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医療費控除は5年分まとめて申告できるのでしょうか。また、医療費控除を5年分まとめて申告する際は5年分の医療費が10万円以上なら良いのでしょうか。この記事では、医療費控除は5年分まとめて申告するときの条件と方法を解説しています。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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医療費控除の確定申告は5年分まとめて申告できる?


こんにちは。


マネーキャリア編集部です。


先日、ある読者さまからこんな質問を受けました。


「医療費控除という制度があるのは知っていたけれど、最近過去5年間分までなら、あらためて申請できると聞きました。医療費控除というのは、医療費が10万円以上になったら、申請できるのですよね。その際、5年分まとめて申告できるのですか?」


国税庁のホームページには、〈還付申告は、還付のための申告書を提出できる日から5年間の期間内に行うことができます。この「還付のための申告書を提出することができる日」とは、その年の翌年1月1日です〉と記載されています。


ただこれは、給与所得所の場合です。個人事業主になると、微妙にその期限が違ってきます。


「医療費控除は、5年分まとめて申告できるのか?」


この記事は、そんな疑問に答えていきます。ただ「5年分まとめて」という意味は、「5年間の医療費の合計が10万円を超えればいい」と考えている方もいらっしゃるので、そのことについても解説していきます。


またその申告期限、医療費控除の対象となるもの・ならないもの、5年分まとめて申告する方法と得な申告のしかた、申告を間違えてしまったときなどについても詳しく解説しています。


これから医療費控除を5年分さか上って申告しようと思っている方には、とても役立つ情報ですので、ぜひ最後までお読みください。

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医療費控除は5年分まとめて申告できるが医療費は合算できない!


結論から言うと、医療費控除は5年分まとめて申告することはできますが、5年間の合算が10万円以上あればいいわけではありません。


なぜなら、国税庁のホームページには医療費控除の対象となる医療費の要件として、「その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること(未払いの医療費は、現実に支払った年の医療費控除の対象となります)」と記載されているからです。


余談ですが、ある税理士さんが確定申告の無料相談の当番をしていて、「医療費控除は、過去5年間分は受け付けてもらえる」というのを、「ある年の医療費が10万円以下でも、過去5年間の医療費が通算10万円を超えれば、医療費控除を受けることができる」と勘違いしている方がかなり多いことに気づいたというエピソードもあります。


過去5年間の医療費は、合算できない」ということをよく覚えておいてください。


また給与所得者個人事業主では、申告期限に違いがあることに注意してください。この点については、後で詳しく解説します。

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医療費控除を5年分まとめて申告するときは申告期限に気を付けよう!


たとえば一般のサラリーマンが医療費控除の申告を忘れた場合、5年前までさか上って申告をすることができます。これを「還付申告」と言います。


また個人事業主で、すでに確定申告を済ませている人が、医療費控除の申告を忘れてしまった場合は、その年の申告期限から5年間申告をし直すことができます。これを「更正の請求」の手続きと言います。

①還付申告の場合は5年後の12月31日まで

サラリーマンなどの還付申告の場合、還付金の申告ができる期間は、該当する医療費を支払った翌年の1月1日から5年間となっています。


つまり今年(2021年)にかかった医療費が、医療費控除の対象になるなら、2026年12月31日まで申告が可能です。

②更正の請求の場合は6年後の3月15日まで

個人事業主が行う更正の請求は、すでに提出した確定申告の書類を訂正しなければなりません。これは確定申告をする際に、税務署に納めすぎた税金を還付金の形で払い戻してもらう手続きになります。


ここで注意していただきたいのは、還付申告とは異なり、更正の請求の可能な期間は、その年分の申告期限から5年間と定められているということです。


つまり、今年(2021年)分の更正の請求ができるのは、6年後の2027年3月15日ということになります。

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5年分まとめて申告するときの医療費控除の対象は?


5年分まとめて医療費控除の申告する場合も、対象となる医療費は通常の申告時と同じです。


原則として、対象となる医療費は、治療を目的とした費用であり、対象とならない医療費とは、治療以外の目的で支払われた医療費です。


間違いやすいのは通院・入院したときの交通費や薬局で購入した市販薬、歯列矯正などです。これらの費用には、対象になるものとならないものがあるので注意してください。


細かな違いで該当・非該当に分かれてしまうので、その違いをきちんと理解する必要があります。以下で詳しく例をあげていきます。

①医療費控除の対象になるもの

対象となるのは、治療目的で支払った医療費になります。以下に例をあげておきます。

  • 医師による診療や治療
  • 医師などによる一定の保健指導
  • 医師などの処方や指示による医薬品の購入
  • 病気やケガの治療に必要な医薬品の購入(薬局の市販薬)
  • 看護師・准看護師による療養上の世話
  • 付添人を頼んだときの付添料
  • 入院中に病院で支給される食事
  • 通院や入院のための交通費(公共交通機関を利用する)
  • 妊娠診断後の定期検診や検査、通院費用
  • 出産で入院するときのタクシー台(他の公共交通手段によることが困難なとき)
  • 助産師による分娩の介助費
  • 不妊治療・人工授精
  • 母子保護法の規定にもとづく医師による妊娠中絶
  • 眼科医・歯科医による診療や治療
  • 金やボーセレンを使った歯科治療
  • 歯列矯正(機能的な問題がある場合)
  • レーシック(レーザー光線で近視などの屈折異常を矯正する手術)
  • オルソケラトロジー治療(角膜矯正療法)
  • 眼科手術後の機能回復のための短期間装用する器具(斜視・白内障・緑内障等)
  • 治療のためのあん摩・マッサージ・指圧師・柔道整復師などによる施術
  • 医療用器具の購入や貸借
  • 義手・義足・松葉杖などの購入
  • 健康診断費用(異常があり、治療を受ける場合)
  • 6か月以上寝たきりの人のおむつ代(医師による証明書が必要)
  • 介護福祉士などによる喀痰吸引など
  • その他介護保険で提供される一定の施設・居宅サービス

②医療費控除の対象にならないもの

対象にならないのは、治療以外の目的で支払った医療費です。以下のようになります。
  • 自己都合で希望した差額ベッド代
  • 入院時の寝具・洗面具の費用
  • 入院時の借用料(テレビ・冷蔵庫等)
  • 自家用車で通院したときのガソリン代・駐車場代
  • 美容整形のための歯列矯正
  • メガネ・コンタクトレンズの購入
  • 補聴器の購入(ただし補聴器相談医が治療などのために必要と判断した場合は対象となる)
  • 疲労回復、健康増進のためのビタミン剤やサプリメント
  • 予防接種
  • 診断書の作成
  • 健康診断費用(異常が見つからない場合)

医療費控除を5年分まとめて申告する方法は?


医療費控除を5年分まとめて申告する場合、その年ごとにかかった医療費を計算し、控除額を正確に出す必要があります。申告は一度で済みますが、年単位で別々に申告しなければなりません。


以前は税務署まで直接行き、明細書に必要事項を記載し、提出していました。最近ではe-Taxといって、自宅でパソコンやスマートフォンの画面から入力し、電子データで送信することによって提出できるようになりました。


またe-Taxからプリンターによって明細書を印刷し、税務署に提出・郵送することもできま

す。


なお国税庁でも、スマートフォンによる医療費控除入力例をまとめた資料を準備して、スマートフォンからの申告も可能になっています。

①e-Taxを用いてスマホやパソコンで医療費控除の申告をする

e-Taxとは確定申告の際に、パソコンやスマートフォンからオンライン上で書類を作成し、電子データとして送信するものです。税務署に行かなくても、自宅で確定申告ができるので、近年利用者が増えています。


e-Taxには次のようなメリットがあります。

  • 1月上旬から利用が可能
  • 電子データで送信するため処理が早い
  • 生命保険料控除等の証明書が提出不要

e-Taxでも、医療費控除を5年分まとめて申告することが可能です。


ただここで注意していただきたいのは、医療費控除額を先に入力してしまうと、正しい金額が表示されないことです。必ず先に給与所得を入力するようにしてください。

②必要書類を所轄税務署に郵送するか直接持って行く

医療費控除の申告でe-Taxを利用しない場合は、国税庁の発行する医療費控除の明細書に手書きで書き込みます。でき上がったものを所轄税務署へ持参するか、郵送するかして提出ということになります。この場合も、5年分をまとめて申告することができます。


幸い国税庁ホームページで、医療費控除の明細書の書式がダウンロードできます。また明細書の書き方も案内されているので、わざわざ税務署に行かずに、自宅で記入することができます。

医療費控除を5年分まとめて申告するときに領収書の提出は必要?


結論から言うと、今年(2021年)に限っては、領収書の提出が必要な年と必要でない年があります。


5年分まとめて医療費控除を申告する際、5年前の2016年分においては領収書の提出が必要です。


そして、翌年の2017年分からは、領収書の提出は必要がなくなり、明細書の提出だけで済むように定められました。


しかし、領収書は自宅で5年間は保管することがすすめられています。


また医療保険機関が発行する「医療費のお知らせ」が明細書の代わりになります。


これらについては、以下に解説していきます。

①2016年分より前の医療費控除の確定申告は領収書の提出が必要

今年からさか上ってちょうど5年前というのは、2016年に当たります。医療費控除申告において、医療費の領収書提出が不要になるのは2017年からです。


そのため2016年分の医療費控除の申告をする方は、医療費の領収書を税務署に提出しなければなりません。


該当する方は、領収書の保管はきちんとなされていますか? あらためて確認してみましょう。

②2017年分より後の医療費控除の確定申告は領収書の提出不要

2017年分の確定申告から、医療費控除の提出書類が簡略化され、領収書に代わって医療費控除の明細書のみを提出すればよいことになりました。ただ万が一税務署からの確認を求められたときのために、5年間は自宅に保管しておいた方がよいでしょう。


しかし、健保組合など加入している公的医療保険機関が1年分などをまとめて発行してくれる、いわゆる「医療費のお知らせ」があります。これを税務署に提出すれば、医療費控除の明細書の代わりになります。


そのため、明細書の作成と提出、領収書の保管もせずに済みます。

家族で所得が高い人が医療費控除の申告を5年分まとめてしよう


国税庁によると、医療費控除の対象になる医療費の要件として「納税者が、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること」と規定されています。


それは、医療費控除の申告を5年分まとめて申告する際も同じです。


そのため、医療費控除の医療費を計算するときに、配偶者やその親族の分を合算することができます。その際、扶養関係や同居、別居の別は問われません。


それぞれの年の分を合算するわけですが、申告する際はその中で一番所得が高い人の名前でするのが有利です。なぜなら所得税率が高くなり、還付額も多くなるからです。

間違えた医療費控除を申告してしまった場合の対処方法は?


確定申告期限後に、医療費控除の申告の間違いに気づく例として2通りあります。

  1. 還付される額が少なすぎた場合
  2. 還付される額が多すぎた場合

1.については、更正の請求という手続きを行います。更正の請求書を税務署長あてに提出し、税務署内でその内容が検討されます。


この場合納めた税金が多すぎたわけですから、請求が認められれば、その分の税額が還付されます。しかし最終的に税額に異動がない場合は、請求は認められません。


2.については、修正申告によって訂正します。この場合できるだけ早く修正することが必要です。税務署の調査を受けたあとや、税務署からの申告税額の更正を受けたあとでは、新たに納める税金のほかに過小申告加算税がかかるからです。


さらにそれとは別に、新たに納める税金には延滞税が加わります。


くれぐれも還付金の額を多く間違えないように注意してください。


また更正の請求や修正申告は、国税庁のホームページからでも申請書を作成でき、でき上がったものをe-Taxで送信したり、プリンターで印刷したりすることが可能です。

セルフメディケーション税制も過去5年分が申請できる


セルフメディケーション税制
とは、厚労省が指定する特定医薬品(スイッチOTC医薬品)を購入した際、所得控除が可能になる制度です。OTC医薬品の年間の購入額が1万2千円を超えた場合、その超えた額が所得から控除されます(上限は8万8千円)。


この税制も、資料さえそろっていれば過去5年分までさか上って申告することができます。5年分まとめて申告することも可能です。


また医療費控除より対象となる範囲が広い税制と言えます。


OTC薬品は、有名な市販薬も含め2000品目近くあり、共通識別マークが付いているので、選んで購入するようにしましょう。


なおこの税制は、医療費控除と併用することはできません。またその年の分として、健康の保持増進および疾病の予防への「一定の取組」を行ったことを明らかにする書類が必要です。


セルフメディケーション税制は、期間延長が検討されています。同時にOTC医薬品の見直しも行われ、予防接種や健康診断についても書類の提出は不要となるそうです。


検討案が決定されれば、2026年まで制度が延長されることになります。


なおセルフメディケーション税制も、e-Taxを利用して申告することができます。

まとめ:医療費控除の確定申告は5年分まとめてできる!


いかがでしたでしょうか?


この記事では、

  • 医療費控除は過去5年分を合算して、10万円を超えていればよいというのは間違い。
  • ただそれぞれの年にかかった医療費を計算して、5年分まとめて申告することはできる。
  • 医療費控除を5年分まとめて申告する場合、サラリーマンの行う還付申告と個人事業主の行う更正の請求の場合では、申告期限が異なることに注意。
  • 5年分まとめて申告する場合も、通常の申告と同じように対象となる医療費とならない医療費があるので、その違いをよく調べておく。
  • 5年分まとめて申告する方法は、インターネットを利用するe-Taxを使うか、所轄税務署へ直接持参するか、郵送するかの3つに分かれる。
  • 医療費控除を5年分まとめて申告する場合、2016年と2017年以降では医療費の領収書の扱いが異なるので注意する。
  • 5年分まとめて申告する場合も、医療費は配偶者や家族の分を合算できる。その際は一番所得が高い人の名前で申告するのが有利である。
  • 医療費控除の額を間違えて申請してしまった場合は、更正の請求または修正申告によって訂正する。還付金額を多く申請した場合は、延滞税を徴収される。
  • セルフメディケーション税制も過去5年さか上って申告できる。また5年分まとめて申告できる。

以上を解説してきました。


医療費控除は過去5年分をまとめて申告することができます。


しかし過去5年分の医療費を合算して、10万円を超えればよいと誤解している方は意外に多いものです。


この記事を読んで、5年間さか上る場合、医療費はその年ごとに1年分を計算しなければならないことがお分かりいただけたと思います。


たとえば過去に出産などして、その年の医療費が10万円を超えたのに気づかずにいたなどというケースもあるそうです。それが過去5年以内であれば、かかった医療費をきちんと計算して申告しましょう。


またこの記事を読んだ方は過去5年間をさか上って、自分が医療費控除またはセルフメディケーション税制の対象になるか見直しましょう。


もし対象になるのであれば、さっそく申告して節税につなげてください。