
- 扶養内で月8万8千円を超えた場合でも、一時的な収入超過であれば、すぐに扶養から外れるとは限らない。年間の収入見込みや勤務時間の状況、さらに各健康保険組合の判断基準により総合的に判断される
- 社会保険の加入義務の条件を満たした場合、原則として健康保険・厚生年金に自分で加入し、保険料を負担する必要がある
- 扶養内に収めるための月8万8千円の計算には交通費や時間外手当は含まれない
- 社会保障や税控除は複雑なので、マネーキャリアのような全国どこからでもオンラインや対面でFPに無料相談できるサービスの利用がおすすめ

この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 扶養内で月8万8千円を超えたらどうなる?
- 1ヶ月だけならすぐに扶養から外れることはない
- 社会保険の加入義務が生じる場合がある
- 継続して月8万8千円を超えると扶養から外れる可能性もある
- 交通費は含まれる?月8万8千円に含まれる費用
- 収入が月8万8千円以下の人が考慮すべき年収の壁3つ
- 所得税の非課税となる年収の目安は160万円
- 社会保険の壁は106万円と130万円の2種類ある
- 配偶者特別控除の壁は160万円
- 扶養内の学生が月8万8千円超えたらどうなる?
- 自分に適用される控除や制度が分からない方はFPへの相談がおすすめ
- 扶養内で月8万8千円を超えたらに関するよくある質問
- 扶養内でダブルワークで月8万8千円超えたらどうなりますか?
- 扶養内で月8万8千円を超えたらすべき手続きはありますか?
- まとめ
扶養内で月8万8千円を超えたらどうなる?
扶養の範囲内で働く方にとって、月収が8万8千円を超えた場合の影響は気になるポイントです。
ここでは、以下の場合の扶養の扱いについて詳しく解説します。
- 1ヶ月だけ超えた場合
- 社会保険の加入義務が生じるケース
- 継続的に月8万8千円超えた場合
1ヶ月だけならすぐに扶養から外れることはない
月収が8万8千円を1ヶ月だけ超えた場合でも、すぐに扶養から外れることはほとんどありません。
例えば以下のケースが当てはまります。
- 忙しい時期に残業が増えて一時的に収入が増えた場合
- 急に仕事量が増えて給料が少しだけ上がったケース
具体的には、職場で同僚が急に休んだり退職したりしたことで、自分の担当する仕事量が増え、普段より多く働く必要が出てきて、その分給料が少しだけ上がるケースが考えられます。
こうした状況での収入の増加は一時的なもので、繁忙期が終われば元の勤務時間や給料に戻る場合がほとんどです。
このような一時的な収入増加は、扶養の認定においては特別な事情として扱われ、すぐに扶養から外されることはありません。
扶養の認定では、1ヶ月の収入だけでなく、これから1年間の収入の見込みや安定しているかどうかが重視されるため、短期間の収入増加は大きな問題になりにくいためです。
ただし、具体的な判断基準は健康保険組合や勤務先によって異なるため、心配なときは加入している保険組合に相談しましょう。
社会保険の加入義務が生じる場合がある
月収が8万8千円を超えると、勤務先や雇用条件によっては社会保険の加入義務が発生します。
具体的には、以下の条件を満たすと、扶養から外れて自分で健康保険や厚生年金に加入し、保険料を負担しなければなりません。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 勤務先の従業員数が一定以上(多くは51人以上)
- 雇用期間が2ヶ月以上見込まれる
なお、2026年末までは政府の助成金制度により、社会保険加入による手取り減少を抑える取り組みを行う企業もあります。
そのため、社会保険加入が必ずしも手取りの大幅な減少につながるとは限らないケースもあります。
社会保険の加入義務の判断は契約内容や勤務実態に基づくため、不明点は年金事務所や専門家に相談すると安心です。
継続して月8万8千円を超えると扶養から外れる可能性もある
月収が毎月8万8千円を超え続けると、扶養から外れる可能性が高いです。
パートで毎月安定して毎月8万8千円以上を稼ぐようになると、健康保険や年金の被扶養者ではなくなり、自分で社会保険料を支払う必要が出てきます。
従業員が常時5人以上いる法人や大きな会社で働いている場合は、社会保険への加入が法律で義務付けられているため、条件を満たせば強制的に加入しなければなりません。
ただし扶養から外れると、保険料の自己負担が増え、手取りが減る場合があります。
例えば毎月10万円稼いで社会保険に加入した場合でも、保険料が差し引かれることで実際の手取りは約8万6千円前後になる場合が多いです。
そのため、月8万8千円以下を稼いで扶養内で働いていたときの手取りとほぼ変わらないケースもあります。
勤務先や地域によって保険料率は異なるため、具体的な手取り額は変わりますが、社会保険加入による負担増だけで損をするとは限らない点は押さえておきましょう。
扶養から外れる場合でも、収入増加に見合った手取りの確保が可能なこともあるため、安心して働き方の検討が大切です。
交通費は含まれる?月8万8千円に含まれる費用
月8万8千円の計算に交通費は含まれません。
通勤手当は実費を補填するもので、給与の一部とはみなされないためです。
月8万8千円に含まれる費用と含まれない費用は、以下のとおりです。
項目 | 含むか含まないか |
---|---|
基本給 | 〇 |
賞与(ボーナス) | × |
残業代・時間外手当 | × |
通勤手当(交通費) | × |
休日出勤手当・深夜手当 | × |
定額で支給される各種手当 | 〇 |
支給が確定している手当 | 〇 |
例えば基本給が8万7千円で交通費が3千円支給されていても、社会保険の加入判定では基本給のみが対象で、合計が9万円でも加入義務は発生しません。
残業代や深夜手当、休日出勤手当も割増賃金として扱われ、月額賃金には含まれません。
社会保険の加入条件は労働契約書に記載された所定内賃金を基準に判断され、毎月決まって支払われる基本給や定額手当が対象です。
収入が月8万8千円以下の人が考慮すべき年収の壁3つ
パートやアルバイトで月8万8千円以下の収入でも、年収の壁を意識しておくことは重要です。
以下の3つの負担が増えるタイミングを知り、働き方や収入計画を立てましょう。
- 所得税の
- 社会保険
- 配偶者特別控除
くわしく解説します。
所得税の非課税となる年収の目安は160万円
所得税がかかり始める年収の壁は、2025年から従来の103万円から160万円に引き上げられました。
これは基礎控除が58万円、給与所得控除の最低額が65万円と従来と比較するとそれぞれ10万円ずつ増え、合計控除額が160万円相当に拡大したためです。
そのため、これまで103万円以下で非課税だった方も今後はより多く働けるようになり、160万円以下であれば基本的に所得税はかかりません。
所得税の負担開始の目安は160万円と理解しておきましょう。
社会保険の壁は106万円と130万円の2種類ある
社会保険の加入義務が生じる年収の壁は106万円と130万円の2つがあります。
項目 | 106万円の壁 | 130万円の壁 |
---|---|---|
対象になる事業所 | 従業員51人以上の企業など社会保険適用事業所 | 従業員50人以下の事業所 |
労働時間条件 | 週20時間以上 | 特に条件なし |
年収条件 | 年収106万円(=月収8万8千円以上)以上 | 年収130万円超 |
加入する保険 | 健康保険・厚生年金(勤務先の社会保険) | 国民健康保険・国民年金(自分で加入) |
加入義務の有無 | 条件を満たすと必須 | 年収130万円超で必須 |
保険料負担 | 企業と本人が折半で負担増 | 自己負担で保険料が発生 |
備考 | 2026年10月頃に106万円の壁の賃金要件が撤廃される予定 | 社会保険の扶養から外れ、自身で国民保険・年金に加入 |
社会保険は、勤務先の規模や労働時間によって社会保険の加入義務が異なります。
106万円の壁は主に大きな企業で週20時間以上働く人が対象で、130万円の壁は中小企業などで年収130万円を超えた場合に適用されます。
どちらも保険料の負担増につながるため、社会保険に入りたくない場合は、働き方の調整が必要です。
配偶者特別控除の壁は160万円
配偶者特別控除は、配偶者の年収が一定の範囲内であれば、納税者の所得税を軽減できる制度です。
妻が夫の扶養に入っている場合、妻の年収が一定の範囲内であれば、夫の所得税を軽減できます。
2025年の改正により、配偶者特別控除を受けられる配偶者の給与収入の上限が引き上げられ、納税者本人の所得や配偶者の年収に応じて控除額が段階的に適用されます。
例えば、納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合、配偶者の給与収入が160万円以下であれば配偶者特別控除が適用され、最大で38万円の控除を受けることが可能です。
具体的には、妻がパートで160万円まで働いても夫の税金は増えず、家計の手取りが増えます。
ただし、160万円を超えると控除額は少しずつ減り、妻の年収が201万6千円を超えると控除は受けられなくなります。
配偶者の働き方や収入調整に大きく関わるため、収入の目安として覚えておくと役立ちます。
扶養内の学生が月8万8千円超えたらどうなる?
昼間の学生(※一定の学校に在学中の者)は、原則として社会保険の適用除外となっており、以下の通常の社会保険加入条件を満たしていても、社会保険への加入義務は発生しないケースが多いです。
- 週20時間以上勤務
- 月収8万8千円以上
- 従業員51人以上の事業所で働く
項目 | 所得控除(税金の扶養内) | 社会保険の扶養内 |
---|---|---|
年収の目安 | 年間150万円まで(場合によっては160万円まで控除対象) | 年収130万円未満が目安 |
内容 | 親の所得税・住民税の控除対象になる | 健康保険・厚生年金の扶養に入れるかの基準 |
注意点 | 場合によっては控除額は段階的に減少する | 健保組合によって規定が異なる |
家計への影響 | 家計の税負担軽減につながる | 保険料負担が増え、手取りが減る可能性がある |
自分に適用される控除や制度が分からない方はFPへの相談がおすすめ
税金や社会保険の控除・制度は複雑で、自分にどれが当てはまるのか判断しづらいです。
お金の専門家であるFPに相談すると、悩みに対して収入や家族構成、将来のライフプランを踏まえた最適な対策方法が見つかります。
具体的には、以下の幅広いお金の悩みに対応可能です。
- 社会保障や税金を含めた家計の見直し
- 教育資金の準備
- 保険の見直し
- 住宅ローンの相談
- ライフプランの作成
- 資産運用
- 老後資金の準備
FPは現状を詳しくヒアリングし、利用できる控除や制度を正確に把握した上で、具体的なアドバイスを提供してくれます。
漠然とした不安も解消でき、安心して将来設計が進められます。
専門的な知識と豊富な経験を持つFPに相談すると、自分に合った賢い選択ができるようになるため、ぜひ活用を検討しましょう。
扶養内で月8万8千円を超えたらに関するよくある質問
扶養内で働きたい場合、月8万8千円を超えたらどうなるのか心配される方が多いです。
ここでは、以下の2つの質問にわかりやすく回答します。
- ダブルワークで収入が合算される場合の扱い
- 扶養内で月8万8千円を超えた場合にすべき手続きは?
扶養内でダブルワークで月8万8千円超えたらどうなりますか?
複数の職場で働くダブルワークの場合、それぞれの収入を合算して月8万8千円を超えるかどうかが判断基準になります。
例えば以下の場合、月額の収入は合計9万円になるため、月8万8千円の扶養の範囲を超えます。
収入源 | 収入額(月額) |
---|---|
A社 | 5万円 |
B社 | 4万円 |
扶養から外れると、社会保険料の自己負担が発生し、健康保険や年金の加入義務が生じる可能性があります。
ただし、短期間の超過や一時的な収入増加はすぐに扶養から外れるとは限らず、年間の収入見込みや労働時間の状況も加味されます。
ダブルワークの収入は合算されるため、扶養内に収めたいのであれば、全体の収入管理が重要です。
扶養内で月8万8千円を超えたらすべき手続きはありますか?
月8万8千円を超えて扶養から外れる可能性がある場合、まず自分の勤務先に報告しましょう。
社会保険の加入状況が変わるため、健康保険組合や年金事務所への手続きが発生します。
また、配偶者の扶養から外れる場合は、配偶者の勤務先にも報告し、扶養控除の見直しが必要です。
手続きを怠ると、後から追加の負担が発生することもあるため、早めの対応が安心です。
まとめ
- 所得税の壁は160万円
- 社会保険の壁は106万円と130万円の2種類ある
- 配偶者特別控除の壁は160万円