浪人生で大学合格を目指す方の中には奨学金を利用したいと考える方も多いのではないでしょうか。浪人生でも奨学金を受け取ることはできますが、必要な手続きや気をつけなければならないことがあります。ここでは、実際の奨学金受給者が申し込み方法や注意点を解説します。
監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 浪人生でも奨学金をもらえる?申し込みに必要な手続きは?
- 奨学金は浪人生でも高校卒業後2年以内に大学入学すればもらえる!
- 浪人生が奨学金を申し込む方法!必要書類の書き方や期限を解説!
- 申請の流れを解説
- 必要書類とその書き方を解説
- 日本学生支援機構の奨学金は3種類!給付額や返済額について解説
- ①給付奨学金【返済不要】
- ②第一種貸与奨学金【返済が必要・無利子】
- 第二種貸与奨学金【返済が必要・利子あり】
- 奨学金を受け取れる条件を紹介!学力基準と家計基準を満たす必要あり!
- 浪人生が奨学金を申し込むときの注意点4選!
- ①4月に予約申し込みをしても浪人すると奨学金はもらえない
- ②マイナンバーカードが必要
- ③第1種は高校への申し込み期限が春
- ④再入学だと奨学金はもらえない
- 浪人生が春の申し込みを忘れたときの対処法2選!
- ①入学後春の在学採用で申請する
- ②秋の追加募集で応募する
- 高卒認定試験で合格した場合は日本学生支援機構に申請を
- 奨学金受給者の体験談を紹介!【申請の際に注意したことは?】
- まとめ:浪人生は2浪までなら給付奨学金を受け取れる!貸与奨学金なら制約はない!
浪人生でも奨学金をもらえる?申し込みに必要な手続きは?
こんにちは。ファイナンシャルプランナーの品川です。
知人から、こんな相談がありました。
大学に入学すると、様々な費用が発生します。ご家族で準備されている資金だけでは賄いきれないかもしれません。
日本学生支援機構が公表している奨学金ガイドブックによると、 大学生の支出平均は、1,884,200円。
収入の平均は、1,965,900円。その内家族からの給付が60.1%、奨学金が19.6%、アルバイトが18.1%となっています。
データから、家族の支援だけでは大学生活を送れないことが分かります。 アルバイトを増やせば…と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、大学生は勉強することに時間を費やすべきです。
条件を満たせば、浪人生でも奨学金を利用することが出来るのです。
今回のポイントは、
- 給付奨学金は高校卒業後2年以内に大学入学すれば利用可能
- 学力と家庭の収入によって利用できる奨学金が異なる
- 奨学金の時期ごとの申込方法
です。
実際に奨学金を利用している経験から、説明させていただきます。 「これから奨学金を利用したい」と考えているあなたのお手伝いになれば幸いです。
奨学金は浪人生でも高校卒業後2年以内に大学入学すればもらえる!
日本学生支援機構の給付奨学金申込資格には以下の記載があります。
- 2021年3月末に高校等を卒業予定の人
- 高校等を卒業後、2年以内の人
以上のどちらかを満たす必要があります。
つまり、浪人生でも高校卒業後2年以内に大学へ入学すれば給付奨学金を利用できるということです。
「高等学校卒業程度認定試験」に合格した方は、これから説明する方法とは申込方法が異なりますので、後述します『高卒認定試験で合格した場合は日本学生支援機構に申請を』をご覧ください。
また、三浪以上の多浪生であっても、貸与奨学金であれば申請可能ですので安心してください。
浪人生が奨学金を申し込む方法!必要書類の書き方や期限を解説!
奨学金の申込方法は大学進学前に申し込む「予約採用」と大学進学後の在学中に申し込む「在学採用」があります。
浪人生の場合でも、予約採用・在学採用ともに申込をすることができます。
予約採用は、浪人生の場合は卒業した学校等を通じて申込をします。募集期間は第一種と第二種で異なり、第一種の方が締め切りが早いので準備を早めにしておく必要があります。高校によって多少の差はありますが、第一種はおおむね4~7月上旬頃、第二種は4月~翌年1月中旬頃までとなっています。
在学採用は、大学進学後に申込むことになります。
それでは、奨学金申請の流れを解説していきます。
申請の流れを解説
予約採用の手続きの流れは以下の通り。
≪進学前≫
- 募集
- 申込・書類提出
- 学校からの推薦
- 日本学生支援機構での選考
- 採用候補者決定通知の交付
- 進学届を進学先へ提出
- 機構から採用決定の通知
- 返還誓約書の提出
- 奨学金の入金
- 卒業
- 返済開始
予約採用の場合は、高校在学中や浪人中に申込をすることとなります。申込の結果「採用候補者」となっても正式に奨学金を受け取れると決まったわけではありません。
大学へ進学後、進学先へ進学届や変換誓約書を提出することにより給付奨学生として採用され、奨学金の振込みが始まります。
また、マイナンバー等の提出書類は専用の封筒で、本人が郵便局の窓口から簡易書留により直接日本学生支援機構へ郵送となります。
もし、予約採用の申込を失念していたとしても、在学採用の申込は大学入学後に手続きが出来ますので、安心してください。
在学採用の手続きの流れは以下の通り。
≪進学後≫
- 学校の奨学金申込時説明会に出席
- 必要書類を学校へ提出
- JSASの識別番号の交付を受け取る
- スカラネットによる奨学金申込み
- 学校による推薦者の選考・機構による選考・採用決定
- 学校の奨学金採用時説明会に出席
- 返還誓約書を学校へ提出
- 奨学金の入金
- 卒業
- 返済開始
必要書類とその書き方を解説
必要書類は給付奨学金と第一種・第二種貸与奨学金で少し異なります。基本的な申込内容はスカラネットで入力しますが、下記書類については記入・提出が必要となります。
給付奨学金の場合
- マイナンバー提出書
- 給付奨学金確認書
- 提出書類一覧表
第一種・第二種貸与奨学金の場合
- マイナンバー提出書
- 貸与奨学金確認書兼同意書
- 提出書類一覧表
日本学生支援機構の奨学金は3種類!給付額や返済額について解説
日本学生支援機構の奨学金は以下の3種類です。
- 給付奨学金【返済不要】
- 第一種貸与奨学金【返済有・無利子】
- 第二種貸与奨学金【返済有・有利子】
①給付奨学金【返済不要】
給付奨学金は、その名の通り返済不要で奨学金が「給付」されます。
給付奨学生として採用されてから大学を卒業するまで、家族の所得金額に基づく第1~第3区分に応じて、通学形態(自宅通学・自宅外通学)によって定まる下表の金額(月額)が、原則として毎月振り込まれます。
【国公立の場合】
区分 | 自宅通学 | 自宅外通学 |
---|---|---|
第1区分 | 29,200円 | 66,700円 |
第2区分 | 19,500円 | 44,500円 |
第3区分 | 9,800円 | 22,300円 |
【私立の場合】
区分 | 自宅通学 | 自宅外通学 |
---|---|---|
第1区分 | 38,300円 | 75,800円 |
第2区分 | 25,600円 | 50,600円 |
第3区分 | 12,800円 | 25,300円 |
国公立と私立ともに、奨学金の限度額は自宅外通学>自宅通学、第3区分>第2区分>第1区分となっています。表にある区分についてご説明すると、自宅通学と自宅外通学は言葉の通りですね。第1区分~第3区分がどのように決まるのかというと、家族の収入の多寡によって区分分けされています。
ご自身がどの区分に該当するかは、日本学生支援機構の進学資金シミュレーターでも確認することができます。
ご参考までに、以下は日本学生支援機構が公表している収入基準を一部抜粋している表となります。
給付奨学金の第1区分収入上限【出典:日本学生支援機構より抜粋】
世帯人数 | 世帯構成 | 収入 |
---|---|---|
2人 | 本人・母 | 229万円 |
3人 | 本人・母・高校生 | 289万円 |
4人 | 本人・父・母・高校生 | 295万円 |
給付奨学金の第2区分収入上限【出典:日本学生支援機構より抜粋】
世帯人数 | 世帯構成 | 収入 |
---|---|---|
2人 | 本人・母 | 332万円 |
3人 | 本人・母・高校生 | 391万円 |
4人 | 本人・父・母・高校生 | 395万円 |
給付奨学金の第3区分収入上限【出典:日本学生支援機構より抜粋】
世帯人数 | 世帯構成 | 収入 |
---|---|---|
2人 | 本人・母 | 402万円 |
3人 | 本人・母・高校生 | 457万円 |
4人 | 本人・父・母・高校生 | 461万円 |
第1区分は給付額が多いですが、収入の要件がかなり厳しくなっています。反対に第3区分は給付額が少なくなりますが、収入要件は緩和されていますね。
②第一種貸与奨学金【返済が必要・無利子】
第一種貸与奨学金と第二種貸与奨学金の違いは、利息の有無です。第一種は無利子ですが、第二種では有利子となっていますので、第一種の方が採用要件は厳しくなっています。
【出典:日本学生支援機構より抜粋】
区分 | 自宅 | 自宅外 |
---|---|---|
国公立 | 20,000円 30,000円 45,000円 | 20,000円 30,000円 40,000円 51,000円 |
私立 | 20,000円 30,000円 40,000円 54,000円 | 20,000円 30,000円 40,000円 50,000円 64,000円 |
奨学金の返済方法は、毎月一定金額を返済していく方法が一般的です。卒業後に算出される返済金額が口座から引き落としされる口座振替での返済となります。
奨学金の月々の返済金額は、貸与を受ける総額によって異なります。
【出典:日本学生支援機構 返還期間(回数)より抜粋】
貸与総額 | 割賦金の基礎額 | 返済回数 |
---|---|---|
100万円 | 90,000円 | 132回(11年) |
150万円 | 110,000円 | 156回(13年) |
200万円 | 140,000円 | 168回(14年) |
300万円 | 170,000円 | 204回(17年) |
第二種貸与奨学金【返済が必要・利子あり】
- 利率固定方式・・・貸与終了時に決定した利率が奨学金の返済完了まで適用されます。 将来、市場金利が上昇しても下降しても利率は変動しません。
- 利率見直し方式・・・返済期間中、約5年ごとに適用利率が見直されます。 将来、市場金利が上昇・下降した場合は利率が変動します。
奨学金を受け取れる条件を紹介!学力基準と家計基準を満たす必要あり!
奨学金は種類ごとに受け取れる条件が異なり、「学力基準」と「家計基準」を満たす必要があります。
まずは学力基準からみていきましょう。
学力基準 【出典:日本学生支援機構より抜粋】
給付奨学金の場合
- 高等学校等における評定平均値が3.5以上であること、又は、入学者選抜試験の成績が入学者の上位2分の1の範囲に属すること
- 高等学校卒業程度認定試験の合格者であること
- 将来、社会で自立し、活躍する目標を持って学修する意欲を有していることが、学修計画書等により確認できること
第一種貸与奨学金の場合
- 高等学校又は専修学校高等課程の1年から申込時までの成績の平均値が3.5以上
- 高等学校卒業程度認定試験に合格した人又は科目合格者で機構の定める基準に該当する人
- 生計維持者(父母等、2人いる場合は2人とも)の住民税(所得割)が非課税であって、以下のいずれかに該当するとして学校長の推薦を得られる人 ・特定の分野において特に優れた資質能力を有し、進学先の学校において特に優れた学習成績を修める見込みがあること ・進学先の学校における学修に意欲があり、進学先の学校において特に優れた学習成績を修める見込みがあること
第二種貸与奨学金の場合
- 高等学校又は専修学校(高等課程)における学業成績が平均水準以上と認められる者
- 特定の分野において特に優れた資質能力を有すると認められる者
- 大学における学修に意欲があり、学業を確実に修了できる見込みがあると認められる者
- 高等学校卒業程度認定試験に合格した人又は科目合格者で機構の定める基準に該当する人
家計基準【出典:日本学生支援機構より抜粋】
給付奨学金の場合は、前述した表の第3区分を上回る収入がある場合は採用要件から外れますので、第一種あるいは第二種貸与奨学金の申請を検討しましょう。
第一種貸与奨学金の場合
世帯人数 | 給与所得者 | 給与所得者以外 |
---|---|---|
3人 | 657万円 | 286万円 |
4人 | 747万円 | 349万円 |
5人 | 922万円 | 514万円 |
第二種貸与奨学金の場合
世帯人数 | 給与所得者 | 給与所得者以外 |
---|---|---|
3人 | 1009万円 | 601万円 |
4人 | 1100万円 | 692万円 |
5人 | 1300万円 | 892万円 |
浪人生が奨学金を申し込むときの注意点4選!
浪人生も奨学金を利用することはできますが、注意しなければならない点があります。現役の学生と違い、在学していた高校とは疎遠になりがちです。
予約採用の場合は、出身高校から奨学金の申請を行うため、申し込み期限を忘れずに申請することが必要です。
浪人生の奨学金申請方法は基本的には現役学生と同じです。それぞれの注意点を把握して、正しく申請をできるようにしましょう。
以下では、注意点を4つご紹介していきます。
①4月に予約申し込みをしても浪人すると奨学金はもらえない
②マイナンバーカードが必要
③第1種は高校への申し込み期限が春
④再入学だと奨学金はもらえない
浪人生が奨学金の申請で注意すべき4点目は、他大学に一度入学している場合は奨学金の申請ができないことです。
浪人生が春の申し込みを忘れたときの対処法2選!
①入学後春の在学採用で申請する
②秋の追加募集で応募する
高卒認定試験で合格した場合は日本学生支援機構に申請を
奨学金受給者の体験談を紹介!【申請の際に注意したことは?】
私自身、大学入学後に在学採用で申請をして奨学金を利用しています。
もともと地元の国公立大学に行くつもりで、実家から通い授業料だけは両親から支援してもらう予定でした。無事地元の国公立大学に入学できましたが、実家から大学へ通うのに1時間半かかり、時間がもったいないと感じて下宿することに決めました。
下宿の家賃や生活費もろもろで、月5万円は必要だと感じたのですぐに奨学金の説明会に参加して、奨学金の申請を行いました。
申請の際に、家族の所得証明などはすぐに準備できましたが、両親以外の保証人の署名が必要だとわかりました。その時は伯父が地元にいたので頼むことが出来ましたが、仕事の都合がつかず、署名をしてもらうのに時間がかかりました。
申請自体は難しくなく、随時大学構内にある学生支援センターで質問ができるようになっていました。
4月に申請をして、6月頃に4月・5月・6月分がまとめて私の銀行口座に振り込まれました。月5万円受給していましたが、田舎暮らしでしたし、無駄遣いしなければ生活には全く困りませんでした。
大学4年間毎月5万円の奨学金を受給していたので、計240万円を現在も返済しています。毎月13,000円ほどの返済をしており、生活にも大きな影響はありませんが、負担があることには変わりはないので、利用する金額はよく考えてから申請することが重要です。
まとめ:浪人生は2浪までなら給付奨学金を受け取れる!貸与奨学金なら制約はない!
いかがでしたでしょうか。浪人生も2浪までなら給付奨学金を受け取れますし、貸与奨学金であれば三浪しても申し込むことができます。