食中毒に備える保険とは?【イベント事業者、飲食店経営者必読!】のサムネイル画像

内容をまとめると

  • 提供した飲食物で食中毒が起きると、多額の損害賠償金の支払いや休業リスク等が発生する
  • 実際に、損害賠償金で300万円以上支払った事例がある
  • 食中毒のリスク対策には、「PL保険」「店舗休業保険」「店舗総合保険」がある
  • 食中毒における個別のリスク対策の相談は「マネーキャリア」がおすすめ
  • 相談利用者98.6%が満足。法人のリスク対策を専門家に何度でも無料相談できる

飲食店やイベントで飲食物を提供する場合、お客様が食中毒となるリスクがあります。実際に集団食中毒が起こり、約300万円の賠償金を支払った事例もあります。このような食中毒のリスクに備えるために、PL保険や店舗総合保険に加入することをおすすめします。

この記事の監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー

株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。
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この記事の目次

食中毒の発生件数


食中毒は年間を通じて発生しており、厚生労働省の統計によると、令和4年の食中毒は962件(患者:6,856人)と報告されています。


令和4年までの過去5年間で発生した食中毒の主な原因は、細菌、ウイルス、寄生虫となっています。この他にも、きのこやフグなどの自然毒や化学物質などが原因による食中毒も出ています。


施設別で見ると、飲食店が47.9%、デリバリー20.4%、老人ホーム等の事業所14.6%と飲食店が半数近く占めています。


衛生管理を徹底している飲食店や販売店等であっても、リスクをゼロにできないのが食中毒の恐ろしさです。

食中毒の発生による飲食店やイベント事業者への影響

飲食店だけでなく、近年多く開催されているフェス等の野外イベントに出店するキッチンカーにも食中毒の発生リスクはあります。


万が一、食中毒が起きてしまった場合、飲食店やイベント事業者への影響は大きく分けて3つあります。

  • 被害者への損害賠償金の支払い
  • 休業損失
  • 店舗の信頼損失
以下、詳しく解説していきます。

①被害者への損害賠償金の支払い

1つ目は、食中毒を起こした被害者への損害賠償金の支払いが発生する点です。


ウイルスや細菌が発生した料理を食べたことによってお客様が食中毒を起こした場合、以下の損害賠償金を請求されるケースがあります。

  • 入院や通院における治療費
  • 治療を目的とした交通費
  • 慰謝料
かつ、食中毒の被害者が1名でると、他にも多くの方が被害に遭われている可能性があります。

人によっては、重症化したり最悪死に至るケースもあり、そうなると賠償金も高額になることも想定しておかなければなりません。

実際に、集団食中毒を発生した際に300万円を賠償金として支払った事例もあります。

②休業損失

2つ目は、休業損失が発生する点です。


お店側が提供した料理が原因で食中毒が発生した疑いがあると、保健所の調査が入り、調理関係者の細菌検査や調理場の調査が行われます。


調査の結果、飲食店が食中毒の原因であると認められた場合、保健所から3日間程度営業停止処分を受けてしまいます。


もちろん、その際の売上はゼロです。


加えて、休業中の損失として、仕入れていた食材を無駄にするだけでなく、お店の人件費や家賃、光熱費などの固定費等が、経営に重くのしかかります。


食中毒でお店を休業することは、経営者にとって大きな損失となります。

③店舗の信頼損失

3つ目は、お店の信頼損失となってしまう点です。


今回の「店舗の信頼損失」は、飲食店を経営するにあたって一番影響があると言っても過言ではありません。


食に携わる以上、お客様に安心して利用していただき、安全な食事を提供することが大前提とされます。


そんな中、食中毒が起きてしまったら、今まで積み上げてきたお店の印象や料理に対する評判、顧客との信頼関係が一切なくなります。


改善後でも、一度離れたお客様からの信頼回復にはかなりの時間を要します。


食中毒は、起きる頻度は少なくできるとはいえ、起きた時の経営に与える影響は大きいです

飲食店などで実際に起こった食中毒の事例


食べ物を扱う飲食店や屋台では、どんなに細心の注意を払っていても、食中毒が起きるリスクをゼロにすることは難しいです。


ここからは、実際に飲食店や屋台で起こった食中毒の事例をご紹介します。


今回ご紹介する事例は2つです。

  • 提供した刺身による食中毒
  • 花火大会の屋台で提供した飲食物からの食中毒
食中毒が発生した経緯や実際に支払う費用などを事例から理解し、自社で起こりうるリスクを洗い出し、対策に活かしましょう。

事例1:提供した刺身による食中毒

1つ目は、料亭でお客様に提供したイシガキダイの刺身による食中毒の事例です

概要

とある料亭でお客様にイシガキダイの刺身を提供していたところ、刺身にシガテラ毒素が含まれていたため、複数のお客様が食中毒を起こしました。


お客様の中には、25日間休業した方もいたため、休業補償を含め多額の損害賠償請求をされました。


判決

裁判の主な争点は、料亭の刺身料理は加工品であり、加工した料亭には製造物責任法が適用されるのではないかという点でした。


裁判の結果、料亭に製造物責任があるとして、被害者に慰謝料150万円や休業補償など総額308万円の賠償額となりました。


解説

食品を扱うには、高い安全性が求められます。


今回、イシガキダイにシガテラ毒素が含まれていたということは、法律の「製造物の欠陥」にあたるとされ、製造物責任を負うものとされました。


飲食店が食中毒を起こしてしまうと、多額な賠償金はもちろん、お店や料理に対する評判、顧客との関係性などが一気に崩れ落ち、長期間経営にダメージを与えます。


飲食店の経営者は、食中毒を起こさないよう努力することに加えて、多額の賠償請求が起きたり休業した場合のリスクに備える必要があります。


参考:提供した刺身による食中毒

事例2:花火大会の屋台で提供した飲食物から食中毒

2つ目は、花火大会の屋台で提供した飲食物で大規模な食中毒が起きた事例です。

概要

平成26年7月、静岡市で開かれた花火大会の露店で売られていた浅漬けの冷やしきゅうりによって、腸管出血性大腸菌O157の集団食中毒が発生しました。

下痢・血便等の症状での入院患者や外来患者は皆、花火大会に行き、きゅうりを食べていたとのことです。

発症者は過去10年で最多の510人、このうち114名が入院する大規模な食中毒事件となりました。

その後、平成27年に食中毒被害者が原告となり、冷やしきゅうりを販売した露天商などに対して、製造物責任または不法行為責任に基づく損賠賠償請求をしました。

判決

裁判所は、冷やしきゅうりを提供するにあたって、安全性を欠いたため食中毒が発生した、つまり、法律上の「製造物の欠陥」にあたるとされ、露天商は製造物責任を負うものとされました。

また、手指や調理器具等の洗浄も不十分であったとして不法行為責任も認められ、静岡地裁は、露天商に対して1,167万円の賠償を命じました。

解説

この訴訟では、食中毒の原因が本当に冷やしきゅうりだったのか、露天商が加工・販売する家庭でO157がついたのか、他に責任がなかったのかなども争点となり、令和3年の最終判決までかなりの時間を要しました。

この事例以外にも、野菜漬物の食中毒は各地で起きており、死亡者が出ているケースもあります。

以上より、飲食業を営む方にとって、製造物責任や休業に備える対策は必須といえるでしょう。

食中毒に備えるための保険


飲食店では、基本的にお客様に料理を提供するため、食中毒をはじめとする様々なリスクが常に潜んでいます。


中でも、食中毒が発生してしまうと被害者が多く、死亡事故につながるケースも想定されます。


また、被害者が多いと集団訴訟となり高額な賠償金を求められたり、休業による売上減少も起きます。


飲食店を経営している方にとって、衛生面・安全面の配慮はもちろん、食中毒発生に伴うリスクを最小限に抑える対策が必要になります。


そこで、ここからは、食中毒に備えるための保険を3つご紹介します。

  • PL保険(製造物賠償責任保険)
  • 店舗休業保険
  • 店舗総合保険
以下、詳しくみていきましょう。

また、自社でどのような保険に加入すべきか、専門家に相談したい方は、「マネーキャリア」をご利用ください。

①PL保険(生産物賠償責任保険)

PL保険(生産物賠償責任保険)とは、製造・販売した商品や仕事の結果によって、他人に損害を与え、賠償請求された場合に補償される保険でs。


飲食店では、お客様に提供した食べ物や商品が原因で、提供を受けた人の身体にケガや食中毒が発生した場合、店側が被る被害に対して補償されます。


また、食中毒の以外の補償対象の例としては、提供した食べ物に異物が混入していた場合です。


PL保険では、オプションで以下の内容も補償対象にすることが可能です。

  • 訴訟が起きた際の弁護士費用
  • 自己調査費用
  • 見舞金費用など
飲食業に多い損害賠償責任は食中毒によるものです。飲食業を営んでいる方にとってPL保険への加入は必須といえます。

PL保険については、以下の記事で詳しく解説しているので、そちらの記事をご覧ください。

PL保険についてのサムネイル画像

PL保険とは?適用補償や対策できる費用等をわかりやすく解説!

②店舗休業保険

店舗休業保険とは、火災等の自然災害に加えて、食中毒が発生し営業停止になった場合、隣接物件の事故によって営業活動ができなくなった場合など、突然の出来事により店舗を休業せざるを得なかった時の収入の減少を補償する保険です。

店舗休業保険の補償内容

主な補償内容は以下の通りです。

  • 失火やもらい火による火災
  • 落雷
  • 破裂・爆発
  • 風災、雹災(ひょうさい)、雪災、水災
  • 落下、飛来、衝突
  • 給排水設備の事故などによる水ぬれ
  • 騒擾・労働争議などによる暴行、破壊
  • 盗難
  • 隣接物件の事故
  • 公共施設等の事故
  • 食中毒、特定の感染症による営業停止

上記に加えて、特約で以下のように補償範囲を広げることができます。

  • 店舗賠償責任補償特約
  • 借家人賠償責任補償特約

店舗賠償責任補償特約は、建物・施設の使用や所有していることによって起きた事故や日常生活によって起きた事故によって法律上の賠償責任を負った場合に補償します。


借家人賠償責任補償特約は、火災や爆発等によって借りている建物を損傷、汚損してしまい、オーナーに対して法律上の賠償責任を負った場合に補償します。


店舗休業保険で支払われる保険金

店舗休業保険で支払われる保険金の例をご紹介します。
  • 粗利益の損失
  • 休業日数短縮費用
  • 損失の発生・拡大の防止にかかった費用
「粗利益の損失」
保険金は、保険金額×休業日数(定休日は除く)で算出される金額が支払われます。ただし、食中毒・特定の感染症においては日数が限定されています。

「休業日数短縮費用」
休業日数を短縮するために支出した追加費用のことを言います。保険金額×この費用の支出によって短縮できた休業日数が限度で、保険金が支払われます。

「損失の発生・拡大の防止にかかった費用」
火災、落雷、破裂・爆発によって損失が生じた際に、被害拡大を防ぐためにかかった費用のうち、消火活動のために使用した消火薬剤等の再取得費用や、消火活動に使用したために壊れた物の修理費用や再取得費用等に対して保険金が支払われます。

店舗休業保険で保険金が支払われないケース

ただし、以下の点は補償対象外のため注意が必要です。
  • 地震や噴火、津波の損害
  • 冷蔵・冷凍装置等の設備の破壊・変調または機能停止によって起きた温度変化による損害
  • 被害者の故意や重大な過失があった場合 など
飲食店を経営するにあたって、突然のお店の休業は大きなリスクと言えます。


なぜなら、休業=収入ゼロになるため、その状態が長期間続けばお店のキャッシュフローを悪くしてしまい、経営に大きなダメージを与えることになります。


店舗休業保険は、休業による収入減少に備えられるため経営の観点から備えておきたい保険です。


店舗休業保険については、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方はそちらの記事をご覧ください。

店舗休業保険についてのサムネイル画像

店舗休業保険とは?災害や盗難による休業損失の備えは必要?

③店舗総合保険

店舗総合保険とは、火災保険やPL保険(生産物賠償責任保険)、施設賠償責任保険等の店舗を運営するにあたって必要な複数の保険が1つになった保険です。


1つの保険で多様なリスクに備えられるので、飲食店経営者にとって保障内容を管理しやすい点と、各保険を1つずつ加入するより保険料が割安な点もメリットです。

店舗総合保険の補償内容

店舗総合保険では、以下の内容に対して損害保険金をお支払いします。

  1. 火災
  2. 落雷
  3. 破裂・爆発
  4. 風災・雹災(ひょうさい)・雪災
  5. 自動車の飛び込みなどの落下・飛来・衝突等
  6. 給排水設備の事故等による水ぬれ
  7. 騒擾・労働争議に伴う暴行・破壊
  8. 盗難
  9. 持ち出し家財
  10. 水害

飲食店などの店舗を運営する際に、店舗総合保険に加入していれば、食中毒や異物混入などによる高額賠償請求のリスクや自然災害によって休業せざるを得ない状況になった時のリスクに備えることが可能です。


店舗総合保険は、損害保険金の他にも費用保険金をお支払いします。

具体的には以下の通りです。

  • 休業損害
  • 臨時費用
  • 残存物取片付け費用
  • 失火見舞費用
  • 地震火災費用
  • 修理付帯費用
  • 損害防止費用
  • 緊急処置費用

オプションで賠償責任のリスクも補償される

店舗総合保険には、賠償責任に関するリスクへの補償はありません。

そのため、「特約」を付加することで賠償責任のリスクに備えることをおすすめします。
中でも以下の4つの特約は飲食店におすすめです。
  • 施設賠償責任特約
  • 生産物賠償責任特約
  • 受託者賠償責任特約
  • 食中毒見舞保険金
施設賠償責任特約は、お店の床が濡れており、お客様が転倒しケガをしてしまった場合、お客様の治療費が保険金から支払われます。

生産物賠償責任特約は、お店で提供した食べ物が原因で食中毒を起こしてしまい、損害賠償責任を負った際に補償されます。

受託者賠償責任特約は、店舗内でお客様の荷物や所有品を紛失・汚してしまった場合の賠償責任を負った際に補償されます。

食中毒見舞保険金は、食中毒が発生し店舗を休業した際に、お店側に支払われる保険金です。

店舗総合保険で支払われない場合

店舗総合保険には、補償されないケースもあります。
  • 故意もしくは重大な過失または法令違反による損害
  • 地震、噴火、津波の被害による損害
  • 戦争や内乱、武装反乱による損害
  • 火災などの事故の際の紛失、盗難による損害
  • 保険料領収前に生じた事故による損害 など
注意点としては、地震津波が原因の火災・破裂・爆発などは、保険金の支払い対象外で、別途地震保険への加入が必要です。

店舗総合保険については、以下の記事で詳しく解説しているので、そちらの記事をご覧ください。

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店舗総合保険とは?個人事業主で開業予定・運営している方におすすめ

食中毒に備える保険に加入する方法


食中毒に備える保険について、補償内容や事例をもとにリスク対策の必要性をお伝えしました。


この記事を読んでいる方の中には、法人保険に加入する必要性を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。


食中毒に備える法人保険への加入は、法人保険を取り扱っている保険代理店や保険会社から可能です。


しかし、保険会社に問い合わせる前に、自身の経営する飲食店を取り巻くリスクが何なのか、どういった保険に加入するのが最適なのか等、事前に知っておくことをおすすめします。


その場合、法人保険やリスク対策に詳しい専門家に無料で相談できるマネーキャリア」をおすすめします。


マネーキャリアでは、累計相談数40,000件以上、実績豊富で厳選された専門家に何度でも無料で相談が可能です。


実際に相談した方の98.6%に満足いただいているため、安心してご相談いただけます。


飲食業を経営されている方は、ぜひマネーキャリアにご相談ください。


自社のリスク対策を相談する

個人事業主でも加入できる?

個人事業主でも加入ができるのか、結論から言うと可能です。


飲食店を個人で経営しているということは、もしものことがあった場合、全責任は事業を経営しているあなたが負うことになります


食中毒の賠償責任等で大変大きな損害を受ける可能性もありますので、損害を最小限に抑えるためにも、店舗総合保険等で万が一に備えましょう。

【参考】飲食店経営者におすすめのその他の保険


飲食店を経営する方が、食中毒対策に加えて加入を検討すべき保険があります。

保険の種類補償の概要
火災保険火災や自然災害によって冷蔵庫や食器等の
什器備品に被害があった場合に補償される
施設賠償責任保険濡れた床や看板が落下した等で、
お客様にケガをさせてしまったり、
他人の物を破損してしまった場合に
賠償責任を負担することで被る被害を補償する
テナント保険火災や浸水、盗難などに伴う
設備費用や第三者への賠償責任を補償する


テナント保険は、火災保険の補償内容と重複する部分もありますが、設備什器等の補償や、借家人賠償責任補償、施設賠償責任補償など補償範囲が広がるメリットもあるため、適宜加入を検討することをおすすめします。


それぞれの保険について、詳しい内容を知りたい方は、以下の記事で解説しています。そちらの記事をご覧ください。

法人向け火災保険のサムネイル画像

法人向けの火災保険とは?個人との違いや補償内容等を徹底解説!

施設賠償責任保険のサムネイル画像

施設賠償責任保険とは?支払い事例や保険料の相場などを徹底解説!

まとめ:食中毒のリスクと対策できる保険について


飲食物を提供するお店にとって、衛生管理の徹底は当たり前に行っているとはいえ、食中毒のリスクをゼロにできないのが現状です。


万が一、食中毒が発生してしまった場合、以下のリスクが想定されます。

  • 被害者への損害賠償金の支払い
  • 休業損失
  • 顧客からのお店に対する信頼損失 
多額の費用が必要になるだけでなく、お客様からの信頼回復にも時間を要するため、経営の観点からも大きな影響を与えます。

そのため、保険に加入し、万が一に備えることでリスクを最小限に抑えることが重要になるでしょう。

保険の新規加入や、現在加入中の保険の見直しも検討されている方は、「マネーキャリア」で相談することをおすすめします。

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