
内容をまとめると
- 火災保険は、火災だけでなく自然災害にも備えられる
- 特約によって休業補償や賠償責任、地震に対する備えも可能
- 保険金は再調達価格で設定した方が事業に対する影響は少ない
- 安い保険料よりもニーズにあった補償を選ぶことが重要
- 法人向けの保険や事業に対するリスクを相談するならマネーキャリアがおすすめ
法人向けの火災保険とは、事務所や飲食店などで火災、落雷、風災、盗難などの被害により建物、設備等が損害を受けた際の、費用を補償する損害保険のことです。法人と個人では、契約形態が異なります。法人として火災保険を契約すると、損金参入ができるなどのメリットがあります。
この記事の目次
目次を閉じる飲食店などでの火災の発生件数と発生事例
もしも火災が起きてしまったときの損害は計り知れず、テナントなど賃貸で飲食事業をしていると賠償なども含めて、リスクに備えておかなければなりません。
東京消防庁「令和4年版 火災の実態」で発表されている、飲食店で起きた火災の発生件数は以下のとおりです。
飲食店の火災 | 発生件数 |
---|---|
令和元年 | 368 |
令和2年 | 244 |
令和3年 | 288 |
事例1:ラーメン店で発生した火災
新潟県糸魚川市で起きたラーメン店の大規模火災では、一般家屋を含め147棟もの木造建築物が焼損し、商店街が焼け野原となりました。
約3万㎡以上もの焼損床面積となった大火災は、ラーメン店が大型コンロの消し忘れによって出火したもので、17人が負傷したものの、幸いにも死者は出ていません。
当日は、強風によって風下の木造住宅や店舗に燃え移り、同時多発的に出火したことにより延焼は拡大し、出火から約30時間後に完全に鎮火することに成功したのです。
昭和初期に建築された木造建築物が多いものの、延焼区画にあたる約1割は、防火構造基準を満たす近年の建築物で、地域の特性柄によって大きな火災となったわけではありません。
周囲に木造建築がある場合、強風など天候が影響し、大規模化火災になりえることを教訓として備えなければならないのです。
事例2:キッチンカーから発生した火災
まだ記憶にも新しい沖縄で起きた火災は、高級リゾートホテル『リッツカールトン沖縄』の敷地内で起きました。
油の入った調理器具フライヤーを熱したまま、従業員がキッチンカーから離れたことが出火原因です。
プールサイドのキッチンカーから出火しましたが、幸いにも怪我人は出ず、キッチンカーの全焼で出火から約1時間後、消防車4台が出動し、消し止められています。
日中の高級リゾートホテルで起きた火災は、遠方から来た観光客にとっては忘れられない出来事となり、ニュースでも取り上げられたため、ホテル側にとっても大きな影響を及ぼしたと言えるでしょう。
消防車が出動した背景には、火事に気づき従業員が消火しようと試みましたが、油から発火した火を消し止められることもなく、119番通報に至ったということでした。
調理器具によっては、一気に燃え広がることも考えられるため、キッチンカーであっても火災に備えておくべきだと言えるでしょう。
法人向けの火災保険とは?
法人であるがために損害を受けたときに必要となる補償に備えた損害保険が、法人向け火災保険です。
様々な損害に備えられる特徴のある法人向け火災保険なら、事業を継続するうえで大きなリスクに備えるための補償があります。
事業を営む法人にとって、火災などによるリスクへ備えるためには、以下のようなものを対象としておかなければなりません。
- 店舗や工場、事業所など拠点となる建物
- 取り扱う商品や製品
- 事業をおこなうための設備など
- 休業せざるをえなくなった場合の損害
- 労災事故や賠償責任への備え
法人と個人の違いは?
火災保険は、法人向けと個人向けでは仕組みは似ていますが、補償される内容が異なります。
どちらも自然災害に加え、以下のような損害を受けたときに火災保険で補償されることになります。
- 火災や水害、落雷などの自然災害
- 自然災害による破損や水漏れ
- 当て逃げなど第三者からの損害
- 盗難
補償内容 | |
---|---|
個人向け | 現金や通帳、金品など以外の 生活を守るための補償 |
法人向け | 事業の存続に必要なもの 設備や什器、商品等 |
南海トラフ地震の可能性など、自然災害に備えるためには、火災保険の違いを知って必要な火災保険に加入しておくべきだと言えるでしょう。
法人向けの火災保険の保険対象
法人向け火災保険の特徴は、補償される対象が多いことですが、加入している法人は、意外にもすべてを把握できていないケースが多くあります。
リスクに備えて、せっかく法人向けの火災保険に加入していても、いざというときに活用できなければ意味がありませんよね。
- 建物や設備はどこまで補償されるのか
- 補償されないものはあるのか
法人向け火災保険では補償対象となるもの
幅広く補償される法人向けの火災保険では、主に4つの補償対象に分かれて、リスクに備えることができます。
4つの補償対象を一覧で確認してみましょう。
4つの補償 | 補償の対象 |
---|---|
建物 | 土地に定着している建物 (オフィスや工場、店舗など) |
設備や什器 | 屋内、屋外を問わず補償 (機械や器具、備品など) |
商品 | ・完成した商品や出荷予定の商品 ・副産物や副資材、原材料 |
製品 | ・完成した製品や出荷予定の製品 ・仕掛品や半製品 |
工場などでは、屋外に設置されている設備は、地面に固定されているものであれば、火災保険の補償対象となります。
たとえば、配達もおこなう飲食店で火災が起きたとき、隣接する車庫や自動車も含め、補償の対象は以下のとおりです。
- 建物である店舗
- 調理器具などの設備
- テーブルや椅子
- 調理済の食事や調理に使う材料
- 隣接する建物となる車庫
しかし、配達する車両や店舗に保管していた帳簿やお金などは、法人向け火災保険であっても補償の対象外となるので、注意しておきましょう。
補償されないものの代表例は、以下のとおりです。
- 自動車や船舶など
- お金や通帳、預貯金証書
- 設計書や契約書、帳簿、図案、データ、ソフトウェアなど
- 桟橋など海上の設備
- 動植物など
法人向け火災保険の補償内容
事業をしていると、予期せぬことが起こる場合もあり、自然災害を含めて様々なリスクに備える必要があります。
そんなときに必要となる、法人向け火災保険で補償内容は以下のとおりです。
損害の原因 | 補償内容 |
---|---|
火災や落雷、 爆発など | ・火災(失火・延焼・ボヤ)による損害 ・落雷による損害 ・爆発や破裂などによる損害 |
自然災害 | ・風災、雪災、雹災による損害 ・水災(洪水・土砂崩れ・高潮)による損害 |
事故 | ・電気的事故による損害 ・機械的事故による損害 |
水漏れ | ・給水設備の故障による損害 ・排水設備の故障による損害 |
騒擾や暴力行為など | 集団行動による暴力や破壊行為による損害 |
盗難 | 盗難届が受理された盗難による損害 |
飛来 | ・自動車や自転車の衝突により被った損害 ・飛来物の衝突による損害 |
不測かつ 突発的に起きた事故 | 予測できない事故で被った補償 |
法人向け火災保険に付帯できる特約
損害保険を取り扱う保険会社によって、法人向け火災保険に付帯できる特約は異なります。
必要に応じて検討すべき一般的な特約には、以下のようなものがあるので、十分な検討が必要です。
特約 | 補償内容 |
---|---|
地震など に関する補償 | 地震・噴火・津波が原因となり、 建物に損害が出たときに補償 |
修理など に対する補償 | 仮店舗の貸借費用や、復旧工事の 割増費用などを補償 |
休業損失 に対する補償 | 火災などによって休業する場合、 減収や人件費などの固定費、広告費などを補償 |
店舗の賠償責任 に対する補償 | 施設内で起こった事故、預かった物を損傷、 借用物件を焼失させた賠償などを補償 |
失火させたこと に対する お見舞補償 | 爆発や破裂、火災を起こしたことにより、 近隣へ損害与えた時のお見舞い費用を補償 |
残存物の 片づけ費用 | 損害を受けた物を片づけるための費用を補償 |
法人向け火災保険で支払われる保険金
火災が起きてしまったとき、どれくらいの保険金を法人名義で受け取ることができるのかは、保険の対象物に対する査定や評価により決まる保険金を、どのような算出方法で受け取る法人契約にしたのかによって異なります。
保険金を決める仕組みは2つの基準があり、加入時にはどちらかを選択しなければなりません。
- 再調達価格(新価)
- 時価
法人向け火災保険で保険金が支払われない場合
リスクに備えた法人向けの火災保険では、5つのケースで保険金が支払われないことが考えられます。
- 特約の補償に免責などが付帯されている場合
- 隙間風や雨の吹込みによる損害
- 老朽化など経年劣化による損害
- 設定している免責金額に至らない金額の損害
- 故意または重大な過失、および法令違反の場合
法人向け火災保険の保険料の相場
加入しようとする法人向け火災保険によって、保険料の相場は異なり、ニーズにより建物保険や特約の付帯によって、保険料に大きく影響します。
各損害保険会社ごとに保険料の設定基準が違うため、できるだけ多くの保険会社から見積もりを取り寄せて、比較することが大切です。
以下のような条件で法人向け火災保険に加入した場合、損害保険会社による保険料の違いをランキングで比較してみましょう。
- 所在地:東京都
- 建物:新築、木造、延べ面積100㎡、評価額2,000万円
- 物件利用目的:飲食店
- 物件の所有:法人名義(自己所有)
なお、補償内容は一般的な建物保険に加え、火災・風災・水災、盗難や水漏れ、破損などへの補償が含まれていると仮定しています。
損害保険会社 ランキング | 1年間の保険料 |
---|---|
A社 | 163,050円 |
B社 | 155,470円 |
C社 | 123,320円 |
D社 | 119,000円 |
E社 | 108,400円 |
保険料が高いA社では、基本補償に地震火災費用や失火見舞費用などが含まれていますが、保険料が安いE社では、火災や落雷、爆発などが基本補償となり、特約によって組み立てられる法人向け火災保険です。
このように、安い保険料を探すのではなく、ニーズにあった補償内容を選べるかどうかを、比較しながら検討すべきだと言えるでしょう。
法人向け火災保険のおける保険料の経理処理
法人契約となる火災保険の保険料は、経理処理する際に、経費として全額損金として算入することが可能です。
貯蓄性のない法人向け火災保険は、すべて掛け捨てとなっており、事業を継続するために必要な経費として認められています。
保険料を損金扱いすることで、法人税や消費税を算出するときに節税できるメリットがあるため、法人向け火災保険に加入した場合は、以下のような勘定科目で経理処理を行いましょう。
- 勘定科目:損害保険料
- 貸方および借方:支払った保険料の金額
法人向け火災保険の加入方法
法人向け火災保険に加入する場合、損害保険会社や保険代理店に問い合わせると、ニーズにあった補償内容を提案してもらうことができます。
しかし、加入を決定する担当者が、法人向け火災保険に対する知識を持っていなければ、補償内容と保険料を正しく比較することは困難だと言えるでしょう。
火災や自然災害によるリスクに備えるだけでなく、企業財産保険として法人向け火災保険を検討するなら、専門家に適切な補償内容を相談することがおすすめです。
マネーキャリアには、法人向けの保険や事業には不可欠なリスク対策の専門家がいるので、詳しい説明も含めて、無料で相談することができます。
事業リスクに備える法人向け火災保険は、専門家の中立な意見を取り入れながら加入内容を決めることができるので、保険会社や代理店とは違い、決まった商品だけを勧められることはないので安心して利用できるのです。
すでに加入している場合は保険の見直しがおすすめ
すでに法人向け火災保険に加入している法人は、大きな変化がない限り、補償内容を見直すことなく更新して継続しているケースが多くあります。
しかし、本当に加入している補償が適切なものとなっているのか、今一度確認してみましょう。
- 適切な保険金額か
- 補償の範囲と補償されない場合を把握できているか
- 時価による保険金額の場合は、適切な理由があるのか
- 免責金額は事業に大きな影響を与えないか
- 自己負担が増えた場合の対処はどうするのか
- テナントなど賃貸の場合は補償範囲が適切になっているか
- 賠償保険は他の保険と重複していないか
まとめ:法人向けの火災保険について
個人向けの火災保険とは違い、法人向け保険では5つの内容について、よく確認しておくことが大切です。
- 保険の対象
- 補償の対象
- 付帯できる特約
- 保険金額の設定
- 保険料や経理処理の際の勘定科目