学費を親が払えない場合の対処方法・大学別の平均的な学費を紹介中!のサムネイル画像

新型コロナウイルスの流行以降、経済的理由から学費を払えない、もしくは払うのに躊躇してしまう親は増えています。


「進学したいけど、お金が足りない」、「在学中だけど、学費が払えないから退学しなければならないかも」と悩んでいる人も中にはいます。


そこでこの記事では、「進学先ごとの学費・学費が払えない場合の対処法」を中心に解説していきます。


親が学費を払えないが、それでも学費を捻出する方法を知りたい

学費を払う方法を知り、何とかして学校に通いたい、親を説得したい


と考えている方は本記事を参考にすると、進学先ごとに必要な具体的な学費はもちろん、学費が払えない場合の対処法まで分かります。


内容をまとめると

  • 学費はそれぞれ、公立高校の3年間で約150万円、国公立大学の4年間で130万円、私立大学は文理で異なるがどちらも4年間で500万円以上必要であることがほとんど。
  • 学費が払えない場合、大学など教育機関への相談・奨学金の利用・家計の見直し・教育ローンの活用が有効。
  • 奨学金や教育ローンにはデメリットも存在し、利用には慎重な検討が必要。しかし、多数の制度がある中で自分にあった最適なものを見つけるのは難しいので、プロへの相談が必須。
  • そこで、マネーキャリアのようなお金のプロに相談して、学費に関するお金の悩みを解消する人が多い。
監修者「谷川 昌平」

監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー

株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。
>> 谷川 昌平の詳細な経歴を見る

この記事の目次

学費を親が払えない場合ってどうすればいい?


こんにちは。


マネーキャリア編集部です。


先日、ある高校生の読者さまからこんな質問を受けました。

私、高校を卒業したら、大学へ進学したいんですけれど、家の経済状態が悪くて……親は学費が払えないって言うんです。大学へ行くのは、子どものころから考えていたんですけれど……親が学費を払えなくても、大学へ行く方法はありませんか?

文部科学省が2021年3月に行った調査によると、大学を中退した学生の割合は全体の1.95%という結果が出ています。


その理由としては経済的困窮がもっとも多く、全体の19.3%を占めています(文部科学省資料 12~13ページ)。 


学生が学費を払えないために、大学を中退する、あるいは大学に進学できないといった実情は、社会問題になりつつあるのではないでしょうか。


「親が学費を払えなくても、大学へ行きたい!」 


 今回は、この若者の悲痛な叫びとも言える訴えに答えるべく、解説していきます。 


どうしたら親が学費を払えない場合でも、大学へ進学することができるのか、その方法を一つひとつ紹介していきます。 


今、困難な状況にある若い人やその親たちにとって、役に立つ情報ですので、ぜひ最後までお読みください。

学費を親が払えない場合に使える方法5選!


結論から言うと、親が学費を払えない場合、それに変わるべき方法は意外にに数多くあるものです。


一般的には「アルバイト」とすぐ浮かぶのですが、これが必ずしも効率のいい方法とは言えません。なぜなら、学生は学業を優先させなければならないからです。アルバイトに時間を多く取られてしまったら、本末転倒です。


以下、親が学費を払えない場合、アルバイト以外の方法もいくつか紹介していきます。具体的に言うと、

  • 教育資金贈与非課税制度
  • 学費の「延納・分納・減額」
  • 奨学金制度
  • 教育ローン

そのほかにも、まだいくつか方法はあります。では、解説していきましょう。

①バイトを入れて学費を稼ぐ

親が学費を払えない場合、実家を出て、まったく親から援助を受けないと仮定してみます。その条件で、アルバイトによりどのくらい稼げばよいか計算してみましょう。

まず月の生活費ですが、大学生の子どもに親は平均して月8万5,300円仕送りをしているそうです(東京私大教連の調査 2019年度)。しかし仕送りだけで、生活費をすべて賄えるわけではないでしょう。

次に学費ですが、後述している国公立大の月あたりの学費は平均して約9万円です。

この数字から考えて、親からの援助もなしに実家を出て大学へ通うとなると、合計17万5,300円以上をアルバイトで稼がなければなりません。この額は新卒の会社員の初任給に匹敵するのではないでしょうか。

大学へ通いながら、アルバイトで稼げる額ではありません。やはり何らかの援助が必要になってきます。

逆に実家から大学へ通うとなると、アルバイトで学費だけ稼げばいいことになります。9万円という額は、たいへんかもしれませんが現実的な数字ではないでしょうか。

アルバイトをしながら大学へ通いたいなら、地元の国公立大に進学することをおすすめします。

②祖父母に教育費を負担してもらう

親が学費を払えない場合、教育資金贈与非課税制度というものがあります。正式名称は、「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」といいます。


これは祖父母が孫などに教育資金として提供する場合1,500万円までは非課税となります。


ただし条件として、期限が2023年3月31日までです。また提供されたお金を本人が30歳になるまでに、教育資金として使い切らなければなりません。


また申し込み機関は、銀行・信託銀行・証券会社などです。

③大学などの教育機関に延納・分納・減額の相談をする

大学の学費が払えない場合の対策として、延納・分納・減額の3種類の方法があります。


以下の表にまとめてみました。

方法備考
延納納付期限を延長してもらう延滞金が発生することも
分納分割払いで収める回数は学校による
減額学費を減額する制度学費免除の学校もある

④奨学金を利用する

親が学費を払えない場合、まず利用を考えるのが次に示す奨学金制度でしょう。奨学金制度は、家庭の経済的な理由などで大学の学費が払えない学生を支援します。


有名なものに日本学生支援機構(JASSO)の奨学金があります。次の表の通り2種類あります。給付額の上限は、学校の種類や自宅・自宅外などの別によって細かく定められています。

日本学生支援機構

名称タイプ利息
第一種奨学金
給付型なし
第二種奨学金貸付型上限3%

大学を卒業しても、貸付型の奨学金の返済がかなりの負担になることが社会問題化し、2020年4月から給付型の対象者が拡大されました。学ぶ意欲があれば成績に関係なく利用可能になり、無利子・卒業後の返済なしと定められました。

その他の奨学金制度

名称タイプ利息
自治体の奨学金制度自治体により異なる
学校の奨学金制度学校により異なる
新聞奨学金制度貸付型なし(一括返済の場合)
学生支援緊急給付金給付型なし

新聞奨学金制度は、新聞販売店へ住み込みで働き、奨学金を受けながら大学へ通う制度です。


学生支援緊急給付金は、今回のコロナ禍で主にアルバイトができなくなった学生を支援する制度です。文部科学省と日本学生支援機構がもとになって、始められました。

⑤教育ローンを利用する

親が学費を払えない場合、教育ローンを利用するという方法もあります。


教育ローンは国が行っているものと、民間で行っているものとに分かれます。


国(日本政策金融公庫:JFC)によるものは、貸付金の上限が350万円で、利息が1.68%です。学費以外にも対象になる項目が多く、以下の表のようになります。

  • 受験にかかる費用
  • 在学するための住居費用
  • 定期券代
  • 教科書代や教材費
  • パソコンの購入費用
  • 学生の国民年金保険料
このローンは他に奨学金と併用が可能で、手続きは郵送またはインターネットで行える等のメリットがあります。

これに対し民間の金融機関が行う教育ローンは、銀行、ろうきん、信用金庫、JA、信販会社が申し込みを受け付けています。返済方法に元金据置措置返済親子リレー返済の2通りがあり、メリットであると言われています。
  • 元金据置措置返済:元金の返済を猶予し、在学中は利息のみを返済。
  • 親子リレー返済:在学中は親が返済し、卒業後は子ども本人が返済。

教育ローンは手を出さないほうが良いケースもある


特に民間の教育ローンは、借入を行った保護者に返済義務が生じます。しかも金利が高く、借りた翌月からすぐに返済を始めなければなりません。


このため返済に苦しむケースもあるようです。


民間の教育ローンはよい条件で借入ができるとは言い難いので、あまりお勧めはできません。

大学の学費は卒業までで500〜800万円はかかる!


大学の学費は卒業までいくらかかるのでしょうか? それを調べた結果が下の3つの表になります。


一番安いと言われている国公立大で総額499万4,000円、私立(文系)で717万円、私立(理系)で821万7,000円という金額が出ました。


これを見ると、国公立と私立、私立のうちでも文系と理系に進むかによって開きがあります。子どもを4年間大学へ通わせるとしたら、学費だけでも約500万円~800万円はかかるということになります。

大学の卒業までにかかる学費【私立文系編】


入学金在学費用(年間)総額
86万6,000円157万6,000円717万円
※総額=入学金+在学費用×4年として計算(以下同)。

大学の卒業までにかかる学費【私立理系編】

入学金在学費用(年間)総額
84万5,000円184万3,000円821万7,000円

大学の卒業までにかかる学費【国公立編】

入学金在学費用(年間)総額
71万4,000円107万円499万4,000円

サラリーマン全体の平均年収は500万円ほど


子どもがちょうど大学へ進学する親の年代は、だいたい40代~50代くらいでしょう。2019年~2020年までのその年代の平均年収を調べた統計があります。


それによると、40代の平均年収は約510万円、50代の平均年収は約613万円でした。この2世代の平均を取ると、約561万5,000円となります。この数字が、子どもの学費に費用がかかる頃の親の平均年収と言えるでしょう。


しかし、これとは別に不安材料となる統計結果もあります。それは12年前と比べてサラリーマンの月収は、約5万円も減収しているというものです。ひと昔前の生活水準を保とうとすれば、必然的に毎月5万円の節約をしなければなりません。1日当たりに直すと、約2千円弱です。


その上子どもの学費が親の肩ににのしかかってくる、老後の年金は支給額が減る、支出が増すばかりで老後の蓄えなどできません。


これまで大学の学費にいくらかかるのかを見てきました。このような時代に子どもを大学へ進学させることに対して、やはり困難な家庭もあるのはしかたのないことかもしれません。

親が学費を払えない場合は子供に進学を諦めさせるケースもある


先ず親と子がしっかり向かい合って、話をするべきでしょう。

親が子どもの大学への進学費用を払えない場合、はたして大学だけが唯一の選択肢なのだろうか? 他の選択肢はないのだろうか?

大学へ進学すれば将来が保証されるわけではありません。高い学費を払うだけの価値はあるのだろうか?

その辺を親子できちんと話し合ってみるべきでしょう。そして子どもが納得すれば、高校を卒業して就職する。あるいはもっと学費が安く、専門教育に特化した専門学校などへ進学するという方法もあるのではないでしょうか?

【参考】親が学費を「払わない」のは「払えない」のと別!


親が子どもに「学費を払えない」というとき、単に今「お金がないから」ということを理由にしている場合もあるでしょう。今まで解説してきた「奨学金制度」や「教育資金贈与非課税制度」、「教育ローン」の存在を知らないケースもあると思われます。


生活費のムダを見直して節約すれば、お金の余裕が生まれる場合もあるかもしれません。それは「学費を払えない」のではなく、「払わない」と言っていることと等しいことになります。


子どもの側からしてみれば、それらの点を指摘して制度等よく説明する必要があります。実は親は「学費を払えない」のではなく、「払わない」と言っているだけで、実は「払える」こともできるのだと、理解させてあげた方がいいというケースもあるのです。

学費以外の生活費がかかっている場合は家計の見直しをしよう

家計の見直しを行う

親が子どもの学費を「払えない」という事態になる前に、まず今の家計の見直しを行ってみることもいいでしょう。


いわゆる「流動費」、つまり家族で使用している携帯電話費や食費、雑費などを見直してみることです。自分たちの生活水準はどうか、贅沢をしていないか、改めてチェックをしてみることも必要です。


また住宅ローンや保険料の「固定費」も同時に見直してみましょう。


しかし、最低限の支出をもうこれ以上減らせない、生活レベルをこれ以上落としたくない場合は、世帯収入を増やすしか方法はないでしょう。副業やパートタイム労働をすることによって、収入を増やすことも考えなければなりません。

リースバック制度

親が学費を払えない場合、これは最後の手段になりますが、自宅を新たに購入した家族なら、「リースバック」を検討してみるのも一つの方法です。


これはどういうことかと言うと、自宅を売却した後に買い手との間に賃貸契約を結び、売った自宅を賃貸物件としてそこに住み続けることができるというサービスです。これは今、手軽な資金調達の方法として注目されています。


このサービスには次のようなメリットがあります。

  • 住宅ローン借り入れのときのような審査がない
  • 金利なし
  • 所有権が移るので、固定資産税・修繕費などの維持費がかからない
  • 任意売却よりも買い手を見つけやすい 

自宅は賃貸物件に変わるので、もとの家にそのまま住み続けることができ、生活環境が変わらなくて済みます。


子どもの学費を捻出する一つの方法として、考えてみてはいかがでしょうか。 

親が学費を払わない場合はしっかり説得することが大切

親が学費を払えない場合、上手に説得することが必要です。その際のポイントは2つあります。

  • 大学に進学するメリットを説明する
  • どうして自分が大学へ行きたいか、その理由をきちんと説明する。

まず、高卒と大卒で就職した場合の違いを説明してみましょう。


高卒と大卒では、就職してから生涯賃金の額が、約5千万円以上差が生じます。また初任給も大卒の方が、約5万円~9万円多いという統計があります。


もちろん大学を卒業したからと言って、必ずしも給料の高い仕事に就けるとは限りませんが、上述した傾向はどの業種・職種にほぼ当てはまるようです。


次に自分が大学へ行きたい理由を、しっかりと親に説明しましょう。


たとえば、「好きな分野の学問をもっと専門的に勉強してみたい」「有名な教授の講義を受けてみたい」など。


そのほかに大学在学中の4年間に、自分が何に向いているか、将来の仕事について突き詰めて考えてみたい。もしかしたら海外へ留学したくなるかもしれません(それはそれでまたお金がかかるのですが……)。


とにかく親としっかり向き合って、自分がなぜ大学に行きたいのかをきちんと話すことが大切です。

【まとめ】学費を払えない場合でもできることはたくさんある!


いかがでしたでしょうか?


この記事では、親が子どもの学費を払えない場合、取るべき方法として

  • アルバイト
  • 「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」
  • 奨学金制度
  • 教育ローン

またそれに加え、

  • 大学別の学費
  • 家族の生活費から学費を出す方法 
  • 大学進学について親と子どもの話し合い方

以上について解説してきました。


確かに現代は、年々子どもの大学進学のための学費を払うことが、難しい時代になっています。


ただ親の方で単に「うちは経済状況が悪いから」という理由だけで、「学費が払えない」と決めてしまっているケースも多いのではないでしょうか。


この記事では親が学費を払えない場合でも、大学へ進学できる制度や方法を数多く紹介してきました。


親の方でもこの記事の内容まで思い至れば、「子どもを大学へ行かせてやろう」と思い直すかもしれません。


この記事を読んで、親が学費を払えないからといって、大学進学を諦めていた子どもたちが、一人でも多く大学進学の夢をかなえられることを願ってやみません。