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生活保護受給者で引越しの際の初期費用や退去費用が気になっている方も多いのではないでしょうか。この記事で、生活保護受給者の引っ越しの初期費用と退去費用について説明しています。また、引越し費用を受給する条件や手続き方法についても解説しています。

監修者「井村 那奈」

監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー

ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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生活保護受給者の引越しの初期費用や退去費用は?

こんにちは。マネ―キャリア編集部です。


先日、こんなご相談がありました。

生活保護を受給しています。引越しをしたいけど、引越し費用の支給はされるのでしょうか?

厚生労働省によると、生活保護受給者は日本で200万人超と年々利用者と認知度が増加している状況となっています。


また、コロナウイルスによる失業や非正規雇用の拡大により、収入の減少に苦しんでいる人が増加しており、今後ますます生活保護を利用する人が増えてくるでしょう。


生活保護受給者には、ほとんどの場合引越しができるほどの貯蓄はありません。生活保護の支給額だけでは、少しずつお金を貯めることも現実的ではありません。引越しをする正当な理由がある場合には、引越し費用についても一定の基準で支給が認められます。



本記事では、生活保護受給者が生活を立て直すために必要となる引越しに必要となる費用補助について解説していきます。


本記事のポイントはこちらです。

  • 生活保護受給者の引越し費用は支給される
  • 自費負担となる費用は管理費と共益費、退去費用
  • 引越し費用の申請手順について

生活保護受給者で、引越しをするか考えている、あなたのお役に立てれば幸いです。

生活保護受給者の引越しの初期費用を解説!


生活保護受給者でも、引越しは可能です。しかしながら、生活保護受給者には貯金が無く引越し費用を捻出できないということが考えられます。


そんな中、生活保護受給者が生活の為に引越しをする際に、一定の条件を満たせば生活保護費として引越しに伴う費用が支給される制度が用意されています。


  1. 入院患者が実施機関の指導に基いて退院するに際し帰住する住居がない場合
  2. 実施機関の指導に基づき、現在支払われている家賃又は間代よりも低額な住居に転居する場合
  3. 土地収用法、都市計画法等の定めるところにより立退きを強制され、転居を必要とする場合
  4. 退職等により社宅等から転居する場合
  5. 法令又は管理者の指示により社会福祉施設等から退所する際し帰住する住居がない場合 (当該退所が施設入所の目的を達したことによる場合に限る。) 
  6. 宿所提供施設、無料低額宿泊所等を一時的な起居の場として利用している場合であって 居宅生活ができると認められる場合
  7. 現在の居住地が就労の場所から遠距離にあり、通勤が著しく困難であって、当該就労の場所の 附近に転居することが、世帯の収入の増加、当該就労者の健康の維持等世帯の自立助長に特に 効果的に役立つと認められる場合
  8. 火災等の災害により現住居が消滅し、又は、居住にたえない状態になったと認められる場合 
  9. 老朽又は破損により居住にたえない状態になったと認められる場合
  10. 世帯人員からみて著しく狭隘であると認められる場合
  11. 病気療養上著しく環境条件が悪いと認められる場合又は身体障害者がいる場合であって 設備構造が居住に適さないと認められる場合
  12. 住居が確保できないため、親戚、知人宅等に一時的に寄宿していた者が転居する場合
  13. 家主が相当の理由をもって立退きを要求し、又は借家契約の更新の拒絶若しくは解約の申入れを 行ったことにより、やむを得ず転居する場合
  14. 離婚(事実婚の解消を含む。)により新たに住居を必要とする場合
  15. 高齢者、身体障害者等が扶養義務者の日常的介護を受けるため、扶養義務者の住居の近隣に転居する場合 または、双方が被保護者であって、扶養義務者が日常的介護のために高齢者、身体障害者等の住居の近隣に 転居する場合
  16. 被保護者の状態等を考慮の上、適切な法定施設に入居する場合で、やむを得ない場合


上記の中から、どれか一つの条件を満たす必要があります。生活保護受給者が引越しをするには、「ペットを飼いたい」や、「築浅の物件に住みたい」というような嗜好が関わる理由ではなく、正当な理由が必要です。


引越しをすることはできますが。これらの条件のどれかに該当する場合にのみ引っ越し代の支給がなされるということになります。


引越しには敷金、礼金などの初期費用に加え、引越し業者への支払い等まとまったお金が必要となりますので、引越しをしたいと考えている場合は、まずは担当のケースワーカーに相談をしましょう。その上で物件の契約や引越しについての手続きを進めることが必要です。


支給されるのは下記の費用です。

  • 家賃
  • 敷金
  • 引っ越し代
  • 更新費
  • 住宅維持費


それでは、費用ごとに支給されるもの、支給されないものについて個別に見ていきましょう。

①引っ越し業者への費用は全額支給される


引越し業者への費用は全額支給されます。支給に関しては一定の条件があり、引越し費用として認められないものもありますので注意しましょう。


条件としては、複数の引越し業者から見積もりを取ることと、その見積もりをすべて福祉事務所へ提出することです。見積もりを取る業者の数は、自治体によって違いがありますが3社程度を求められることが最も多いようです。


この見積もりをすべて福祉事務所へ提出し、福祉事務所が一番安い業者を選びます。この引越し業者の費用は現金で渡されるわけでは無く、福祉事務所から直接引越し業者へ支払われるようになります。現金で渡して、他のことに使われてしまうことを防ぐためですね。


引越し業者に支払う費用の内、引越し費用として支給されないものは以下の通りです。

  • 荷造りサービス
  • 家電製品の設置費用
  • 盗聴器捜索サービス
などです。

②敷金や保証金、火災保険料は住宅扶助上限額の3.9倍まで支給される

引越しの際には、新居への敷金や保証金、火災保険料が初期費用としてかかってきます。これらの初期費用については、住宅扶助上限額の3.9倍までは支給されます


生活保護受給者は、生活費や住宅費などを支給されており、住宅費については都道府県ごとに賃料が大きく異なりますので、支給される金額の上限にも差があります。


都道府県ごとの住宅扶助上限額は下記の通りです。


都道府県支給上限額(単身)支給上限額(3人~5人)
北海道25,000円~29,000円33,000円~37,000円
東京都40,900円~53,700円53,200円~69,800円
大阪府29,000円~39,000円38,000円~51,000円
福岡県32,000円41,100円~42,000円


出典「厚生労働省 R2’住宅扶助基準額一覧


上記以外の都道府県に住まわれている方は、厚生労働省の参考ページからご自身の都道府県の支給上限額をご確認ください。


敷金や保証金、火災保険料などの初期費用は、住宅扶助上限額の3.9倍が支給される上限額になりますので、福岡県の単身の方であれば、32,000×3.9=124,800円が上限額となります。物件を探す際には、お住いの住宅扶助上限額がいくらになっているかを考慮して選ぶ必要がありますので、覚えておきましょう。

③鍵交換代や礼金、仲介手数料は各自治体による


退去するときの鍵交換代や、入居するときの礼金・仲介手数料が支給されるかどうかは各自治体によりますので、事前にケースワーカーさんに確認しておきましょう。

④管理費や共益費、クリーニング代は自腹となる

敷金や保証金、火災保険等の費用は住居移転の初期費用として支給されますが、管理費や共益費、退去時のクリーニング代は初期費用として認められず、支給されないことが多いのが現状です。


退去時のクリーニング代については、どれだけ綺麗な状態で部屋に住んでいたかで料金の多寡が変わってきます。入居時に支払っている敷金と相殺されますが、支払い済みの敷金よりもクリーニング代の方が高くなるようであれば、退去費用として支払わなければならないこともあるので、注意しましょう。

⑤エアコンなどの家電は上限額まで支給される


引越しをするときに、引越し業者や住宅の初期費用とは別に、家電購入の代金も支給されます。支給の対象となる家電は、生活に最低限必要となる家電です。例えば、エアコンやガスコンロ、照明器具などが該当します。


これらは初期費用、引越し業者へ支払う費用とは別に、家電什器費として支給されます。家電什器費は、引越しに関わる費用ではなく、生活に関わる費用ですので、引越しとは別にケースワーカーに確認してみましょう。


支給対象となる家電か、支給対象とならない家電か区別が難しいと思いますが、考え方の基準は「生きていくために必要か」です。


例えば、近年では温暖化が進み、夏は家の中で熱中症になってしまう事例も増えています。エアコンがあれば熱中症になることも極力避けることができるので、生活に最低限必要であり支給対象になるということです。


また、自身が保有するエアコンがあり、新居にエアコンを運びこむ場合には、引越し業者へオプション費用を支払う必要があります。この費用に関しては支給対象となりますのでケースワーカーに相談してみましょう。

生活保護受給者の引越しの退去費用は自費になる!


引越しの初期費用に関しては、敷金や保証金・火災保険料等が支給されます。新居への初期費用とほぼ同時に、もともと住んでいた住居の退去費用を支払う必要があります。しかしながら、退去費用については生活保護費の支給がありません。


退去費用は、旧住居に次の人が住める状態にするためのクリーニング費用や、鍵の交換費用が該当します。もともと敷金を支払っていれば、退去費用と入居時に支払った敷金が相殺されます。


どれだけ部屋をきれいに使っていたかによって、退去費用は異なります。また、敷金についても部屋によって異なるので、支払う必要がある退去費用がいくらになるかは人それぞれになります。


敷金の相場は家賃の1~2か月分ですが、生活保護受給者が敷金の返還を受けた場合、収入とみなされます。生活保護受給者は収入が増えた分、生活保護支給額が減らされますので注意しましょう。

生活保護受給者が引越しの初期費用を扶助される手順を紹介!


それでは、生活保護受給者が引越しをする際の手順を説明します。

大まかな手順は以下の通りです。
  1. 役所の許可をもらう
  2. 支給される金額に応じた物件を探す
  3. 許可が下りたら物件の契約をする
  4. 引越し業者を探す
  5. 引越しをする
各手順の詳細や費用、それぞれの注意点を解説します。 

①役所の許可をもらう

引越しを検討し始めたら、まずは役所・ケースワーカーに相談しましょう。

役所の許可がなければ、引越しの初期費用がおりません。もし他の市町村に引っ越す場合は、転居先の市町村で生活保護の再申請が必要となりますので、忘れないようにしましょう。 

②支給される金額に応じた物件を探す


役所の許可が下りたら、物件を探し始めます。許可が下りたら、引越しの初期費用が支給されますが、支給金額には上限があります。


東京都で一人世帯の場合は、40,900円~53,700円が住宅扶助上限額となっています。


支給される初期費用の補助金額は、この住宅扶助上限額の3.9倍ですので、159,510円~209,430円となります。 


引越しにかかる費用が支給される金額以下の物件でなければ、役所からの許可は下りません。


物件を探す際には、毎月の家賃に加えて初期費用がいくらになるか注意し、初期費用を抑えた物件探しをするようにしましょう。 


物件探しのサイト 

③許可が下りたら物件を契約する

新居となる物件を選んだら、次はケースワーカーに報告します。ケースワーカーの許可が下りなければ、役所の許可も下りません。


引越しをする理由と、選んだ物件の辻褄が合うようにしましょう。許可が下りたら、物件の契約をすることができます。


不動産会社には、自分が生活保護受給者であることを事前に伝えておきましょう。物件の契約手続き時には、勤め先等を記入することになります。


生活保護受給者であることを隠して契約することはできないので、物件の相談をするときから正直に伝えておきましょう。


最近は、生活保護受給者でも物件を紹介してくれる不動産会社が増えているようなので、安心してください。 


また、契約時にもらう書類はケースワーカーに提出しなければいけません。賃貸借契約書や、初期費用支払いの領収書、契約時の領収書等が該当します。

④引越し業者を探す


物件の契約が済んだ後は、引越しの準備を開始していきます。自分だけで引越しをするのは難しいので、引越し業者を探しましょう。


引越し業者へ支払うお金も生活保護費から支給されます。その為には、いくつかの引越し業者の見積もりを取らないといけません。その中から一番費用が安い業者を選定されます。


インターネットで調べると、簡単に複数の業者の見積もりが取れるサイトがあります。


引越し見積もりサイト 


引越し見積もりサイトとしては、以上のようなものがあります。


一つずつ業者へ見積もりを取っていくのは手間がかかりますので、以上のような一括見積サイトを利用して、複数社の引越し見積もりを取得しましょう。 

⑤引越しをする

引越し業者の見積もりが取れたら、ケースワーカーと最終確認をしましょう。賃貸借契約書、領収書、引越し業者の見積書を持って、ケースワーカーに見てもらいましょう。


最終的に役所から許可が下りれば、引越しをすることができます。引越し業者への支払いは、現金支給ではなく、直接役所から引越し業者へ振込で支払われます。


また、新居で使うエアコンやカーテン、暖房器具なども上限付きではありますが支給されます。


生活に必要最低限なものについてはケースワーカーに相談の上、購入を検討しましょう。

まとめ:生活保護受給者は引越しの初期費用や退去費用を把握しよう!

いかがでしたでしょうか。住居は生活に必要不可欠なものであり、各々の生活スタイルに合った住居に住むことが重要です。引越しは、生活スタイルの変化に対応するためには避けられないイベントですので、こうした行政の制度はしっかり理解して活用しましょう。


支給される費用、支給されない費用と、いくつか条件はありますが、引越しの初期費用を出してもらえるのはありがたいですよね。


生活保護受給者が引越しをする際のポイントは以下の通りです。

  • 引越しには正当な理由が必要
  • 新居の家賃には上限がある
  • 引越しの初期費用は支給される
  • 引越し業者に支払う費用は支給される
  • 家電製品も一部支給される
  • 引越し先で生活保護が受給できるように確認が必要


支給額に制限はありますが、貯金がなくとも何とか引越しをすることは出来そうです。また、生活保護受給者の引越しに関しては、押さえておくべきポイントの他に、物件探しも苦労すると思います。初期費用や家賃が基準に合うかどうか、生活保護受給者でも済むことができるかどうかなど、多くの制限があります。


ケースワーカーや、不動産会社など、手続きに慣れている人の力を借りて相談しながら引越しの手続きをしていきましょう。



最後までお読みいただきありがとうございました。マネーキャリアには、このほかにもお金に関する記事が多くあります。ぜひ他の記事もご覧いただき、あなたの生活に役立てていただければ幸いです。