70歳以上の医療費の自己負担は1割から3割!医療費をくわしく解説のサムネイル画像

70歳以上の医療費の自己負担は1割・2割・3割と変わると聞いたけどどういう条件で変わってくる?70歳以上の医療費の自己負担は所得・年齢によって変わります!例えば「現役並み」の所得であれば自己負担は3割です。高齢者の医療費に関するその他の制度についても解説中!

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

目次を閉じる

70歳以上の医療費の自己負担額は医療費の何割ぐらい?



こんにちは、マネーキャリア編集部です。


先日、60代になる母親からこんな相談がありました

70歳以上の医療費の自己負担額は1~3割らしいのだけど、自分は将来何割負担になるのかわからない。段々と病院にかかる機会も増えてきたし、今後医療費にいくらかかるかも心配

近年、社会保障費の増大に伴い、高齢者の自己負担額の割合は変更を繰り返しています。


それにより「今はどうなっているの?自分が70歳になるときはどうなっているの?」という質問もふえています。 


今回の記事では、70歳以上の医療費の自己負担割合についてわかりやすく説明していきます。 


基本的には、70〜74歳の方の医療費の自己負担割合は2割で、一部所得の高い人は3割になります。具体的な年収や除外される条件などは記事内で詳しくふれていきます。 


また、高齢者の医療費に対する他の制度についてもお伝えします。 この記事を最後まで読むことで、医療費の負担額に関する不安はなくなります。 


医療費について悩む人の助けになれば幸いです。

70歳以上の医療費の自己負担額は1割から3割!



70歳以上の医療費の自己負担額は1~3割です。


病院にかかるときに気になるのが医療費です。日本では、国民皆保険制度があり全ての国民が何かしらの保険に入っているので、医療にかかるすべての金額を支払う必要はありません。


しかし、高齢になると病院にかかる回数がふえるので、負担額が少ないとしても心配になります。


病院にかかった場合、費用はすべて払う必要はなく保険料から補填されます。その際に窓口で支払う金額を自己負担額といいます。


自己負担額は所得と年齢によってかわってきます


生活費のなかで医療費のしめる割合が多くなると生活が困窮してしまうので、そこまで多くならないように所得や年齢によって調整されるようになっています。


自己負担割合は70〜74歳であれば、ほとんどの人の自己負担割合は2割で、所得が多い方ですと3割負担になります。


75歳以上の後期高齢者は、2022年10月の法改正により、1割負担、2割負担、3割負担と細かい所得区分によって自己負担割合が変わってきます。


実際に所得がいくらであれば3割なのか、また、細かい条件についても併せて説明していきますね。

所得がいくらかによって医療費の自己負担の割合は変わる

所得がいくらかによって医療費の自己負担の割合はかわってきます


70歳以上の人の患者負担の割合は、原則1~2割負担ですが、所得の多い人は、家計に対する医療費の割合がそこまでおおくないので、自己負担額はほかの世代と同じ3割です


所得がひくい場合だと、家計全体に対して医療費の割合が多くなってしまい、生活が困窮してしまうので自己負担の割合は低く設定されています。


所得が同じ場合でも、世帯人数が2人と1人で、生活にかかる金額が違うので、2人の方が医療費の自己負担割合はひくくなります。


上記のように、必要な人にだけ税金を配分することで、より多くの人に効率的に税金を配分する仕組みになっています。


税金の思想の中心にある平等性に基づく考え方です。

所得は「現役並み」「一定以上所得」「一般・低所得者」に分けられる

実際に、70歳以上の所得はいくらでわけられるのでしょうか?


法改正により、

70~74歳の所得は「現役並み所得者」「一般・低所得者」

75歳以上の所得は「現役並み所得者」「一定以上所得」「一般・低所得者」に分けられます。


それぞれの所得基準額・負担割合は、


[70~74歳]

区分判定基準負担割合
現役並み課税所得145万円以上
単身年収約370万円以上
3割
一般・低所得者現役並み以下2割

[75歳以上後期高齢者]

区分判定基準負担割合
現役並み課税所得145万円以上
単身年収約383万円以上
3割
一定以上所得課税所得28万円以上
単身年収約200万円以上
2割
一般・低所得者一定以上所得者以下1割

※厚生労働省HP参照:課税所得とは、収入から公的年金等控除、必要経費、基礎控除、給与所得控除等の地方税法上の控除金額(扶養控除廃止に伴う調整控除を含む。)を差し引いた後の額のこと。


75歳以上の方に関しては、単身世帯か複数世帯かによっても負担割合が変化することがありますので、厚生労働省:後期高齢者の窓口負担割合の変更等についてを一度目を通して見てください。

「現役並み」の所得であれば自己負担は3割のまま

70歳以上であれば原則として医療費の自己負担額は1~2割ですが、「現役並み」の所得がある人は医療費の自己負担額は3割のままです。


前述の通り、「現役並みの所得」とは課税所得が145万円以上の人のことで、年収にすると約370万円以上です。


70歳以上の人でも働いていて所得があったり、不労所得がある場合は、家計に余裕があるので医療費の負担額は他の世帯と同じになるということです。これにより、医療費が増えるのを防いで国民全体に医療を提供することができています。


ただし、「現役並みの所得」があっても、複数世帯の年収が520万円以下である、など細かい条件で、現役なみの所得があっても一般扱いされる場合があるので次の項目で説明していきます。

「現役並み」の所得でも「一般」扱いされる場合もある

70歳以上で「現役並み」の所得でも「一般」扱いされる場合もあります。

たとえ70歳以上で「現役並み」の所得があっても、すべての人の医療費負担額が3割になるわけではありません。

以下に示します。
  • 一人暮らしで年収が383万円未満の場合
  • 複数世帯の年収が520万円未満の場合
  • 被扶養者が後期高齢者医療制度の被保険者になることによって単身者の基準(年収383万円以上)に該当する被保険者について、世帯に他の70歳以上75歳未満の被扶養者がいない場合に、被扶養者であった人の収入を合算した年収が520万円未満の場合
上記の条件に当てはまる人は3割負担の方でも「基準収入額適用申請書」を提出することで「一般・低所得者」扱いになります

「基準収入額適用申請書」は、健康保険組合の窓口で入手し、「健康保険高齢者受給者証の写し」と「収入申告欄に記入した全員分の該当する年の収入金額が確認できる書類」をそえて提出してください。

国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入中の人で、自分が「一般」の区分にさげられるかどうかの判断がつかない場合は、最寄りの自治体に設置してある健康保険組合へ相談してみましょう。

また、他の被用者保険制度のかたは、それぞれの組合の相談口に問い合わせるとよいでしょう。

「一般・低所得者」は75歳を境目に自己負担の割合が変わる

「一般・低所得者」のかたは75歳を境目に自己負担の割合が変わります。


70~74歳以下だと一律で2割の負担でしたが、2022年の法改正により、75歳以上では「一般・低所得者」のなかでも上位の人々が「一定以上所得者」に分類され、自己負担割合が1割2割の方に分けられます。


以前は70歳以上がすべて1割負担でしたが、社会保障費の増大や人口比率の変化にともない、70~74歳の自己負担額が2割に変更されました。


また人口の多い団塊の世代が75歳以上になるのにあわせて、75歳以上の後期高齢者の医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が可決、成立しました。

70歳以上になると「高齢受給者証」が届く



70歳以上になると「高齢受給者証」が届き、健康保険証とともに医療機関で窓口に提出することで自己負担額が減額されます。


75歳になると全員が後期高齢者医療制度の対象となりますが、70~74歳の間は、後期高齢者医療制度ではなく、健康保険組合、国民健康保険等の医療保険に加入しているので、変わりに協会けんぽから「健康保険高齢受給者証」が交付されます。


これは医療機関等の窓口において一部負担金の割合を示す証明書で、医療機関等で受診される時は、健康保険証と合せて「高齢受給者証」を提示する必要があります。


70歳になるまでは医療費の窓口負担は3割ですが、「高齢受給者証」を提示することで、窓口負担が減額されます。何割負担かは、「高齢受給者証」に記載されています。


病院にかかる時は忘れないようにしましょう。

「高齢受給者証」を窓口で提示すると自己負担額が減る

70歳以上であれば「高齢受給者証」を窓口で提示すると自己負担額が減ります


医療機関にかかる際に、保険証とともに「高齢受給者証」を提出することで、自己負担額は「高齢受給者証」に書いてある割合に減額されます。


自分の自己負担額が何割かは「高齢受給者証」に記載されていますので確認するようにしてください。


「高齢受給者証」を忘れてしまうと、3割負担になってしまい、後日提出して差額を返金してもらう必要が出てくるので忘れないようにしましょう。

高齢受給者証は診察券・健康保険証と合わせて提示する

「高齢受給者証」は持っているだけでは意味がなく、病院の窓口に提示し会計の際に処理して貰う必要があります。


病院にかかるときには、高齢受給者証は診察券・健康保険証と合わせて提示しましょう。


一度出したから大丈夫ということではなく、月替りには確認する必要がありますので、持っていくようにしましょう。


年に一回更新されるので、古いものではなく最新のものかを確認してください。


75歳以上になると、後期高齢者医療制度の対象になり、受給者証も変わるのですが基本的な取り扱いは「高齢受給者証」と同じです。


健康保険証と一緒に窓口に提示することで、あなたの自己負担の割合によって軽減されます。

「現役並み」の所得である場合は提示しても3割のまま

「現役並み」の所得である場合は提示しても3割のままです。


70~74歳であっても、75歳以上であっても「現役並み」の所得である場合の、医療費の自己負担割合は3割になります。


前述したとおり、「現役並み」の所得とは、課税所得が145万円以上の人のことで、年収にすると約370万円以上です。


ただし、夫婦2人世帯で収入額520万円、1人世帯で収入額383万円の方は、「基準収入額適用申請書」を提出することで2割負担になります。


それ以外の方ですと、窓口で「高齢受給者証」を提示したとしても、自己負担割合は3割のままになるので注意してください。


提示しても変わらないから提示する必要がない、というわけではなく、医療機関側は把握する必要があるので提示する必要があります。

75歳からは自動的に「後期高齢者医療制度」に切り替わる



75歳まで、健康保険組合、国民健康保険等の医療保険に加入していたとしても、それ以降は自動的に「後期高齢者医療制度」に切り替わります。


75歳になったあとに新しい手続きをする必要はありません、自動で切り替わります。


名称が切り替わり、それと同時に医療費の負担割合は1割になります。


75歳以上であっても、「現役並み」の所得である場合は、負担は3割になります。

70歳以上の医療費は1ヶ月の自己負担限度額が定められている



年齢を重ねるに連れ慢性的な疾患が増えてきます。それに伴い定期的な通院とそれに伴い月の医療費も増えます。たとえ2割でも、蓄積すると結構な額になります。


しかし、その全ての医療費を支払う必要がありません。70歳以上の1ヵ月の自己負担には自己負担限度額が設けられているので、自己負担限度額以上の金額は払い戻されます


自己負担限度額は、一般および住民税非課税世帯と現役並み区分とに大きく分けられます。

一般および住民税非課税は、個人と世帯に限度額が分かれるのに対し、現役なみ世帯は分けられません。


一般および住民税非課税世帯

被保険者の所得区分外来負担額(個人ごと)外来・入院負担額(世帯)
一般18,000円 (年間上限14.4万円)57,600円 [多数該当:44,400円]
低所得者Ⅱ8,000円24,600円
低所得者Ⅰ8,000円15,000円

※一般…現役並み所得者、低所得Ⅰ・Ⅱに該当しない方。

※低所得者Ⅱ…同じ世帯の全員が住民税非課税である世帯の方。

※低所得者Ⅰ…同じ世帯の全員が住民税非課税であって、その全員の所得が0円(年金の場合は年金収入80万円以下)である世帯の方。


現役並み世帯

被保険者の所得区分自己負担限度額
現役並み 所得者Ⅲ252,600円+(総医療費-842,000円)×1% [多数該当:140,100円]
現役並み 所得者Ⅱ167,400円+(総医療費-558,000円)×1% [多数該当:93,000円]
現役並み 所得者Ⅰ80,100円+(総医療費-267,000円)×1% [多数該当:44,400円]

※現役並み所得者Ⅲ…課税所得690万円以上の方

※現役並み所得者Ⅱ…課税所得380万円以上690万円未満の方。

現役並み所得者Ⅰ…課税所得145万円以上380万円未満の方

医療費を払い過ぎた場合の「高額療養費制度」を解説!

手術などで一度に多額の医療費がかかってしまった場合、医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する「高額療養費制度」があります。


 支払う医療費の上限額は、年齢や所得に応じて決まっています、


「高額医療費制度」については、以下の4項目で説明していきます。

  • 自己負担限度額を超えた医療費は「高額療養費」となる
  • 「高額療養費支給申請書」を提出すると医療費が払い戻される
  • 「限度額適用認定証」があれば窓口での自己負担を抑えられる
  • 「高額療養費制度」で戻る医療費をシミュレーション!

自己負担限度額を超えた医療費は「高額療養費」となる

手術や入院などで、1ヶ月に多額の医療費がかかってしまった場合、自己負担限度額を超えた医療費は「高額療養費」となります。


自己負担額限度額を超えた医療費は払った後に、申請することで払い戻されます


各種保険窓口でもらえる「額療養費支給申請書」に必要事項を記入し申請しましょう。医療費の総計を計算する必要があるので医療機関や薬局での領収書を取っておくようにすると良いでしょう。

「高額療養費支給申請書」を提出すると医療費が払い戻される

自己負担限度額を超えた医療費は「高額療養費支給申請書」を提出するとすることで払い戻されます。


各種保険窓口で「高額療養費支給申請書」を請求し、その月の医療費のなど必要事項を記入し申請しましょう。


自己負担限度額を超えた医療費は、自動で返還されることはなく自分で申請しないと払い戻されないので気を付けましょう。


長期の入院などで立て替えることが難しい場合が「限度額適用認定証」を貰うことで窓口での負担を減られます。

「限度額適用認定証」があれば窓口での自己負担を抑えられる

事前に申請した「限度額適用認定証」があれば窓口での自己負担を抑えられます。


長期の入院などで医療費が高額になり、立て替えることが難しい場合は「限度額適用認定証」を貰うことで窓口での自己負担を抑えられます。


あらかじめ限度額適用認定証を得ることで、自己負担額を抑えることができるので、手元にお金が無くても安心して医療を受けることができます。入院の場合も、月末にまとめて限度額を支払うだけで大丈夫です。

「高額療養費制度」で戻る医療費をシミュレーション!

では実際に「高額医療費制度」で戻る医療費をシュミレーションしてみましょう。

入院の場合、食事代や差額ベッド代は含まれないので注意してください。


・71歳一般所得者の方が5万円の医療費を払った場合

高額療養費制度からの給付額:2,400円


自己負担の限度額:57,600円

・70歳一般所得者の方が10万円の医療費を支払った場合

高額療養費制度からの給付額:42,400円


自己負担の限度額:57,600円


・73歳現役並み所得者Ⅰ(年収500万)の方が10万円の医療費を払った場合

高額療養費制度からの給付額:19,237円

自己負担の限度額:80,763円

注意:入院時の食事代は医療費の自己負担とは別で支払う


自己負担限度額は医療費に限られることに注意してください。

医療費とは、医院での診察料や薬代です。


個室を希望した場合の差額のベッド代や、入院時の食事代は自己負担となるので自分で払う必要があります。


その他にも、高額療養費制度が適用できない場合がいくつかあります。使えないことも多い?高額療養費制度の落とし穴についてわかりやすく解説に詳しくのっていますので参考にしてみてください。

【参考】2022年から75歳以上の一部の低所得者も2割負担に


法改正により、2022年から75歳以上の一部の方も2割負担になりました。


団塊世代が75歳以上の後期高齢者となったことで起こる人口バランスの変化や医療費の増大に対応するための変更です。


少子高齢化の進行による労働人口減少に伴い、今後も健康保険が改悪されるかもしれません。

そのため、今後は国に任せず、自分自身で医療費の対策を行うことがより重要になっていきます。


今後の医療費やお金の面で心配があるという方はマネーキャリアの無料相談がおすすめです。下のボタンをクリックすると公式サイトから簡単に予約できます!

マネーキャリアの公式ホームページ

【まとめ】70歳以上の医療費の自己負担は場合によってことなる

この記事では、70歳以上の医療費の自己負担額は医療費の何割ぐらいかをお伝えしてきました。


70歳以上の医療費の自己負担割合は、

【一般・低所得者】70~74歳:2割、75歳以上:1割

【一定以上所得者】75歳以上:2割

【現役並み】3割

になります。


この記事では以下の内容についてお伝えしました。

  • 所得によって医療費の自己負担割合がかわる。
  • 一部の現役並みの所得がある人のみ自己負担割合は3割負担。
  • 75歳以上は「後期医療制度」に切り替わる。
  • 払いすぎた場合は「高額医療費制度」で返ってくる。
国民全体に平等に医療を提供するため、医療費の負担額は適正に設定されていることや、負担割合が多かったとしても一定以上は返還されることが分かったかと思います。

記事を最後まで読むことで、医療費の負担額に関する不安は払拭されたことでしょう。

マネーキャリアでは、他にも読んで頂きたい記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。