この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 転職後に給料が下がったら補助金がもらえるって本当?
- 「就業促進定着手当」とは?
- 就業促進定着手当をもらうための条件
- 就業促進定着手当の計算方法
- 就業促進定着手当の上限額について
- 転職後に給料が下がったら無料FP相談を活用して今すぐ家計の見直しをしよう
- 就業促進定着手当はいくらもらえる?2つの例でシミュレーション
- 30万円から28万円に下がった場合
- 30万円から25万円に下がった場合
- 就業促進定着手当の申請方法
- 転職前後の家計管理で気を付けたいポイントとは?現役FPに聞いてみた【座談会】
- 収入と支出の変化を見える化しておく
- 生活レベルを一度リセットして考える
- 困ったら無料FP相談!プロと一緒に効率的に家計の見直しをしよう
- 転職後に給料が下がったときの家計管理のポイント4つ
- 収支の見直しをする
- 固定費を削減する
- 変動費(食費・交際費)をコントロールする
- 無料FP相談を活用して家計全体の見直しをする
- 【まとめ】転職後に給料が下がったら補助金申請や家計の見直しをおこなおう
転職後に給料が下がったら補助金がもらえるって本当?
転職後に給料が下がった場合「就業促進定着手当」の支給が受けられます。
ただし、これは誰でも自動的にもらえる手当ではなく、前職との給与差や雇用形態など、一定の要件を満たす必要があります。
ここでは以下の4つの観点から、制度の内容を分かりやすく整理します。
- 「就業促進定着手当」とは?
- 就業促進定着手当をもらうための条件
- 就業促進定着手当の計算方法
- 就業促進定着手当の上限額について
「就業促進定着手当」とは?
「就業促進定着手当」とは、就職促進給付の一種で再就職後の賃金が前職に比べて低い場合に支給を受けられる手当です。
主な対象は再就職手当を受給した人で、いくつかの追加要件も定められています。
支給の判断は、再就職後6か月間の給与を基に算出した「賃金日額」を前職時の賃金日額と比較して行われます。
したがって、試用期間中のみ給与が低く、その後の昇給で前職を上回る場合は対象外となります。
また、前職で福利厚生などを含めた総収入が多かったとしても、賃金日額の計算上は転職後のほうが高くなるケースもあるため、事前に比較して確認しておくことが重要です。
就業促進定着手当をもらうための条件
就業促進定着手当の支給を受けるための条件は以下のとおりです。
- 再就職手当の支給を受けている
- 雇用保険に加入している
- 同じ職場に6ヵ月以上勤務している
- 再就職後の賃金日額が前職の賃金日額より低い
- 受給手続き後の7日間の待機期間を終えてから就職している
- 前職とは別の企業に就職している 1年以上の雇用が見込まれている
- 雇用保険の被保険者である
- 過去3年以内に再就職手当や常用就職支度手当を受けていない
- 給付制限期間がある場合は、待機後1か月以内にハローワークの紹介で就職している
- 残日数が3分の1以上:支給率60%
- 残日数が3分の2以上:支給率70%
就業促進定着手当の計算方法
就業促進定着手当の計算方法は「賃金日額の差額×支払い基礎日数」で計算できます。
賃金日額は、再就職後6か月間の賃金総額÷180で求められます。例えば月収が25万円なら、計算式は「25×6÷180」となります。
ただし日給制や時給制の方の賃金日額は、以下のいずれか高い方の金額を用います。
- 6ヵ月間の賃金合計÷180
- (6ヵ月間の賃金合計÷基礎日数)×70%
この「基礎日数」は賃金形態によって異なります。
- 月給制:勤務月の日数すべて
- 日給月給制:出勤して給与が発生した日数
- 時給制:実際に出勤した日数
就業促進定着手当の上限額について
就業促進定着手当には上限額が定められています。上限額は年齢によって異なるため、支給額を計算する際は把握しておきましょう。
2025年4月以降は支給率が一律20%に統一され、支給額は「雇用保険の基本手当日額 × 支給残日数 × 20%」で算出します。
ただし、基本手当日額には年齢ごとの上限があり、下記の範囲を超える場合は表の金額を基準に計算します。
| 離職時の年齢 | 賃金日額の上限 | 基本手当日額の上限 |
|---|---|---|
| 29歳以下 | 1万4,310円 | 7,065円 |
| 30~44歳 | 1万5,690円 | 7,845円 |
| 45~59歳 | 1万7,270円 | 8,635円 |
| 60~64歳 | 1万6,490円 | 7,420円 |
60歳未満では、年齢が上がるほど上限額も高くなる傾向があります。
また、年齢に関係なく一律2,295円の下限額も設定されている点に注意しましょう。
転職後に給料が下がったら無料FP相談を活用して今すぐ家計の見直しをしよう
就業促進定着手当は、失業保険のように長期間継続してもらえる手当ではありません。また、受給できる条件も厳しいため「転職したら給料が下がった」といった方でも、支給が認められないケースも多いのです。
転職後に給料が下がった場合は、家計を見直して支出を抑える対策が必要です。しかし、闇雲に出費を抑えようとしても長続きしません。また、支出には「必要な支出」「家計を見直して抑えると効果がある支出」「努力して抑えてもあまり効果が期待できない支出」の3種類があります。家計を見直すなら「家計を見直して抑えると効果がある支出」を明確にし、どのくらい抑えられるのか、算出してみる必要があります。
家計の見直しを正確かつ効果的に行うには、個人のマネープランや資金計画を行うプロであるFPに相談するのがおすすめです。
就業促進定着手当はいくらもらえる?2つの例でシミュレーション
ここでは、実際に就業促進定着手当がいくらもらえるかシミュレーションを解説します。
条件は年齢が33歳、賃金支払基礎日数は183日、基本手当の支給残日数は60日です。どのくらい就業促進定着手当の支給が受けられるのか、目安がわかれば安心です。
なお、就業促進定着手当は年齢や賃金支払基礎日数によって変わるので、自身の支給額を計算したい場合は、年齢等を調節してください。
30万円から28万円に下がった場合
年齢が33歳、賃金支払基礎日数は183日、前職の月収が30万円、基本手当の支給残日数が60日だった方が転職した結果、月収が28万円まで下がった場合、就業促進定着手当の計算方法は以下の通りです。
- 再就職後6ヵ月間の賃金日額=(28万×6)÷180=9,333円
- 離職前の賃金日額=(30万×6)÷180=1万円
- 就業促進定着手当=(1万-9,333)×183=12万2,061円
ここまでの計算では、就業促進定着手当は12万2,061円の支給が受けられる計算です。
次は、就業促進定着手当の支給上限額を計算します。
就業促進定着手当の支給上限額=基本手当日額×基本手当の支給残日数×20%で計算できます。7,845×60×20%=9万4,140円となり、上限額に達していることがわかりました。したがって、9万4,140円の支給が受けられます。
30万円から25万円に下がった場合
今度は、年齢が33歳、賃金支払基礎日数は183日、前職の月収が30万円、基本手当の支給残日数が60日だった方が転職した結果、月収が25万円まで下がった場合の就業促進定着手当の計算方法を紹介します。
- 再就職後6ヵ月間の賃金日額=(25万×6)÷180=8,333円
- 離職前の賃金日額=(30万×6)÷180=1万円
- 就業促進定着手当=(1万-8,333)×183=30万5,061円
単純に計算すると、就業促進定着手当は30万円以上支給されます。しかし、就業促進定着手当の支給上限額は9万4,140円と同様です。したがって支給額は月収が30万円から28万円に下がった場合と変わりません。
月収の減少額が多くても無条件で支給額が上がるとは限らないので注意しましょう。
就業促進定着手当の申請方法
就業促進定着手当の申請はハローワークで行います。必要な書類は以下の4つです。
- 就業促進定着手当支給申請書
- 雇用保険受給資格者証
- 出勤簿やタイムカードの写し
- 給与明細、もしくは賃金台帳の写し
転職前後の家計管理で気を付けたいポイントとは?現役FPに聞いてみた【座談会】
転職を考えるとき、多くの人が不安に感じるのが「給料が下がったら生活はどうなるのか」という点です。
実際、転職後に手取りが数万円減ることで、日々の生活にじわじわと影響が出るケースは少なくありません。
今回は、ファイナンシャルプランナー(FP)の加藤さんと池元さんに、転職で収入が下がっても慌てないための家計管理のポイントを伺いました。

収入と支出の変化を見える化しておく
——転職で給料が下がるかもしれないとき、まず何をすべきでしょうか?
加藤FP:まずやるべきなのは、収入の変化と支出のバランスを見える化することです。「毎月の手取りがいくら減って」「生活費とのバランスがどう変わるか」を把握することが重要です。
池元FP:そうですね。転職後に「なんとなくお金が減っている気がする」という状態はすごく危険です。毎月の手取り額と固定費・変動費を照らし合わせて、どこでいくら不足が出るかを数字で出しておくと、必要な対策が具体的に見えてきます。
加藤FP:もし足りない部分が明確になれば、「削る」「補う」「制度を使う」という選択肢が持てます。不安の正体を曖昧にしたまま転職してしまう人が多いので、数字に落とし込むだけでだいぶ冷静になれますよ。
池元FP:収入が減る可能性があるなら、転職前の時点で最低限この“見える化”はやっておきたいところです。焦らずに備えられる土台になります。
生活レベルを一度リセットして考える
——実際に給料が下がった人は、どこから見直すといいのでしょうか?
池元FP:やっぱり固定費ですね。家賃・車・保険・通信費など、転職前と同じ生活レベルを続けてしまうと、収入減をダイレクトに家計が受けてしまいます。
加藤FP:収入が減ったときに真っ先にやりがちなのが「食費を削る」とかの我慢系なんですが、それだと続かないです。長期的に持続できる家計にするなら、まず固定費からリセットするのが基本です。
池元FP:あるご家庭では、転職で手取りが月5万円下がったときに、通信費と保険料の見直しで3万円浮かせました。残りの2万円は支出の優先順位をつけ直すことで、生活レベルを大きく落とさずに対応できました。
加藤FP:固定費って「一度変えるだけで効果が続く」ので、転職のように収入が変わるタイミングとすごく相性がいいんです。むしろチャンスと捉える人もいますね。
池元FP:生活レベルをリセットするというとネガティブに聞こえるかもしれませんが、将来の安心を作るための再設計です。ここで整えると、その後がぐっとラクになります。
困ったら無料FP相談!プロと一緒に効率的に家計の見直しをしよう
転職して給料が下がった場合、将来的に昇給すると会社側が約束していたとしても、家計の見直しが必要です。就業促進定着手当は1回のみの支給なので、使い切るまでに家計を見直しましょう。
家計の見直し方法は「支出を抑える」と「収入を増やす」の2点です。結婚している場合は配偶者に働いてもらう、配偶者の仕事の時間を増やしてもらう等の方法で収入を増やすこともできるでしょう。
しかし、収入を即大幅に増やすのは難しいため、支出を抑えることが大切です。
転職後に給料が下がったときの家計管理のポイント4つ
ここでは、転職後に給料が下がったときの家計管理のポイントとして以下の4つを紹介します。すべてのポイントを実行する必要はありませんが、できるものから実行してみてください。
- 収支の見直しをする
- 固定費を削減する
- 変動費(食費・交際費)をコントロールする
- 無料FP相談を活用して家計全体の見直しをする
収支の見直しをする
収支の見直しは家計見直しの基本です。まずは、家計簿をつけてお金の流れをはっきりさせましょう。家計簿というとレシートを見ながらノートに記入するイメージを持っている方もいるでしょう。しかし、現在はクレカや電子決済アプリと紐づけられたり、レシートを撮影するだけで記載が完了できたりするアプリも登場しています。
使いやすいアプリがあれば、ぜひ活用してみましょう。お金の流れがわかれば無駄遣いの有無や額もわかります。
固定費を削減する
固定費とは、額が毎月決まっている支出です。一例を挙げると以下のような費用が挙げられます。
- 住居費:家賃・住宅ローン
- 光熱費:電気・ガス・水道
- 通信費:電話代・プロバイダ料
- 保険料:生命保険など
- 自動車に関する費用
- 教育費:授業料・塾代など
変動費(食費・交際費)をコントロールする
変動費とは、月々の支払額が変動する支出です。一例を挙げると以下のような費用が挙げられます。
- 食費
- 日用品費
- 交際費
- 交通費
家計を見直す場合、食費・日用品費・交際費などが削りやすい項目として挙げられます。しかし、食費をむやみに削ると食生活が貧しくなり、ストレスがたまったり病気になりやすくなったりして、別の費用が余計にかかる可能性もあるでしょう。
節約するなら、まずは無駄遣いをしているか見直してみてください。例えば、仕事帰りに週4回カフェでコーヒーを飲む習慣があるなら、週1回まで減らすなどです。そうすれば、ストレスなく節約ができるでしょう。
無料FP相談を活用して家計全体の見直しをする
家計の見直しは、自分でできるものと難しいものがあります。難しいものには、保険の見直し、住宅ローンの借り換えなどが挙げられます。
保険の見直しは、商品の種類が多いほど選択に迷いがちです。また、今までかけてきた保険を解約すると損をするケースもあるでしょう。住宅ローンの見直しは月々の支払だけでなく、総支払額まで考えて借り換えるどうか検討が必要です。
多数の実績をほこるFPに相談すれば、これまでの経験をもとに適切なアドバイスを受けられます。
【まとめ】転職後に給料が下がったら補助金申請や家計の見直しをおこなおう
「就業促進定着手当」は、雇用保険の被雇用者であり再就職手当を受給している方のみが1回限り支給を受けられる手当です。しかし、下がった給料の額によっては数万円~10万円単位の手当てが受給できるので、家計の助けになるでしょう。
再就職して給料が下がったら、家計を見直して支出を抑える工夫が大切です。自分で家計を見直すには限度があるため、何度でも無料で利用できるマネーキャリアを利用し、家計見直しのプロであるFPに相談しましょう。