給与の手取り額が減る?雇用保険料、春からまた引上げへのサムネイル画像

雇用保険の料率が来春から引上げられることが発表されました。2022年10月に0.2%引き上げられた雇用保険料率が来春からさらに0.1%引き上げられます。今回の記事では、引上げの背景や現行と変更後の比較を紹介していきます。

この記事の目次

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雇用保険料が2023年4月から引上げされます

2023年4月から雇用保険料の料率が引上げられることが厚生労働省から発表されましたが、そもそも雇用保険とは何のことなのでしょうか。


雇用保険とは、労働者と事業主によって負担されている保険料や国費で成り立っている失業雇用継続等に関する保険の制度のことです。


労働者が失業したときや子どもを養育するための休業をしたときに、一定の条件を満たすことで失業給付育児休業給付を受けられます。


雇用保険は雇用維持のために事業主に支払われる雇用調整助成金や、失業給付などに充当されています。


会社員は、給与や賞与から雇用保険料が天引きされて手取りの収入となっているため、雇用保険料が引上げされることで、手取り収入が減ることになります。


来春から引上げがされる雇用保険について、詳しく見ていきましょう。

なぜ雇用保険が引上げされるのか


では、なぜ雇用保険料が引上げされるのでしょうか。


主な要因としては、新型コロナウイルスの感染拡大による財源不足が挙げられます。


2020年の年明け頃から日本で新型コロナウイルスの感染が広まりましたが、労働者の失業などが急増することを防ぐために事業主に雇用調整助成金が支払われました。


雇用調整助成金とは、新型コロナウイルス感染症の影響によりやむを得ず事業の縮小をした場合に、従業員の雇用を維持するために休業手当などの一部を助成する制度を指します。


この雇用調整助成金と、新型コロナウイルスの影響で失業してしまった人などに対する失業手当は雇用保険から支払われています。


今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、積み立てていた雇用保険料の残高が底をついてしまったため、一定水準まで戻すために雇用保険料の引上げが決定しました。

雇用保険の現行と変更後の比較

引上げが決定した雇用保険ですが、現行と変更後ではどのように引上げられるのでしょうか。


現行と引上げ後で比較してみましょう。

現行引上げ後
労働者負担0.5%0.6%
事業主負担0.85%0.95%
雇用保険料率1.35%1.55%

(参照:厚生労働省)


2023年4月以降の雇用保険料率については厚生労働省のホープページで更新はされていませんが、労働者と事業主の負担がそれぞれ0.1%引上げられる予定です。


ちなみに、現行の雇用保険の料率になったのは2022年の10月からで、それ以前は労働者の負担は0.3%でした。


2022年になってから0.2%引上げられ、そのまた半年後に0.1%引上げられることになります。


つまり、2022年4月から比較をすると雇用保険の料率は0.3%引上げられていることになります。


1年間でこれだけ負担が増えるのは労働者にとっては痛い出費ですよね。


0.1%の引上げがされることで、具体的に労働者の負担がどれくらい増えるのか、次章で解説します。

どれくらい負担が増えるのか、収入別に解説

では、雇用保険料率が0.1%引上げられることによってどれくらいの負担が増えるのか、収入別に解説します。


現行と引上げ後の雇用保険料の比較を見ていきましょう。

現行(0.5%)引上げ後(0.6%)
月収20万円1,000円1,200円
月収30万円1,500円1,800円
月収40万円2,000円2,400円
月収50万円2,500円3,000円
月収100万円5,000円6,000円


月収30万円の人にとって、毎月の負担は300円増えることになり、年間では3,600円負担増になります。


2022年10月の引上げ前から比較すると、料率は0.3%引き上げられることになるため、毎月900円の負担増で、年間では差額が1万円を超えます。


つまり、この1年で労働者の負担が年間1万円増えることになります。


2022年から物価上昇や光熱費の上昇が続いているため、家計の負担が増えている中で1万円の負担増は痛い支出となります。


毎月の負担額は数百円の違いかもしれませんが、今後また引上げられる可能性なども考慮すると、決して見逃せない金額となっていくでしょう。

まとめ

今回の記事では、雇用保険の引上げについて紹介しました。


現行と来春の比較で言えば労働者の負担は0.1%増ですが、2022年4月から比較すると0.3%増となります。


その背景としては新型コロナウイルスの感染拡大によって、雇用調整助成金失業手当の給付が急増し、積み立てていた雇用保険から支払われたことが大きな要因です。


今後も雇用継続のための政策や、失業手当の給付額が増加するようであれば、また雇用保険料率の引上げの可能性があるでしょう。


物価上昇や光熱費の高騰で家計の負担が増えている中で、労働者の負担が増えてしまうことになります。


そのため、国や自治体の政策で労働者の負担が増えても生活に影響が出ないように、日頃から貯蓄節約資産形成を進めておくことが大切です。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。