
- 米国債に興味はあるが、リスクが不安で投資に踏み出せない
- 米国債のメリットとデメリットを正しく理解したい
- 自分に米国債投資が向いているのか知りたい
- 専門家のアドバイスを参考に、自分に合った投資方法を見つけたい
内容をまとめると
- 米国債は安全性が高く魅力的な投資先だが、価格変動リスクや為替変動リスクなどのデメリットもある
- 米国債投資に向いていない人もいるため、自分に合った投資先かどうかを見極める必要がある
- 米国債を購入する際は、購入方法や残存期間・金利タイプ、購入タイミングなどに注意が必要
- 米国債以外にも、外貨預金やドル建て保険、債券ETFや投資信託など、代替となる投資先がある
- 米国債投資に不安を感じる方は、マネーキャリアなどで専門家、とくにファイナンシャルプランナー(FP)に相談するのが大切

この記事の監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。メディア実績:<テレビ出演>テレビ東京-テレ東「WBS」・テレビ朝日「林修の今知りたいでしょ!」
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この記事の目次
「買ってはいけない」と言われる理由とは? 米国債のリスク5選

米国債は世界的に安全な投資先として認識されていますが、一方で「米国債は買ってはいけない」の意見もあります。それにはいくつかの理由があるのですが、リスクを一つ一つ詳しく見ていきましょう。
価格変動リスク
米国債の価格は、金利の変動に大きく影響を受けます。金利が上昇すると、債券価格は下落する傾向にあります。つまり、金利が上昇局面で米国債を購入し、その後に売却する場合、売却価格が購入価格を下回る可能性があるのです。
とくに、利回りが低く償還期間の長い米国債ほど、金利変動による価格変動リスクが高くなります。ただし、満期まで保有すれば額面金額で償還されるため、中途売却しない限りは元本割れの心配はありません。
為替変動リスク
米国債は米ドル建てで発行されているため、日本の投資家が購入する際は円からドルへの両替が必要です。しかし、購入時と売却時の為替レートが大きく変動した場合、為替差損が発生するリスクがあります。
たとえば、1ドル150円で米国債を購入し、償還時に1ドル100円になっていた場合、ドル建ての利回りがプラスでも、円換算では元本割れとなる可能性があるのです。
インフレリスク
米国債の利回りがインフレ率を下回る場合、実質的な購買力が低下してしまいます。つまり、インフレが進行すると、受け取る利息の実質的な価値が目減りするリスクがあるのです。
近年、米国ではインフレ率が高止まりしており、この点は投資家にとって注意すべきポイントです。
信用リスク(デフォルトの可能性)
米国債は、米国政府の信用力に基づいて発行されている債券です。米国債は一般的に「信用リスクフリー」とみなされており、デフォルト(債務不履行)の可能性は極めて低いとされています。
現在の米国の信用格付けは高水準にありますが、2011年にS&Pが米国の格付けを引き下げた事例があり、完全にリスクがないわけではありません。
ただし、米国債のデフォルトはこれまで起きたことがなく、その可能性は非常に低いと考えられています。
利回りの低さ
米国債の利回りは、過去に比べて上昇傾向にあります。2023年以降、FRB(連邦準備制度理事会)の利上げにより、米国債の利回りは以前ほど「低い」とはいえなくなっています。
しかし、株式などのリスク資産と比べると、期待されるリターンは依然として限定的です。
安全性を重視するあまり、米国債に集中投資すると、資産全体のパフォーマンスが制限される可能性があります。しかし、適切なポートフォリオ管理の一部として米国債を組み入れることは、リスク分散の観点から有効な戦略となりえます。
以上が、米国債に関する主なリスクです。これらのリスクを理解した上で、自分の投資目的や資産状況、リスク許容度に合わせて、適切な判断を下すことが重要です。
米国債は避けるべき?買ってはいけない人とは?
前章で解説したとおり、米国債にはいくつかのリスクが存在します。しかし、それは投資家の目的や性格によって、受け止め方が異なるものです。
本章では、とくに米国債を買ってはいけない人の特徴を3つ挙げていきます。
ハイリスク・ハイリターンを求める人
米国債は安全性の高い投資先ですが、その分リターンは限定的です。ただし、2023年以降、FRBの利上げにより米国債の利回りは上昇しており、以前ほど「低い」とはいえなくなっています。
それでも、株式や仮想通貨など、よりリスクの高い資産と比べると、期待されるリターンは依然として限定的です。もし、高いリターンを求めるタイプの投資家であれば、米国債は物足りないと感じる恐れがあります。
以上のように、ハイリスク・ハイリターンを求める人、為替リスクを取りたくない人、長期保有が難しい人は、米国債投資には慎重になるべきです。
逆に、安全性を重視し、長期的な資産形成を目指す方にとっては、米国債は魅力的な選択肢の一つです。自分の投資スタイルや目的、リスク許容度、投資期間、そしてポートフォリオ全体のバランスを考慮して、米国債投資のぜひを判断するのが大切です。
為替リスクを取りたくない人
先述のとおり、米国債は為替リスクをともなう投資です。為替レートの変動によって、円換算の利回りがマイナスになる可能性もあります。
もし、為替リスクを避けたいのであれば、円建ての債券や預金などへの投資をおすすめします。為替リスクを気にせず、安定的なリターンをえることができます。
長期保有が難しい人
米国債は、満期まで保有すると額面金額が償還されます。つまり、中途売却せずに長期保有するのが前提の投資です。
しかし、資金繰りの関係で中途売却が必要になるケースもあります。その場合、金利変動によって売却損が出る可能性があるのです。長期保有が難しいと感じる方は、米国債投資には慎重になった方がよい可能性があります。
以上のように、ハイリスク・ハイリターンを求める人、為替リスクを取りたくない人、長期保有が難しい人は、米国債投資には向いていません。
逆に安全性を重視し、長期的な資産形成を目指す方にとっては、米国債は魅力的な選択肢の一つです。自分の投資スタイルや目的に合わせて、米国債投資のぜひを判断するのが大切です。
米国債を買う場合の注意点
前章では、米国債を買ってはいけない人の特徴を解説しました。一方で、米国債投資に魅力を感じる方もいるでしょう。
本章では、実際に米国債を購入する際の注意点を3つ挙げていきます。
購入方法は?
米国債の購入方法の一つは、証券会社を通じて個別に米国債を購入する方法です。もう一つは、投資信託やETFを通じて間接的に米国債に投資する方法です。
個別に購入する場合、投資金額が大きくなりがちですが、自分の投資目的に合った債券を選ぶことができます。一方、投資信託やETFは少額から投資でき、分散投資も可能ですが、運用コストがかかる点には注意が必要です。
とくにETFは、日本円で取引ができ、分配金の受け取りも日本円なので両替の手間がかからない利点があります。
残存期間・金利タイプ
米国債には、残存期間や金利のタイプによってさまざまな種類があります。たとえば、残存期間が1年未満の短期債から、30年もの長期債まで幅広く存在します。
また、金利タイプも固定金利と変動金利に分かれます。固定金利は金利変動リスクがない代わりに、市場金利が上昇した際のメリットを享受できません。変動金利は金利変動リスクがある一方で、市場金利の上昇メリットを受けることができます。
自分の投資目的や金利見通しに合わせて、適切な残存期間と金利タイプを選ぶことが重要です。
購入するタイミング
米国債を購入するタイミングも重要なポイントです。債券には満期償還があるため、購入した時点で満期償還時までの利回りが決まります。
たとえば、利率4%の米国債を購入すれば、半年ごとに2%の利息が支払われます。金利が高い局面で購入すれば、高い利回りをえることができます。一方、金利が低い局面で購入すると、利回りは低くなりますが、金利上昇局面で債券価格が下落するリスクを回避できます。
また、FOMCでの利上げが打ち止めになり、金利を引き下げる前のタイミングで購入すれば、高い利回りを固定できるのでベストな時期です。
為替レートの動向も考慮に入れる必要があります。円高局面で購入すれば、より多くのドルを買うことができます。一方、円安トレンドが出ているときも購入のタイミングとして適切な可能性があります。円安局面で購入する場合は、為替ヘッジを検討する必要があります。
以上が、米国債を買う際の主な注意点です。購入方法、残存期間・金利タイプ、購入タイミングを適切に選択すると、米国債投資のメリットを最大限に活かすことができます。
ただし、これらの判断は簡単ではありません。投資に不安を感じる場合は、専門家に相談するのをおすすめします。自分に合った米国債投資の方法を見つけることが、長期的な資産形成につながります。
米国債の他におすすめの投資先はある?
米国債を買ってはいけない理由や購入する際の注意点について解説してきました。しかし、米国債以外にも魅力的な投資先は存在します。
本章では、米国債の代替となり得る投資先を2つ紹介します。
外貨預金やドル建て保険の活用
米国債投資の主な目的は、為替差益とドル建ての利子収入をえることです。この目的を達成する上で、外貨預金やドル建て保険も有力な選択肢となります。
外貨預金は、米ドルなどの外貨で預金をおこなうことで、為替差益をえることができる商品です。預金保険の対象となるのは円貨換算後の元本1,000万円までです。
ただし、為替差損のリスクがあり、円に戻す際に元本割れする可能性があります。金利は米国債と比べると低めです。
ドル建て保険は、保険料を米ドルで払い込み、運用成果もドル建てで受け取ることができる商品です。一定の為替リスクと金利変動リスクがありますが、死亡保障や税制面でのメリットもあります。
ですが、為替差益には税金がかかり、受取時に為替差益も含めて総合課税されます。また、受取人や受取方法によって税金の非課税枠の計算が異なることに注意が必要です。
債券ETFや投資信託を活用する方法
債券ETFや投資信託は、米国債を含むさまざまな債券に分散投資ができる商品です。個別の債券を購入するよりも少額から投資でき、運用も専門家に任せることができます。
債券ETFは、株式と同様に取引所で売買できるため、流動性が高いメリットがあります。また、一般的に投資信託よりも運用コストが低いことが多いです。一方、投資信託は定期的に分配金を受け取ることができるタイプの商品もあります。
ただし、これらの商品には金利変動リスクや信用リスクがあり、元本割れの可能性があることに注意が必要です。また、為替ヘッジ付きの商品でも、完全に為替リスクを回避できるわけではありません。
以上のように、米国債以外にもさまざまな投資先が存在します。外貨預金やドル建て保険、債券ETFや投資信託を活用すると、米国債とは異なる特性を持つ商品に投資しつつ、為替差益とドル建ての利子収入をえることができます。
米国債を購入する前に専門家に相談しよう
米国債の購入を検討する上でのポイントや代替となる投資先について解説してきました。しかし、実際に投資をおこなう前に、もう一つ重要なことがあります。それは、専門家に相談することです。
投資は自己責任が原則ですが、専門家のアドバイスを参考にすることで、より適切な判断を下すことができます。ここでは、とくにファイナンシャルプランナーの活用について解説します。
ファイナンシャルプランナーの活用
ファイナンシャルプランナー(FP)は、資産運用や保険、税金対策など、お金に関する幅広い知識を持つ専門家です。FPに相談すると、自分の資産状況や投資目的に合わせた最適な運用方法を提案してもらうことができます。
米国債投資を検討する際も、FPに相談するメリットは大きいです。FPは、米国債のリスクやリターンについて詳しく説明してくれるだけでなく、自分の資産状況を踏まえた上で、米国債を買うべきかどうかを判断してくれます。
また、FPは米国債以外の投資先についても幅広い知識を持っています。外貨預金やドル建て保険、債券ETFや投資信託など、自分に合った投資先を提案してくれます。
FPに相談する際は、自分の資産状況や投資目的、リスク許容度などを正直に伝えることが大切です。その上で、FPのアドバイスを参考にしながら、最終的には自分で投資の判断を下すことが重要です。
米国債は魅力的な投資先ですが、リスクもゼロではありません。自分の判断だけで投資をおこなうのは不安だと感じる方は、ぜひFPに相談してみましょう。専門家の知見を借りることで、より適切な投資判断を下すことができるはずです。
米国債投資に限らず、資産運用全般について不安を感じる方は、FPとの長期的な付き合いを検討してみましょう。定期的にFPに相談すると、自分の資産状況に合わせた最適な運用方法を継続的に提案してもらうことができます。
自分に合った投資先を見つけることが、長期的な資産形成につながります。専門家の力を借りながら、自分なりの投資スタイルを確立していくことが大切です。
まとめ:米国債は買ってはいけない?
本記事では、米国債を買ってはいけない理由、購入する際の注意点、代替となる投資先、専門家に相談する重要性を解説しました。
米国債は安全性が高く、為替差益とドル建ての利子収入が期待できる魅力的な投資先です。しかし価格変動リスクや為替変動リスク、インフレリスクなどのデメリットもあります。
▼米国債を買ってはいけない人の特徴
・ハイリスク・ハイリターンを求める人
・為替リスクを取りたくない人
・長期保有が難しい人
米国債を購入する際は、購入方法や残存期間・金利タイプ、購入タイミングなどに注意が必要です。また、外貨預金やドル建て保険、債券ETFや投資信託など、米国債以外の代替投資先も検討してみましょう。
米国債投資に不安を感じる方は、専門家に相談するのが大切です。とくにファイナンシャルプランナー(FP)は、資産運用や保険、税金対策など、お金に関する幅広い知識を持つ専門家です。FPに相談すると、自分の資産状況や投資目的に合わせた最適な運用方法を提案してもらうことができます。
自分に合った投資先を見つけることが、長期的な資産形成につながります。専門家の力を借りながら、自分なりの投資スタイルを確立していくことが大切です。
米国債投資に興味を持ったものの、自分で判断するのは不安だと感じる方は、ぜひ専門家への相談を検討してみましょう。