・どんな理由でばれる?贈与税がかからない方法は?
この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 生前贈与はなぜばれる?理由・タイミングを5つ解説
- 銀行口座の入出金履歴が残る
- 税務署からの調査(お尋ね文書)
- 相続時の税務調査
- 不動産の登記情報
- 関係者の密告
- 生前贈与のことならFPへの相談がおすすめ
- 生前贈与による贈与税の申告漏れがばれたときのペナルティ
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 重加算税
- 延滞税
- 贈与税がかからない生前贈与のやり方
- 贈与額を年間110万円以下にする
- 生命保険を活用して生前贈与する
- 贈与税の非課税制度を活用する
- 贈与税に時効はある?
- 贈与税の時効は原則6年
- 名義預金は時効にならない
- 生前贈与に関するよくある質問
- 税務署が贈与の疑いを持つタイミングは?
- 現金手渡しならばれない?
- 高額なプレゼントにも贈与税がかかる?
- 【まとめ】生前贈与を行う場合は専門家に相談しよう
生前贈与はなぜばれる?理由・タイミングを5つ解説
結論:生前贈与は必ずばれる!
ばれると無申告加算税や重加算税など、附帯税のペナルティが発生し、多額の税金を納めなくてはならない場合も。「贈与時に申告を忘れていたけど、ばれなかった」という人でも、数年後に突然税務調査が入ることもあります。
また、相続発生時は贈与について税務署による調査が行われます。このとき無申告がばれると相続税の課税対象となる場合も。非課税枠を超える生前贈与は、必ず贈与税の申告を行いましょう。
銀行口座の入出金履歴が残る
通常お金は銀行や郵便局などの口座に預けます。たとえば生前贈与で多額の現金を手渡しで受贈した場合でも、銀行口座に入金しておきますよね。防犯面からみても、大金を家に保管している人は少ないでしょう。
つまり、口座に入出金履歴が残るわけです。税務署は、この履歴から生前贈与が行われた可能性を読み取り、調査を進めます。結果として、生前贈与がばれるということですね。
税務署からの調査(お尋ね文書)
大きなお金を動かした際、税務署から「〇〇についてお尋ね」といった文書が届くことがあります。適切に納税されたかを確認するための文書で、詳細の記入と必要書類をそろえたうえで、期日までに返送します。
すでに納税済であれば、その旨を記載すれば問題ありません。また、申告時に不備があったとしても修正申告で対応できる場合がほとんどです。 無申告の場合はさらに詳細に調査され、ばれるというわけです。
相続時の税務調査
被相続人が亡くなるなど相続が発生すれば、税務署により相続税納付について調査が行われます。調査員が自宅や会社などを訪問し、相続財産や受贈された財産について聞き取りを行います。
非課税枠内の贈与で無申告の場合でも、税務調査が行われることがあります。たとえば、110万円を超えて贈与を行い、申告を忘れていた場合、10〜15%の過小申告加算税が課せられます。悪質な場合は35%の重加算税が課されます。
不動産の登記情報
生前贈与で不動産の所有名義を変更し、登記を行った場合は贈与税の対象として調査されます。税務署では、高額取引や相続の発生を察知し、税金が正しく収められているかを確認しています。
不動産登記の場合は、法務局から税務署に提供される情報のなかに含まれるケースも。いずれも、税務署の情報網にひっかかり調査の対象となるのです。
関係者の密告
事情を知る身内や関係者による密告が理由で、生前贈与がばれる可能性もあります。
なにも無申告を税務署へ密告するばかりではありません。悪意がなくても「生前贈与があったこと」「生前贈与を行ったこと」を周り話し、そこから税務署にばれる可能性もあります。
また、近年ではSNSへの投稿でばれる場合もあります。
生前贈与のことならFPへの相談がおすすめ
生前贈与の相談では「中立的な立場から広い範囲での対策」を提案してもらえるかどうかが、効率的な節税のカギとなります。
ライフプランニングに長けたFPなら、贈与側・受贈側のライフプランにまで気を配り、生命保険や住宅ローンの組み合わせなど、さまざまな角度から最適案を探してくれます。
生前贈与による贈与税の申告漏れがばれたときのペナルティ
非課税枠を超える生前贈与には、当然ですが贈与税がかかります。その際、気を付けるのが申告漏れや申告忘れ。正しく申告ができていないと、利息や遅延損害金が発生する場合も。悪質と判断されれば重いペナルティを課せられることもあるため注意が必要です。
無申告加算税
無申告加算税とは、申告期限を過ぎても贈与税の申告が行われなかった場合に課せられる加算税のことです。
<贈与税の申告期限>
贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日まで
・正当な理由がある場合、申告忘れによる無申告加算税
贈与税の納付額に対して5%~20%が加算税としてプラスされます。
・申告を認識しながらわざと無申告など悪質な場合
贈与税の納付額に対して25%~50%が加算税としてプラスされます。
▼無申告加算税の加算目安
税務調査前に 自己申告した場合 | 税務調査の連絡後 調査前に申告した場合 | 税務調査の連絡後 調査前に申告した場合 | 税務調査により 指摘後に申告した場合 | 税務調査により 指摘後に申告した場合 | 贈与隠ぺいなど 悪質と判断された場合 | 贈与隠ぺいなど 悪質と判断された場合 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
贈与税額 | 区分なし | 50万円以下 | 50万円超 | 50万円以下 | 50万円超 | 50万円以下 | 50万円超 |
加算税率 | 5% | 10% | 15% | 15% | 20% | 25% | 50% |
過少申告加算税
過少申告加算税とは、申告期限内の贈与税が実際の贈与税額よりも少ない額で申告が行われた場合の加算税のことです。
申告し納税した場合でも、額に相違があれば税務署の調査対象となります。無申告加算税と同じく、納税義務を正しく果たしてもらうためのペナルティとして、国税庁の管轄のもとチェックされています。
税務調査前 自己申告した場合 | 税務調査の連絡後 指摘前に申告した場合 | 税務調査の連絡後 指摘前に申告した場合 | 税務調査により 指摘後に申告した場合 | 税務調査により 指摘後に申告した場合 | |
---|---|---|---|---|---|
贈与税額 | 区分なし | 50万円以下 | 期限内申告税額/50万円 いずれかの多い額を超える部分 | 50万円以下 | 期限内申告税額/50万円 いずれかの多い額を超える部分 |
加算税率 | なし | 5% | 10% | 10% | 15% |
重加算税
重加算税とは、虚偽や隠ぺいにより贈与税額を申告した場合の加算税のことです。悪質とみなされる可能性が高く、ペナルティ歴により35%~50%が課せられます。
虚偽や隠ぺいは、税務署の調査の対象となるケースが多く、財産の流れなどから全体的に判断され詳しく調べられます。刑事罰に発展する可能性もあり、ばれると重いペナルティが課せられることになります。
過去5年以内で 加算税の対象となった人 | 過去5年以内で 加算税の対象になっていない人 | |
---|---|---|
悪質な過少申告と判断された場合 | 45% | 35% |
悪質な無申告と判断された場合 | 50% | 40% |
延滞税
加算税に加え、申告期間を過ぎていれば延滞税も課せられます。延滞税の額は、法定納期限の翌日から計算され、日数に応じた額の支払いが必要となります。
つまり、延滞期間が長ければ長いほど、高額な税金を支払うことになります。そうならないためにも、生前贈与を行う際は、贈与税の申告期限も考慮して行うとよいでしょう。
生前贈与の納税期限は、贈与を受けた年の翌年の2月1日~3月15日まで。たとえば、12月31日に贈与を行った場合は、2カ月後の2月1日~3月15日が納税の申告期限となります。
贈与税申告期限から2カ月まで | 贈与税申告期限から2カ月以降 | |
---|---|---|
延滞税 | 年利2.4% | 年利8.7% |
贈与税がかからない生前贈与のやり方
贈与税の申告が大切なのは分かりましたね。とはいえ、できるだけ税金を抑えたいのが本音ではないでしょうか。効率的に賢く生前贈与を行えば、贈与税を抑えることは可能です。
ここからは、非課税枠や生命保険を活用し、正しく効率的に贈与税を抑える方法をお伝えします。
贈与額を年間110万円以下にする
贈与税は、年間110万円を超える生前贈与した場合に発生します。逆を返せば、年間110万円を超えなければ非課税の対象となるのです。
つまり、元気なうちに少しづつ資産を移しておけば、いざ相続が発生したときに相続税を節税できるというわけ。この場合は、贈与税の申告も不要です。
生命保険を活用して生前贈与する
贈与税の非課税制度を活用する
生前贈与には以下のような非課税制度があります。
おしどり贈与 (配偶者控除) | 住宅取得等資金の贈与 | 住宅取得等資金の贈与 | 教育資金の一括贈与 | 結婚や子育て資金の贈与 | 相続時精算課税 | |
---|---|---|---|---|---|---|
非課税枠 | 2,000万円 | 1,000万円 | 500万円 | 1,500万円 | 1,000万円 | 2,500万円 |
適応条件 | 婚姻期間が20年以上の夫婦間 居住用不動産の贈与 | 直系尊属からの住宅取得資金の贈与 省エネ等住宅の場合 | 直系尊属からの住宅取得資金の贈与 省エネ等住宅以外の場合 | 受贈者が30歳未満で 直系尊属からの信託受益権受贈の場合 | 受贈者が18歳以上50歳未満で 直系尊属から信託受益権受贈の場合 | 60歳以上の直系尊属から 18歳以上の受贈者へ財産贈与の場合 |
贈与の対象期間 | ー | 令和6年1月1日~令和8年12月31日 | 令和6年1月1日~令和8年12月31日 | 平成25年4月1日~令和8年3月31日 | 平成27年4月1日~令和7年3月31日 | ー |
国税庁のHP | 国税庁のHP | 国税庁のHP | 国税庁のHP | 国税庁のHP | 国税庁のHP | 国税庁のHP |
※いずれも生前贈与の目的・状況等により手続き方法が異なります。詳しく知りたい人は国税庁のホームページをご確認ください。
贈与税に時効はある?
贈与税は、生前贈与を行ってから6年が経過すると時効となります。ただし、贈与の隠ぺいなど悪質とみなされた場合は7年で時効となります。そのほか、時効とならないケースも。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
贈与税の時効は原則6年
贈与税には時効があります。通常の申告忘れであれば、贈与があった日から6年を経過すると時効となります。
・2024年中に贈与を受けた場合
2025年3月16日に起算し、6年後の2031年3月15日に時効を迎えます。
起算日は「申告期限の翌日」。贈与税の申告期間は「贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日まで」ですから3月16日が起算日となります。
名義預金は時効にならない
贈与税が時効にならないケースに「名義預金」があります。
名義預金とは、祖父母や親等の被相続人が、子や孫等の相続人の名義で銀行口座を作り、貯金・管理を行っていた場合の財産です。
名義預金の場合、相続時に口座は存在していますので、時効の対象にはなりません。名義預金ではなく、生前贈与による財産の移動であることを主張する場合は証明が必要になります。
生前贈与に関するよくある質問
ここからは、生前贈与のよくある質問に専門家がお答えします。贈与前に確認しておきたい項目ですので、参考にしてくださいね。
税務署が贈与の疑いを持つタイミングは?
税務署はさまざまな情報網を持っています。なかでも、大きなお金の動きは敏感に察知し、詳細を確認します。
たとえば、被相続人(贈与側)から相続人(受贈者)の金融口座へ多額の入金があった場合や、不動産の名義変更、住宅購入などの場合に、生前贈与や相続があったのか、納税は正しく行われているか等を調べます。
現金手渡しならばれない?
年間110万円までなら、贈与税をかけずに無申告でも現金を渡すことができます。それ以上の現金を贈与したケースは、まずばれると覚えておいた方が良いでしょう。
なぜなら、現金をそのまま手元に置いておく人は少ないから。多額の現金を手元に置いておくのは、防犯上の理由からも不安ですよね。
銀行口座や投資信託など、金融機関に預ける場合は必ず税務署の確認が入ります。また、受贈した現金で大きな買い物をすれば税務署の情報網に引っ掛かります。