加給年金の支給停止規定が改定!今一度加給年金について知っておこうのサムネイル画像

2022(令和4)年4月1日から、加給年金の支給停止の規定の見直しがありました。 これまでの規定では加給年金が支給されたケースであっても、今後は受け取れなくなる可能性もあります。 そこでこの記事では、加給年金の定義・条件から規定の見直しまでを解説します。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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加給年金とは


2022年4月1日から、加給年金の支給停止の規定に関し、見直しがありました。 簡単に言うと、見直しの前であれば支給されたケースでも、今後は支給が停止されることはあり得ます。 人によっては、将来設計に大幅な変更が生じるため要注意です。 この記事では、今回の見直しも含め、加給年金について詳しく学びましょう。

加給年金の概要

加給年金とは、老齢厚生年金に上乗せして受け取れる年金の1つです。 誰でも受け取れるわけではなく、自身や子ども、配偶者が次に掲げる条件に合致しないといけません。


  1. 自身が厚生年金保険に20年以上加入している 
  2. 自身が65歳到達時点(または老齢厚生年金の支給開始年齢に達した時点)で、生計を維持している65歳未満の配偶者、18歳到達年度の末日までの子(または1級・2級の障害がある20歳未満の子)がいる 
  3. 配偶者または子どもの収入が、年収850万円未満または所得が655万5千円未満である 

加給年金の支給額は以下のように定められています。 



また、加給年金には配偶者(妻または夫)の生年月日に応じて特別加算があります。以下の画像にもある通り、一定額が上乗せされる仕組みです。


引用元:加給年金額と振替加算|日本年金機構


なお、加給年金はあくまで厚生年金加入者を前提にした制度です。自営業、フリーランスなどの国民年金加入者は対象外なので注意しましょう。

振替加算とは

加給年金と併せて理解しておきたいのが、振替加算です。老齢厚生年金や退職共済年金等の加給年金額の対象となっていた妻(夫)が65歳になった時点で、夫(妻)が受け取っていた加給年金額が無くなり、妻(夫)の老齢基礎年金に生年月日に応じた金額が加算される仕組みを言います。


文章だけだと分かりづらいので、以下の表も参考にしてください。 



引用元:加給年金額と振替加算 


振替加算を受けるためには、以下の3つの条件を満たさないといけません。 


  1. 生年月日が1926(大正15)年4月2日から1966(昭和41)年4月1日までの間 
  2. 妻(夫)が老齢基礎年金の他に老齢厚生年金や退職共済年金を受けている場合は、厚生年金保険および共済組合等の加入期間がトータルで240月未満である 
  3. 妻(夫)の共済組合等の加入期間を除いた厚生年金保険の35歳以降の(夫は40歳以降の)加入期間が一定の水準未満である 


 なお、3については生年月日により扱いが異なるので、以下の表を参考にしてください。 




引用元:加給年金額と振替加算


また、振替加算の額は年齢により異なります。金額の決まり方のルールは以下の通りです。 


  • 1986(昭和61)年4月1日時点で59歳以上であれば、配偶者加給年金額と同額の223,800円 
  • それ以後年齢が若くなるごとに減額され、1986(昭和61)年4月1日時点で20歳未満であればゼロになる 


 個々の金額は日本年金機構のWebサイトで確認できます。 

メリットや注意点

メリット

加給年金のメリットとして「条件を満たす家族さえいれば、簡単な手続きで受け取れること」が挙げられます。 


以下の書類を準備して、年金事務所や年金相談センターに届け出をしましょう。


  • 受給権者の戸籍抄本または戸籍謄本(記載事項証明書)※1 
  • 世帯全員の住民票の写し(続柄、筆頭者が記載されているもの)※1 
  • 加給年金額の対象者(配偶者や子)の所得証明書、非課税証明書のうち、いずれか1つ(加算開始日からみて直近のもの) 

※1:加算開始日より後に発行されたもので、かつ提出日の6ヵ月以内のもの 


注意点

一方、注意点もあります。 まず、年金の繰り下げ受給を選択した場合、年金の支給が開始されるまでは、加給年金が受け取れなくなります。 


また、加給年金の受給権者が65歳以上になった時点で、対象となる配偶者が59歳以下であれば、国民年金保険料を負担しなくてはいけません。 


配偶者が第2号被保険者だったとしても65歳になった時点で外れるため、配偶者の年金区分も第3号から第1号に変更になるためです。

支給停止の規定が見直される


実は、加給年金の扱いに関し、2022年4月に大幅な変更がありました。 端的にいうと、加給年金の支給停止の仕組みが変わっています。 従来の制度から、何がどう変わったのかについて、解説しましょう。

改正内容

これまで、加給年金に関しては、以下の扱いがなされていました。 


  • 妻(夫)に老齢・退職年金が一部でも支給されている場合:夫(妻)は加給年金を受け取れない 
  • 妻(夫)の老齢・退職年金が全額停止されている:夫(妻)は加給年金を受け取れる 


しかし、2022年4月1日からは、妻(夫)に老齢・退職年金を受け取る権利がある限りは、全額停止されている場合でも、加給年金は受け取れなくなっています。 


このような見直しに至った経緯にも触れましょう。 従前における加給年金の扱いに関しては合理的でないと批判があったのも事実です。


簡単に言うと、それなりに収入があるから老齢・退職年金が全額停止されます。 それなりに収入がある世帯が受け取れて、そうでない世帯が受け取れないのは、制度として不合理です。 本来であれば、収入が少ない世帯から優先的に受け取るべきでしょう。 今回の改正には、このような不合理を解消する側面もあります。  


例外もある

理論上は、2022年3月までは加給年金を受給できていた世帯が、2022年4月からは急に受け取れなくなることはありうるでしょう。 しかし、混乱を防ぐために経過措置が設けられています。 


以下の図にもあるように、2022年3月時点で既に加給年金が支給されていたなら、2022年4月以降も引き続き支給されると考えましょう。



引用元:加給年金額と振替加算


なお、厳密には以下の3つの条件に当てはまるなら引き続き受給することが可能です。 


  1. 2022年3月時点で、本人の老齢厚生年金または障害厚生年金に加給年金が支給されていた 
  2. 2022年3月時点で、加給年金額の対象者である配偶者が、厚生年金保険の被保険者期間が240月以上ある老齢厚生年金等の受給権を有している 
  3. 2の老齢厚生年金等が全額が支給停止されている  

制度は変わりやすい!定期的にライフプランを見直そう


年金制度は複雑であるうえに、制度の改正も頻繁に行われています。 今回紹介した加給年金のように「これまでは受け取れたけど、これからは受け取れなくなる」という変更も多いです。 


現時点で、自分たちはどれぐらい年金を受け取れるのか、正確に知るためには「現時点での情報」にアップデートしていきましょう。 そのためには、定期的にライフプランを見直すのがおすすめです。