法人向けの火災保険とは?個人との違いや補償内容等を徹底解説!のサムネイル画像

内容をまとめると

  • 火災保険は、火災だけでなく自然災害にも備えられる
  • 特約によって休業補償や賠償責任、地震に対する備えも可能
  • 保険金は再調達価格で設定した方が事業に対する影響は少ない
  • 安い保険料よりもニーズにあった補償を選ぶことが重要
  • 法人向けの保険や事業に対するリスクを相談するならマネーキャリアがおすすめ

法人向けの火災保険とは、事務所や飲食店などで火災、落雷、風災、盗難などの被害により建物、設備等が損害を受けた際の、費用を補償する損害保険のことです。法人と個人では、契約形態が異なります。法人として火災保険を契約すると、損金参入ができるなどのメリットがあります。

記事監修者「金子 賢司」

監修者金子 賢司
フィナンシャルプランナー

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。<br>以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP

この記事の目次

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飲食店などでの火災の発生件数と発生事例


もしも火災が起きてしまったときの損害は計り知れず、テナントなど賃貸で飲食事業をしていると賠償なども含めて、リスクに備えておかなければなりません。


東京消防庁「令和4年版 火災の実態」で発表されている、飲食店で起きた火災の発生件数は以下のとおりです。

飲食店の火災発生件数
令和元年368
令和2年244
令和3年288
酒場やビヤホール、中華料理店やレストランでの火災が目立ち、燃焼器具からの出火が多くなっているのです。

以下では、飲食店の火災について発生事例を紹介します。

事例1:ラーメン店で発生した火災

新潟県糸魚川市で起きたラーメン店の大規模火災では、一般家屋を含め147棟もの木造建築物が焼損し、商店街が焼け野原となりました。


約3万㎡以上もの焼損床面積となった大火災は、ラーメン店が大型コンロの消し忘れによって出火したもので、17人が負傷したものの、幸いにも死者は出ていません。


当日は、強風によって風下の木造住宅や店舗に燃え移り、同時多発的に出火したことにより延焼は拡大し、出火から約30時間後に完全に鎮火することに成功したのです。


昭和初期に建築された木造建築物が多いものの、延焼区画にあたる約1割は、防火構造基準を満たす近年の建築物で、地域の特性柄によって大きな火災となったわけではありません。


周囲に木造建築がある場合、強風など天候が影響し、大規模化火災になりえることを教訓として備えなければならないのです。


参考:糸魚川市ラーメン店の大規模火災

事例2:キッチンカーから発生した火災

まだ記憶にも新しい沖縄で起きた火災は、高級リゾートホテル『リッツカールトン沖縄』の敷地内で起きました。


油の入った調理器具フライヤーを熱したまま、従業員がキッチンカーから離れたことが出火原因です。


プールサイドのキッチンカーから出火しましたが、幸いにも怪我人は出ず、キッチンカーの全焼で出火から約1時間後、消防車4台が出動し、消し止められています。


日中の高級リゾートホテルで起きた火災は、遠方から来た観光客にとっては忘れられない出来事となり、ニュースでも取り上げられたため、ホテル側にとっても大きな影響を及ぼしたと言えるでしょう。


消防車が出動した背景には、火事に気づき従業員が消火しようと試みましたが、油から発火した火を消し止められることもなく、119番通報に至ったということでした。


調理器具によっては、一気に燃え広がることも考えられるため、キッチンカーであっても火災に備えておくべきだと言えるでしょう。


参考:沖縄のリゾートホテル内で出火

法人向けの火災保険とは?


法人であるがために損害を受けたときに必要となる補償に備えた損害保険が、法人向け火災保険です。


様々な損害に備えられる特徴のある法人向け火災保険なら、事業を継続するうえで大きなリスクに備えるための補償があります。


事業を営む法人にとって、火災などによるリスクへ備えるためには、以下のようなものを対象としておかなければなりません。

  • 店舗や工場、事業所など拠点となる建物
  • 取り扱う商品や製品
  • 事業をおこなうための設備など
  • 休業せざるをえなくなった場合の損害
  • 労災事故や賠償責任への備え

個人向けの火災保険では、備えられない補償内容が法人向けの火災保険にはあります。

それぞれの火災保険の特徴を知り、法人としての責任を全うするうえでも、法人向けの火災保険を検討しましょう。

法人と個人の違いは?

火災保険は、法人向け個人向けでは仕組みは似ていますが、補償される内容が異なります。


どちらも自然災害に加え、以下のような損害を受けたときに火災保険で補償されることになります。

  • 火災や水害、落雷などの自然災害
  • 自然災害による破損や水漏れ
  • 当て逃げなど第三者からの損害
  • 盗難

これらに加え、法人向け火災保険では、集団による騒擾で損害を受けた場合や、休業によって損失が出た場合のリスクなど様々なリスクに備えることが可能です。

火災保険に対する損害保険料は、法人名で契約することによって、全額経費として算入できる魅力もあります。

個人向け火災保険と法人向けの火災保険は、何を補償するかという点で大きく異なっているので、覚えておかなければなりません。
補償内容
個人向け現金や通帳、金品など以外の
生活を守るための補償
法人向け事業の存続に必要なもの
設備や什器、商品等


南海トラフ地震の可能性など、自然災害に備えるためには、火災保険の違いを知って必要な火災保険に加入しておくべきだと言えるでしょう。

法人向けの火災保険の保険対象


法人向け火災保険
の特徴は、補償される対象が多いことですが、加入している法人は、意外にもすべてを把握できていないケースが多くあります。


リスクに備えて、せっかく法人向けの火災保険に加入していても、いざというときに活用できなければ意味がありませんよね。

  • 建物や設備はどこまで補償されるのか
  • 補償されないものはあるのか
損害が出た原因や、どんなものに損害が出たのかによって、補償される場合と対象外となってしまう場合があるので、よく覚えておくことが大切です。

法人向けの火災保険で補償される保険の対象を知っていれば、事業に合わせて必要な補償を選ぶことができ、万が一に備え、不足しがちな補償を準備できることでしょう。

法人向け火災保険では補償対象となるもの

幅広く補償される法人向けの火災保険では、主に4つの補償対象に分かれて、リスクに備えることができます。


4つの補償対象を一覧で確認してみましょう。

4つの補償補償の対象
建物土地に定着している建物
(オフィスや工場、店舗など)
設備や什器屋内、屋外を問わず補償
(機械や器具、備品など)
商品・完成した商品や出荷予定の商品
・副産物や副資材、原材料
製品・完成した製品や出荷予定の製品
・仕掛品や半製品

工場などでは、屋外に設置されている設備は、地面に固定されているものであれば、火災保険の補償対象となります。


たとえば、配達もおこなう飲食店で火災が起きたとき、隣接する車庫や自動車も含め、補償の対象は以下のとおりです。

  • 建物である店舗
  • 調理器具などの設備
  • テーブルや椅子
  • 調理済の食事や調理に使う材料
  • 隣接する建物となる車庫

しかし、配達する車両や店舗に保管していた帳簿やお金などは、法人向け火災保険であっても補償の対象外となるので、注意しておきましょう。


補償されないものの代表例は、以下のとおりです。

  • 自動車や船舶など
  • お金や通帳、預貯金証書
  • 設計書や契約書、帳簿、図案、データ、ソフトウェアなど
  • 桟橋など海上の設備
  • 動植物など

オフィスや店舗に保管しているものや、移動などにかかわるものは補償の対象外となるので、覚えておいてください。

法人向け火災保険の補償内容


事業をしていると、予期せぬことが起こる場合もあり、自然災害を含めて様々なリスクに備える必要があります。


そんなときに必要となる、法人向け火災保険で補償内容は以下のとおりです。

損害の原因補償内容
火災や落雷、
爆発など
・火災(失火・延焼・ボヤ)による損害
・落雷による損害
・爆発や破裂などによる損害
自然災害・風災、雪災、雹災による損害
・水災(洪水・土砂崩れ・高潮)による損害
事故・電気的事故による損害
・機械的事故による損害
水漏れ・給水設備の故障による損害
・排水設備の故障による損害
騒擾や暴力行為など集団行動による暴力や破壊行為による損害
盗難盗難届が受理された盗難による損害
飛来・自動車や自転車の衝突により被った損害
・飛来物の衝突による損害
不測かつ
突発的に起きた事故
予測できない事故で被った補償
ただし、地震や噴火が原因で起こった火災、または津波による損害は、法人向け火災保険でも補償の対象外となってしまいます。

また、経年劣化や雨の吹込みなどで建物に損害が出た場合も、補償されません。

事業の形態やニーズに合わせた法人向け火災保険が多数販売されているだけでなく、特約によって幅広いリスクに備えることもできるので、どこまで補償が必要なのかを考えて、火災保険を検討すべきだと言えます。

法人向け火災保険に付帯できる特約

損害保険を取り扱う保険会社によって、法人向け火災保険に付帯できる特約は異なります。


必要に応じて検討すべき一般的な特約には、以下のようなものがあるので、十分な検討が必要です。

特約補償内容
地震など
に関する補償
地震・噴火・津波が原因となり、
建物に損害が出たときに補償
修理など
に対する補償
仮店舗の貸借費用や、復旧工事の
割増費用などを補償
休業損失
に対する補償
火災などによって休業する場合、
減収や人件費などの固定費、広告費などを補償
店舗の賠償責任
に対する補償
施設内で起こった事故、預かった物を損傷、
借用物件を焼失させた賠償などを補償
失火させたこと
に対する
お見舞補償
爆発や破裂、火災を起こしたことにより、
近隣へ損害与えた時のお見舞い費用を補償
残存物の
片づけ費用
損害を受けた物を片づけるための費用を補償
なかでも、地震などに関する補償は、個人向け地震保険と間違われやすく、注意が必要です。

法人向けの火災保険に地震保険を付帯させても、居住部分以外は補償されません

つまり、工場やオフィスなど、居住していない建物は補償されず、社宅など従業員の居住場所がある場合に付帯すべき特約となるのです。

休業損失の特約を付加する法人は多く、オフィスなら修理補償、飲食店なら店舗の賠償など、ニーズに合わせて特約を選択しましょう。

地震大国である日本の企業は、地震によって経営が立ち行かなる不安から、近年では休業損失や事業継続のための「地震BCP(事業継続計画)補償」が販売されるようになっており、検討しておくべき法人も多くなっています。

法人向け火災保険で支払われる保険金


火災が起きてしまったとき、どれくらいの保険金を法人名義で受け取ることができるのかは、保険の対象物に対する査定や評価により決まる保険金を、どのような算出方法で受け取る法人契約にしたのかによって異なります。


保険金を決める仕組みは2つの基準があり、加入時にはどちらかを選択しなければなりません。

  • 再調達価格(新価)
  • 時価
再調達価格(新価とは、損害を受けた財物と同等の規模であるものを、再度購入するために必要な金額が評価額となります。

事務所やオフィス、工場の建物保険金額を再調達価格(新価)にした場合、火災などによる損害状況に応じて、再調達価格(新価)が保険金として支払われるのです。

一方、時価とは経過年数や使用年数によって発生する減価を、再調達高価格(新価)から差し引くことで保険金額が決定され、法人契約先へ支払われます。

法人名義で火災保険に加入する場合、事業を再開することが最優先となるため、再調達価格(新価)を選択することが一般的です。

しかし、時価よりも保険料が高くなってしまう傾向にあり、自己負担となる免責金額を設定することで、保険料の負担を軽減することもできます。

法人向け火災保険で保険金が支払われない場合

リスクに備えた法人向けの火災保険では、5つのケース保険金が支払われないことが考えられます。

  1. 特約の補償に免責などが付帯されている場合
  2. 隙間風や雨の吹込みによる損害
  3. 老朽化など経年劣化による損害
  4. 設定している免責金額に至らない金額の損害
  5. 故意または重大な過失、および法令違反の場合
補償されるかどうかはケースバイケースとなりがちな、「故意または重大な過失」ですが、冒頭で紹介したキッチンカーのように、油を熱したままその場を離れて火事が起きた場合など、該当して保険金が支払われないケースもあります。

また、設備や建物など法令となる安全基準に従わず火災が起きた場合も、保険金が支払われない場合に該当してしまう恐れがあるのです。

保険金が支払われない場合や、特約ごとに免責がある場合など、法人向けの火災保険を検討するときには、必ず確認しておくようにしましょう。

法人向け火災保険の保険料の相場


加入しようとする法人向け火災保険によって、保険料の相場は異なり、ニーズにより建物保険や特約の付帯によって、保険料に大きく影響します。


各損害保険会社ごとに保険料の設定基準が違うため、できるだけ多くの保険会社から見積もりを取り寄せて、比較することが大切です。


以下のような条件で法人向け火災保険に加入した場合、損害保険会社による保険料の違いをランキングで比較してみましょう。

  • 所在地:東京都
  • 建物:新築、木造、延べ面積100㎡、評価額2,000万円
  • 物件利用目的:飲食店
  • 物件の所有:法人名義(自己所有)


なお、補償内容は一般的な建物保険に加え、火災・風災・水災、盗難や水漏れ、破損などへの補償が含まれていると仮定しています。

損害保険会社
ランキング
1年間の保険料
A社163,050円
B社155,470円
C社123,320円
D社119,000円
E社108,400円

保険料が高いA社では、基本補償に地震火災費用や失火見舞費用などが含まれていますが、保険料が安いE社では、火災や落雷、爆発などが基本補償となり、特約によって組み立てられる法人向け火災保険です。


このように、安い保険料を探すのではなく、ニーズにあった補償内容を選べるかどうかを、比較しながら検討すべきだと言えるでしょう。

法人向け火災保険のおける保険料の経理処理

法人契約となる火災保険の保険料は、経理処理する際に、経費として全額損金として算入することが可能です。


貯蓄性のない法人向け火災保険は、すべて掛け捨てとなっており、事業を継続するために必要な経費として認められています。


保険料を損金扱いすることで、法人税や消費税を算出するときに節税できるメリットがあるため、法人向け火災保険に加入した場合は、以下のような勘定科目で経理処理を行いましょう。

  • 勘定科目:損害保険料
  • 貸方および借方:支払った保険料の金額
ただし、長期契約を締結していた場合は、一括で支払った保険料は年度ごとに経理処理する必要があります。

2年契約だと、最初の1年分は経費として損金扱いとなり、2年目の保険料は長期前払費用として資産計上に充てることになるので、経理処理には注意しておきましょう。

法人向け火災保険の加入方法


法人向け火災保険に加入する場合、損害保険会社保険代理店に問い合わせると、ニーズにあった補償内容を提案してもらうことができます。


しかし、加入を決定する担当者が、法人向け火災保険に対する知識を持っていなければ、補償内容と保険料を正しく比較することは困難だと言えるでしょう。


火災や自然災害によるリスクに備えるだけでなく、企業財産保険として法人向け火災保険を検討するなら、専門家に適切な補償内容を相談することがおすすめです。


マネーキャリアには、法人向けの保険や事業には不可欠なリスク対策の専門家がいるので、詳しい説明も含めて、無料で相談することができます。


事業リスクに備える法人向け火災保険は、専門家の中立な意見を取り入れながら加入内容を決めることができるので、保険会社や代理店とは違い、決まった商品だけを勧められることはないので安心して利用できるのです。

自社のリスク対策について相談する

すでに加入している場合は保険の見直しがおすすめ

すでに法人向け火災保険に加入している法人は、大きな変化がない限り、補償内容を見直すことなく更新して継続しているケースが多くあります。


しかし、本当に加入している補償が適切なものとなっているのか、今一度確認してみましょう。

  • 適切な保険金額か
  • 補償の範囲と補償されない場合を把握できているか
  • 時価による保険金額の場合は、適切な理由があるのか
  • 免責金額は事業に大きな影響を与えないか
  • 自己負担が増えた場合の対処はどうするのか
  • テナントなど賃貸の場合は補償範囲が適切になっているか
  • 賠償保険は他の保険と重複していないか
加入している法人向け火災保険に不安がある場合も、「マネーキャリア」で補償内容を確認してもらうことができます。

そのなかで、過不足となる補償により見直しが必要となった場合でも、引き続き専門家にアドバイスをもらいながら検討することが可能です。

多忙な場合はオンライン相談も可能で、不安な場合は専門家が訪問して対面相談もおこなっているので、法人向け火災保険の相談ならマネーキャリアを有効活用しましょう。

加入済の保険を見直す!

まとめ:法人向けの火災保険について


個人向けの火災保険とは違い、法人向け保険では5つの内容について、よく確認しておくことが大切です。

  1. 保険の対象
  2. 補償の対象
  3. 付帯できる特約
  4. 保険金額の設定
  5. 保険料や経理処理の際の勘定科目
企業財産保険として、適切な補償であるべき火災保険は、プロ目線で確認してもらい、アドバイスをもらうことがおすすめです。

無料で何度でも相談できるマネーキャリアなら、法人契約に対する専門家がいるので、ぜひ活用してみてください。

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