内容をまとめると
- 輸出取引信用保険とは、輸出取引において、取引先からの売掛債権が回収できなくなった場合に保険金を受け取れる保険
- 取引先の倒産や債権不履行だけでなく、自然災害や戦争等による海外取引のリスクもカバーされる
- 加入のメリットとして、キャッシュフローへの影響を最小限に抑えることができる。与信管理向上、他社からの信用力の向上があげられる
- デメリットとしては、保険対象となる取引先を選べないことや、小規模な企業は加入できないということがあげられる
- 加入条件として、保険会社の審査があることから、引受けができない場合もある
輸出取引信用保険とは、海外の企業と取引をする企業向けの保険です。国外にある企業が倒産した際に、債権回収ができない場合の損害を補償してくれるのが、輸出取引信用保険です。こちらの保険は、ある程度事業規模が大きい企業向けの損害保険といえます。
この記事の目次
輸出取引信用保険とは?
輸出取引信用保険とは、日本からの輸出取引において、取引先となる債権者の倒産や、債務不履行、取引先の所在国による輸入制限、為替取引制限、戦争、自身などの発生によって、代金債権の回収ができず、損害を被った場合に、その損害の一定割合を補償するという保険です。
そのことから、輸出事業を手掛ける企業にとって、万が一のリスクをカバーする保険となっています。
国内取引の補償は取引信用保険
同じように取引信用保険というものが存在します。
大きな違いとして取引信用保険は国内に所在する取引先が商品やサービスの販売や提供に関する、代金支払債務を履行しないことによって、被保険者が損害を被った場合に、その一定割合を保険金としてお支払いするというものとなっています。
つまり、内容は似ていますが、取引先が海外と国内で大きく異なる点が特徴です。
そのため、加入の際には被保険者の取引先がどちらにあたるのかを理解した上で加入するべきです。
取引信用保険については以下の記事で詳しく解説しているの、気になる方はそちらをご覧ください。
輸出取引信用保険の補償内容
ここでは輸出取引信用保険の補償内容について解説します。
主に二つの危険について補償をおこなうのが輸出取引信用保険となっており
- 信用危険
- 非常危険
- 破産手続き開始、または特別清算開始の申立があったとき
- 財産について、強制換価手続が開始されたとき、仮差押命令または保全差押通知がでたとき
- 民事再生手続開始、または会社更生手続が開始されたとき
- 取引金融機関などの取引停止処分を受けたときなど
- 支払い期限の翌日から6ヶ月を経過しても、取引先が債務を履行しなかったとき
- 政府の支払猶予命令
- 主契約の達成不能
- 送金の阻害
- 債務免除
- 戦争や自然災害
- 公的債務者の債務不履行など
輸出取引信用保険に付帯できる特約
ここでは輸出取引信用保険に付帯が可能な特約について解説します。
主な特約として、今回は3点を紹介します。
- 政治的危険補償特約
- 保険契約終了時に存在する未収債権補償特約
- 自然災害補償特約
- 信用限度額の減額・取り消しの発効に関する特約
- 信用限度額の減額・取り消しの事由に関する特約 などがあります。
輸出取引信用保険に加入するメリット
ここでは輸出取引信用保険に加入をするメリットについて解説します。
この保険のメリットは主に以下の3点があげられます。
- キャッシュフローへの影響を緩和することができる。
- 与信管理の向上。
- 取引先との信用力の向上
①キャッシュフローへの影響を緩和
取引先に万が一の事態が発生したことによって、売掛金などの回収が見込めず、損失が発生した場合でも、損失の一部を保険金によってカバーされます。
これにより、損失の全てを保険金でカバーとはいかずとも、債権回収不能によるキャッシュフローへの影響を最小限に留めることができます。
また、貸し倒れ損失を一定の保険料負担により、保険に転嫁することによるリスクの平準化を図ることができることもメリットの1つです。
②与信管理の向上
保険契約の際に取引先を引き受け保険会社やその提携会社が審査をおこなうことから、与信管理業務の効率化や与信管理機能の強化をおこなうことができます。
また、保険会社は加入時だけでなく、保険期間中にも継続して取引先のモニタリングをおこなっているため、万が一、取引先の経営状況が悪化している場合には事前に状況を保険会社が知らせてくれるなど、損失を未然に防ぐことにもつながります。
③取引先との信用力の向上
国際取引における債権に関する、リスクを補償する保険に加入していることで、保険対象の取引先だけでなく、他社からの信用力の向上にもつながります。
また、万が一、貸倒損失が起こった場合でも保険によってキャッシュフローへの被害を最小限に抑えることができることから、金融機関などからの信用力の向上にもつながります。
輸出取引信用保険のデメリット
ここでは輸出取引信用保険のデメリットについて解説します。
主なデメリットとして下記の2点をあげることができます。
- 保険対象となる取引先を特定企業のみにすることはできない。
- 小規模な会社には必要がない。
①保険対象とする取引先を選定できない
輸出取引信用保険は基本的にすべての取引先を保険契約の対象とし、特定の企業のみを対象とすることはできません。
ただし、年間の取引高が一定以上や上位となる会社など、ある基準や条件をもって、引受けをすることができる場合もあります。
ただし、保険会社の審査によって、そもそも引受けができない取引先もある場合もあることもあります。
②事業規模が小さい企業には必要ない
輸出取引信用保険は一定以上規模の、輸出取引をおこなっている企業でなければ引受けの対象となりません。
そのことから、個人事業主や小規模な企業にはそもそも引受け対象外となってしまい、加入事態ができないことから必要ないとなってしまうデメリットをもっています。
輸出取引信用保険に加入する方法
ここまで、輸出取引信用保険について解説してきましたが、ここからは加入方法について解説します。
輸出取引信用保険に加入するには保険会社に問い合わせを行うことで加入が可能です。
しかし、全ての企業が加入できるという訳ではなく、加入には一定の条件がともないます。
まず、対象となる取引は継続的な輸出契約・仲介契約になります。スポット契約はできないというのが一般的です。
また、通常、保険期間は1年契約となりますが、保険期間中に取引がおこなわれた契約が対象となります。
対象となる取引先はデメリットでも述べたように、すべての取引先となります。
しかし、取引先の所在国や、保険会社の審査結果によっては引受けの対象外となる取引先もあることや、取引先ごとの与信限度額に関しても、保険会社の審査結果によって決定することから、加入内容や条件の詳しい内容は保険会社や取り扱い保険代理店に見積もりを依頼することをおすすめします。
特に、引受け保険会社によって保険料や補償内容も変わってきますので、保険会社に問い合わせをおこなうまでに一度、「マネーキャリア」に相談することをおすすめします。
「マネーキャリア」は法人保険や法人のリスクに詳しい専門家に無料で相談できるサービスとなっています。
まとめ:輸出取引信用保険について
こちらの記事では以下の内容について解説をしました。
- 輸出取引信用保険とは、輸出取引において、取引先からの売掛債権が回収できなくなった場合に保険金を受け取れる保険
- 取引先の倒産や債権不履行だけでなく、自然災害や戦争等による海外取引のリスクもカバーされる
- 加入のメリットとして、キャッシュフローへの影響を最小限に抑えることができる。与信管理向上、他社からの信用力の向上があげられる
- デメリットとしては、保険対象となる取引先を選べないことや、小規模な企業は加入できないということがあげられる
- 加入条件として、保険会社の審査があることから、引受けができない場合もある