この記事を読んで欲しい人
- 特別支給の老齢厚生年金の仕組みがわからない人
- 特別支給の老齢厚生年金を受け取る予定の人
- 働きながら特別支給の老齢厚生年金をもらえるのか知りたい人
- 特別支給の老齢厚生年金に収入制限があるのかわからない人
内容をまとめると
- 会社員として60歳以降も働いている場合の収入によって特別支給の老齢厚生年金の額が減額される
- 65歳未満の収入制限が変更となり、65歳以上と同水準になった
- 働きながら年金を受け取る場合、年金が全額支給停止になることもある
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特別支給の老齢厚生年金をもらためにはいくつかの条件があります。年収が高い人は特別支給の老齢厚生年金が減額されたり、もらえないこともあります。2022年4月の収入制限廃止で変わったこと、特別支給の老齢厚生年金の支給額についてわかりやすく解説します。
監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 特別支給の老齢厚生年金をもらえない人や収入制限の廃止や支給額を解説!
- 特別支給の老齢厚生年金とは?
- 特別支給の老齢厚生年金をもらえない人は?
- 年収によっては特別支給の老齢厚生年金が支給されないことも
- 特別支給の老齢厚生年金の収入制限は在職老齢年金に関連する!
- 2022年に収入制限廃止!65歳未満の人も月収50万円以上で減額調整
- 働きながらだと特別支給の老齢厚生年金はもらえない?
- 働きながら特別支給の老齢厚生年金をもらえるが、減額される
- 働きながら特別支給の老齢厚生年金を受給する場合の支給額
- 特別支給の老齢厚生年金の収入制限に関するQ&A
- ①個人事業主は特別支給の老齢厚生年金の収入制限が適応される?
- ②厚生年金脱退時に収入制限なく比例報酬部分を受給できる場合手続きは必要?
- 特別支給の老齢厚生年金をもらえない人に関するまとめ
特別支給の老齢厚生年金をもらえない人や収入制限の廃止や支給額を解説!
特別支給の老齢厚生年金は、生年月日など一定の条件を満たした方がもらえる年金で、老齢厚生年金」とは異なります。
収入が高い人は特別支給の老齢厚生年金をもらえず、働いている人は減額支給されています。
しかし、2022年の制度改正で特別支給の老齢厚生年金における収入制限が廃止されました。
今回は、特別支給の老齢厚生年金に関する、以下の4つのことについて解説していきます。
- 特別支給の老齢厚生年金をもらえない人
- 特別支給の老齢厚生年金の収入制限と在職老齢年金の関係
- 働きながら特別支給の老齢厚生年金はもらえるのか
- 特別支給の老齢厚生年金の収入制限に関するよくある質問
この記事を読んでいただくと、これから年金を受け取る予定の方や、特別支給の老齢厚生年金を受け取れるか知りたい方の参考になります。
ぜひ、最後までお読みください。
特別支給の老齢厚生年金とは?
特別支給の老齢厚生年金とは、一定の条件を満たした方が60歳から64歳までの間にもらう厚生年金のことです。
受給資格年齢(特別支給の老齢厚生年金を受けとれる年齢)は、次のように生年月日に応じて決められており、60歳から64歳の間に支給されます。
- 60歳支給:昭和16年4月2日〜昭和28年4月1日生まれ(男性の場合)
昭和21年4月2日〜昭和33年4月1日生まれ(女性の場合) - 61歳支給:昭和28年4月2日〜昭和30年4月1日生まれ(男性の場合)
昭和33年4月2日〜昭和35年4月1日生まれ(女性の場合) - 62歳支給:昭和30年4月2日〜昭和32年4月1日生まれ(男性の場合)
昭和35年4月2日〜昭和37年4月1日生まれ(女性の場合) - 63歳支給:昭和32年4月2日〜昭和34年4月1日生まれ(男性の場合)
昭和37年4月2日〜昭和39年4月1日生まれ(女性の場合) - 64歳支給:昭和34年4月2日〜昭和36年4月1日生まれ(男性の場合)
昭和39年4月2日〜昭和41年4月1日生まれ(女性の場合)
特別支給の老齢厚生年金をもらえない人は?
次のすべての条件を満たさないと、特別支給の老齢厚生年金はもらえません。
- 昭和36年4月1日以前に生まれた男性であること
- 昭和41年4月1日以前に生まれた女性であること
- 老齢基礎年金の受給資格期間が10年以上あり、厚生年金保険か共済年金に1年以上加入していたこと
- 60歳から64歳までの受給資格年齢であること
受給資格のある方には、誕生日の3ヶ月前に「年金請求書」が送られてきますので、手続きをして年金を受けとりましょう。
また、上記の要件を全て満たしていたとしても、減額された年金を受けとるか人もいれば支給されない人もいるため注意が必要です。
例えば、一定の年収がある人は特別支給の老齢厚生年金をもらえません。
ここからは、特別支給の老齢厚生年金がもらえなくなる年収の基準額について解説します。
年収によっては特別支給の老齢厚生年金が支給されないことも
60歳以上で厚生年金に加入しながら働くと、特別支給の老齢厚生年金が支給停止されることがあります。
この仕組みを在職老齢年金制度と言います。
年金が支給停止されるのは、年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以上の場合です。
基本月額とは一ヶ月当たりの年金額を指します。また、総報酬月額相当額とは、一ヶ月当たりの給料と賞与を足した額です。
一ヶ月の年金額と給料の合計が50万円以上になると、50万円を超える額の2分の1が支給停止され、全額停止される場合もあります。
以下の表から受け取れる年金額の目安を知ることができます。
一ヶ月の年金額 12万円 | 一ヶ月の年金額 14万円 | |
---|---|---|
一ヶ月の給料 25万円 | 12万円 | 14万円 |
一ヶ月の給料 30万円 | 12万円 | 14万円 |
一ヶ月の給料 35万円 | 12万円 | 13万円 |
一ヶ月の給料 40万円 | 9万5,000円 | 10万5,000円 |
例えば、毎月の年金額が14万円で、給料が40万円のケースでは、毎月2万円の年金が減額されます。
つまり、収入が高くなるほど受け取れる年金額が少なくなると言えます。
特別支給の老齢厚生年金の収入制限は在職老齢年金に関連する!
特別支給の老齢厚生年金とは、老齢基礎年金の受給資格期間が10年以上あり、老齢厚生年金に1年以上加入していた60歳〜64歳の方が受け取れる制度です。
70歳未満の方は、定年後も厚生年金の制度がある会社で働けば、60歳から年金を受け取っていても厚生年金に加入しなければいけません。
つまり、60歳以降も働く人は年金と給料の両方を受け取るとることになります。
この特別支給の老齢厚生年金の制度と関連し、2022年4月に制度改正されたのが「在職老齢年金制度」です。
「年金と給料の両方を受け取る高齢者」と「年金のみ受け取る高齢者」の間には、収入の差ができてしまいます。
不平等を防ぐため、基本月額と総報酬月額相当額の合計が一定額を超える場合、年金額を減額すると定めたのが在職老齢年金です。
在職老齢年金は老齢厚生年金に加入する公務員や会社員が対象で、老齢基礎年金に加入する自営業者やフリーランスは対象外です。
2022年3月まで、65歳未満では28万円を超えると、65歳以上では47万円を超えると年金の一部もしくは全額が支給停止されていました。
65歳未満の「28万円以下」という収入制限が改正され、65歳以降の「50万円以上」と同額になりました。
2022年に収入制限廃止!65歳未満の人も月収50万円以上で減額調整
お伝えしたように、2022年3月までの年金の支給停止基準は65歳未満は28万円、65歳以上は47万円と差がありました。
2022年4月からは、65歳未満の方も、月収50万円を超える額について減額もしくは全額支給されることになっています。
基本月額が10万円で総報酬月額相当額が45万円の場合、支給停止される額は次のように求められます。
支給停止額=(10万円+45万円ー50万円)×1/2×12=30万円
上記の計算で算出された金額は「支給停止となる年金の年額」に当たりますので 月額を求めると(12で割った金額)25000円となります。
この収入制度廃止の背景には、「退職後も働き続けたいという人々の労働意欲を下げない」という目的があります。 もともと、60歳以降会社員として働き続けた場合は厚生年金は一切受け取ることができないという制度内容だったのですが、収入制限が廃止されたことで「年金が減るから」と仕事をセーブしていた人も、一定の年金をもらいながら働けるようになりました。
働きながらだと特別支給の老齢厚生年金はもらえない?
結論から言うと、会社員としての給与収入と年金額の合計が基準額以下なら、働きながら特別支給の老齢厚生年金をもらえます。
しかし、働きながら年金を受け取るには、毎月の給料と年金額の合計が50万円以下という条件を満たさなければいけません。
また、給料と減額された年金をもらっていた人が65歳になるまでに退職して再就職しない場合は、退職月の翌月から年金が全額支給されます。
「働きながらだと年金が減額されるから手続きをしなくなてもいいだろう」と思われる方もいます。
しかし、特別支給の老齢厚生年金の請求が65歳を過ぎてからになってしまうともらえる額が減ってしまいます。
年金額が減ってしまっては勿体ないので、請求手続きを忘れないようにしましょう。
働きながら特別支給の老齢厚生年金をもらえるが、減額される
65歳になるまで働いている高齢者は、年金と給料の両方を受けとることができますが、年金は減額されます。
この年金は、老齢基礎年金の受給資格期間10年を満たし、老齢厚生年金に1年以上加入した60歳〜64歳の人に支給される特別支給の老齢厚生年金です。
厚生年金の仕組みがある会社に勤めると、70歳になるまでは厚生年金に加入しなければいけません。
つまり、年金と給料をもらいながら、厚生年金保険料を納めるということになります。
しかし、「年金のみ受け取る高齢者」と「年金と給料を受け取る高齢者」では、収入に差が出てしまいます。
この不平等を公平にするためにできたのが、在職老齢年金制度です。
在職老齢年金制度によって、65歳未満の働く人は給料が50万円を超えると、年金額が減額されることになっています。
ここで気になるのは、年金をもらいながら60〜64歳になるまで払った厚生年金保険料は年金額に反映されないのかということです。
特別年金をもらいながら払った保険料は、65歳以降にもらう老齢厚生年金額に反映されます。
つまり、納めた保険料の分、特別支給の老齢厚生年金の額が増えるということではありません。
働きながら特別支給の老齢厚生年金を受給する場合の支給額
年金受給者の報酬や賞与、受給開始年齢までの期間をもとに特別支給の老齢厚生年金の額は計算されています。
次の表のように、働きながらもらえる特別支給の老齢厚生年金の額は、毎月の給料と年金をもとに決められています。
基本月額 12万円 | 基本月額 14万円 | |
---|---|---|
総報酬月額相当額 30万円 | 全額支給 | 全額支給 |
総報酬月額相当額 35万円 | 全額支給 | 全額支給 |
総報酬月額相当額 40万円 | 11万円 | 12万円 |
総報酬月額相当額 45万円 | 8万5,000円 | 9万5,000円 |
例えば、毎月の年金額が14万円の人が給料35万円をもらって働くと、年金は全額支給されますが、給料が45万円になると4万5,000円減額されます。
なお、目安として給料が60万円を超えると年金が全額支給停止されます。
つまり、それほど収入が高くなければ、働きながら年金をもらうことができます。
特別支給の老齢厚生年金の収入制限に関するQ&A
ここまで、特別支給の老齢厚生年金の収入制限の廃止や支給額についてお伝えしてきました。
しかし、年金制度は複雑で「こういった場合はどうなの?」という疑問がある方も多いと思われます。
ここでは、特別支給の老齢厚生年金の収入制限に関して寄せられた次の質問にお答えします。
- ①個人事業主は特別支給の老齢厚生年金の収入制限が適応される?
- ②厚生年金脱退時に収入制限なく比例報酬部分を受給できる場合手続きは必要?
このQ&Aを参考に、年金の収入制限について深く理解していきましょう。
①個人事業主は特別支給の老齢厚生年金の収入制限が適応される?
特別支給の老齢厚生年金がもらえるのは次の要件を全て満たした人です。
- 昭和36年4月1日以前に生まれた男性であること
- 昭和41年4月1日以前に生まれた女性であること
- 老齢基礎年金の受給資格期間が10年以上あり、厚生年金保険か共済年金に1年以上加入していたこと
- 60歳から64歳までの受給資格年齢であること
特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金に加入したことのある公務員やサラリーマンが受給できるものです。
したがって、厚生年金保険料を支払ったことのない個人事業主や自営業者には、収入制限がありません。
個人事業主は厚生年金保険に加入することができず、国民年金保険に加入することがほとんどです。
厚生年金保険は会社に雇われているサラリーマンや公務員が利用できる制度だからです。
ただし、会社から独立した人が個人事業主となり法人化した場合は、事業主も厚生年金保険に加入します。
法人化すると、会社(法人)分の保険料を会社が、個人の保険料を自分が負担することになります。
「全額自分で負担するのは負担が大きい」と思われるかもしれませんが、会社の保険料も個人の保険料も税制優遇を受けられるので、それほど負担は大きくなりません。
②厚生年金脱退時に収入制限なく比例報酬部分を受給できる場合手続きは必要?
厚生年金加入者が会社を退職し、収入制限なく働いた場合でも、請求手続きをします。
請求手続きには次の書類が必要です。
- 年金請求書
- 戸籍謄本
- 住民票
- 年金受給者名義の通帳
- 配偶者や子どもとの関係がわかるもの
戸籍謄本の提出は、年金事務所にマイナンバーを登録している人は原則不要です。
また、受給者の家族構成や雇用保険に加入したことがあるかなどによって、他の書類が必要なケースもあります。
60歳〜64歳までの受給開始年齢になったときに請求しないと、特別支給の老齢厚生年金はもらえません。
もし請求し忘れていたとしても、65歳になるまでに請求手続きをすれば、それまでの特別年金を一括で受け取ることができます。
65歳以降に請求手続きをすると、一ヶ月遅れるごとに受け取れる特別年金の額が減っていきますので注意しましょう。
また、厚生年金に加入していた人が退職した場合、会社を退職後に自営業者として働く場合は、国民年金に切り替える手続きも必要です。
特別支給の老齢厚生年金をもらえない人に関するまとめ
ここまで特別支給の老齢厚生年金をもらえない人について解説してきました。
この記事のポイントをまとめると、
- 特別年金の老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給資格期間を満たし、老齢厚生年金に1年以上加入していた60歳〜64歳までの人がもらえる
- 年金と給料の合計が47万円を超えると年金額が減額される
- 2022年4月から、65歳未満の人も65歳以上と同じ基準額47万円以上で調整された
- 個人事業主は特別支給の老齢厚生年金の収入制限を受けない
- 厚生年金加入者が退職したとき、収入制限なく働いても年金請求手続きをする。
年金制度は複雑ですが、自分が受け取るものですからしっかり理解しておきたいですよね。
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