GLTD(Group Long Term Disability:団体長期障害所得補償保険の略称)は、従業員の長期的な所得保障を提供する福利厚生制度として注目を集めていますが、その導入や運用には多くの課題があります。
そのため、GLTDの保険料負担や制度設計、従業員への説明方法などに悩む経営者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、GLTDの補償内容や保険料相場、導入時の注意点、さらには他の経営リスク対策との関連性について詳しく紹介します。
・従業員の長期的な所得保障に関心があり、GLTDの導入を検討している経営者の方
・GLTDを含む総合的なリスクマネジメント戦略を立てたいと考えている経営者の方
この記事を読むことで、GLTDに関する理解を深め、自社に最適な制度設計や導入方法を検討する際の重要なポイントを把握ます。
内容をまとめると
- GLTDはケガや病気で就労不能になった場合に長期的に補償される法人保険であり、GLTDは企業が福利厚生の一環として加入する
- 最長で定年まで、退職後も補償されるなど補償が充実しており、ストレスチェックサービスなどの無料サービスも複数付帯されている。
- 導入企業では優秀な社員の獲得や、従業員の満足度向上に貢献している。
- 一方、加入率向上のため社員や採用の場で積極的に周知する必要があるうえ、自社にGLTDが最適かはもちろん、ほかのリスク対策に関する悩みを解消するために、マネーキャリアを使って法人保険のプロに相談する会社が急増している。
この記事の監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
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この記事の目次
- GLTD(団体長期障害所得補償保険)とは?
- GLTDと所得補償保険の違いとは?
- GLTD(団体長期障害所得補償保険)の補償内容
- GLTDの補償対象外のケース
- GLTDに付帯できる特約
- GLTD(団体長期障害所得補償保険)を導入するメリットとは?
- ①福利厚生の充実により採用時が有利になる
- ②従業員の満足度が向上
- ③企業イメージが良くなる
- GLTD(団体長期障害所得補償保険)のデメリット
- ①免責期間が設けられている
- ②運用コストと実際の利用者が見合わないことがある
- GLTD(団体長期障害所得補償保険)を導入した事例
- 事例1:情報通信サービス業の導入事例
- 事例2:卸売業の導入事例
- GLTD(団体長期障害所得補償保険)全般に関する悩みを解消する方法とは
- GLTDの設計に関連する悩みも法人保険のプロがすぐに解消:マネーキャリア(丸紅グループ)
- 法人保険の活用事例集
- GLTD(団体長期障害所得補償保険)の補償内容やメリット・デメリットまとめ
GLTD(団体長期障害所得補償保険)とは?
GLTDは、従業員が就労不能になった場合に所得の減少分を補償する保険です。
主な特徴は、従業員が就業不能となってから一定期間後(待機期間)に、それまでの給与の一定割合(例:60%)を補償します。
数年間から退職年齢まで様々な設定が可能であり、団体契約が中心のため、個人で加入するよりも割安な保険料で加入できます。
GLTDは、特に大企業を中心に導入が進んでおり、従業員の安心感向上や人材確保・定着に寄与する重要な福利厚生制度として注目されています。GLTDは福利厚生制度のひとつとして、新卒採用などでもアピールポイントとなります。
企業イメージが向上するだけでなく、社員の満足度も向上させることができる保険です。
GLTDと所得補償保険の違いとは?
まずGLTDと所得補償保険の違いについて解説します。
GLTDと損害保険の所得補償保険には主に以下のような違いがあります。
GLTD | 所得補償 | |
---|---|---|
契約者 | 企業が福利厚生の一環として加入 | 多くが個人で加入 |
補償範囲 | けがや病気による 就業不能状態の場合。 一部復職した場合も対象 | けがや病気による就業不能の場合 |
支払対象期間 | 数年~数十年 もしくは、65歳までなどの長期 | 多くが1~2年 |
免責期間 | 90~180日 | 3日~1週間程度 |
発生原因 | 業務中、業務外、国内、海外問わず対象 | 業務中、業務外、国内、海外問わず対象 |
特約 | 精神疾患を対象とする特約があり | 精神疾患は対象外 |
法人が加入するか個人が加入するかで、まず大きく違います。
GLTDは企業が加入するため、保険料は企業が負担することになります。補償されるのは従業員ですので、福利厚生制度として導入されます。
補償は最長で定年退職まで、退職後も退職者団体に移行して補償が継続されるなど、補償が手厚いのが特徴です。
一方で、所得補償は、個人で加入することがほとんどです。多くが1~2年の補償で保険料も割安。加入審査も簡易なもなので、生命保険よりかは、加入のハードルが低いともいえます。
所得補償ではうつ病などの精神疾患は補償されない場合が多いので、加入の際にはよく確認するようにしてください。
そのほかにも法人、個人でも加入できる「休業補償保険」があります。
休業補償では、火災や風災といった突発的な事故が起こった場合の収入を補償する保険ですので、けがや病気の場合を補償するGLTDや所得補償とは、補償範囲が異なります。
GLTD(団体長期障害所得補償保険)の補償内容
- 病気やけがの場合も補償(業務上、業務外、国内外問わず補償)
- 入院だけでなく、自宅療養の場合も補償
- 職場復帰後も、所得が80%を下回る場合は補償
- 職場復帰できずやむなく退職した場合も補償が継続
- 最長で定年まで補償
- 特約付帯により精神疾患も補償
- ストレスチェックサービス
- 職場復帰支援プログラム
- 心の健康相談サービス
- 24時間緊急医療相談サービス など
GLTDの補償対象外のケース
GLTDでは、業務内外問わず、国内外問わず、けがや病気の場合に補償されますが、以下のような場合は保険金のお支払い対象外となりますので注意しましょう。
- 契約者や被保険者の故意や重大な過失によって被った身体障害
- 自殺行為、犯罪行為、闘争行為によって被った身体障碍
- 発熱等の他覚的症状がない感染
- 医学的根拠のないむちうち、腰痛など
- 地震、噴火、津波によって被った身体障碍
- 妊娠、出産などに伴う身体障がい
GLTDに付帯できる特約
GLTDには、付帯することで補償範囲を拡大できる特約がいくつかあります。
保険会社によっても付帯できる特約が異なりますので、各保険会社を比較検討する際にもご参考になるかと思います。
例えば、以下のような特約を付帯することで補償範囲を拡大できます。
- 精神障害補償特約
- 天災危険補償特約
- 妊娠に伴う身体障碍補償特約
精神障害補償特約
- うつ病
- アルツハイマー病
- 統合失調症
- パニック障害 など
GLTD(団体長期障害所得補償保険)を導入するメリットとは?
以下では、GLTDの導入メリットを解説します。
- 福利厚生の充実により採用時が有利になる
- 従業員の満足度が向上
- 企業イメージが良くなる
①福利厚生の充実により採用時が有利になる
GLTDを導入することで、福利厚生の充実をアピールすることができ、従業員の採用に有利になります。
新卒の場合、就職活動時に考慮する事項としても福利厚生の充実が上位にあげられます。
また、高度で専門的な技術をもつ社員の確保は企業の最大の課題ともいえるでしょう。
GLTDを導入することで、こういった人材の確保に関する課題も解決され、優秀な人材を獲得することにつながります。
②従業員の満足度が向上
けがや病気による所得の喪失は、企業で働く従業員にとっては非常に深刻な問題です。
就労不能状態は、入院費用や治療費だけでなく、家族の生活費などさまざまな費用がかかり、死亡した場合よりも経済的負担が大きいと言われています。
就業不能で国から補助される、健康保険の傷病手当金や、障害認定された場合に受け取れる障害年金などは、給与の全額が補償されるわけではありませんので、足りない分は貯金などをくずすほかありません。
従業員がいつも不安を抱えながら仕事をするより、安心して働けるように企業が配慮することは、従業員の満足度の向上につながります。
③企業イメージが良くなる
国から認定される「健康経営優良企業」は、GLTDの導入も認定項目のひとつとなっています。
健康経営優良法人などの各種認定を受けることで、企業の福利厚生の充実をアピールすることができ、企業イメージの向上がはかれます。
これは、社員だけでなく、取引先や顧客、消費者にも良いイメージを与えます。
GLTD(団体長期障害所得補償保険)のデメリット
ここからはGLTDのデメリットを解説します。
- 免責期間が設けられている
- 運用コストと実際の利用者が見合わないことがある
①免責期間が設けられている
GLTDは、就業不能になった日からすぐ保険金を受け取れるわけではなく、免責期間といって、補償されない期間が設けられていることがほとんどです。
この免責期間は30~1095日の間で設定することが多く、この免責期間が長ければその分保険料も割安になります。就業不能になれば、まず従業員が有給休暇を取得することで、給料の全額が補てんされます。
有給休暇消化後は、公的給付制度として、健康保険の傷病手当金が最大1年6か月間受け取れます。
傷病手当金は、給与の2/3しか受け取れません。そのため、残りを補てんするかたちで、有給休暇取得期間のみを免責期間と設定し、傷病手当金の支給開始時点から保険金を受け取れるように制度設計する企業もあります。
免責期間は、自由に設計できるので、会社で定めている休業補償規定なども考慮しながら設定する必要があります。
②運用コストと実際の利用者が見合わないことがある
GLTDの保険料は企業が負担することになります。
従業員が多ければ、その分団体割引を適用できるので保険料が割安に加入できますが、従業員が少ない場合は、割引も適用されず、保険料が割高になってしまうことがあります。
また、保険料を安くおさえるために、補償内容をうすくしたり、免責期間を長くしたりすると、かえって従業員の満足を得られないこともあるので、制度の内容はコストと十分相談する必要があります。
保険料をおさえるためには、たとえば、企業が保険料を負担する全員加入の部分と、従業員が任意で加入する部分に補償を分け、手厚く加入したい人が自身でも加入できるように制度設計するといった方法があります。
また、福利厚生制度の一環として導入するのであれば、社員への周知はマストになります。社内説明会を開催することで、任意加入の割合をあげたり、新卒採用の場で周知するなどして、積極的にアピールするようにしましょう。
GLTD(団体長期障害所得補償保険)を導入した事例
ここでは、GLTD導入企業の例をご紹介します。
ご紹介するいずれの企業も「社員を大切にしたい」という思いから加入を決断されています。
- 情報通信サービス業の導入事例
- 卸売業の導入事例
事例1:情報通信サービス業の導入事例
長野県にある東証一部上場企業の株式会社電算では、「社員と家族を大切にする」という経営層の思いと「社員の満足度を向上させたい」という総務部の熱い思いから、GLTDの導入を決定しました。
社員にとって本当に価値のある制度しか採用しないというこの企業では、標準報酬月額の50%の補償を全額会社負担で加入しています。
社員向けにGLTDの説明会やアンケート調査を実施しているということで、任意加入の加入率も、65%をほこり、社員にひろく浸透している福利厚生制度となっています。
GLTDを採用したポイントとして、個人で加入できない保険であること、他の保険では補償されない、長期間にわたる就業不能を補償してくれるところとあげています。
この企業には、福利厚生制度が複数ありますが、GLTDが社員の満足度向上の柱となっているということです。
事例2:卸売業の導入事例
大阪府にある服飾資材の専門商社である清原株式会社でも、福利厚生制度の一環としてGLTDを導入しています。
健康経営優良法人2020にも認定されている同社では、「従業員を大切にする」というポリシーのもと、「よい制度である」と判断し、GLTDを採用しました。
この企業でも補償は全員加入と任意加入の二階建ての設計にし、全員加入分の年間400万円を会社負担でおこなっています。
保険に無料で付帯されているストレスチェックサービスは、今まで有料で加入していたことから、コスト削減にもつながりました。
GLTDの導入によって、人材の定着や、採用におけるPR効果を実感しているということです。
参考:両立支援の取り組み事例
GLTD(団体長期障害所得補償保険)全般に関する悩みを解消する方法とは
以下では、GLTD(団体長期障害所得補償保険)全般に関する悩みを解消する方法を紹介します。
GLTDは従業員の長期的な所得保障を提供する重要な福利厚生制度ですが、保険料負担、制度設計の複雑さ、従業員への説明責任など多くの課題があるため、経営者は慎重に考慮しなければなりません。
しかし、GLTDも保険の一種なので、自社にとって最適な保険を見極められるかは、専門家のアドバイスが必須です。
そのため、GLTDを含むリスク対策の悩みを解消できるサービスとして、保険のプロによる相談が無料で何度でも受けられるマネーキャリアを活用する会社が急増しており、経営者の間で注目を集めています。
丸紅グループが運営するマネーキャリアは、法人保険のプロが最適な事業リスク対策に関して何度でも無料で対応でき、80,000件以上の相談実績と98.6%の高い相談満足度を誇るため、GLTDや他の経営リスクに関する悩みの解消に大いに役立ちます。
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法人保険の活用事例集
GLTD(団体長期障害所得補償保険)の補償内容やメリット・デメリットまとめ
この記事では、GLTD(団体長期障害所得補償保険)について簡単に解説しました。
まとめです。
- GLTDとはケガや病気で就労不能になった場合に長期的に補償される法人保険
- GLTDは企業が福利厚生の一環として加入する
- 最長で定年まで、退職後も補償されるなど補償が充実している
- ストレスチェックサービスなどの無料サービスも複数付帯されている
- 導入企業では、優秀な社員の獲得や、従業員の満足度向上につながっている
- 導入企業では、加入率向上のため社員や採用の場で積極的に周知する必要がある