内容をまとめると
- 全額免除中は、付加年金・国民年金基金・iDeCoなどの上乗せ制度を利用できず、老後資金を増やす機会を失う
- 追納できるのは過去10年分までに限られ、期限を過ぎると将来どれだけ資金があっても年金額を元に戻せない
- 免除申請をせず未納のままにすると、障害年金や遺族年金といった万が一の保障を受けられなくなる可能性がある
- 年金が受け取れないかと心配なら、マネーキャリアの年金相談に問い合わせるのがオススメ
この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 国民年金を全額免除する5つのデメリット
- 将来もらえる年金額が半分になる
- 付加年金や国民年金基金などの上乗せができない
- 追納をしないと老後の受給額は増えない
- 追納の期限10年を過ぎると取り返せない
- 障害年金・遺族年金の受給条件に影響する場合がある
- 【シミュレーション】全額免除で将来いくらもらえる?
- 40年間全額免除だった場合の老齢基礎年金額
- 10年間だけ全額免除して追納しなかった場合
- 国民年金の全額免除が受けられる条件とは?
- 所得が一定基準以下であること
- 所得に関わらず免除が認められる「特例制度」
- 国民年金の免除を申請すべきか迷ったら「YES/NO診断チャート」
- 離職中・低所得の方が使える生活支援制度
- 住居確保給付金
- 生活福祉資金貸付制度
- 社会保険料・税金の「減免・猶予」
- FP相談窓口
- 全額免除した後に払ってしまった場合の還付手続き方法
- 国民年金の全額免除に迷ったらFPと相談
- 全額免除をすべきか猶予すべきか診断
- 国民年金の免除以外にも使える免除制度について紹介
- 国民年金を全額免除するデメリットのまとめ
国民年金を全額免除する5つのデメリット
国民年金の全額免除は保険料負担を軽減できる反面、将来の年金額や受給条件に影響するため短期的な家計のやりくりだけで判断せずデメリットを理解したうえで判断することが重要です。
まずは、全額免除を選択した場合に生じる代表的な5つのデメリットを解説します。
- 将来もらえる年金額が半分になる
- 付加年金や国民年金基金などの上乗せができない
- 追納をしないと老後の受給額は増えない
- 追納の期限10年を過ぎると取り返せない
- 障害年金・遺族年金の受給条件に影響する場合がある
将来もらえる年金額が半分になる
国民年金を全額免除した期間は、老齢基礎年金の計算では、保険料を払った期間の半分として扱われるため、将来もらえる年金額が少なくなります。
付加年金や国民年金基金などの上乗せができない
国民年金には、将来の受給額を増やすための「2階建て部分(上乗せ制度)」がありますが、全額免除中はこれらを利用できません。
- 付加年金: 月額400円をプラスして納めることで受給額を増やす制度
- 国民年金基金: 自営業者などが厚生年金に代わる部分を作る制度
- iDeCo(個人型確定拠出年金): 税制優遇を受けながら老後資金を作る制度
これらはすべて国民年金保険料を完納していることが前提条件です。全額免除(一部免除含む)になっている期間は、iDeCoの掛金拠出などができなくなり、効率的な資産形成の機会を逃すことになります。
追納をしないと老後の受給額は増えない
追納の期限10年を過ぎると取り返せない
障害年金・遺族年金の受給条件に影響する場合がある
障害年金や遺族年金は、これまでに年金保険料をきちんと納めている、または免除の手続きをしていることが受給の条件になります。
全額免除は日本年金機構に申請すれば未納扱いを防げますが、手続きをせずに放置すると、いざというときに年金を受け取れなくなる可能性があります。
【シミュレーション】全額免除で将来いくらもらえる?
国民年金を全額免除した場合に将来いくら年金がもらえるのかは、免除された期間によって大きく変わります。 ここでは、令和6年度の満額(年額81万6,000円)を基準に、代表的な2つのケースで実際の受給額を計算してみます。
※以下は制度理解のための概算です。実際の受給額は物価スライド等により毎年度改定されます。
40年間全額免除だった場合の老齢基礎年金額
国民年金の老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間すべて保険料を納付した場合に、満額の81万6,000円が支給されます。
全額免除の期間は、年金計算上「国庫負担(税金)分の半分だけ納付した」として扱われるため、40年間すべて全額免除だった場合は、納付済期間20年分として計算されます。
- 計算式(目安): 816,000円 × (20年分/40年)= 40万8,000円
満額のちょうど半分、年額約41万円となります。これを月額に換算すると約3万4,000円です。
10年間だけ全額免除して追納しなかった場合
次に、40年間のうち「10年間だけ全額免除」を受け、その後追納をしなかった現実的なケースを考えます。
この場合、年金額の計算根拠となる「納付した年数」は以下のようになります。
- 全額納付した30年間: そのまま30年分
- 全額免除の10年間: 半分の評価となり5年分
- 合計: 35年分として計算
- 計算式(目安): 816,000円 × (35年分/40年)=71万4,000円
満額より約10万円少ない、年額約71万円となります。月額に換算すると約5万9,500円です。
10年間の免除によって、一生涯受け取る年金が月額で約8,500円減る計算になります。もし65歳から90歳までの25年間受け取ったとすると、生涯で約255万円の差が生まれます。
国民年金の全額免除が受けられる条件とは?
国民年金の全額免除は、誰でも自由に選べるものではなく、経済的に納付が困難な場合にのみ認められるセーフティネットです。
ここでは、審査の対象となる下記の2つの条件について整理します。
- 所得が一定基準以下であること
- 所得に関わらず免除が認められる「特例制度」
所得が一定基準以下であること
通常の場合、本人・配偶者・世帯主の3者それぞれの前年所得が、国が定めた基準以下である場合に認められます。 ここで重要なのは、「本人の収入が少なくても、同居している親(世帯主)や配偶者に一定の収入があると認められない場合がある」という点です。
審査基準は「扶養している家族の人数」によって変わるため一概には言えませんが、単身者であれば前年の所得が57万円以下(給与収入で約127万円以下)が目安となります。
所得に関わらず免除が認められる「特例制度」
前年の所得が高くても、失業や倒産、災害などにより現在の納付が困難になった場合には、「特例免除」を利用できる可能性があります。
この特例を使うと、失業した本人の所得を「ゼロ」とみなして審査が行われます。そのため、前年にどれだけ高い年収があっても、全額免除が認められる可能性が高くなります。
国民年金の免除を申請すべきか迷ったら「YES/NO診断チャート」
STEP1|今の収入で保険料(月額約1.7万円)を払うと生活が苦しいですか?
- YES → STEP2へ進んでください。
- NO(生活費には余裕がある) → 「通常納付」をおすすめします。 将来の受給額が満額確保されるため、無理に免除を使う必要はありません。
STEP2|直近で「失業・退職」や「震災」などによる収入減がありましたか?
- YES → 「特例免除」の対象になる可能性があります。 前年の所得が高くても、失業などの事情があれば、本人の所得を除外して審査してもらえます。早めに役所へ相談しましょう。
- NO → STEP3へ進んでください。
STEP3|数年以内に収入が回復し、生活が落ち着く見込みはありますか?
- YES → 「免除・猶予申請」+「将来の追納」 今は制度を利用して負担をゼロ(または減額)にし、生活が安定してから10年以内に「追納」をして年金額を満額に戻す計画がおすすめです。
- NO(当面の見通しが立たない) → 「全額免除」を最優先 まずは全額免除を申請し、未納を防ぐことが最重要です。「障害年金」や「遺族年金」といった万が一の保障権利を守ることを優先しましょう。
離職中・低所得の方が使える生活支援制度
国民年金の免除は、あくまで保険料負担を軽くする制度であり、生活費そのものを直接支えるものではありません。
ここからは、離職中・低所得の方が使える4つの生活支援制度を紹介していきます。
- 住居確保給付金
- 生活福祉資金貸付制度
- 社会保険料・税金の「減免・猶予」
- FP相談窓口
住居確保給付金
「住居確保給付金」は、離職や廃業により家賃の支払いが困難になった人を対象に、国が家賃相当額(上限あり)を肩代わりしてくれる制度です。
原則として自治体から大家さんや管理会社へ直接振り込まれるため、「家賃滞納で追い出されるかもしれない」という精神的な不安を解消できます。
ハローワークでの求職活動などが要件となりますが、住まいを失うリスクを最小限にするために、家賃支払いに行き詰まる前の段階で相談すべき制度です。
生活福祉資金貸付制度
「生活福祉資金貸付制度」は、銀行などの審査に通らない低所得世帯や失業世帯に対し、国が無利子または超低金利でお金を貸してくれる制度です。
当面の生活費や、再就職するまでのつなぎ資金が必要な場合に活用でき、返済開始までの猶予期間も設けられています。
窓口はお住まいの地域の社会福祉協議会です。申請から入金までには1ヶ月程度かかることもあるため、早めの行動が大切です。
社会保険料・税金の「減免・猶予」
FP相談窓口
利用できる支援制度は多岐にわたり、それぞれ窓口(年金事務所、区役所、社会福祉協議会など)が異なるため、一人ですべて把握するのは大変です。
FP相談では、年金免除を前提に、不足する生活費をどの制度でカバーすべきか、家計全体の収支を整理できます。 「制度が複雑で何から手をつければいいか分からない」という方は、マネーキャリアのような何度でも無料で相談できる窓口を活用し、FPと一緒に優先順位を整理するのがおすすめです。
全額免除した後に払ってしまった場合の還付手続き方法
国民年金の全額免除が承認されたあとでも、手続きの行き違いや口座振替の停止が間に合わず、誤って保険料が引き落とされてしまうケースがあります。 この場合、免除期間中に支払った保険料は、手続きをすれば還付(返金)されます。
<還付を受けるための手順>
自動的に口座に振り込まれるわけではありません。日本年金機構から**「国民年金保険料還付請求書」という書類が届くため、必ず以下の対応が必要です。
- 通知を確認する: 免除決定から数ヶ月後に届く書類を確認します。
- 記入・返送する: 必要事項を記入し、振込先口座を指定して返送します。
- 期限に注意: 還付請求には2年という時効があります。書類を放置して期限を過ぎると、お金は戻ってきません。
国民年金の全額免除に迷ったらFPと相談
全額免除をすべきか猶予すべきか診断
保険料の支払いが厳しい場合、使える制度は主に2つありますが、実は「将来もらえる年金額」に大きな差が出ます。
- 全額免除: 税金分(国庫負担)は積み立てられるため、保険料を払わなくても満額の半分は将来受け取れます。
- 納付猶予: 受給資格期間(年金をもらう権利)にはカウントされますが、年金額には一切反映されません。
つまり、将来の年金額を少しでも守りたいなら「全額免除」の方が有利です。 しかし、全額免除は「世帯主(親など)」の所得も審査対象になるため、実家暮らしの方などは審査に通らないことがあります。
国民年金の免除以外にも使える免除制度について紹介
国民年金には、全額免除以外にも状況に応じた制度があります。
- 一部免除: 保険料の一部(4分の1〜4分の3)を払うことで、全額免除よりも将来の年金額を多く残せます。
- 納付猶予制度:本人(と配偶者)の所得が低い場合に、保険料の支払いを待ってもらえる制度です。
- 学生納付特例: 学生本人の所得が少なければ利用できる猶予制度です。
これらの制度は、「今の負担を減らすこと」と「将来の年金を減らしすぎないこと」のバランスを見て選ぶことが大切です。
国民年金を全額免除するデメリットのまとめ
国民年金の全額免除は、保険料の支払いが難しいときに未納を防ぎ、生活を守るための重要な制度です。 一方で、将来の年金額や保障内容に影響が出るため、「今の負担を減らす」ことだけで判断せず、デメリットを理解したうえで選択することが大切です。
ここまで解説してきた、全額免除の主なデメリットは次のとおりです。
- 全額免除の期間は、老齢基礎年金の計算上、保険料を払った期間の半分として扱われるため、将来もらえる年金額が少なくなる
- 全額免除中は、付加年金や国民年金基金など、年金額を増やす上乗せ制度を利用できない
- 免除期間は受給資格には含まれるものの、追納をしなければ年金額は減ったまま確定する
- 追納できるのは過去10年分までに限られ、期限を過ぎると将来の年金額を元に戻すことができない
- 免除申請をせず未納のままにすると、障害年金や遺族年金といった万が一の保障を受けられなくなる可能性がある
このように、全額免除は「損か得か」で単純に判断できる制度ではありません。今の生活を守ることと将来の年金額をどう確保するかのバランスを取りながら、状況に合った制度を選びましょう。
