内容をまとめると
- 労働災害の危険性がある事業にとってGLTDは必要な保険
- GLTDは業務中・業務外・国内・国外を問わず長期就労不能に対して補償
- GLTDは保険会社によって補償内容が異なる
- 充実した福利厚生は人材確保が期待できる
- 1000人以上雇用する企業のGLTD加入率は約18%(2018年時点)
- 労働災害の危険性が高い建設業・製造業・運送業はGLTDで備えるべき
- 政府労災保険や公的保障で十分な企業にはGLTDはいらない
- 法人保険や事業のリスク対策で悩んだときは「マネーキャリア」の無料相談がおすすめ
GLTDは全ての企業に必要ではありませんが、いらない保険ではありません。2018年時点で1,000名以上従業員を保有している企業の内、18%がGLTDを導入してます。また企業選択の際に、GLTDを契約しているか、見ている方もいるので、いらないとは言えません。
この記事の監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
>> 谷川 昌平の詳細な経歴を見る
この記事の目次
GLTD(団体長期障害所得補償保険)とは?
GLTD(団体長期障害所得補償保険)は、福利厚生を充実させるために企業が加入する法人向けの損害保険です。
病気やケガで従業員が働けず生活費がはいらない状態になったときに補償され、企業として従業員の収入をカバーできます。
そのため従業員が安心して働ける環境が整えられ、充実した福利厚生により安心して働ける企業であることを社内外へアピールが可能です。
GLTD(団体長期障害所得補償保険)では、業務上・業務外・国内・国外を問わず保険金支払いの対象となり、補償内容は以下のとおりです。
- 長期にわたる入院や自宅療養中、毎月保険金が支払われる
- 復職後の収入が健康時の80%がはいらない場合は減少割合に応じて保険金を支払い
- 復職できる退職に至った場合は条件を満たしていれば補償期間を限度として保険金の支払いを継続
GLTD(団体長期障害所得補償保険)はいらない?
いまの時代、企業はGLTD(団体長期障害所得補償保険)への加入を検討すべきであると言えます。
GLTD(団体長期障害所得補償保険)に加入していると、以下のようなメリットがあります。
- 従業員すべてが補償の対象
- 支払った保険料はすべて損金算入が可能
- 利厚生を充実させると、労災控訴に発展するリスクが軽減する
- 従業員のモチベーションも高くなり企業としての生産性が高くなる
従業員の休職は近年増加傾向にあり、特にうつ病など精神疾患では休職期間が長引くリスクがあります。
休業が長引くと従業員は給与がいらないため収支バランスを崩し、企業にとっても様々なリスクを発生させてしまう恐れがあります。
企業が守るべき労働基準法をクリアしていると思っていても、労働基準監督署からの調査がはいらないとは限らず、訴訟問題へと発展してしまう可能性があるのです。
たとえ労働災害が起きた場合でも、GLTD(団体長期障害所得補償保険)に加入していると、有給日数や傷病手当金の支給がなくなってしまっても、従業員の所得が守れるため、企業への不信感や不満の軽減が期待できます。
自社でGLTDが必要かわからない方は、法人保険や事業のリスク対策に詳しい専門家に相談してみましょう。
国内企業の加入率
1994年から日本でも導入されたGLTD(団体長期障害所得補償保険)の加入率は、2010年では4.5%程度でした。
しかし2018年時点では、1,000人以上の従業員をかかえる企業の加入率が約18%となり、GLTD(団体長期障害所得補償保険)を導入している企業は増加傾向にあると考えられます。
国内の加入率は低く、GLTD(団体長期障害所得補償保険)はいらないのではないかと思いますよね。
GLTD(団体長期障害所得補償保険)が生まれたのは20世紀はじめのアメリカで、労働者がつくった共済制度が最初だと言われています。
1929年の世界大恐慌後、アメリカで急速に加入率が増加し、従業員501人から2,000人を雇用する企業のうち約95%が加入済みというデータがあり、GLTD(団体長期障害所得補償保険)にはいらない企業の方が少なく、福利厚生への関心が高いと言えるのです。
日本も2024年問題として従業員の確保に翻弄されている企業は多く、充実した福利厚生で企業イメージをアップさせ、従業員確保の手段として今後活用するならGLTD(団体長期障害所得補償保険)へはいらない手はありません。
GLTD(団体長期位障害所得補償保険)を導入すべき業種
業種によってはGLTD(団体長期障害所得補償保険)で従業員の長期就労不能に備えておくべきだと言えます。
- 建設業
- 製造業
- 運送業
①建設業
労働災害の発生率が高い建設業において、死傷者数の推移は以下のとおりです。
死傷者数 | 全体 | 建設業 |
---|---|---|
平成29年 | 120,460人 | 15,129人 |
令和2年 | 131,156人 | 14,977人 |
令和3年 | 149,918人 | 16,079人 |
上記の内容から、建設業は、全産業のうち約12.6~10.7%もの高い労働災害発生率であることがわかります。
労働災害における死傷者の発生状況には、墜落や転落が圧倒的に多く、特に土木工事業や建設工事業に多く発生しています。
建設業界は2025年問題として、約90万人もの労働者が不足すると言われており、人手不足を解消するためにもGLTD(団体長期障害所得補償保険)による福利厚生の充実を図る必要性があるのです。
労働者の満足や安心感を満たし、企業と従業員の関係性を良くしようと、近年の建設事業者はさまざまな方法で福利厚生を充実させてきています。
GLTD(団体長期障害所得補償保険)にはいらないで、福利厚生を充実させる方法も探せば様々な方法があることでしょう。
しかし従業員が労働災害で長期療養となってしまったとき、損害賠償で訴訟に至ってしまったり、納得できる補償を企業がおこなわなかった場合は、企業としての信頼を失い、従業員離れにつながりかねません。
たった1つの労災事故によって、経営に大きなダメージを与えてしまうリスクがあるということを、建設業を営む事業者は忘れてはなりません。
こうしたことから、建設業においてはGLTD(団体長期障害所得補償保険)はいらない保険とは言えないのです。
②製造業
すべての業種のなかで、最も労働災害の発生率が高い製造業は、どれほどのリスクがあるのか確認してみましょう。
死傷者数 | 全体 | 製造業 |
---|---|---|
平成29年 | 120,460人 | 26,674人 |
令和2年 | 131,156人 | 25,330人 |
令和3年 | 149,918人 | 26,424人 |
全体の22.1%もの労働災害が発生していた製造業は、令和3年には少し減少しましたが、それでも全体の20.2%を占めています。
製造業のなかでも特に労働災害が多く発生しているのは食料品製造業や金属製品製造業で、機械にはさまれたり、巻き込まれたりする事故が多くなっています。
令和3年の事故別の件数は以下のとおりです。
- はさまれ・巻き込まれ:6,501人
- 転倒:5,332人
- 墜落・転落:2,944人
- 動作の反動・無理な動作:2,929人
- 切れ・こすれ:2,319人
常に機械を使用している製造業では、操作ミスや動作不良によって、はさまれたり巻き込まれたりする事故があとをたちません。
機械に接触して擦過傷を負う労災事故より2.8倍も多い事故となっており、死亡や身体に障害を負ってしまう事故が実際に発生しています。
製造業で機械にはさまれたり巻き込まれたりする事故は、従業員のミスや不注意によるものだと企業は考えがちですが、事業主に対して損賠賠償を請求されるケースがほとんどです。
本来、企業には危険を防ぐための措置義務があり、少しでも企業の安全配慮が欠けていた場合は損害賠償による訴訟問題へと発展することもあるのです。
製造業における機械の巻き込まれや指の切断事故などは、ニュースでも取り上げられることがあり、訴訟問題になってしまうと企業イメージはより悪くなってしまいます。
労働災害のリスクが大きい製造業は、訴訟問題を避けるためにも、GLTD(団体長期障害所得補償保険)はいらない保険とは言えません。
③運送業
交通事故のリスクがある運送業では、全産業のうち12.2~11.2%の労働災害発生率となっています。
死傷者数 | 全体 | 運送業 |
---|---|---|
平成29年 | 120,460人 | 14,706人 |
令和2年 | 131,156人 | 15,815人 |
令和3年 | 149,918人 | 16,732人 |
死亡者数は年々減少傾向にある運送業ですが、死傷者数は増加傾向です。
交通事故が原因の労働災害もありますが、それよりも荷台からの転落や転倒、無理な動作や長時間運転による腰痛などを引き起こすケースが多くなっています。
運送業における令和3年の事故別の件数は、以下のとおりです。
- 墜落・転落:4,496人
- 動作の反動・無理な動作:2,984人
- 転倒:2,813人
- はさまれ・巻き込まれ:1,605人
- 激突:1,212人
- 交通事故(道路):839人
荷台から荷物を下ろすときに足を滑らせ転落した災害事例は多く、死亡に至るケースも多く発生しています。
そんななか、2024年問題として運転手不足が大きく取り上げられていますが、厳しくなった労働基準により、労働災害が起こったときに訴訟問題へと発展するリスクが考えられます。
トラックなど貨物車で大きな交通事故が起こると、過労や労働時間に対して労働基準監督署による調査がはいらないとは限らず、企業側の労働基準違反が判明すると従業員から損害賠償責任を求められる可能性があるのです。
また、危険職種の1つでもある運送業では、特に福利厚生に力を入れなければ運転手の確保は今後ますます厳しくなり、円滑な事業経営が困難となってしまう可能性もあります。
GLTD(団体長期障害所得補償保険)に加入していれば、労災保険で不足する補償を補うことができ、従業員と労働災害をめぐって訴訟となるリスクの軽減に繋がるため、いらない保険とは言えないのです。
まとめ:GLTD(団体長期障害所得補償保険)はいらない?
公的保障や政府労災保険では不足する従業員への補償は、事業内容によってはGLTD(団体長期障害所得補償保険)はいらない保険ではないだと言えます。
- 労働災害の危険性がある事業にとって、GLTDはいらない保険ではない
- GLTDは業務中・業務外・国内・国外を問わず長期就労不能に対して補償
- GLTDは保険会社によって補償内容が異なる
- 充実した福利厚生は人材確保が期待できる
- 1000人以上雇用する企業のGLTD加入率は約18%(2018年時点)
- 政府労災保険や公的保障で十分な企業にはGLTDはいらない
- 労働災害の危険性が高い建設業・製造業・運送業はGLTDで備えるべき
- 法人保険や事業のリスク対策で悩んだときは「マネーキャリア」の無料相談がおすすめ