

この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 住宅ローンを組んだ後に独立する人が注意すべき3つのリスク
- 住宅ローンの契約違反にならないか要確認
- 返済比率が崩れると家計のバランスも不安定に
- 創業融資に影響が出る可能性も
- 住宅ローンを組んだ後に独立を考えている人はまずFPに相談を
- 【実際どうだった?】住宅ローンを組んだ後に独立した人の体験談
- 独立してから後悔したことはありますか?
- 乗り切るために行った工夫はありますか?
- これから独立を考えている人にアドバイス
- 住宅ローンを組んだ後に独立する人が準備しておくべき3つの対策
- 金融機関へ契約の確認
- 団信や生命保険の見直し
- 生活防衛資金の確保
- 住宅ローンを組んだ後に独立を考える人によくある質問
- 住宅ローンは独立の前と後どちらで組むのがいい?
- 在宅ワークや自宅開業は住宅ローンの契約違反になる?
- 独立後に収入が足りなくなったら住宅を手放すしかない?
- 独立したら住宅ローンはどうなる?不安な人はマネーキャリアに相談してみよう
- 【まとめ】住宅ローンを組んだ後に独立するにはリスクの理解と準備が重要
住宅ローンを組んだ後に独立する人が注意すべき3つのリスク
住宅ローンの返済中に独立すること自体は可能ですが、次の3つのリスクがあることは充分理解しておく必要があります。
- 契約内容の確認不足
- 収入減少による家計圧迫
- 資金調達への影響
ここからは、これら独立前に知っておきたい代表的なリスクを詳しく解説します。
住宅ローンの契約違反にならないか要確認
住宅ローンを組んだ後に独立すること自体は契約違反にはなりませんが、使い方によっては違反となる可能性があります。
とくに注意が必要なのが「住宅の利用目的」です。住宅ローンは居住の用に供することを前提に、低金利で融資を行う商品です。自宅を事業の拠点にする場合、金融機関が定めた使用条件に反する恐れがあります。
また、ローン審査時の申告内容と独立後の職業や収入が大きく変わる場合、契約との整合性が問われるケースも。団信の保障内容にも変更が生じる可能性があるため、独立を考えた時点で契約書の確認と、必要に応じて金融機関への相談を行いましょう。
返済比率が崩れると家計のバランスも不安定に
多くの人が、会社員時代の安定した給与収入を前提に、住宅ローンの返済計画を組んでいることでしょう。
しかし独立によって収入が不安定になると、返済比率が想定以上に高くなり、日々の生活に支障が出ることもあります。
たとえば、収入が400万円に減少した場合、年間180万円のローン返済を続けると返済比率は45%に。この水準は、無理なく返せる目安を超えており、日常の支出や貯蓄にも悪影響を与えかねません。
独立後の家計のキャッシュフローを可視化し、返済比率がどのように変わるのかを把握しておくことが不可欠です。
創業融資に影響が出る可能性も
独立後に創業融資を検討している場合、住宅ローンの返済状況が審査に影響を与える可能性があります。
事業そのものとは無関係に見えますが、創業融資ではローンの返済状況や個人の家計もある程度考慮されます。住宅ローンが重くのしかかっていると、融資の審査が不利になるケースもゼロではありません。
特に、収入と支出のバランスが悪く、生活がギリギリであると見なされると「この人に融資しても事業が続かないのでは」と判断される恐れもあります。
将来の資金調達も視野に入れ、住宅ローンと家計のバランスを整えておきましょう。
住宅ローンを組んだ後に独立を考えている人はまずFPに相談を

住宅ローンを組んだ後に独立を考えている人の中には、返済が続く中で収入形態が大きく変わることから、家計や資金計画に不安を抱える人が少なくありません。
そこで頼りになるのが、お金の専門家であるFPの存在です。独立後の収支バランスや生活防衛資金の準備状況などを丁寧に確認しながら、返済に無理のないプランを一緒に設計できます。
FP相談でできることの一例は、以下の通りです。
- 独立後の収入と支出を踏まえた家計シミュレーション
- 住宅ローン返済計画の見直しや再設計
- 生活防衛資金の必要額の算出と貯蓄戦略の提案
- 必要な保障(医療保険・所得補償保険など)の見直し
- 創業融資や退職後の資金計画についてのアドバイス
これらはもちろん、個々の状況に合った数字で具体的な提案が行われます。現実的なシミュレーションをしておくことで、安心して決断できるようになるはずです。

【実際どうだった?】住宅ローンを組んだ後に独立した人の体験談
住宅ローンを抱えながらの独立には、さまざまなリスクが潜んでいます。とはいえ、独立を諦めるべきかといえば、必ずしもそうとはいえません。実際に、住宅ローンを契約後に独立した人もたくさんいるからです。
ここでは、実際に住宅ローンを組んだ後に独立した人の体験談をご紹介します。リアルな声を聞くことで、ご自身の独立に際しての判断材料の一つにしてみてください。
※ 口コミ調査方法:ランサーズにてアンケート実施
※ 調査期間:2025年6月24日~2025年6月29日
※ 口コミ内容は回答者の主観的な感想や評価です。
独立してから後悔したことはありますか?
住宅ローンを組んだ後に独立した人のうち、約4割が「収入が不安定になり家計が苦しくなった」と後悔していることが分かりました。
また、「返済方法を見直すべきだった」と感じている人も24%と多く、住宅ローン返済にまつわるお金の事情が後悔の大半を占めています。
一方で「後悔していない」と、住宅ローンを抱えながらの独立が上手くいった人も12%いました。事前の準備を万端にすれば、後悔のない独立も実現できることがうかがえます。
乗り切るために行った工夫はありますか?
では、独立後に家計が苦しくなったとき、どのように乗り越えたのでしょうか。
アンケート結果では、「支出を見直して生活費を削減した」という声がもっとも多く、全体の36%を占めていました。日々の固定費や変動費を丁寧に見直すことで、少しでも手元資金にゆとりを持たせようと工夫された様子がうかがえます。
次いで多かったのが、「副業・兼業を始めて収入を増やした」という声。本業の立ち上げと並行してできる範囲の仕事を取り入れ、収入源の分散を図るケースも見られました。
また、「住宅ローンの返済条件を見直した」や、「加入している保険や団信を見直した」といった、固定費の根本的な見直しに取り組んだ方も少なくありません。
さらに少数派ではありますが、「FPや税理士などの専門家に相談した」という声もあり、専門的な視点を取り入れることで冷静な判断につながった方もいるようです。
これから独立を考えている人にアドバイス

30代男性
事業資金や生活費の備えが後悔のない独立につながる

30代男性
事前の情報収集が大切
ローンを組む不動産の将来的な立地条件の情報を細かく調べる事が重要だと思います。私の場合、周辺の商業施設、道路、学校など開発が進むことが分かっていたので、不動産の価値が上がりやすい場所と踏んで住宅ローンを組みました。
実際に周辺の不動産相場は上がっており、もしもの時に売却という選択肢を取れる安心材料になりました。

30代男性
FPへの相談で安心感を
ローンを組む際に一度FPに相談することをおすすめします。
可能であれば、定期的にファイナンシャルプランナーなどの専門家にライフプランの相談をしておけば、独立後にお金のことで困ることは少ないと思います。
実際に独立を果たした人たちからは、備えを万全にしておくことや事前の情報収集、相談体制の確保が重要だったという声がありました。
独立前にしっかり準備しておけば、住宅ローンとの両立も不可能ではありません。お金の不安を取り除き、理想のキャリアへの第一歩を踏み出しましょう。
住宅ローンを組んだ後に独立する人が準備しておくべき3つの対策
住宅ローンを組んだ後に独立する人は、事前に次の3つの準備をしておくことが重要です。
- 金融機関へ契約の確認
- 団信や生命保険の見直し
- 生活防衛資金の確保
ローン返済を継続しながら安定した生活を守るために、ご自身も準備ができているか確認してみましょう。
金融機関へ契約の確認
金融機関に対して、独立による職業や収入の変更を報告する必要がある場合があります。契約時に交わした住宅ローンの約款を確認し、必要であれば事前に銀行へ相談しておきましょう。
特に注意したいのが、自宅を事業に使うケースです。飲食店の開業や事務所利用など、住宅を事業用に転用することは契約違反となる可能性があります。
在宅ワークやフリーランスのように線引きが曖昧な場合でも、独立する前に確認を取っておきましょう。
団信や生命保険の見直し
独立によって会社員時代の保障が失われることも、注意すべきポイントです。
退職し国民健康保険に切り替わることで、厚生年金や健康保険に付随する保障(傷病手当金や遺族年金など)がなくなり、保障が手薄になる部分も出てきます。
団信についても、現在の保障内容が独立後の生活に見合っているかを確認しましょう。総合的に見てもし足りない保証があれば、必要に応じて医療保険・がん保険・所得補償保険などへの加入を検討してみてください。
住宅ローンを抱えながらでも安心して独立するために、万が一への備えを万全にしておきましょう。
生活防衛資金の確保
独立してすぐに収入が安定するとは限りません。事業立ち上げに伴う出費がかさむ一方で、売上が伸び悩むこともあるでしょう。そのため、「住宅ローン返済+生活費」を半年〜1年分カバーできる生活防衛資金を確保しておくことが重要です。
具体的な目安は次の通りです。
- 生活防衛資金の計算式 (月の生活費 + 住宅ローン返済額) × 6〜12ヶ月分
- 例:月の生活費が25万円・住宅ローンが10万円なら、合計35万円×6ヶ月=210万円
何があっても延滞だけは避けたいもの。生活費だけでなく、住宅ローンの返済資金も踏まえた準備が不可欠です。
住宅ローンを組んだ後に独立を考える人によくある質問
住宅ローンは独立の前と後どちらで組むのがいい?
基本的には、独立前に住宅ローンを組むのが有利です。
住宅ローンの審査では「安定収入」が重視されるため、会社員として継続的な収入がある段階の方が通過しやすいのが実情です。
独立後の場合、一定期間の収入実績(確定申告書2〜3年分など)の提示が求められるほか、事業の安定性もチェック対象になります。審査のハードルが高くなるだけでなく、借入可能額が大きく下がる可能性もあります。
独立を視野に入れている人は、将来の収入変動も見越して無理のない返済計画を立てておくことが重要です。
在宅ワークや自宅開業は住宅ローンの契約違反になる?
住宅ローンで購入した物件を事業利用すると、契約違反になる可能性があります。
住宅ローンは「居住用物件であること」が前提です。そのため、自宅を事務所や店舗として使うと「用途変更」とみなされ、契約違反になるおそれがあります。
一方、在宅ワークや副業など「居住を主とした軽微な利用」であれば認められるケースもあります。判断基準は金融機関によって異なるため、必ず契約書を確認し、必要に応じて事前に相談を行いましょう。
独立後に収入が足りなくなったら住宅を手放すしかない?
住宅ローンが払えなくなっても、住宅を売却する以外の選択肢は多々あります。
独立後に収入が不安定になり、住宅ローンの返済が難しくなると「手放すしかないのでは…」と心配する人は多いです。確かに滞納が続くと、一括請求や競売といった厳しい措置が取られるリスクがあります。
しかし延滞前に行動を起こせば、対処法はあります。たとえば、返済条件の見直し、リースバック、任意売却など、生活を守るための選択肢も存在します。大切なのは、状況が悪化する前に相談することです。
独立したら住宅ローンはどうなる?不安な人はマネーキャリアに相談してみよう

住宅ローンを組んだ後に独立することは、決して不可能ではありません。ただし、会社員時代と比べて収入が不安定になることで、ローン返済や家計全体に影響が出るリスクは高まります。
だからこそ、独立を考えている段階で「どんなリスクがあるのか」「どう備えておけば安心なのか」を事前に把握しておくことが何より大切です。
たとえば、収入が減っても返済を続けられるよう生活防衛資金を準備したり、自宅での事業利用が契約違反にならないかを確認したり…そうした一つひとつの対策が、安心と自信につながります。
とはいえ、お金の話は複雑で、自分一人では判断が難しい場面も多いのも当然です。そんなときは、お金のプロであるファイナンシャルプランナーに頼ってみてはいかがでしょうか。
【まとめ】住宅ローンを組んだ後に独立するにはリスクの理解と準備が重要
「住宅ローンを抱えたまま独立するのは不安…」そのような気持ちを抱えるのは自然なことです。事実、収入が不安定になれば返済負担が家計に重くのしかかり、家族の生活にも影響を与えかねません。
とはいえ、住宅ローンと独立は決して両立できないものではありません。重要なのは、「どんなリスクがあるのか」を事前に把握し、それに対して「どんな備えが必要か」を明確にしておくことです。
たとえば、金融機関との契約条件を見直す、独立後に失われる保障に対応できる保険を検討する、万一に備えて生活防衛資金を蓄えておく。こうした地道な準備が、将来の安心につながっていきます。
不安の正体を見える化し、適切な対策を講じておけば「独立」という選択肢にも自信を持って踏み出せるはずです。

住宅ローン返済中に独立する場合、まず最悪のケースを想定した資金計画を立てておくことが大切です。収入が安定するまでの半年〜1年分の生活費+事業資金の準備は必須。固定費(とくに住宅ローンの返済額)がどれだけ家計に影響するかを再計算し、無理のない範囲で返済プランを見直すことも検討すべきです。
私はボーナス払いを外し、月々の返済額を抑えることで安心感が増しました。事業が軌道に乗るまでは不安も大きいですが、準備と冷静な対策があれば乗り越えられます。