サプリメントは医療費控除の対象になるのでしょうか。この記事では、サプリメントが医療費控除の対象になるのかについて説明しています。また、医療費控除の申告時に見落としがちな医療費や、サプリメントと医薬品の違いも解説しているので、ぜひお読みください。
監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
サプリメントは医療費控除の対象になる?
この記事を読んでいる人の中には、サプリメントは医療費控除の対象になるか疑問に思っている人もいるかと思います。
「サプリメントは健康を維持するためのものだから、医療費控除の対象になるんじゃないの?」と考えますよね。
結論から言いますと、サプリメントは医療費控除の対象になりません。
サプリメントは治療・療養に直接関わるものではないため、医療費控除における「医療費」には含まれないのです。
ただし病院で治療のためにビタミン剤等を処方された場合は、医療費控除の対象となります。
サプリメントはどこまでが医療費控除の対象なのか、少しわかりにくいですよね。
そこでこの記事ではサプリメントの医療費控除について
- 医療費控除の対象にならないサプリメントについて
- 見落としがちな医療費控除の対象
- 医療費控除制度の概要の説明
- セルフメディケーション税制とは
- 【コラム】サプリメントと医薬品の違いとは
サプリメントは医療費控除の対象にならない
冒頭でもお伝えしましたが、サプリメントは医療費控除の対象になりません。
栄養療法や食事療法のためのサプリメントは医療費控除の対象外
栄養療法や食事療法のためのサプリメントは、治療・療養に直結しないため、医療費控除の対象外です。
具体的にいうと、自己判断でテレビ通販・ネット通販・ドラックストア等で自己判断で購入したサプリメントのことを指します。
なぜ対象外なのかというと、サプリメントは法律上「食品」という扱いになるからです。
確定申告をするときは「医療費控除の明細書」に記入しないよう、気をつけてください。
不妊治療のためのサプリメントも医療費控除の対象外
不妊治療のためのサプリメントは医師の指導をもとに購入・服用したとしても、医療費控除の対象外になります。
これについては裁判にもなり、平成27年5月12日に判決が出ています。
ざっくりと説明すると、「医療費控除は医師・歯科医師による診療または治療に対して払った金額が対象になるが、不妊治療のためのサプリメントの購入は医師・歯科医師による診療または治療には当てはまらないため、対象外とする」ということです。
ただし、不妊治療のためのサプリメントの購入費は対象外でも、診察・治療費は医療費控除の対象です。
医療費控除について気になることがある場合は、確定申告前にFPや税理士に相談しましょう。
見落としがちな医療費控除の対象
「医師が必要だと判断した治療・療養のための医療費だけが控除の対象になるんだよね」と思ってはいませんか?
実は医師の判断がなくとも医療費控除の対象になるものがたくさんあります。
この記事で紹介する見落としがちな医療費控除の対象は
- ドラッグストア等で購入する風邪薬や絆創膏
- 通院の際の交通費
- 生計を一にしている家族の医療費
- 治療のためのマッサージ代・はり師による施術代
- 松葉杖など、医療器具の購入費
①ドラッグストア等で購入する風邪薬や絆創膏
自己判断でドラッグストア等で購入した治療・療養用の医療品の費用も、医療費控除の対象になります。
なぜなら、医師の判断がなくても治療・療養のためのものなら医療費控除においては「医療費」に該当すると考えられているからです。
「医療費控除=病院」というイメージがあり、ドラッグストア等で使った医療費は控除の対象にならないと誤解している人はたくさんいます。
ドラッグストア等で治療・療養のために医薬品を購入している人は、レシートや領収書を保存しておきましょう。
確定申告の時に提出する「医療費控除の明細書」を作成するために必要になります。
②通院の際の交通費
通院の際の交通費も、治療・療養に付随する費用として、医療費控除の対象です。
しかし使用した交通機関によっては医療費控除の対象にならないものもあります。
交通費はどこまでが医療費控除の対象になるのか、きちんと確認しておきましょう。
医療費控除の対象になるのは、次のような交通費です。
- 電車・バスなどの公共交通機関を使ったとき
- 通院のために使った自家用車のガソリン代・駐車場代
- タクシー代(例外あり)
③生計を一にしている家族の医療費
医療費控除を確定申告するときは、夫婦それぞれが申告しても良いですし、代表者一人が申告しても良いようになっています。
夫婦どちらか片方だけでは医療費控除の対象になる金額に満たない場合でも、二人の医療費を合わせれば控除の対象になるかもしれません。
もちろん、生計を一にしているなら同居している両親や子ども、一人暮らしの子どもも対象です。
医療費控除の申告を考えている人には、家族全員分の医療費に関する領収書・レシートを一か所にまとめて保存しておくことをおすすめします。
「医療費控除の明細書」を作成するとき、本人に確認して回る手間が省けてスムーズに申告できるでしょう。
医療費控除を申告するといくら返ってくる?
医療費控除は、税務署に申告した医療費が全額返ってくるわけではありません。
所得金額に応じた計算式から算出された金額だけが返ってくるのです。
医療費控除の計算式は、所得金額が200万円未満か200万円以上かで異なります。
計算式1:所得金額が200万円未満の場合
- 支出した医療費の金額-保険金等の金額-所得金額×5%
- 支出した医療費の金額-保険金等の金額-10万円
- 所得金額が200万円未満で、1年間の医療費が所得金額×5%以上
- 所得金額が200万円以上で、1年間の医療費が10万円以上
セルフメディケーション税制を利用しよう
医療費控除の特例として、セルフメディケーション税制という制度があります。
セルフメディケーション税制はスイッチOTC医薬品の購入額が12,000円を超えた場合、その超えた部分の金額について医療費控除を受けることができます。
スイッチOTC医薬品とは、もともと医師の判断でしか使用できなかったけれどドラッグストアなどでも販売されるようになった医薬品のことです。
スイッチOTC医薬品かどうかは、薬が入っている箱やドラッグストアのレシートで確認できます。
分からない場合は薬剤師や医薬品の製造会社のホームページなどで確認しましょう。
所得金額が200万円以上の場合、1年間の医療費が10万円以上でないと医療費控除を受けることができません。
しかしセルフメディケーション税制ならスイッチOTC医薬品を12,000円以上購入することで受けることができます。
これまで購入した医薬品の中にスイッチOTC医薬品がある人、今後スイッチOTC医薬品を購入する予定がある人は、セルフメディケーション税制の適用を検討してください。
コラム:サプリメントと医薬品の違いは?
ここまで、サプリメントは医療費控除の対象にならないことを紹介してきました。
しかし医師の判断で処方されたサプリメントは対象、ドラッグストア等で購入した治療・療養のための医薬品も対象と言われても、違いがわからなくて混乱してしまいますよね。
特にドラッグストア等で購入したものなんて、みんなが手に取れるのだからサプリメントと医薬品の違いなんてほとんどないように思いませんか。
しかし、実際は厳密な基準が設定されており、品質管理の正確さや薬の効果・副作用などから購入の自由度も変わってきます。
ここではサプリメントと医薬品の違いを紹介します。
①製品の品質管理の正確さが違う
サプリメントと医薬品は、両方とも決められた基準を満たしたものを販売しています。
基準を満たしている点については共通しているのですが、品質管理の正確さは異なります。
どういうことかというと、医薬品は医師・薬剤師・登録販売者などの管理が必要なのに対し、サプリメントは絶対に必要なわけではないということです。
医師などの専門家が管理している分、医薬品の方が品質管理が正確だと言えるでしょう。
②購入の自由度が違う
サプリメントは法律上「食品」という扱いになっており、健康な人が使用することを前提として消費者が自由に購入できます。
これに対して医薬品は効果や副作用などの判断を消費者個人で行うには難しく、医師・薬剤師・登録販売者などの管理下に置かれます。
医師・薬剤師の判断が必要になる分、医薬品の方がサプリメントより購入の自由度が低いと言えます。
まとめ:サプリメントは医療費控除の対象にならない
今回はサプリメントと医療費控除について
- 基本、サプリメントは医療費控除の対象にならない
- スイッチOTC医薬品を購入したときは、セルフメディケーション税制の利用を検討
- 医療費控除は治療・療養を目的としたものを対象としている
- 医療費控除は健康促進・病気予防のものは対象にならない
- ラッグストア等で購入する風邪薬や絆創膏
- 通院の際の交通費
- 生計を一にしている家族の医療費