今日では、役員・従業員の退職金の準備や転籍の際に「生命保険の名義変更」をする企業も多いですが、国税庁が生命保険各社に生命保険を利用した所得税や法人税対策を制限する通達、通称「ホワイトデーショック」によって、生命保険の名義変更で節税ができなくなったのが現状です。
しかし、生命保険の名義変更をするにあたり、正しく経理処理方法を把握しておかなければ、損をしてしまうこともあるのです。なかには「名義変更を前提として保障も充実しており節税対策もできる生命保険はないのか」悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「生命保険の法人と個人の名義変更ルールとホワイトデーショック」を中心に、法人から法人への名義変更、法人から個人への名義変更、複雑な法人生命保険の名義変更で自社の損失を最小限にする方法まで解説します。
・役員や従業員の退職金の準備や転籍の際に、どこまで所得税や法人税対策ができるのか知りたい
・所得税や法人税対策をしながら役員・従業員の福利厚生になる生命保険を選びたい
方は本記事を参考にすると、生命保険の法人と個人の名義変更ルールがわかるのはもちろん、手間をかけずにどのような種類の生命保険に加入すべきかもわかります。
内容をまとめると
- 国税庁が生命保険各社に生命保険を利用した所得税や法人税対策を制限する通達、通称「ホワイトデーショック」によって、生命保険の名義変更で節税ができなくなった。
- 名義変更は、「法人から法人」「法人から個人」「有償譲渡・無償譲渡」により経理処理方法が異なる。
- 所得税や法人税対策をしながら役員・従業員の福利厚生になる生命保険を選ぶには、複雑な名義変更のルールを把握した上で保険を選ばなければならないので、「丸紅グループが運営するマネーキャリア」を使って無料相談する企業も多い。
監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
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この記事の目次
- 2021年のホワイトデーショックとは?
- 生命保険の名義を法人から個人に変更する場合
- 契約者と受取人を同時に変更した場合
- 契約者のみを変更した場合
- 有償譲渡した場合の経理処理方法
- 生命保険の名義を法人から他法人に変更する場合
- 契約者と受取人を同時に変更した場合
- 契約者のみを変更した場合
- 無償譲渡した場合の経理処理方法
- 生命保険の名義を個人から法人に変更する場合
- 複雑な法人生命保険の名義変更で自社の損失を最小限にする方法
- 名義変更における損失を最小限にする方法が無料でわかる:マネーキャリア(丸紅グループ)
- 法人保険の活用事例集
- 生命保険の法人と個人の名義変更ルールとホワイトデーショックまとめ
2021年のホワイトデーショックとは?
2021年のホワイトデーショックとは、令和3年6月25日に一部改正された所得税基本通達です。
ホワイトデーショックに対して、2019年2月の「経営者向けの定期保険の取り扱いの改正」はバレンタインショックと呼ばれています。
ホワイトデーショックの所得税基本通達における通告は、法人が所得税を抑えるために保険を活用する方法の撤廃でした。2021年3月中旬、国税庁が生命保険各社に対し、「低解約型逓増定期保険の契約者は法人から個人に名義変更できない」と通告したのです。
バレンタインショックに引き続きホワイトデーショックという、経営者が所得税や法人税対策のために生命保険を活用するのが難しい流れが起こりました。
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生命保険の名義を法人から個人に変更する場合
以下では、生命保険の名義を法人から個人に変更する場合を解説します。ホワイトデーショックの例にあったように、法人が所得税や法人税対策のために名義を変更するには一部制約があるので、各生命保険の名義変更方法を理解しなければなりません。
契約者と受取人を同時に変更した場合
▼契約者と受取人を同時に変更する例
- 契約者:【変更前】法人→【変更後】役員・従業員
- 死亡保険金受取人:【変更前】法人→【変更後】役員・従業員の遺族
▼契約者と受取人を同時に変更する場合の注意点
- 保険契約上のすべての権利を役員もしくは従業員に譲渡します。
- 譲渡する保険契約の価額は、退職金規程の範囲内であれば、原則他の退職金と合算して損金に算入できます。
- 役員もしくは従業員の立場に対して、譲渡する保険契約の価額が合理的にあまりにも過大とみなされる場合は、損金算入が認められないケースがあります。
▼契約者と受取人を同時に変更した場合の経理処理
- 保険料積立金、前払保険料および配当金積立金の資産計上額を取り崩します。
- 譲渡する保険契約の価額は、変更時の解約返戻金相当額です。
- 資産の取り崩し額と譲渡する保険契約の価額は、雑収入もしくは雑損失として益金もしくは損金に算入します。
契約者のみを変更した場合
▼契約者のみを変更する例
- 契約者:【変更前】法人→【変更後】役員・従業員
- 死亡保険金受取人:【変更前】役員・従業員の遺族→【変更後】役員・従業員の遺族
▼契約者のみを変更する場合の注意点
- 基本的に経理処理はありません。
- しかし、契約者変更時に配当金積立金に資産計上額があれば、取り崩して損金算入します。
▼契約者のみを変更した場合の経理処理
- 保険料はすでに給与もしくは報酬として経理処理されているため、基本的に経理処理は発生しません。
有償譲渡した場合の経理処理方法
▼有償譲渡する場合の注意点
- 譲渡する保険契約の価額は、名義変更時の解約返戻金相当額です。
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生命保険の名義を法人から他法人に変更する場合
契約者と受取人を同時に変更した場合
▼契約者と受取人を同時に変更する例
- 契約者:【変更前】法人A→【変更後】法人B
- 死亡保険金受取人:【変更前】法人A→【変更後】法人B
▼契約者と受取人を同時に変更する場合の注意点
- 譲渡代金よりも変更時の保険契約価額が大きい場合、差額が税務上寄付金として取り扱われる場合があります。
▼【法人A】契約者と受取人を同時に変更した場合の経理処理
- 保険契約の譲渡代金を法人Bから受け入れます。
- 保険料積立金、前払保険料、配当金積立金の資産計上額を取り崩します。
- 資産取り崩し額と譲渡代金の差額は、雑損失の場合は損金算入、雑収入の場合は益金計上します。
▼【法人B】契約者と受取人を同時に変更した場合の経理処理
- 保険契約の譲渡金額を支払います。
- 変更時の保険契約の価額を資産に計上します。
- 解約払戻金額は保険料積立金もしくは前払保険料に計上します。
- 積立配当金は配当金積立金に計上します。
- 譲渡代金と資産計上額の差額は、雑損失もしくは雑収入として損金または益金に算入します
契約者のみを変更した場合
▼契約者のみを変更する場合の例
- 契約者:【変更前】法人A→【変更後】法人B
- 死亡保険金受取:【変更前】役員・従業員の遺族→【変更後】役員・従業員の遺族
▼契約者のみを変更する場合の注意点
- 譲渡代金よりも変更時の保険契約価額が大きい場合、差額が税務上受贈益として取り扱われる場合があります。
▼【法人A】契約者のみを変更した場合の経理処理
- 保険契約の譲渡代金を法人Bから受け入れます。
- 配当金積立金の資産計上額を取り崩します。
- 配当金積立金の取り崩し額と譲渡代金の差額は、雑損失もしくは雑収入として損金または益金に算入します。
▼【法人B】契約者のみを変更した場合の経理処理
- 保険契約の譲渡金額を支払います。
- 変更時の積立配当金額を資産計上します。
- 譲渡代金と資産計上額の差額は、雑損失もしくは雑収入として損金または益金に算入します。
無償譲渡した場合の経理処理方法
▼【法人A】無償譲渡した場合の経理処理方法
- 資産に計上している保険料積立金、前払保険料、配当金積立金を取り崩します。
- 解約払戻金相当額を寄附金として損金に算入します。
- 資産の取り崩し額と解約払戻金相当額の差額は、雑損失のときは損金、もしくは雑収入のときに益金へ算入します。
▼【法人B】無償譲渡した場合の経理処理方法
- 解約払戻金相当額を雑収入として算入します。
- 解約払戻金額は、保険料積立金もしくは前払保険料として資産計上します。
- 積立配当金は配当金積立金として資産計上します。
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生命保険の名義を個人から法人に変更する場合
▼生命保険の名義を個人から法人に変更する場合の経理処理方法
- 解約返戻金相当額が贈与されたこととし、雑収入として益金に算入します。
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複雑な法人生命保険の名義変更で自社の損失を最小限にする方法
以下では、複雑な法人生命保険の名義変更で自社の損失を最小限にする方法を解説します。 法人保険を活用して所得税や法人税対策を試みる企業もあります。
しかし、ホワイトデーショックによる税制改正により、名義変更をすれば税負担を軽減できるわけではなくなったのが現状です。
そのため、以前まで所得税や法人税対策にメリットがあった「低解約型逓増保険」などに、名義変更に伴う経理処理を正しく理解しないまま保険へ加入するのは危険です。
そこで、自社の現状を考慮し、正しい保険を選んで自社と従業員を守れる保険の見直しができるマネーキャリアを使うことで、損するリスクをなくせます。
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法人保険の活用事例集
生命保険の法人と個人の名義変更ルールとホワイトデーショックまとめ
本記事では、生命保険の法人と個人の名義変更ルールとホワイトデーショックから、法人から法人への名義変更、法人から個人への名義変更、複雑な法人生命保険の名義変更で自社の損益を最小限にする方法まで紹介しました。
ホワイトデーショックの税制改正により、経営者が所得税や法人税対策のために生命保険を活用するのが難しい流れになりました。
一方で、退職金の準備や、役員・従業員が自社から他社へに転籍するケースは、多くの企業で見受けられます。そのため、将来のリスクを抑える保険を選び、事業運営に支障が出ないようにしなければなりません。
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