内容をまとめると
- 借りた奨学金を全て使い切る必要はない
- 奨学金の使い道は個人の自由であり、返済する場合は繰上返還が利用できる
- そもそも奨学金を借りるべきかどうかは、家庭の経済状況や将来の返済計画による
- マネーキャリアは、奨学金の返済方法・計画や借り入れの相談に最適な提案が可能
監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
奨学金を全て使い切る必要はない
結論、奨学金を全て使い切る必要はありません。
日本学生支援機構によると、学生の4年間の平均貸与額は第1種で237万円、第2種で343万円となっています。
かなりの大金ですが、想定よりお金を使う必要がなく奨学金が余りそう、もしくは余ったという人も中にはいます。
その場合、無理して奨学金を全て使おうとする必要はありません。
以下では、その理由について詳しく解説しています。
余った奨学金をどうすればいいのか分からない人は、以下を参考にしましょう。
奨学金をすべて使わなくてもいい理由
奨学金を全て使わなくていい理由は、以下の2つになります。
- 奨学金の用途は個人の自由
- 奨学金は繰り上げ返還で返済額を減らせる
これらのポイントから、奨学金は自分のペースで使うことができ、必要に応じて早めに返済できる柔軟な制度です。
奨学金を無理なく賢く活用するために、これら2点の理由についてさらに詳しく掘り下げていきますので、ぜひ参考にしてください。
奨学金の用途は個人の自由
奨学金をすべて使わなくても良い理由1つ目は、奨学金の用途は個人の自由だからです。
融資や貸与を受ける場合、その用途は決められています。
例えば、事業者に対する融資の場合、運転資金や設備投資など利用用途が限られており、それに違反すると返済を求められる可能性があります。
これらの融資・貸与に対して日本学生支援機構からの貸与の利用用途は教育関連となっていますが、違反したからと言って返済を求められることはありません。
ただし、第2種を貸与した場合、返済には利子がかかります。
必要以上に貸与金額が多すぎると返済時の返済利子額が大きくなるため、必要金額を算定した上で、必要金額を借りるようにしましょう。
奨学金は繰り上げ返還で返済額を減らせる
奨学金をすべて使わなくても良い理由は、繰上返還でいつでも返済できるためです。
日本学生支援機構に「繰上返還」という制度があり、返還額の全額または一部を繰り上げて返還することが可能です。
奨学金の返済は、将来の結婚や子育てに大きな負担となることもあります。
そのため、借りた奨学金を無理に使わず、少しずつ繰上返還を行うことで、将来の負担を減らすことができます。
奨学金は借りない方がいいのか
奨学金を借りない方がいいのかどうかは、将来の返済計画と現在の経済状況に大きく影響されます。
奨学金を利用すべきかどうかは、以下2つのケースで考えることができます。
- 借りた方がいい場合
- 借りない方がいい場合
奨学金を借りた方がいい場合は、学費や生活費の補助が必要なときで、学業を続けるための有効なサポートとなります。
一方、奨学金を借りない方がいい場合は、将来の返済が生活に大きな負担をかける可能性があるときや、他の経済的支援があるときです。
それぞれのケースについて、さらに詳しく見ていきましょう。
借りた方がいい場合
奨学金を借りた方が良いケースと、その理由は以下の通りです。
- 進学が困難な場合:学費や生活費を支える手段が不足している場合、奨学金は学業の継続を助けとなる
- 家計の負担が大きい場合:家族の収入が厳しいとき、奨学金を借りることで学費や生活費を補い、学業に集中できる
- 給付奨学金の対象となる場合:世帯収入の基準を満たしていれば、成績だけで判断せず、しっかりとした「学ぶ意欲」があれば支援を受けることができる(※)
このように、奨学金は学費や生活費の負担を減らし、学業に専念できるための強力なサポート制度となります。
奨学金は使わない方がいいと言う人も中にはいますが、上記のケースに当てはまる場合は
利用を検討するのをお勧めします。
※参照:給付奨学金|日本学生支援機構
借りない方がいい場合
奨学金を借りない方が良いケースと、その理由は以下の通りです。
- 返済計画が不透明な場合:返済義務がある奨学金は、卒業後の収入が不確実な場合に負担となる
- 過剰な借り入れを避けたい場合:必要以上に奨学金を借りると、将来的に大きな返済負担を抱えることになる
- 他の支援がある場合:親からの支援やアルバイト収入で学費をまかなえるなら、負担を減らすことができる
以上、これらの場合は奨学金の返済負担を減らすために、借りない方が賢明です。
奨学金を借りるかどうかは、将来の負担を考えて慎重に判断しましょう。
借りる際の注意点
続いては奨学金を借りる際の注意点について紹介します。
若い年齢で多額の借金を背負うことになるため、借りる前に知っておくべきことはたくさんあります。
この記事では以下の5点について紹介します。
- 奨学金は借金であることを理解する
- 返済の目途を立てておく
- 返済できない場合の対処法を知っておく
- 奨学金を遊びに使わない
- 返済免除が利用できないか確認する
奨学金は借金であることを理解する
奨学金を借りるときの注意点は、奨学金が借金であるということを理解することです。
奨学金の多くは給付型ではなく、貸与型であり、返済義務が伴います。
両親が代わりに手続きをすると、返済義務を実感しにくくなる可能性があります。
そのため、奨学金の仕組みを理解するためにも、手続きは必ず学生本人が行い、自分自身の責任であることを認識しましょう。
返済の目途を立てておく
奨学金を借りる前に、返済の目途を立てておくことです。
日本学生支援機構によると、返還期間は最短で13年、最長で20年となっています。(※)
将来の結婚や育児、住宅購入などの支出を考慮し、借りる金額は必要最小限に抑えましょう。
また、繰上返済を行うことで、返済期間を短縮し負担を減らすこともできるため、計画的に返済の目途を立てておきましょう。
返済できない場合の対処法を知っておく
奨学金を借りる際に大切な注意点の一つは、返済が困難な場合の対処法を知っておくことです。
万が一の際に備え、適切な対策を理解しておくことで、心理的負担を軽減できます。
奨学金の返済が難しい場合には、以下の2つの方法があります。
- 減額返還:返済額を一定期間、半分から3分の2に減らすことが可能(※1)
- 返済期限の猶予:最長15年(180か月)まで延長可能(※2)
減額返還の方が、返済期限の猶予に比べて返済期間の延長が少なく済むため、返済可能な範囲で進めることをおすすめします。
※1参照:月々の返還額を少なくする(減額返還制度)|日本学生支援機構
※2参照:返還期限猶予制度|日本学生支援機構
奨学金を遊びに使わない
奨学金を借りた場合、奨学金を遊びに使わないようにしましょう。
奨学金を遊びに使ってしまうと、卒業までに学費が足りなくなる可能性や、急な支出に対応できなくなります。
そのため、奨学金を適切に管理するために別の通帳で貯金をしたり、親に通帳を管理してもらう、またバイトで収入を増やし無駄遣いを減らすことも良い方法です。
これらを活用して、奨学金を賢く使い、将来のために備えましょう。
返済免除が利用できないか確認する
奨学金を借りる際の注意点6つ目は、優秀な成績を収め、返済免除の制度を使用することです。
日本学生支援機構の奨学金には特定の要件に該当する学生に対して、返済を全額免除もしくは半額免除できる制度があります。(※1)
特定の要件とは大学院生でかつ第1種奨学金を借りている学生です。
上記の要件に該当する学生で優秀な成績を収めたと認められると、返済が免除されます。
大学院生の第1種奨学金の最高額は月88,000円(※2)であり、大学院修了後の返済金額は211万1000円になるため、要件に該当するとこの返済額が免除される可能性があります。
大学院生で第1種奨学金を借りている学生は免除されるように日々、勉強や研究に励むようにしましょう。
※1参照:特に優れた業績による返還免除の概要|日本学生支援機構
※2参照:第一種奨学金の貸与月額|日本学生支援機構
奨学金に関するよくある質問
本章では、以下3つの奨学金に関するよくある質問にお答えします。
- 奨学金を使わない人の割合は?
- 奨学金の使い道はバレる?
- 奨学金を借りない人の家庭の年収はいくら?
奨学金を借りる際は、多くの疑問や不安があるかと思いますが、これら疑問に対する回答を見て、不安を解消していきましょう。
奨学金を使わない人の割合は?
日本学生支援機構の「令和4年度学生生活調査」によると、大学(昼間部)の学生のうち、奨学金を利用していない学生の割合は約45%です。(※)
この結果から、半数以上の学生は家庭の経済状況や他の支援などにより奨学金を利用せずに学費や生活費をまかなっていることがわかります。
奨学金の使い道はバレる?
結論、奨学金の使い道は基本的に自由であり、外部に知られることはありません。
奨学金をどのように使っているかが特定の機関や団体に報告されることもないため、原則としてバレることはありません。
しかし、奨学金は教育費や生活費を補助するためのものであり、遊びや娯楽に使うことは避けるべきです。
奨学金を借りない人の家庭の年収はいくら?
奨学金を借りない家庭の年収は、世帯人数により異なります。
以下に、世帯人数ごとの奨学金を借りない人の家庭収入をまとめました。
世帯人数 | 第一種奨学金を借りない世帯収入 | 第二種奨学金を借りない世帯収入 |
---|---|---|
2人 | 7,770,000円 | 11,800,000円 |
3人 | 7,320,000円 | 11,270,000円 |
4人 | 8,800,000円 | 13,090,000円 |
5人 | 9,720,000円 | 13,870,000円 |
引用:大学等で受ける第二種奨学金の家計基準|日本学生支援機構
表の通り、700万円以上と家庭の年収が高いほど、奨学金を借りる必要が少なくなることがわかります。
まとめ:奨学金は無理して使わなくてよい
奨学金はすべて使わない方が良いということについて理由を含めて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
本記事のポイントは以下の2点です。
- 万が一の場合に備えて奨学金はすべて使わないほうが良い
- 将来のことを考えるととりあえず奨学金を借りることはよくない