内容をまとめると
- 「損害保険料」と「損害保険金」では経理処理の方法が異なる
- 事業用の損害保険料は全額経費として計上できる
- 損害保険料の仕訳方法は契約期間によって異なる
- 損害保険金の仕訳方法は保険金の受取人がだれかによって異なる
- 個人事業主はプライベートと事業用で分けて考える
法人として損害保険に加入した場合、保険料は保険の契約期間が1年以内もしくは、1年以上なのかにより、経理処理の方法が異なります。また、もしものことがあり損害保険金を受け取った場合、受取人が法人もしくは役員や従業員、親族なのかにより、経理処理が異なります。
この記事の目次
目次を閉じる法人の損害保険料と損害保険金の経理処理や仕訳について
この記事では以下について解説します。
- 損害保険料の経理処理と仕訳
- 損害保険金の経理処理や仕訳
- 【参考】個人事業主の場合の経理処理
損害保険料の経理処理と仕訳
まずは損害保険料についてみていきましょう。
損害保険料は支払った保険料の全てを経費として処理していきます。
以下の損害保険料は、経費の対象とすることができます。
- 火災保険料(事業用)
- 自動車保険料(事業用)
- 損害賠償保険料(事業用)
- 火災保険料(自宅用)
- 地震保険料(自宅用)
- 生命保険料
- 契約期間が1年以内の場合の経理処理
- 契約期間が1年以上の場合の経理処理
- 貯蓄性がある損害保険の経理処理
契約期間が1年以内の場合の経理処理
保険期間が1年以内の場合は、保険料精算したタイミングで全額を経費として計上することができます。
例えば、3月1日付で1年契約の自動車保険料を支払った場合は以下のようになります。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2023年3月1日 | 損害保険料55,000 | 現金55,000 | 自動車保険料 |
1年契約の場合は、毎年更新になりますので、毎年上記のように処理します。
契約期間が1年以上の場合の経理処理
保険期間が1年以上の場合は、先に資産として「前払費用」として支出日付けで計上します。その後、保険期間で毎年分を按分することで経費として処理していきます。
例えば、保険期間が10年の火災保険料15万円を、7月31日に支払った場合の経理処理は以下のようになります。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2023年 7月31日 | 前払費用 150,000 | 普通預金 150,000 | 火災保険料 (10年分) |
2023年 12月31日 | 損害保険料 6,250 | 前払費用 6,250 | 火災保険料 (5か月分) |
2024年 12月31日 | 損害保険料 15,000 | 前払費用 15,000 | 火災保険料
(当年度分) |
2025年 12月31日 | 損害保険料 15,000 | 前払費用 15,000 | 火災保険料
(当年度分) |
: | |||
2033年 12月31日 | 損害保険料 8,750 | 前払費用 8,750 | 火災保険料
(当年度分) |
前払費用は、一度資産として計上されますが、これは減価償却の対象とはなりません。
貯蓄性がある損害保険の経理処理
貯蓄性がある損害保険の経理処理について解説します。
貯蓄性がある損害保険とは、例えば積み立て火災保険があります。
満期になると保険金を受けれますが、支払保険料のうち、積立部分のみが満期まで資産計上されます。
例えば、保険期間5年の積立火災保険についてみていきましょう。
保険料が100万円で、そのうち、損害保険料部分が6万円、積立部分が94万円の場合は以下のようになります。
損害保険料6万円のうち、今期分のみが損害保険料として計上されます。
借方 | 借方 |
---|---|
保険積立金 94万円 | 普通預金 100万円 |
損害保険 2,000円 | |
長期前払費用 58,000円 |
今期分の損害保険料は以下です。
6万円÷60か月(5年)×2か月(11月、12月分)=2,000円
残りは、長期前払費用として計上します。
満期返戻金を受け取った場合はどうでしょうか。
120万円の満期返戻金を受け取った場合は以下のようになります。
借方 | 貸方 |
---|---|
普通預金 120万円 | 保険積立金 100万円 |
雑収入 20万円 |
満期返戻金との差額の20万円が雑収入として計上されます。
損害保険金の経理処理や仕訳
損害保険金の経理処理や仕訳について解説します。
万が一の事故の際に保険会社から受け取ることができるのが「損害保険金」です。損害保険金は、原則非課税ですが、受取人によって経理処理方法が異なります。
ここからは以下について解説します。
- 保険金受取人が役員・従業員・遺族の場合の経理処理
- 保険金受取人が法人の場合の経理処理
保険金受取人が役員・従業員・遺族の場合の経理処理
保険金受取人が役員・従業員・遺族の場合とはどういった場合が考えられるでしょうか。
例えば、従業員の労災上乗せ保険、従業員の出張時の海外旅行保険などは、保険金受取人を法人ではなく、本人や家族としているでしょう。
ここでは以下の場合について解説します。
- 保険料の支払:法人
- 保険金の受取:役員・従業員・遺族
保険金受取人が法人の場合の経理処理
保険金受取人が法人の場合の場合とはどういった場合が考えられるでしょうか。
例えば、火災保険や、自動車保険など、法人が所有しているものに保険をかけている時は受取人が法人となっていることがほとんどです。
ここでは以下の場合について解説します。
- 保険料の支払:法人
- 保険金の受取:法人
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2023年 10月1日 | 普通預金 300万円 | 雑収入 300万円 | 自動車保険金 |
【参考】個人事業主の場合の経理処理
個人事業主の場合の経理処理について解説します。
個人事業主の場合であっても、保険会社に支払う「損害保険料」と、事故があった際に受け取る「損害保険金」とで経理処理方法が異なります。
ここでは以下について解説します。
- 損害保険料の経理処理
- 損害保険金の経理処理
損害保険料の経理処理
個人事業主の場合であっても、損害保険料は基本的には全額損金扱いとなります。
例えば以下のような費用は全額損金計上が可能です。
- 火災保険料(事業用)
- 自動車保険料(事業用)
- 賠償責任保険料(事業用)
- 火災保険料(自宅用)
- 地震保険料(自宅用)
- 自動車保険料(個人用)
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2023年 10月31日 | 損害保険料 50,000 | 普通預金 50,000 | 自動車保険料 |
損害保険金の経理処理
では、損害保険金の経理処理はどのようになるでしょうか。
損害保険金は、万が一の事故が起こった際に保険会社から受け取るお金となります。損害があったものを補てんするのが損害保険金ですので、税金はかかりません。
例えば10月31日に、損害保険金500万円を受け取った場合は、以下のように仕訳ます。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2023年 10月31日 | 普通預金 500万円 | 事業主借 500万円 | 損害保険金受取 |
事業に関係しない収入ですので、「事業主借」の勘定科目を使用します。
また、500万円の損害保険金を受け取ったけれど実際に修理は400万円で済んだ、という場合も、差額の100万円には税金がかかりません。
一方で、損害保険金のなかには税金がかかるものもありますので注意しましょう。
以下の場合は、受け取った損害保険金が売上を補てんするものとみなされるため課税されます。
- 商品に対する損害保険金
- 休業保険金
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2023年 10月31日 | 普通預金 300万円 | 売上高 300万円 | 損害保険金受取 |
まとめ:法人の損害保険料・保険金の経理処理について
この記事では、法人の損害保険料・保険金の経理処理について解説しました。
まとめです。
- 「損害保険料」と「損害保険金」では経理処理の方法が異なる
- 事業用の損害保険料は全額経費として計上できる
- 損害保険料の仕訳方法は契約期間によって異なる
- 損害保険金の仕訳方法は保険金の受取人がだれかによって異なる
- 個人事業主はプライベートと事業用で分けて考える