「奨学金は投資に回すべき?」「奨学金は投資と返済どっちを優先するべき?」このような疑問を持っている方は多いでしょう。そこで今回は、奨学金は投資に回すべきかどうか、奨学金で始めるのにおススメの投資、奨学金で投資を行う注意点をまとめました。

監修者「井村 那奈」

監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー

ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次

大学生は奨学金で投資をするべき?

内容をまとめると

・奨学金を積極的に投資することはおすすめできない。

・その理由は奨学金はあくまで「金銭的に余裕がない、勉学に励む人」のための制度だから。

・「返済に充てるお金を増やしたい」と、投資を始めてもお金が減ってしまう可能性も。

・しかし、アルバイト代や節約で捻出した少額の余剰金で投資を始めるのはアリ。

・投資を始めるならつみたてNISAなどの積立投資がおすすめ

こんにちは。マネーキャリア編集部です。

先日、読者の方からこんなご相談を受けました。

投資に興味があります。奨学金の余剰資金を投資にまわそうと思うのですが、どう思いますか?
奨学金は多くの学生が利用している制度です。

投資に興味はあるけど、奨学金を受け取りながら投資をしたいと考えている方も多いのではないでしょうか。

野村アセットマネジメントの意識調査によると、数年前と比較して若年層の投資信託保有率が上昇しているようです。しかしながら、まだまだ若年層の金融リテラシーは低く、投資をしている人は多くありません。

20代前半のうちに投資に触れ、金融リテラシーを高めることで今後の人生での資産形成に大きく寄与することになります。

しかしながら奨学金はあくまで「金銭的に余裕がない人のための制度」。
それを充てにして積極的に投資をすることはおすすめできません。

ただし、今後長きにわたり資産を形成していくうえで、
「上がらない賃金」「上がり続ける物価」「社会保障制度の改悪」など
私たちを取り巻く環境は非常に厳しくなっています。

給与収入を預金に置いておくだけでは貧しい生活になってしまう可能性も


そこで、大学生のうちから投資に触れ、金融リテラシーを高めてほしいと考えます。


本記事のポイントは以下の通り。

  • 大学生が少額からでも投資を始めるべき理由
  • おすすめの投資方法
  • 投資を行う際の注意点


投資について勉強されている、あなたのお役に立てれば幸いです。

大学生は奨学金で投資をするべき!その理由を解説!


奨学金を受け取り、学費や生活費の支出ををするだけでいっぱいいっぱいである人も多くいることでしょう。
しかしながら、シフトを少々増やしたり、外食を控えるなど工夫次第で多少の余剰資金を捻出できることもあるでしょう。

そうやって捻出した余剰資金は少額であるかもしれませんがそれをもとに、投資を始めるべきです。

それでは、大学生が投資をするべきと考える理由を解説していきます。

➀早いうちから投資の仕組みやリスクについて理解する

「欧米では投資することが当たり前」と言われることがありますが、その理由として

数十年前から国民に投資を促すための施策が行われてきたことによります。


それを踏まえて近年の日本でも、「NISA」や「iDeCo」を中心に投資を勧めるため制度を推し進めてきました。


しかしながら、これまで学校で投資のことを学ぶ機会はなく、急に制度を用意されても一体何をすればいいのかわからない方もいることでしょう。


卒業後、社会人になりたての時期は学生時代からの変化が大きく、仕事で得た収入をいくら、どのように貯めていけばいいのか考える余裕もありません。


いまのうちから「投資とは?」「株や債券とは?」「いくらまで投資すべきか」など

お金についての基礎を学ぶためのきっかけとして活用していくべきです。

②早いうちから実際の値動きを体験してみる

奨学金が借金なのであれば、投資せずに奨学金の借入を減らす方が良いのでは?と思われる方もいるかもしれません。



金融庁の「長期・積立・分散投資とNISA制度」によると、1998年から20年間日経平均株価指数に積立投資をしていた場合、5.5%の利回りになると言われています。


長期投資の利回りが、奨学金の金利を大きく上回る利回りになっていることがわかります。


しかしながら、運用は常に右肩上がりではありません。景気の循環のように上がったり下がったりを繰り返しながら長期的に成長をしてきた過去があります。


実際に運用に回った自身のお金を日々チェックすることによって、その変動幅や上昇や下落の要因などを認識することで自身のリスク許容度や、社会人になってからの運用スタイルの確立に役立つことでしょう。



③奨学金は余剰資金がある状態でも借りれるので余剰資金を投資に回せる

奨学金は、学生生活に必要な学費や生活費を支援する為に貸与されるものです。まずは、この前提を押さえましょう。


充実した学生生活をおくることができるよう、奨学金を利用した支出の優先順位は間違えないようにしなければいけません。


一方で、奨学金は条件が満たされれば誰でも利用でき、何に使わなければいけないか等を制約されているわけではありません。


学業が最優先ではありますが、大学で経験することは学業だけではないことも事実です。


若いうちから投資に触れることで、経済ニュースや外国の政治問題も自分事として捉えることができるようになり、間接的に学業にも好影響を与えることとなります。


何より、金融リテラシーは投資を行うことでしか高めることはできません。


もちろん、投資なので失敗する可能性もありますが、若いうちから失敗を経験することも非常に重要です。ご自身の資産形成のために、金額を調整したうえで今から行動してみることをお勧めします。

奨学金で行うおススメの投資5選【FPが厳選】


おススメの投資方法についてご紹介します。
FPである筆者が考える奨学金で行うべき投資は、
  • つみたてNISA
  • インデックスファンド
  • 投資信託
  • ロボアドバイザー
  • ETF
の5つです。

一つずつ解説していきます。

➀つみたてNISA


お勧めの投資一つ目は、つみたてNISAです。


つみたてNISAは、少額からつみたて投資をしていくと、運用益が非課税になる制度です。通常、投資をして運用益が出た場合はその利益に対して20%の税金がかかります。


例えば、100万円投資して20万円の運用益が出たとしても、約4万円は税金として徴収されてしまいます。もしつみたてNISAを利用していれば、税金を取られることなく投資で資産を増やしていけるということです。


つみたてNISAの対象商品は、手数料が低水準であり、長期分散投資に適した投資信託やETFに限定されているので、投資初心者にも利用しやすい制度になっています。


利用条件日本に居住かつ20歳以上
非課税対象一定の投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益
非課税投資枠毎年120万円
非課税期間無期限
投資対象長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託


注意しないといけないことは、つみたてNISAに限らず投資は18歳以上でないと出来ないということです。大学生で投資に興味がある方は、18歳の誕生日を迎えてから口座開設をするようにしましょう。


つみたてNISAのメリット

  • 非課税期間が長く長期投資に向いている
  • 厳選された投資信託ラインナップがあり選択しやすい
  • 手数料が安い投資信託が多い

投資におけるリスクを減らすためには、「分散投資」「長期投資」をすることが重要となります。つみたてNISAでは、投資信託を投資対象として限定していますので

②インデックスファンド

インデックスファンドとは、運用の成果が特定の指数に連動するように設定されている投資信託を総称します。一方、アクティブファンドといわれる、特定の指数や市場の成長以上の運用成果を目指すファンドもあります。



インデックスファンドのメリットは以下の通り。

  • 手数料が安い
  • 指数に連動するので価格変動の理由が分かりやすい
  • 手軽に分散投資ができる 

メリットについて、一つずつ解説していきます。

まずは手数料についてです。

投資信託には、購入するときにかかる購入時手数料と、投資信託を保有している間かかり続ける信託報酬、売却(換金)するときにかかる信託財産留保額という手数料が存在します。

  • 購入時手数料・・・投資信託を購入するときに発生します。毎月5万円、1.0%の手数料率で投資信託を購入すれば、毎月500円のコストとなります。
  • 信託報酬・・・投資信託の管理料金のようなもので、毎月あるいは毎年発生します。手数料率は0.5%~2.0%が一般的で、運用成績に関わらず投資信託資産から信託報酬が引かれていきます。 
  • 信託財産留保額・・・売却するときに発生する手数料ですが、投資信託によっては差し引かれないものもあります。

意外といろんな手数料がありますので、投資信託の商品を選ぶうえで、手数料が安いことは重要な要素となります。

インデックスファンドは、日経平均やダウ平均株価などの指数に連動する仕組みになっているので、アクティブファンドのように、運用のプロが投資対象銘柄を選ぶ手間がありません。なので、インデックスファンドの手数料は相対的に低くなっています


そして、インデックスファンドは日経平均株価や、ダウ平均株価等の指数に連動する投資信託です。例えば、ニッセイ日経225インデックスファンドは、東証第1部上場銘柄のうち代表的な225銘柄の株価の変動に連動する投資信託です。

日経平均株価は、毎朝テレビのニュースや新聞で発表されているので日々の変動や、変動要因を把握することが比較的容易です。変動要因が分かれば、買うタイミングや売るタイミングを判断するときの材料になります。


おすすめのインデックスファンドはこちらです。
  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
  • ニッセイ日経225インデックスファンド 
  • たわらノーロード 先進国株式

どれも購入時手数料が無料と、コストが低く人気の投資商品となっています。

③投資信託

投資信託は、投資をする人たちからお金を集めて、運用の専門家が株式や債券、不動産等に投資をしてくれ、その運用成果が投資家の投資額に応じて分配される仕組みの投資商品です。


投資信託によってどのような投資を行うかが異なり、非常に多くの種類の投資信託が存在します。


例えば、AI事業を行う会社に投資をする投資信託や、美容業界の会社を厳選して投資する投資信託など、ご自分の投資方針に合った商品を選ぶことが出来ます。


また、投資信託は株式や債券などに投資をすることから、元本が保証されていません。この点は銀行の預金などとは違うところですので注意が必要です。


投資信託のメリット

  • 少額から投資できる
  • 手軽に分散投資できる
  • 投資の専門家が運用してくれる


株式や債券、不動産への投資を行うにはある程度まとまったお金が必要ですが、投資信託であれば少額から投資することが出来ます。


また、投資信託は複数の投資先を投資の専門家が選別して運用しているので、初心者でも手軽に分散投資をすることが出来ます。


よく、「卵を一つのカゴにまとめて入れるな」と言うように、いろいろなものに投資をすることで相場の変動リスクを抑えることが出来るのです。


投資信託は、少額投資・分散投資が手軽にできるので初心者に向いている投資方法です。

④ロボアドバイザー

ロボアドバイザーは、AIやアルゴリズムを活用して、投資家にあった投資のサポートをしてくれるサービスのことです。


ロボアドバイザーには、資産運用のアドバイスをしてくれるものと、運用・売買までを一貫して行うものの2種類があります。 


運用・売買まで一貫して行ってくれる投資一任型のロボアドバイザーであれば、投資初心者でも簡単に始めることが出来ます。 


ロボアドバイザーのメリット

  • 手間がかからない
  • 感情に左右されない
  • 手数料が比較的安い水準


ロボアドバイザーのサービスを提供しているTHEOによると、2007年からTHEOで運用したシミュレーションでは、短期的には元本を割り込む期間があるものの、長期的には1年あたり年率8.4%の利回りになる試算が出ています。

⑤ETF


ETFは株と投資信託を合わせたような投資商品です。


上場投資信託とも言い、株と同じように証券取引所に上場しているので、リアルタイムで株のように取引できます。


そして、ETFは投資信託でもあるので、一つのETFを購入すれば分散投資をすることができます。


ETFのメリット

  • 小額から投資できる
  • 手軽に分散投資できる
  • 投資の専門家が運用してくれる
  • 株と同じように売買できる


ETFは、株式投資と投資信託の良いとこ取りをしているので、メリットも投資信託と株式投資と同様のものがあります。

奨学金で投資を行う際のデメリットや注意点


次に、奨学金で投資を行う際のデメリットや注意点を見ていきます。
筆者が考える奨学金投資のデメリットや注意点は、
  • 大学生は学業が最優先
  • 投資する目的を設定するべき
  • FX・株式投資・ビットコインなどのハイリスク投資には手を出さない
  • 様々な投資商品に分散投資することでリスク回避をするべき
の4つです。

➀大学生は学業が最優先


大前提の話ですが、大学生は学業が最優先です。


奨学金を投資に使ってしまって学費を払えなくなったり、授業に出ずに運用のことを考える、というような状況になってしまっては元も子もありません。


優先順位を間違えないようにしましょう。

②投資する目的を設定するべき

投資をする目的を明確にしてから始めましょう。


一般的には、「老後資金の足しにするため」「結婚資金の準備をするため」「住宅購入資金とするため」などが考えられます。


投資目的を明確にする理由は、目的によって投資の期間や金額、リスク許容度が変わってくるからです。

③FX・株式投資・ビットコインなどのハイリスク投資には手を出さない


奨学金を借りて投資をする場合、ハイリスクな投資には手をだしてはいけません。
奨学金は将来返済しなければいけませんが、FX・株式投資・ビットコインは大きく増える可能性もありますが、その逆も然りです。

また、真剣に取り組もうとすると学業がおろそかにになってしまいますので、これらの投資は行わないようにしましょう。

④様々な投資商品に分散投資することでリスク回避をするべき

投資にはリスクが付きものですが、分散投資することでリスクを減らすことができます。


もし、一つの投資商品にだけに投資を集中させると、運用がうまくいかなかった場合にはマイナス影響が資産全体に及びます。


このような事態を避ける為に、分散投資は以下の観点から行いましょう。

  • 時間の分散・・・投資するタイミングを変える(積立購入など)
  • 通貨の分散・・・円やドルなど異なる通貨を持つ
  • 地域の分散・・・日本とアメリカ、アジア等地域を変える
  • 商品の分散・・・株式と債券、不動産など様々な投資対象へ投資する


例えば、インデックス投資を行う際には、日経225に連動する投資信託とS&P500に連動する投資信託を積立購入することで、時間と地域、通貨の分散をすることができます。


このように、分散投資を意識して投資商品を選ぶことで、リスクを減少することが重要です。

奨学金は返済と投資どっちを優先すべき?【結論:返済優先】


大学を卒業した後は、奨学金の返済が始まります。


毎月投資信託を積立購入していて、奨学金の返済がスタートすることによって日々の資金繰りが難しくなるかもしれません。


その時は、毎月投資しているお金を少し減らしましょう。奨学金の返済が最優先です。


返済が滞ってしまうと、信用情報に傷がついてしまい、将来クレジットカードや住宅ローンの利用ができなくなる可能性が出てきます。


何より、奨学金制度は利用者の返済がなければ成り立ちません。将来、奨学金を利用する学生たちの為にも、滞りなく奨学金は返済しましょう。

奨学金は多めに借りるべき!その理由を解説


奨学金をどのくらい借りようか迷われている方は、迷わず多めに借りて大丈夫です。なぜなら、金利負担がほとんどないからです。


令和2年度の奨学金金利は0.004%(利率見直し金利)となっており、100万円借りても年間の金利負担は40円です。


投資をして増やせば卒業後に余裕を持った生活ができるようになりますし、無駄遣いをしなければ、多めに借りたからといって将来の生活が苦しくなるわけではありません。

奨学金が余った場合でも繰り上げ返済はするべきではない理由


金利負担がほとんどないので、繰り上げ返済を積極的にする必要はありません


手元に余裕資金があれば、車を買いたいときにローンを組まずに現金で購入することができます。


もし、繰り上げ返済をしてしまいローンを組むことになると、奨学金よりも高い金利を払っていくことになります。


余裕資金がある場合は、先ほどご説明した投資方法を参考にしていただき、投資資金に回して運用することをお勧めします。

まとめ:奨学金は安全な範囲で投資に回そう

いかがでしたでしょうか。


最近では、若年層をターゲットにした投資詐欺が横行しているようです。お金の正しい知識や感覚を身に付けておけば、怪しい話も見極めることが出来る様になるでしょう。


投資に限らず、分からないことがあってもまずはチャレンジしてみて、様々な知識を吸収していくことが重要です。マネーキャリアでは、他にも読んでおきたいお金に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。