この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
認知症になると生前贈与はできない?
認知症の初期段階では、医師の適切な診断を受け必要な手続きを行えば、生前贈与が可能です。
認知症により意思能力に影響が出始めると、法律上の手続きには一部制限が設けられますが、贈与そのものが完全に禁止されているわけではありません。
医師の診察を受けて意思能力の存在を証明する診断書を入手し、書類への正確な情報記載が不可欠です。ファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家に相談することで、贈与後の紛争を回避し、確実に手続きを進められます。
認知症を患う方の生前贈与については、気をつけるべきポイントを分かりやすく解説していきます。
贈与者に「意思能力」があるかどうかが重要
生前贈与を成立させるには、贈与する側と受け取る側両者の同意が必要です。
法的な手続きが有効とされるかどうかは、贈与を行う方の判断能力が手続きの可否を決める重要な基準となります。
医師による専門的な診断が欠かせません。家族や弁護士など法律の専門家であったとしても、正確に判断することは難しいでしょう。
意思能力があるかどうかを証明するためには、専門医の診断書を取得することが重要なポイントとなります。
軽度の認知症は有効になる場合もある
認知症の人が生前贈与をする場合は専門家(FP)への相談がおすすめ
認知症患者の生前贈与には、医療・法務・税務など多岐にわたる専門知識が必要です。FPは、これらの分野を横断的に理解し、状況に応じた贈与プランを提案できます。
認知症の程度や資産状況を踏まえたうえで、贈与のタイミングや方法など具体的なアドバイスを受けられます。税制面での最適な贈与方法の提案や、将来的なリスク管理まで含めた総合的なプランニングが可能です。
診断書を受け取った後、契約書作成まで必要な手続きもスムーズに進められます。
認知症の人が生前贈与を行う際の4つのポイント
認知症と診断を受けていても、医師の判断で意思能力が認められれば、生前贈与を行えます。ただし、後々のトラブルを防ぐためには、適切な準備が欠かせません。
安全かつ確実な生前贈与を実現のために、4つのポイントを解説します。
医師の診断書を用意する
医師が作成した診断書は、贈与時の意思能力を証明のために欠かせない資料です。診断書には「贈与の目的を明確に認識し、自己の意思で判断できる能力」という趣旨の記載が必要です。
可能であれば長年の担当医に依頼し、複数の医師が作成した診断書を準備します。
医師との話し合いでは、生前贈与予定あることを事前に伝えてください。診断書やカルテに具体的な所見を記録してもらいましょう。
専門家に税金のシミュレーションをしてもらう
生前贈与は相続税対策として活用されますが、方法を誤ると逆に税負担が増えてしまう可能性があります。
暦年贈与の場合、基礎控除額(年間110万円)を超えると超過部分に10%から最高55%までの累進課税が適用されます。
1,000万円をまとめて贈与した場合、基礎控除後の890万円に対し、最大で数百万円の贈与税がかかることがあります。
「相続税対策のつもりが、かえって損をしてしまった」という声もよく聞かれます。
認知症が進行している場合は、判断能力や意思確認の問題も絡んでくるため、より慎重な対応が必要です。
贈与契約書を作成する
贈与契約書は、贈与の事実と内容を証明に必要な証拠書類です。「親子間の約束だから大丈夫」という声をよく聞きますが、口頭での約束だけでは後々思わぬトラブルに発展することがあります。
認知症と診断された方が財産を贈与する場合、手続きの証明資料として大きな意味を持ちます。
相続発生後の親族間のトラブルや税務調査の証拠書類としても有効です。法的な効力を確実にするため、専門家のアドバイスを受けながらの作成をおすすめします。
- 贈与の日付
- 贈与者の氏名・住所・押印
- 受贈者の氏名・住所・押印
- 贈与財産の詳細(種類・金額・内容)
- 贈与の方法
- 不動産の場合は所在地・地番 ※日付と署名は手書きが推奨
早めに生前贈与の手続きを行う
認知症は進行性の症状であり、時間の経過とともに意思能力が低下の可能性があります。診断書が発行されてから、1ヶ月以内に贈与手続きを終えることが理想的です。
期間が空いてしまうと、診断時から症状が進行したのではないかと疑われ、贈与手続きの有効性を見極めるのが複雑になります。診断を受けたら、速やかに手続きを進めましょう。
認知症の人が生前贈与を行う際の注意点
認知症の人が生前贈与を実施する際、法的な制約や税務上の問題にも注意が必要です。家族の合意を得ることも欠かせません。
3つのポイントを理解し、スムーズに進められるよう準備しましょう。
生前贈与では成年後見制度の利用ができない
成年後見制度は、認知症や精神障害などにより判断能力が不十分な人の権利を守るための仕組みです。この制度を利用すると、成年後見人が本人に代わって財産管理や契約行為の支援を行います。
成年後見制度の主な目的は、本人の財産保護です。生前贈与は自身の財産を他者へ譲るため、目的に合わなくなります。
成年後見人の権限に、生前贈与の実行は含まれていません。たとえ家族が成年後見人になった場合も、本人の財産を減少させる行為は認められません。
基礎控除額を超えると贈与税が発生する
生前贈与による財産の受け渡しは、基礎控除額を超えると贈与税の対象となります。
認知症の方の場合、将来的な財産管理も考慮し、状況に合った贈与手段の選択が必要です。
贈与を受ける人の年齢と資産状況、贈与財産の種類(現金や不動産など)によっても最適な方法が異なるため、専門家に相談しながら慎重に検討しましょう。
事前に家族間で話し合いを行い合意を得ておく
生前贈与の目的や贈与予定の資産内容について、家族間での共有が大切です。
贈与を受ける人の将来的な収入や資産状況、介護の必要性なども考慮しながら、公平な分配方法を検討しましょう。
不動産の贈与では、固定資産税の支払いや維持管理費用など、受贈者の負担も具体的に協議の必要があります。
認知症の進行に備えて、将来の財産管理や介護費用の確保についても話し合いましょう。
【まとめ】認知症になると生前贈与はできる?できない?
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