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生活保護を受けている人が結婚すると生活保護をやめる必要はあるのでしょうか。この記事では、生活保護受給者が結婚した場合に生活保護が打ち切りになるのかどうかについて解説しています。生活保護受給者同士の結婚や障害者との結婚も解説していますので、ぜひお読みください。

監修者「谷川 昌平」

監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー

株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。
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この記事の目次

生活保護受給者が結婚したら生活保護をやめる必要はある?


生活保護を受けている方も、一般の人と同じように、恋愛をして、結婚したい相手が見つかるときがあります。


そんなとき、結婚に踏み切った場合、これまで自分の生活を支えていた生活保護費は、どうなってしまうのだろう?


今まで通り保護費はもらえるのだろうか?


そんな不安をかかえてしまう人も、少なくないでしょう。


……結論から言うと、必ずしも生活保護を受けている方が結婚すれば、保護をうち切られるわけではありません。


生活保護を受けている方が結婚した場合、

  • 生活保護受給額が減る
  • 生活保護をうち切られる
  • 生活保護受給額が増える

以上の3点のケースがあります。


これについては、相手が生活保護を受けていない方、生活保護受給者、障害者などによって微妙に変わってきますので、以下に詳しく解説していきます。

結婚後の生活保護をやめるかは世帯収入によって決まる!


保護受給者が、結婚した場合、必ずどちらかの世帯に転入するようにうながされます。


その理由は、

  • 社会通念上、同居することが望ましい
  • それぞれの世帯で支給するよりも、生活保護費が少なくて済む(家賃や水道光熱費が一本化され、生活費が安くなるため)

からです。


世帯を同じくしたことによって、その世帯の収入が最低生活費を上回るか、下回るかによって、生活保護の継続うち切りが決定されます。


そのため、生活保護費を減額される方、うち切られる方、継続される方、増額される方の全部で4つのパターンが、結果として生まれます。


あくまでも、生活保護費は、世帯単位で支給の審査が行われ、決定されるからです。

  • 最低生活費=憲法第25条に保障されている、「健康で文化的な最低限度の生活を送るために必要な費用」のこと。居住地によって、物価や時給が異なることから、自治体ごとに変わるのが一般的である

①結婚・同居して世帯収入が多いなら生活保護は打ち切り

たとえば、結婚した相手が、生活保護を受けておらず、最低生活費以上の収入を得ている場合、自分が受けていた生活保護は、うち切られます。


今まで通り片方だけに、生活保護費が支給されるということはありません。


相手が、自分を扶養することができ、または相手に、ふたりを十分扶養できる親族がいる場合も、同様です。


その場合は、「生活保護を辞めるための辞退届」を提出しなければなりません。


これは、相手が生活保護受給者の場合も同じことが言えます。


ふたりとも生活保護受給者である場合、受給額の見直しが、また始めから行われます。


たとえば、前述したように、ふたりが一緒に住むことによって、家賃は一本化され、水道光熱費は減ります。


明らかに、月々にかかるお金(生活費)の額は減ってきます。


その結果、ふたりの収入を合算した額が、最低生活費を上回っていれば、生活保護は打ち切られます。


以上の理由として、生活保護は、世帯を単位として支給されるからです。


つまり、生活保護は個人で受けるものではなく、世帯として受けるものであると考えられるからです。


世帯として、生活保護受給の条件を満たしているかが、保護費を受けられるか、受けられないかの基準となるのです。

②結婚・同居して世帯収入が少ないなら生活保護は継続

まず、結婚するふたりが、ともに生活保護受給者である場合を説明します。


結論から言うと、生活保護が継続される可能性が高いですが、受給額が減る可能性も高くなります。


前述したように、生活保護を受けている者同士が結婚すると、もう一度保護の要件が見直されます。


新しい別の世帯として見直されるのです。


そして、結婚に伴って、家賃の一本化・水道光熱費の減少によって、月々の生活費は減ることになります。


生活保護は継続となりますが、生活費の減額を反映して、受給額は減額となるのです。


もちろん、ふたりの生活保護費の合算が、最低生活費を下回っていれば、そのままの保護費の額で継続となります。


次に結婚する相手が、生活保護を受けていない人の場合を、考えてみます。


もし、この相手が生活に困窮していて、最低生活費ぎりぎりの生活を送っていたとします。


そして、このふたりが結婚することによって、さらに生活が困窮することが、予想されたとします。

また、この相手には扶養してくれる三親等の親族がいません。


この場合、生活保護を受けていなかった方が、生活保護受給の申請をする必要があります。


保護の申請が認められれば、世帯として、生活保護の継続ということになります。

③別居の場合は相手に扶養能力がなければ生活保護は継続

生活保護を受給している夫婦でも、「離婚したい」、という夫婦があることはあり得ます。


離婚を前提として、別居している場合、基本的に生活保護の観点は、「世帯」で暮らしていけるかどうかが判断基準となるため、生活保護受給条件の


三親等に助けてくれる(扶養してくれる)人がいない


という条件に当てはまりますので、生活保護は継続されます。


ただし、身体が悪いわけではなく、健康的に働ける状態であれば、継続は止められる可能があります。

結婚後に同居して生活保護が存続される場合の3つの注意点


これについては、以下のようになります。


生活保護を受けている者同士の結婚の場合

  • 同一世帯となり、ふたりの生活保護費の合算が、最低生活費を下回っている

生活保護を受けていない相手と結婚する場合

  • その相手と暮らしても、困窮している生活が変わらないか、さらに悪化する(世帯の収入が最低生活費よりも低い)
  • 相手に、扶養してくれる三親等の親族がいない

①支給される生活保護費は減額される

ここでは具体的な金額をあげて、説明していきましょう。


生活保護を受けている二人が、結婚したあとの経過は次のようになります。


先述の通り、結婚すると、同一の世帯に転入することをうながされます。


初めに戻って、保護の見直しが行われます。


家賃の一本化や水道光熱費が減ることによって、月々の生活費が減ります。


例をあげますと、

  • 月々の生活保護費が15万円のふたりが結婚した 
  • 結婚前は、それぞれの世帯で15万円(計30万円)の保護費が必要であった 
  • 結婚によって、生活費が減額した 
  • 生活費の減額を反映して、生活保護費は、世帯として月20万円となった
  • 結果として、月10万円の保護費が浮くこととなった 
とこんな経緯をたどります。


生活保護は継続となりますが、生活費の減額を反映して、受給額は減額となります。


このように生活保護費を削減できるため、結婚した場合は、同居するようにうながされるのです。  


生活費が減るので、通常、生活レベルがそれまでと比べて、極端に下がるわけではありません。

②引っ越す場合は生活保護を再申請しなければならない

生活保護を受けている人は、保護の要件を満たしている限り、他市町村へ転居しても、引き続き生活保護を利用できます。


ただその場合、生活保護の移管(管理を移す)手続きが必要となります。


現在の住所地の福祉事務所に、転居の届け出をするとともに、移転先の福祉事務所似生活保護の申請をしなければなりません。


保護を受けられない期間が生じないように、両福祉事務所で相互連絡を密にする必要があります。


どのように手続きを進めたら、その保護の空白期間が生じないよう転居できるのか、両福祉事務所と連携して、うまく処理してもらうようお願いすることをすすめます。

③理由が結婚であるとき引っ越し費用は支給されない

結婚する場合は、離婚する場合と異なり、引っ越し費用が認められません。


引越し費用を支給してもらうには、一定の条件に当てはまらなくてはなりませんが、結婚だけでは、その条件を満たさないため、支給されません。


一応、敷金・礼金の戻りや世帯変更に伴う生活保護費の過払い金を、返還免除してもらうなど、引越し費用の一部を、別の形で支給してもらうことが、可能な場合もあります。


しかし、それらは、あくまでも担当ケースワーカーの判断によります。


一度、ご相談されることをおすすめします。


引っ越し費用の支給条件を確認したい方は、「生活保護を学ぼう」というメディアが参考になります。

生活保護受給者同士が結婚するとどうなる?


ここでは、箇条書きにしてみました。

  • 同一世帯への転入をうながされる(別居婚は認められていません)
  • 新しい世帯として、始めから保護を見直される
  • 特に世帯収入と生活費のバランスを調べられる
  • 最終的に、世帯収入と最低生活費の比較を行われる
  • たいていの世帯は保護費が減額される
  • 世帯収入が最低生活費を上回る場合→生活保護の打ち切り
  • 世帯収入が最低生活費を下回る場合→そのままの保護費で継続

結婚したどちらかが障がい者のときの生活保護について解説!


まず、結婚前に担当ケースワーカーに相談しておくべきです。


障害年金と生活保護の両方を受給できるときは、原則として障害年金の支給が優先します(他の公的扶助は、すべて生活保護に優先します)。


不足する分についてのみ、生活保護で補うことになります。


結婚後に、障害年金の額によっては、生活保護の受給額が変更になります。


生活保護受給者の配偶者に生活力があれば、生活保護はうち切りになる可能性もあります。


そのため、不正受給に該当しないように、ケースワーカーに相談が必要なのです。


なお、障害年金は、結婚にあたって、減額になることはありません。


生活保護は、あくまでも世帯として、生活できるかどうかを基準に判断されます。

ケースワーカーに結婚を報告する必要はある!


生活保護は制度が複雑で、受給できるかどうかやその額は、地域やケースワーカーの判断によって変わってきます。 


そのため、複雑な事情をもって結婚をする場合は、事前にケースワーカーに相談しておきましょう。


特に次の3つのケースの場合は、必ず担当ケースワーカーに相談しましょう。

  • 障害年金を受給している場合 
  • 妊娠を伴う場合
  • 結婚相手が外国人の場合

生活保護の不正受給に該当しないためにも必要なことです。

生活保護受給者が妊娠したらどうなる?


妊娠した場合も、生活保護は引き続き受け取ることができます。


そして妊娠することによって、様々な加算が追加されることにより、もらえる金額も増えることになります。 


妊娠出産、および子育て中に加算される金額は以下の通りです。 

  • 妊婦加算:妊娠期間中 
  • 産婦加算:出産後3~6ヶ月の期間中
  • 母子加算:出産後6ヶ月以降~18歳になるまで母子家庭で子育てをする場合(父子家庭も可)
支給額は住んでいる地域によっても異なります。


ただし条件によっ支給の有無、支給額は変わります。


妊娠~出産には大きな費用が必要となりますが、生活保護を受けている場合は各種制度を利用することで費用負担を抑えることが出来ます。以下の3つの制度になります。 

  • 妊婦検診の補助:妊娠中は妊婦検診として、産婦人科に定期的に通う必要があります。この際、自治体から検診補助券が交付される場合が多く、ほぼ自己負担なしに検診に通うことができます。申請が必要なので、妊娠が分かったら近くの地方自治体窓口に相談してみてください。ただし、妊娠かもと思って初めて病院に行く場合、初診料がかかるので注意が必要です。 
  • 出産扶助:生活保護の扶助のひとつで、出産にかかる費用について補助金の支給を受けることができます。25万円程度(双子の場合は2倍)の基準額と、最大8日間の入院費用実費、ガーゼ・包帯等の衛生用品の購入費として5,400円の合計額が支給され、40万円程度の金額が支給されます。
  • 入院助産:低所得世帯を対象とした補助制度で、自治体の指定する病院にて出産することを前提に、かかる費用の大半または全額を免除される制度です。 
これらの制度は、自治体によって内容が異なりますので、担当ケースワーカーに相談するか、自治体窓口に問い合わせをしてみましょう。


ところで、妊娠して結婚する場合は、妊娠していない結婚のときと同様、配偶者の状況によって生活保護の辞退、もしくは配偶者とともに生活保護の申請のどちらかになります。 


母子家庭になる場合は、生活保護が継続されます。ただし、子の父親がどのような状況か確認されるでしょう。


いずれにせよ、結婚の有無にかかわらず、生活保護を受けているときに妊娠した場合も、担当ケースワーカーに相談してください。

生活保護受給者が結婚でなく同棲した場合は?

同棲している状況であっても、生活保護の受給は可能です。


 ただし、結婚と同じく生活保護費の支給条件を満たしていることが必要です。


そして、世帯収入が最低生活費より低いことが条件です。


 このように困窮している生活状況であれば、生活保護を受けることができます。


ただし、生活保護は、あくまでも自立をうながす制度です。


就労して、収入が安定すれば、生活保護はそこで終了するという原則は、忘れないようにしてください。 


同棲相手に収入があることを隠して受給した場合、また、生活保護を受け始めてから、収入があるパートナーと同居を始めた場合は、不正受給にあたります。

生活保護受給者が母子家庭になったときは生活保護が継続される

離婚などにより、シングルマザーとして子どもを育てる場合、通常の生活保護に加えて、母子加算、および児童養育加算を受けることが出来ます。

  • 母子加算:ひとり親世帯(母子世帯、父子世帯等)の生活保護受給世帯に対して、子ども一人当たりにつき支給される加算です。18歳以下の子どもがいる場合は等しく受給できる補助金です。
  • 児童養育加算:子どもを育てる生活保護受給世帯と、一般家庭との間で教育などの面で不均衡が生まれないようにするための制度で、毎月10,000~15,000円の支援金を受け取ることができます。支給期間は義務教育期間の中学校卒業までです。

離婚した生活保護受給者の場合、元配偶者から「養育費」を受け取れることもあるでしょう。


原則として、養育費や児童扶養手当(ひとり親家庭の児童のために支給される)は、生活保護に優先します。


これらの金額の合計が、最低生活費を上回る場合は、原則として、生活保護を受けることはできません。


最低生活費に満たない場合は、その差額が支給されます。


養育費を受け取っている事実を隠して、生活保護を受けることは、不正受給に該当します。


それが発覚した場合、それまでの生活保護費の返還を求められることになります。

まとめ:結婚して生活保護を受けられるかは世帯収入で決まる!


いかがでしたでしょうか?


ここまで、生活保護を受けている方の結婚について、解説してきました。


この記事のポイントは、

  1. 生活保護を受けている方が結婚する場合、その相手によって、保護の継続・うち切り・増額が決まる傾向にある。
  2. なぜなら、それはふたりが同じ世帯を持つことであり、その世帯の収入によって、生活保護の存続が決まるからである。
  3. それは生活保護制度が、あくまで世帯単位で、基準を考えるからである。
  4. 最終的には、世帯収入と最低生活費とのかね合いで、保護の存続が決定される。
  5. 生活保護を受けている方の結婚については、微妙な問題を含むので、必ず担当ケースワーカーに相談するべきである。特に、相手が障害者や外国人、または自身が妊娠している場合は、なおさらのことである。
  6. 結婚に際して、転居する場合、その引っ越し費用や、転居先での生活保護の受給については、細則が定められている。
  7. 仮に離婚にいたることになり、それまでの別居生活についても、生活保護制度で定められている。
  8. 生活保護を受けている方が妊娠した場合や母子(父子)家庭になった場合でも、要件を満たせば、扶助が受けられる。
  9. 基本的に生活保護制度は、世帯収入と最低生活費とのバランスによって、処遇が決まると考えてよい。

生活保護制度と結婚、細かい規則が多くて分かりにくいかもしれませんが、基本は世帯収入と最低生活費との関係にいつも立ち返ります。


結婚をするのであれば、まず自分たちの世帯収入はどのくらいになるのだろう? 生活費はいくらかかるのだろう? というところから始めてみませんか?


それから、担当ケースワーカーに相談することも忘れずに。