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生活保護を受けている人が妊娠した場合の費用はどうなるのでしょうか。この記事では、生活保護受給者が妊娠した場合の費用の支給について解説します。出産する際の費用に加え、妊娠中や出産後に支給される助成金についても紹介しているので、ぜひお読みください。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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生活保護受給中に妊娠したら出産費用や今後の生活費はどうなる?

こんにちは、マネーキャリア編集部です。


厚生労働省の調査では生活保護を受給している世帯は平成に入った段階では1%を下回っていましたが、平成30年度には1.6%まで増加しています。


生活保護を受給している状態で子供を持つことが出来ないと考えている世帯も多くいると思います。


そんな中、知り合いからこのような相談がありました。

生活保護を受給している状態で出産できる?
生活保護で出産費用を補助してくれる制度はあるの?

このように生活保護を受けている世帯では出産について前向きに考えることができていません。


この記事では

  • 生活保護を受けている妊婦
  • 生活保護を受けている出産希望者
に向けて妊娠をした際に受けることができる扶助についてわかりやすく解説していきます。
少しでも皆さんのお手伝いになれば幸いです。

妊娠中の生活保護受給者には出産扶助で出産費用が支給される

まずは「妊娠中の生活保護受給者が受けることができる扶助」について解説していきます。


公益社団法人 国民健康保険中央会調査では一般的な自然分娩の場合493,400円の費用が掛かることがわかっています。


この費用を生活保護受給者自身で負担をしようとすると大きな負担となってしまいます。

そんな生活保護受給者の負担を軽減するために扶助制度が設けられています。


支給される扶助は次の通りです。

  1. 出産するための費用や赤ちゃんの入院費
  2. 出産時の入院費用
  3. ガーゼ等の衛生用品費
  4. 出産の際に医療行為に掛かる費用
このように生活保護受給者には様々な扶助制度があります。
こちらでは一つ一つわかりやすく解説していきます。

①出産するための費用や赤ちゃんの入院費が支給される

最初は「出産するための費用」と「赤ちゃんの入院費用」についてです。

一般的に出産時に掛かる費用は次の通りです。

  • 分娩料
  • 新生児介補料

生活保護では、出産に必要となる費用についての扶助があります。
出産費用の中央値・扶助金額は次の通りです

費用(目安)扶助
分娩料250,000実費
新生児介補料51,5007,000/日
※分娩料の上限額は施設分娩295,000円、居宅分娩259,000円となる。

このように出産費用については現金支給となっています。

双子を出産する場合は分娩費用上限を2倍した金額が上限額となります。

双子を妊娠した際は事前に担当ケースワーカーに相談することをオススメします。

②出産時の入院費用が支給される

次は「出産時の入院費用」についてです。


出産をする際には出産後6日間程度入院することが多くなっています。


その際には食事・寝具等の費用を支払う必要があります。


この費用は約20,000/日となっており、生活保護受給者にとってはとても高額な費用です。


生活保護では入院費についても扶助制度があります。


この扶助制度は入院費用に対して実費現金支給となっています。


この扶助制度については注意点があり、個室対応を要望した際のベット差額については自己負担となります。


支給金額について不安がある場合は担当のケースワーカーに相談の上、病院に要望を伝えましょう。

③ガーゼ等の衛生用品費が支給される

次は「ガーゼ等の衛生用品費」についてです。


出産をする際にはガーゼ・包帯等の様々な衛生用品が必要となります。

この費用についても生活保護には扶助制度があります。


1回の出産に対して5,700円の現金支給を受けることができます。


1品1品は高くありませんが積み重なると大きな負担となりますので、扶助を受けることをオススメします。

④出産の際に医療行為が行われた場合は医療扶助の対象となる

次は「出産の際に医療行為に掛かる費用」についてです。


一般的に経膣出産を「正常分娩」といい、医療行為が伴う出産を「異常分娩」といいます。


「異常分娩」の代表例としては「帝王切開」があり、厚生労働省の調査では妊娠・出産の25%が帝王切開をしているというデータがあります。


「正常分娩」の場合は基本的に出産扶助で費用が賄えることが多いため問題とはなりませんが、「異常分娩」を行った際は医療費として多くの費用が必要です。


そんな生活保護受給者に対しては医療扶助で全額自己負担なしで出産をできるようになっています。


生活保護の医療扶助には厚生労働省が指定した「生活保護法指定病院機関」でなければ受けることができない規定となっていますので注意が必要です。


妊娠・出産をする病院が生活保護法指定病院機関か確認するためには最寄りの福祉事務所に事前に連絡することで確認できます。

出産後に不安を残さないように事前に確認をしておきましょう。

注意点:生活保護受給者に出産一時金は支給されない

最後に「出産一時金」について注意点を紹介します。


「出産一時金」とは健康保険に加入している場合に支給される一時金です。


多くの生活保護受給者は「出産一時金」支給されると勘違いをしている場合がありますが、健康保険に加入していない場合は支給を受けることができません。


現状では多くの生活保受給者は健康保険に加入しておりません。


自身が健康保険に加入しているか確認する方法は「健康保険証」を持っているかで確認できます。


「健康保険証」を持っていない場合は健康保険に未加入なので、妊娠・出産費用については生活保護で扶助を受けることになります。


生活扶助の支給額等は妊娠時に担当のケースワーカーに相談することをオススメします。

妊娠や出産をしても生活保護は継続され受給額も増える!

次は「妊娠・出産後の生活保護受給額」について解説していきます。

一般的に妊娠・出産をした場合には「検査費用・通院交通費・育児費用」等の様々な出費が増えます。

生活保護受給者にとっては少しの費用負担が大きな負担となってしまいます。

そんな心配を少しでも軽減するために生活保護受給額を加算する次のような制度があります。

  1. 妊婦加算(妊娠中)
  2. 産婦加算(出産後)
  3. 児童養育加算(出産後)
  4. 生活扶助(子供分)
このように多くの扶助制度があり、妊娠・出産が大きな負担とならないようになっています。
こちらではわかりやすく1つ1つ易しく解説していきます。

①【妊娠中】妊婦加算の対象となる

最初は「妊娠中の妊婦加算」について解説します。


妊婦加算は生活保護受給者が妊娠した場合に生活保護受給額に加算される制度です。


この加算は妊娠が発覚した翌月から加算された額を受給します。


妊婦加算額は次の通りです。

級地別妊娠6ヶ月未満妊娠6ヶ月以上
1・2級地9,130円13,790円
3級地7,760円11,720円

このように級地・妊娠月数によって支給額が異なります。

また、妊婦加算は「人工妊娠中絶・出産・死産」によって加算が停止されます。


妊娠したことによる加算開始、人工妊娠中絶・出産・死産による加算停止は届出が必要となります。

ケースワーカーに相談の上、遅延なく届出をするようにしましょう。

②【出産後】産婦加算の対象となる

次は「出産後の産婦加算」について解説します。
産婦加算とは生活保護受給者が出産した場合に母体の保護・回復のための栄養補給を目的として加算される制度です。
産婦加算額は次の通りです。
級地別支給額
1・2級地8,480
3級地7,210
このように級地別に加算額が設定されています。

産婦加算は出産をした月から加算され、支給金については次の通り定められています。
  • 専ら母乳によって乳児を育てる場合・・・・・6ヶ月
  • その他人工栄養によって乳児を育てる場合・・3ヶ月
「専ら母乳によって」とは人工ミルク等の使用率が20%未満で母乳による保育を行なっている場合をいいます。
この割合の判断は助産師・保険師の意見を聴取し、生活保護機関が決定します。


また、妊娠4ヶ月以降に「人工妊娠中絶・死産」となった場合は3ヶ月間産婦加算が行われます。  

これは妊娠中・手術をおこなった際に消耗した体力を回復することを目的として加算されます。


産婦加算は場合によって支給機関・支給額が異なりますので、事前にケースワーカーに相談をして支給時のシミュレーションを行なってみましょう。

③【出産後】生活保護費に児童養育加算が適用される

次は「児童養育加算」について解説します。


児童養育加算とは生活保護受給者が児童を育てる際に必要となる費用の負担が大きくならないように受給額を加算する制度です。


児童養育加算額は次の通りです。

年齢加算額
第1•2子3歳未満11,820円
第1•2子3〜18歳10,190円
第3子以降
12歳未満11,820円
第3子以降12〜18歳10,190円

このように子供の数・年齢によって加算額が異なります。

どのタイミングではどのぐらいの加算額があるか事前に確認しましょう。


児童養育加算について確認するべき点は

  • 子供が戸籍から転出した場合は児童養育加算が停止される
  • 高校に入学していない場合でも18歳未満であれば加算額を受給できる
です。

児童養育加算は子供を育てる際には必ず必要となる制度なので担当ケースワーカーに相談の上、遅延なく手続きを進めていきましょう。

④【出産後】子供の分の生活扶助が加算される

次は「子供分の生活扶助」について解説します。


子供と生活している際は先ほどの児童養育加算を受けることができますが、基礎生活費が上昇した分の生活扶助を受けることができます。


1人家族が増えただけでも多くの生活費が掛かってきます。

この負担を軽減するために生活扶助が行われます。


この計算式は

  • 居住地の級地
  • 家族構成
  • 家族の年齢
等によって計算されます。

生活の負担を少しでも減らすために担当ケースワーカーに相談の上、生活保護受給額を確認していきましょう。

生活保護受給者が妊娠した際の注意点は?


次は「生活保護受給者が妊娠した際の注意点」について解説していきます。


生活保護受給者が妊娠することによって多くの費用が必要となり、その費用に対して扶助制度があります。

扶助制度は少し複雑になっているので次のような点に注意が必要です。

  1. 申請しないと助成金が支給されない
  2. 相手の収入・結婚の有無によって生活保護が継続できない
  3. 自治体・国の助成金を利用すると収入認定される場合がある
このように様々な注意点がありますので、こちらでは1つ1つ詳しく解説していきます。

①申請しないと助成金が支給されない場合がある

まずは「申請しないと助成金が支給されない」です。


生活保護の扶助・加算を受ける場合には福祉事務所で申請をしなければなりません。


申請を忘れてしまうと受け取れたはずの助成金・扶助を受けることができなくなります。


自身でどのように申請すれば良いかわからない場合は担当ケースワーカー・福祉事務所窓口に伺い、申請の仕方を教えてもらいましょう、

②相手の収入や結婚の有無によって生活保護の継続が困難になる

次は「相手の収入・結婚の有無によって生活保護が継続できない」です。


生活保護は「国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する」ための制度です。


彼氏と同棲している・結婚を指定場合では相手に収入がある場合は生活保護を受けることはできません。


その事実を担当ケースワーカーに告げずに隠していた場合は「不正受給」となり、刑法による罰則・受け取った生活保護費の返還命令を受けます。


そのようなことにならないように収入を得ている相手と同棲・結婚をした場合はすぐに副次事務所に生活保護の停止申請をするようにしましょう。

③下手に自治体や国の助成金を利用すると収入認定される場合がある

次は「自治体・国の助成金を利用すると収入認定される場合がある」です。


生活保護受給者に生活保護受給額以外に収入がある場合は他に収入があるとして「収入認定」されることになります。


この収入認定には公的助成金も含まれており、受給することで生活保護の受給額減額・停止が行われる場合があります。


公的な助成金・手当には収入認定するもの・認定外のものがありますので助成金を受ける前には担当ケースワーカーに相談をすることがオススメです。

母子家庭には生活保護費に母子加算が適用される


生活保護受給者の中に「母子家庭」というケースがあり、母子家庭には母子加算をすることでより生活の負担を軽減する措置があります。


こちらでは母子加算について解説していきます。


母子家庭に支給される母子加算は次の通りです。

人数1人
2人3人以上
1級地同居20,300円
3,900円2,300円
2級地同居
18,800円3,600円2,200円
3級地同居17,500円3,300円2,000円
施設入所19,350円1,560円700円

このように居住地・児童数によって加算額が異なります。


母子加算を受ける際には次の注意点があります。

  • 母子家庭のみではなく、父母のどちらか一方のみで養育を行う場合に加算される
  • 父母の一方が1年以上の入院・懲役刑等で養育が行えない場合にも加算される
  • 施設入所とは戸籍上転出していない児童が障害者児童施設等に入所することをいう
このように実際に受給する条件があったにも関わらず受給できていない場合があります。
現在の状況を担当ケースワーカーに相談し、加算を受けることができるのであれば受給しましょう。

生活保護受給者が妊娠したが堕したい場合の費用はどうなる?

最後に「生活保護受給者が人工妊娠中絶をする際の費用」について解説します。


人工妊娠中絶には多くの費用が掛かるので生活保護受給者には大きな負担となってしまいます。


こちらでは生活保護受給者の人工妊娠中絶の不要負担について詳しく解説していきます。


生活保護受給者が受けることができる扶助・加算は次の通りです。

  • 医療扶助
  • 出産扶助
  • 妊婦加算
  • 産婦加算
このように様々な扶助・加算を受けることができますが、妊娠の月数によって異なりますので注意が必要です。

妊娠月数による扶助の利用は次の通りです。

妊娠22週以降の人工妊娠中絶は費用が自己負担となりますので注意が必要です。

また、4ヶ月以後に人工妊娠中絶をおこなった場合は「産婦加算」を受けることができますので、申請を忘れないようにしましょう。

まとめ:生活保護受給中に妊娠しても問題なく出産できる!

生活保護受給中の妊娠について解説していきましたがいかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは

  • 出産時の分娩・入院費用には扶助制度ある
  • 出産後にも生活保護の加算・扶助制度がある
  • 人工妊娠中絶をする際にも扶助制度がある
  • 人工妊娠中絶の扶助制度は月数によって利用制限がある
でした。

生活保護を受給時に妊娠をした場合には大きな不安があると思います。
この記事で皆さんが少しでも不安が和らぎ前向きになることが出来れば幸いです。

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