③財務と資金調達について
→税理士・公認会計士
単発1時間あたり約1〜3万円
④法務やコンプライアンスについて
→法律事務所
単発の簡易的な相談1回あたり3千〜5千円
⑤緊急事態の対応について
→保険会社
相談だけなら無料
⑥事業継承と後継者育成について
→商工会議所
入会費・年会費を除けば無料
⑦人事や労務の管理、パワハラについて
→社会保険労務士
単発の相談・指導のみならば、約5〜10万円
中小企業の経営者が誰かに相談しない理由として、「相談しても求めている答えが帰ってこないから」と回答する人も少なくありません。それはもしかしたら、抱えている問題と相談先が合っていないせいかもしれませんね。今後、社外の機関を上手く活用することが、会社の成長と競争的優位を生み出すきっかけとなるでしょう。